ゼロからバンドで作り始めたボス曲

──9月7日にはバンドの結成10周年を記念したCD「THE PRIMALS - Riding Home」がリリースされます。結成10周年という節目を皆さんはどう感じていますか？

祖堅　10年経った実感はあまりないですね。最初の頃は曲数が全然なくて、ワンマンで「タイタン（「過重圧殺！～蛮神タイタン討滅戦～」）」を3回ぐらいやっていたから、あの頃に比べたら曲も増えたし、いろんなところでライブをしてきたよな、くらいの感覚かな。

たちばな　ウチの事務所のスタッフは「10年も続くと思ってなかった」ってびっくりしていましたよ。1つのゲームがここまで続くことも珍しいと思うし。

──1つのゲームタイトルがここまでコンテンツを更新し続けている例もあまりないですし、バンドを掛け持ちしている皆さんの状況が変わらず、まったく同じメンバーでTHE PRIMALSを続けられていることもすごいと思います。

祖堅　本当にそうですよね。若い子たちにはわからないと思いますが、大人になると10年でいろいろあるんですよ、本当に。だから同じメンツで10年続けられているのはすごく幸せなことですね。

──10周年記念盤には新曲「Give it All ～至天の座アルカディア：ライトヘビー級～」が収録されています。これはどのように作られた楽曲ですか？

祖堅　いつもの流れだと、僕が作ったゲーム用の曲をバンドアレンジしてリリースすることが多いけど、「Give it All ～至天の座アルカディア：ライトヘビー級～」はゼロからTHE PRIMALS向けに作り始めた珍しいパターンの曲ですね。最初からバンドサウンドゴリゴリのデモを作って、テツさんとイワイさんに聴いてもらって、文句をもらうところからスタート。

イワイ　今回僕はあまり文句を言わなかったよ。

祖堅　確かに。いつもだったら「ここ、ちょっと変だよ」みたいなところがけっこうあるのに、今回はスムーズでした。

たちばな　ドラムに関してはけっこう祖堅氏に電話して相談しました。「ここ、こうしたいんだけど、やっぱり変かな？」って。なぜかと言うと、今回は今までの曲に比べてテンポがちょっと速くて、レコーディング前に決め込まないと大変になる予感がしていたから。テンポが遅ければ現場の調整でどうとでもなるけど、ここまで速いとキックの位置は定めておかないと難しいぞ、みたいな。

GUNN　僕が言うのもおかしいかもしれないけど、今回のテツさんのドラム、めちゃくちゃよかったです。

たちばな　え、うれしい。

GUNN　「やってやるぞ！」みたいな気概がすごく感じられたんですよね。

たちばな　ギリギリでやってる感じを切り取れるとカッコいいからね。余裕が出るといろんなことを考えちゃうから。

祖堅　今テツさんが言ってくれた「ギリギリでやる感じ」が、僕の考えるロックの究極系なんですよね。「難しいこと考えずに全力を出す」「もうこれしかできねえ」みたいな音楽こそ、ロックだと思っていますから。そういう意味で「Give it All」はロックバンドとしてのTHE PRIMALSにハマった曲ですね。

“霧の中”のような東京ドーム

──同じく9月7日に、今年1月開催の「ファイナルファンタジーXIV ファンフェスティバル 2024 in 東京」の模様を収めたBlu-rayがリリースされます。今作にはもちろん、東京ドームでのTHE PRIMALSのライブ映像も収録されますが、今振り返ってみて東京ドームでのライブはいかがでしたか？

祖堅　変な感じで伝わっちゃうといけないので最初に言っておくと、お客さんは最高だったし、盛り上がって楽しんで帰ってもらって、僕らもすごくうれしかったです。ただプレイの内容に関して言うと、東京ドームという会場が未知すぎて、霧の中にいるような感覚でよくわからなかった。

──「霧の中にいる」とはどういうことですか？

祖堅　客席に目をやれば、皆さん喜んで盛り上がってくれるのがわかるんですよ。でも会場が広すぎるからか、音の反響みたいなものがあまりないし、客席までも遠いから歓声の圧みたいなものも感じにくくて。

たちばな　音が上に抜けている感じなのかな。演奏している僕らは「すごい静かだな」と錯覚しちゃうような感じがあった。なので、最初の2、3曲はちょっと不安そうな顔で演奏しているかもしれない。

GUNN　例えばテツさんが「いやいや、東京ドームってこんなもんだから大丈夫だよ」と引っ張ってくれれば違ったと思いますが、さすがに誰もドームライブは未経験でしたからね。

祖堅　もう少しリハーサルの時間が確保できればよかったんですが、「ファンフェス」は僕らのステージだけではないし、近隣への迷惑対策で音出しの制限も多くて。

イワイ　ステージの場所もけっこう特殊だったよね。普通にドームでライブをするレイアウトとはけっこう異なる形だったし。

たちばな　ただ、これでみんなドームライブを経験したわけですから、次からは大丈夫です。1曲目からニコニコしてやりますよ（笑）。

祖堅　演奏の手応えが感じられなくても、ちゃんと演奏が成立していたので皆さんさすがだと思いました。ベテランを集めた甲斐があったというか、おじさんを集めてよかったなあと。

