音楽ナタリー Power Push - Psycho le Cému

奇抜コスプレバンドが歩んだ15年の“あきらめないDAYS”

昨年、結成15周年を機に再始動を果たしたPsycho le Cémuが、約10年ぶりとなるニューシングル「あきらめないDAYS」を9月16日にリリースする。

1999年に結成後、2002年にメジャーデビューを果たすや否や、奇抜な衣装を身にまとったコスプレバンドというスタイルと、ジャンルにとらわれない自由な音楽性を武器に、ヴィジュアル系というシーンを飛び越えて人気を博した彼ら。2006年に無期限の活動休止に突入するも、復活を期待する声は高まり続け、結成10周年にあたる2009年に期間限定で活動を再開している。そして昨年10月2日に結成15周年にあたって再始動することを発表。今年2月に行われた5年ぶりのライブ「Psycho le Cému 15th Anniversary Live TOKYO PARALLEL WORLD」では、色褪せることのない独自のエンタテインメントで会場に詰めかけた新旧ファンを魅了した。

今回音楽ナタリーでは、新作「あきらめないDAYS」のリリースと10月に控えるライブで新たなストーリーを紡ぎ出さんとするPsycho le Cému にインタビューを実施。DAISHI(Vo)、Lida(G)、seek(B)の3人にたっぷりと話を聞いた。

取材・文 / もりひでゆき 撮影 / 福岡諒祠

やり残したことだらけだよね

──結成15周年のタイミングでの再始動はどのような流れで決まったんですか?

seek(B) 結成10周年のときは1つの区切りとしてライブをやるということのみで集まったのですが、そこから5年経ったことで「もう一度」みたいな気持ちが出てきたんですよね。そこで今回はボーカルのDAISHIが旗振りをして、みんなに声をかけていくというところから15周年企画が始まりました。

Lida(G) 周りのスタッフさんからも声をかけてもらったしね。14年目くらいのときに、「来年15周年だよ」みたいにふわっと匂わされるっていう。

DAISHI(Vo)

DAISHI(Vo) そもそも僕らは忘年会とか新年会とか、年に1回くらいはみんなでごはんを食べる機会があったんですよ。その中で毎回、お酒飲んだテンションで「もう1回やろう!」って言ってましたからね。だから逆に言うと、それが実現するまでに今回は5年かかってしまったっていう。僕の思いが5年間フラれ続けたって言えばいいんですかね(笑)。

seek いやいやフッたりはしてないです(笑)。まあでも、メンバー各々の活動があったりするので、そこに対してのケジメと言いますか、きちんと両立できる状態にならないと再始動はできないよなっていう思いはあって。それが今回のタイミングならば実現できそうだぞっていう流れはありましたね。

──再始動を決めた気持ちの裏には、Psycho le Cémuとしてやり残したこと、やるべきことがまだまだあるという思いはありました?

DAISHI うん。それはいっぱいありますよ。やり残したことだらけだよね。

seek そうだね。いろいろあったバンドですから。一応活動休止ライブはやらせていただきましたけど、やり残した気持ちはやっぱりあるというか、バンドとして立ちたい小屋とか、まだ達成できていない目標はたくさんありますからね。時を経て時代が変わったことで改めて表現できることがあると思うし。

──今回はその気持ちを引っさげての本格始動と捉えて大丈夫ですか?

DAISHI そうですね、うん。

今のシーンを見てもかぶらないPsycho le Cémuの個性

──今回改めて思いましたけど、Psycho le Cémuが持っている強烈な個性は時を経てもまったく色褪せていないんですよね。相変わらず衝撃的というか。そのあたりをメンバーとしてはどう感じていますか?

seek(B)

seek よくも悪くも個性はキツイですよね(笑)。僕たちはヴィジュアル系というシーンの中から出てきたバンドではあるんですけど、当然のようにあるヴィジュアル系シーンの流行り廃りとは関係ないところから攻めた感じがあって。なので、その後に追従してきてくれるバンドがいるわけでもなく(笑)。結成から15年経った今のシーンを見ても、僕らの個性はほかとあまりかぶらないなあ、とは思います。

DAISHI 普通のバンドって、15年前の衣装やステージングを見ると、やっぱり時代を感じてしまうところってあるじゃないですか。でも僕らはもとから時代無視なんで(笑)、時間が流れたとしても違和感がまったくないというか。そういうところもPsycho le Cémuらしいところですよね。

──ただ、デビュー当初はコスプレバンドというスタイルに面食らったリスナーも多かったはずで。結果、“早すぎた”という形容詞を付けてバンドが紹介されることもあったように思うのですが。

DAISHI その感覚は僕らの中にもありましたよ。最初は赤とか青とか緑とか、わかりやすくカラフルな5色の衣装を着てやっていて、ファンの方が増えてくる実感があったんですね。でも、さらに個性を出そうと思って、衣装にパステルカラーを使ってみたらライブの動員がドーンと下がったりして。「あ、ここまで行ったらあかんねや」みたいな(笑)。

seek ヴィジュアル系のバンドはほぼ黒をメインにしてた時代ですからね。そこで違う色を使ったりして個性を出すと、皆さんが一瞬サーッと引いてしまうっていう。ただ、そのスタイルが認知されることで、しっかりニーズが増えていく実感もありましたけどね。

DAISHI うん。当時、演奏しないで踊るっていうステージングもほかのバンドにはなかったし。認知されるまでは、悪い意味での笑いが起こってましたね(笑)。

とにかくコケるまで走るみたいな状態が続いてた

──そこで気持ちが折れてしまう瞬間ってなかったですか?

