音楽ナタリー Power Push - Psycho le Cému

奇抜コスプレバンドが歩んだ15年の“あきらめないDAYS”

アンパンマンのような存在になることが理想

──今年2月に「Psycho le Cému 15th Anniversary Live TOKYO PARALLEL WORLD」と題したライブを3本行いました。約5年ぶりのステージはいかがでしたか?

DAISHI まずビックリしたのが、中高生くらいの若いファンの方がすごく多かったことで。きっと活動休止中にさかのぼってファンになってくれたんでしょうけど、それはうれしかったですね。僕らは、誰しもが必ずハマる時期のあるアンパンマンのような存在になることが理想なので(笑)。

DAISHI(Vo)

──活動休止していたにも関わらず新しいファンが増えているのはなぜだと思います?

DAISHI 時代を無視してるからじゃないですかね、やっぱり(笑)。アンパンマンもそうでしょ?

──なるほど。確かにそうですね。ひさしぶりに5人で音を出した印象はいかがでした?

DAISHI 単純にスキルが上がってましたね、全員。

Lida うん。当時の音源を聴くと、「このギター何やってんだろう」ってところがあるんですよ。「俺、こんなん弾いてたっけ?」みたいな(笑)。

seek うちはツインギターなんで、「どっちがどのフレーズ弾いてたっけ?」みたいなことがわりとよくあるんですよね。

Lida そういうところで「じゃ俺、こっち弾くわ」みたいに、臨機応変に対応できるくらいのスキルアップはしていたなと(笑)。ひさびさにみんなで(音を)合わせたけど、リハーサルの段階からまったく違和感がなかったのもよかったですよね。堅苦しくならず、自然と音が鳴らせたので。

DAISHI 歌に関して言うと、意外とちゃんと歌ってるだけで成立するんやなってことに改めて気付きましたね。うしろのみんながきっちりパフォーマンスしてくれるから、僕はもうこざかしいことをせずに、真ん中でドシッと歌ってるほうが見栄えするなって。

seek DAISHI以外、ステージ上でガチャガチャしてますからね(笑)。

DAISHI そうそう。みんながガチャガチャしてるんで、それを僕は冷ややかに見るっていう(笑)。ボーカルがちょっと引いたほうがしっくりくるバンドなんですよね。

Psycho le Cémuの一番のこだわり=絶妙なダサさ

──衣装もそれぞれすごかったですよね。特に、ゆるキャラになっていたseekさん(笑)。

seek しんどかったですねえ。ライブ前、あの衣装でどうやってベースを持つのかっていうリハーサルが必要でしたから。しかも今使ってるベースがかなり重いんで、バラードのときには座らせてもらいましたし。

DAISHI 座る演出かと思いきや、単にもう立ってるのがムリやったっていう(笑)。もともと体がそんなに強くないのになんでそんなことしてるのかよくわからないんですけど。

Lida 僕の衣装もね、プロレスのマスクをかぶってるんで音が聞こえないっていう致命的な感じで。ライブなのに(笑)。

Psycho le Cému。左からLida(G)、seek(B)、DAISHI(Vo)、YURAサマ(Dance, Vo, Dr)、AYA(Dance, G)。

──あははは(笑)。衣装はどうやって決めていくんですか?

DAISHI 僕の家とかに集まって、みんなでくっちゃべりながら決めますね。

seek メンバーそれぞれのキャラ立ちがある程度決められているので、その中で面白いと思うものをみんなで出し合っていくっていう。

DAISHI そのときに、ダサさがすごい重要になってくるんですよ。比較的柔軟なPsycho le Cémuにおいて、そこは一番のこだわりかも。絶妙なダサさを理解した上で、それを面白おかしく見せていくっていう。だってね、プロレスのマスクかぶってる人なんておかしいじゃないですか。街におったら単なる変態ですよ。

Lida 変態ではないやろ。

seek 変態やろ。

Lida お前が言うなや!

DAISHI だいたいいつもこうやってメンバー同士、衣装のダサさをバカにし合ってます(笑)。その中で実は、僕が一番微妙なんですけどね。seekくらい振り切ってれば逆にいいんやけど、僕の場合、ちょっとカッコつけてるっぽくも見えるじゃないですか。

seek 若干モテようとしてるなっていう(笑)。

YURAサマ(Dance, Vo, Dr)

