ポルノグラフィティ|岡野昭仁と新藤晴一がニューアルバム「暁」に注ぎ込んだ等身大の音楽

誰かに一縷の光を灯せたら

──アルバムに“夜明け”を意味する「暁」というタイトルを掲げたのはどうしてだったんでしょうか?

新藤 時代的にも希望のあるタイトルがいいよねっていう話になって。例えば「幸あれ」とかみたいなアイデアも出たんですよ。まあそれでも別にいいんだけど、「光あれ」(岡野昭仁のソロプロジェクト第1弾楽曲)に「幸あれ」だと、もうゼウスみたいでしょ(笑)。ゴッドなのか、みたいな。

岡野 あはははは。

新藤 まあそれは冗談ですけど、ほかにも明るくて希望のある言葉がないかなとみんなで探した結果、「暁」という言葉に行き着きました。で、アルバムタイトルが決まったあと、そこからのイメージで「暁」という楽曲の歌詞を書いた流れです。

岡野 アルバム全体のトーンを見ると、今回はそんなに明るくもないんですよ。それを覆すために希望のあるタイトルにしたかっていうと別にそういうわけでもなくて。「BUTTERFLY EFFECT」からの約5年で世の中の様相はホントに変わってしまったし、その影響を僕らも絶対に受けているわけで。その結果として、バカ明るい曲はなかなか生まれにくかったりもした。どこか靄がかかったようなトーンにならざるを得ないというかね。まあでもそれが今のリアルではあるので、そこは素直に表現しようと。ただ、それでもなお音楽や歌というものには一縷の光を落とすような力があるんだということは証明したかったので、そんな思いを「暁」という言葉に込めさせてもらいました。もちろん僕らには無力な部分もたくさんありますけど、このアルバムを出すことで誰かの心に一縷の光が灯されたらいいなという強い思いはありますね。

──では、今のポルノグラフィティにとって本作はどんな位置付けの、どんな意味を持つ作品になったと思いますか?

岡野 難しいな……。プロモーション的には「23年目にして新たな名刺となる作品ができました!」とか言いたいんですけどね(笑)。いや、もちろんそういう思いもあるにはあるんだけど……どう言ったらいいかな。まあでも、僕としてはすごく自然体で作れたアルバムになったのがうれしいことなんですよね。音楽シーンという大きな場所に自分たちの楽曲を届けよう、みたいな気負いがなくなり、応援してくれる方々のもとに届けることだけを素直に考えながら作れたアルバムだったので。それはきっと今後につながる新たなきっかけにも、きっとなると思っています。

新藤晴一(G)

新藤 率直に答えると……僕はまだよくわからないっていう感じかな。どういう位置付けになるか、どんな意味を持つのか、どっちもまだわからない。

──なるほど。確かにそこはこのアルバムが世に出て、ある程度時間が経過することで見えてくるものなのかもしれないですしね。じゃあ、言葉の魔術師である晴一さんに聞きます。このアルバムにキャッチコピーをつけるとしたら?

岡野 ふふふ。大変な振りだな(笑)。

新藤 大喜利だ(笑)。……“発露”じゃないですかね。自然ににじみ出てくる、こぼれ出てくるみたいなこと。やっぱりね、活動を続けていると発露みたいなことは当然あるものなんですよ。デビュー当時はスケジュールに合わせてがんばって何かを生み出そうとしていたこともありましたけど、今は自然ににじみ出てくる状態というか。続けているんだからいろいろ出ちゃうよねっていう。その5年分の“発露”をまとめたアルバムだと思います。

岡野 確かによく考えたらゆっくりさせてもらったよね(笑)。5年もアルバムを出さなかったわけだから。ずっと待っていてくれた感謝をまず皆さんに伝えなきゃいけませんね。ただ、そうやって5年の時間を経たからこそ今の自然体な自分らになれたところもあるし、さまざまな“発露”もあったということなんだと思います。

ポルノグラフィティが続いている理由

──アルバムの初回生産限定盤には、「STUDIO SESSION~稀・ポルノグラフィティ~」を収録したBlu-ray/DVDが同梱されています。そこでは、これまでライブで演奏されてこなかった楽曲がスタジオセッションという形で収められているそうですね。