DAISHI それはなかったんちゃう?

seek うん。当時から変にビビることはあまりなかったかもしれないです。自分らから出てきたアイデアを「勢いでやってまえ!」みたいな気持ちのほうが強くて。ただ、逆に言うと、途中から歯止めが効かなくなっていたところがあったかもしれないです。ライブ会場のキャパシティがどんどん大きくなったり、周りが盛り上がっていくスピードに自分たちが追いつけなくなっている感じが2000年代前半にはあって。気持ち的にいっぱいいっぱいになりながら、とにかくコケるまで走るみたいな状態が続いてたなって、今振り返ると思ったりはしますけど。

Lida(G)

──独自のスタイルで走り続けることができたのは、バンドとして生み出す音楽への自信が理由になっていたところもあるんじゃないですか? だからこそ見た目の奇抜さだけに引っ張られず、15年もその存在が求められ続けているような気がするんですけど。

Lida 自信は特になかったような気もするんですけど(笑)。ただ、当時からいわゆるヴィジュアル系らしい音楽をやることに僕個人はあまり興味がなかったんですよ。別にダンスナンバーがあってもいいし、やかましい曲があってもいいし、変なこだわりを持たずに自分の好きなことをPsycho le Cémuというバンドにシンクロさせていったのが逆によかったのかなとは思いますね。で、結果的にそういうスタイルにみんなが賛同してくれたっていう。

seek 僕らってパッと見、すごくこだわりの強いバンドだと思われがちなんですよ。でも実際は衣装にしても音楽性にしてもすごく柔軟で。面白いと思ういろんな発想を取り入れて、それに対して自由な音楽性で応えられることがこのバンドの基礎であり、大きな強みになってるんじゃないかなって感じはしますね。

ニューシングル「あきらめないDAYS」 / 2015年9月16日発売 / Warner Music Japan
初回限定盤A [CD+DVD] 1944円 / WPZL-31077~8
初回限定盤B [CD2枚組] 2700円 / WPCL-12227~8
通常盤 [CD] 1296円 / WPCL-12226
CD収録曲
  1. あきらめないDAYS
    (作詞・作曲:Lida / 編曲:Psycho le Cému&岡野ハジメ / プロデュース:岡野ハジメ)
  2. VIOLETTA~ヴァイオレッタ~
    (作詞・作曲:seek / 編曲:Psycho le Cému&奥田健介 / プロデュース:西寺郷太)
  3. あきらめないDAYS(インストゥルメンタル)
  4. VIOLETTA~ヴァイオレッタ~(インストゥルメンタル)
初回限定盤A DVD収録内容
  • あきらめないDAYS(Music Video)
初回限定盤B CD収録曲
  1. 激愛メリーゴーランド(ライヴ・ヴァージョン)
  2. 愛の唄(ライヴ・ヴァージョン)
  3. クロノス(ライヴ・ヴァージョン)
  4. 春夏秋冬(ライヴ・ヴァージョン)
  5. 道の空(ライヴ・ヴァージョン)

※2015年2月11日豊洲PIT公演のライブ音源

Psycho le Cému TOKYO MYSTERY WORLD ~名探偵Dと4人の怪盗たち~
FILE 1 夜空に舞う怪盗
2015年10月2日(金)東京都 ステラボール
FILE 2 盗まれたクロノス
2015年10月3日(土)東京都 豊洲PIT
Psycho le Cému(サイコ・ル・シェイム)

DAISHI(Vo)、Lida(G)、seek(B)、AYA(Dance, G)、YURAサマ(Dance, Vo, Dr)からなるロックバンド。1999年に結成。2002年にシングル「愛の唄」でメジャーデビューを果たし、奇抜な衣装を身にまとったコスプレバンドというスタイルとジャンルにとらわれない自由な音楽性で人気を博す。2006年に無期限の活動休止に突入し、メンバーそれぞれがほかのバンドで活動。結成10周年にあたる2009年に期間限定で活動を再開し、同年再び休止に入る。2014年10月には結成15周年を機に再始動し、2015年2月に5年ぶりのライブを開催。さらに9月に約10年ぶりのシングル「あきらめないDAYS」をリリースする。