Lida よくよく見ると一番サブい。こんなやつおらへんもん(笑)。

DAISHI そうね。それは自分で着ててもわかってんねん。サブいなって。メンバーの中で真剣にカッコいいと思って着てるのって、YURAサマくらいですからね(笑)。

seek 衣装のフィッティングのときのリアクションもYURAサマだけちゃうかったもんな。

DAISHI うん。seekはもう完全に「仕事です」って感じで着ぐるみをグッと着るんですけど、YURAサマはテンション上がっちゃって、白のファーの着た瞬間、「うひょー!」って言ってましたからね(笑)。そういう子も1人はいなきゃダメなんですよ。真剣にカッコいいと思ってる子がいるのといないのとじゃ、また全然違ってくるんで。

現行スタイルに至るまで

──ああいった衣装を着ることに難色を示すメンバーがいなかったのもPsycho le Cémuの奇跡のような気がしますよね。

DAISHI いや、実はね、(seekを指差して)この人は最初できなかったんですよ、こう見えて。

seek 最初の2年弱くらいは苦悩の日々でしたね。理解ができなかった。だってヴィジュアル系ってカッコいいものじゃないですか。

DAISHI 誰がカッコ悪いねん!

Lida 俺らもカッコええっちゅーねん!

seek(B)

seek 「肩からこういうのがニョキっと生えてたらおもろいやん?」とか言われても、「え? 俺らおもろいことをするの、今から?」みたいな(笑)。ま、それもやっていく中で、皆さんに認知してもらうことで理解できるようになったんですけどね。

DAISHI seekはPsycho le Cémuがほぼ初めてのバンドやったんですよ。だから心の葛藤があったんでしょうね。ヴィジュアル系は黒くてクールな衣装を着るものやろ、みたいな。

Lida とは言え、こう見えてPsycho le Cémuも最初はものすごくダークなバンドでしたからね。DAISHIのしゃべりを出すのはまだ早いっていう判断があったので、ライブでもMCを一切しないっていう。

──へえ、そんな時代もあったんですか。

seek ライブ中にお芝居はしていたけど、今と比べるともっと演劇性の高い、シリアスな感じだったし。でも、途中で解禁しました。キャラクターを出そうと。

DAISHI うん。「もう隠しとくのムリちゃう?」言うて(笑)。

Lida 突っ込まずにはいられなくなっちゃった、自分たちのことを。で、今のこういう感じになっていったという。

DAISHI なるべくしてなった感じだよね(笑)。

ニューシングル「あきらめないDAYS」 / 2015年9月16日発売 / Warner Music Japan
初回限定盤A [CD+DVD] 1944円 / WPZL-31077~8
初回限定盤B [CD2枚組] 2700円 / WPCL-12227~8
通常盤 [CD] 1296円 / WPCL-12226
CD収録曲
  1. あきらめないDAYS
    (作詞・作曲:Lida / 編曲:Psycho le Cému&岡野ハジメ / プロデュース:岡野ハジメ)
  2. VIOLETTA~ヴァイオレッタ~
    (作詞・作曲:seek / 編曲:Psycho le Cému&奥田健介 / プロデュース:西寺郷太)
  3. あきらめないDAYS(インストゥルメンタル)
  4. VIOLETTA~ヴァイオレッタ~(インストゥルメンタル)
初回限定盤A DVD収録内容
  • あきらめないDAYS(Music Video)
初回限定盤B CD収録曲
  1. 激愛メリーゴーランド(ライヴ・ヴァージョン)
  2. 愛の唄(ライヴ・ヴァージョン)
  3. クロノス(ライヴ・ヴァージョン)
  4. 春夏秋冬(ライヴ・ヴァージョン)
  5. 道の空(ライヴ・ヴァージョン)

※2015年2月11日豊洲PIT公演のライブ音源

Psycho le Cému TOKYO MYSTERY WORLD ~名探偵Dと4人の怪盗たち~
FILE 1 夜空に舞う怪盗
2015年10月2日(金)東京都 ステラボール
FILE 2 盗まれたクロノス
2015年10月3日(土)東京都 豊洲PIT
Psycho le Cému(サイコ・ル・シェイム)

DAISHI(Vo)、Lida(G)、seek(B)、AYA(Dance, G)、YURAサマ(Dance, Vo, Dr)からなるロックバンド。1999年に結成。2002年にシングル「愛の唄」でメジャーデビューを果たし、奇抜な衣装を身にまとったコスプレバンドというスタイルとジャンルにとらわれない自由な音楽性で人気を博す。2006年に無期限の活動休止に突入し、メンバーそれぞれがほかのバンドで活動。結成10周年にあたる2009年に期間限定で活動を再開し、同年再び休止に入る。2014年10月には結成15周年を機に再始動し、2015年2月に5年ぶりのライブを開催。さらに9月に約10年ぶりのシングル「あきらめないDAYS」をリリースする。