GUNN　若者を集めていたらこうはなってなかったよ。

祖堅　でも最近はみんな電池が切れるの早いよね（笑）。

たちばな　だってさ、10年前に集められたときからおじさんだったんだよ？ もうけっこうなおじさんなのよ、こっちは。

イワイ　10年前に「おじさんを集めてる」と聞いたときは、「え、俺のことおじさんって言ってる？」と思ったからね。今はさすがにおじさんだけど。

THE PRIMALSは全力ライブしかできない

──9月21、22日には横浜アリーナで2DAYSライブ「Darkest Before Dawn」が開催されます。ひさびさのワンマンライブは、どんな内容になりそうですか？

祖堅　ようやく「こういう方向かな」というのが見えてきたところで、一生懸命考えているところですね。ひさびさの単独なので、THE PRIMALSのライブをどう楽しんでもらうかを練りに練っています。

イワイ　やりたいことが多すぎてまだ整理がついてない状況だけど、悪く転ぶことは絶対にないだろうね。

祖堅　僕らが叶えたい夢をとりあえずテーブルに並べているだけで、それを取捨選択する作業を誰もやっていない（笑）。2DAYSあるから、いろいろ実現させられたらいいですね。

たちばな　本当は3DAYSにして、中日を休ませてくれると万全なんだけどね。

祖堅　会場を3日押さえなきゃ！

たちばな　2年ぐらい前に「1日2公演やってくれ」と言われたとき、本当に怒ったからなあ。GUNNから間接的に聞かされて、GUNNは悪くないのに「てめえ何考えてんだ！」って。

GUNN　「俺じゃねえっす！」って言い訳していました（笑）。

──確かに、先ほど祖堅さんが“ロックの究極系”として話していた「ギリギリでやる」「難しいことを考えずに全力を出す」というスタイルは、1日2公演だと成立しないですね。

たちばな　「次があるから」で手を抜くわけにはいかないからね。

祖堅　常に全力を出すライブしかできないんですよ、THE PRIMALSは。ベテラン3人はいろんなスタイルでライブができるかもしれないけど、このバンドのことを理解して怒ってくれたテツさんにはすごく感謝しています。

次はみんなに会いに行くライブを

──以前のインタビューで聞いた目標「フェスに出たい」は今年の夏に叶いました。THE PRIMALSの次の目標は、何か考えていますか？

祖堅　国内外問わず、最近は大きな会場でしかライブをしていないので、今度は規模を問わずいろんな会場を回るツアーをやりたいと考えています。各メンバーの時間が取れないし、方法論として大きな会場でやるほうがいいことはわかっちゃいるけど、こっちからみんなに会いに行くライブをやりたいですね。

たちばな　数年前にやったZeppツアーみたいな？

祖堅　はい。あれをもう1回やりたいです。

GUNN　僕らのワガママみたいになっちゃいますが、ライブハウスツアーはやりたいですね。祖堅くんの話を聞いていると「海外でライブをしてくれ」という声も多いようですし。

祖堅　めちゃめちゃ言われますよ。僕はゲームのサウンドディレクターとして各地に行かせてもらっていますが、「THE PRIMALSのライブが観たいんだ」って言われますもん。そんなに細かく回れなくてもいいから、アメリカツアーはやってみたいですね。

たちばな　そうしたら、コージの実家には行かなきゃ（笑）。挨拶も兼ねて。

GUNN　実家の庭でライブして、そのあとコージの実家の中で野球しよ。

祖堅　家壊れちゃうじゃない。野球なんてしたら。

たちばな　取材に参加しないと、こういうこと言われちゃうわけです（笑）。

THE PRIMALS結成10周年を迎えた心境を教えてください。

この10年間で、よくクビにならなかったなーって。時間の問題かなと思っていました（笑）。

THE PRIMALSの活動の中で一番大変だったことは？

一番大変なのは、普段のスクウェア・エニックスのサラリーマンとしての仕事とTHE PRIMALSの活動の両立ですね。THE PRIMALSの活動がどんなに忙しくても、サラリーマンとしての仕事を疎かにするわけにはいかないので。

先日の初の夏フェス出演はいかがでしたか？

大学祭以来、ひさしぶりの野外ライブはやっぱり気持ちよかったです。サラリーマンは普段から太陽を浴びる機会があまりなくて……。あと、森高千里さんと同じステージに立つことができたことは、いまだに信じられないですね。

映像作品がリリースされる東京ドームでのライブを振り返っての感想も教えてください。

東京ドームというあんな大きな舞台に立つことは、やっぱり一生の思い出にはなりますが、本番はそこまで意識しなかったですね。「すごいな」と実感したのは、終わったあと、外側から撮った写真を見たときでした（笑）。あとは、プレイヤーとの距離が離れているのがちょっと淋しかったかなと。

9月の横浜アリーナ公演はどんなライブになりそうですか？

いつものTHE PRIMALSのライブがほんの少し派手＆豪華に！

THE PRIMALSのメンバーとしてこれからやってみたいことを教えてください。

ドラムを叩いてみたい……と言ったら怒られるのかな（笑）。だったら、訪れたことのない国や地域で、数多くの光の戦士の前で演奏してみたい、にしとこ！ うん。

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