岡野 ライブでやっていない曲が20曲ぐらいあったので、そこから4曲を今の自分たちとして表現してみようと。その曲を作った当時の自分の技術不足を改めて感じる瞬間もありましたけど(笑)、この試みはかなり面白かったですね。

新藤 選曲したのは昔の曲が多かったので、アレンジも基本的にすごくシンプルなんですよ。だからこそ今の自分たちの技量や、サポートしてくれたバンドメンバーたちのテクニックも如実に感じることができて。それによって、その曲自体のよさや味わいを改めて感じることができたし、新たな刺激になった部分もありました。

──本作を引っさげて9月からは全国25カ所29公演にわたるツアー「18thライヴサーキット“暁”」もスタートします。どんなライブにしようと思っていますか?

岡野 正直、今のコロナ禍の状況を考えると、どうなるかまだまったくわからない感じがありますよね。自分たちとして大きな手応えを感じているアルバムの曲を中心にしたツアーになることは間違いないんだけど、状況によって今考えている内容から変えていかなきゃいけないところも出てくるとは思っていて。

ポルノグラフィティ

新藤 エンタテインメントにまつわるすべてがそうだけど、開催できることが当たり前という時代ではもはやないので、ライブができる喜びを1本1本噛み締めながら回るツアーになると思います。大事なのは全員が元気に回ることかな。ライブを楽しむとかね、そういう部分はみんなが健康であってこそのものだから。

岡野 そうだね。さっきも言いましたけど、新しいアルバムが出るまでの5年間を待ってくれていた人たちへの感謝もしっかり届けたいし。いろいろ考えながら、いいツアーにしたいと思います。

──今年9月8日でポルノはメジャーデビュー23周年を迎えます。デビュー25周年、結成30周年が視界に入って来た状況とも言えますが、そのあたりはどう感じていますか?

岡野 うちらっていつを結成って言うん?

新藤 ポルノグラフィティって名前を付けたときじゃない? 20歳くらいのときだと思うけど。

岡野 そこからもうすぐ30年か。恐ろしい話だな(笑)。デビュー25周年もそうですけど、長いことやってきたなっていうくらいで、ほかには何も言うことはないかな。そこを見据えていないという意味ではなく、あんまり意識していないというか。

──ここまで長く活動を続けて来られた理由ってどこにあると思います?

新藤 ひとえにファンの方々、僕らのことを待ってくれている方々がいてくれるからだと思いますよ。それ以外にはないんじゃないかな。我々が1回ね、事務所やレーベルとの契約が切れて、またライブハウスから上り詰めたっていうのならば、辞めなかった理由を話せるんだと思うけど、ありがたいことにずっと続けさせてもらってますからね。で、続けさせてもらえているのはもう、待ってくれている人が存在しているからに尽きると思います。もちろん僕らの思いもそこにはあるけど、ここまで長く続けてくると外的要因のほうが大きくなっているような気がしますね。

ライブ情報

ポルノグラフィティ「18thライヴサーキット“暁”」
  • 2022年9月22日(木)神奈川県 よこすか芸術劇場
  • 2022年9月27日(火)群馬県 高崎芸術劇場 大劇場
  • 2022年10月1日(土)和歌山県 和歌山県民文化会館
  • 2022年10月3日(月)静岡県 富士市文化会館 ロゼシアター 大ホール
  • 2022年10月10日(月・祝)福井県 フェニックス・プラザ
  • 2022年10月17日(月)大阪府 オリックス劇場
  • 2022年10月18日(火)大阪府 オリックス劇場
  • 2022年10月23日(日)広島県 広島文化学園HBGホール
  • 2022年10月25日(火)愛媛県 松山市民会館
  • 2022年10月28日(金)大分県 iichikoグランシアタ
  • 2022年11月4日(金)新潟県 新潟県民会館
  • 2022年11月7日(月)京都府 ロームシアター京都
  • 2022年11月9日(水)兵庫県 神戸国際会館 こくさいホール
  • 2022年11月16日(水)北海道 函館市民会館 大ホール
  • 2022年11月18日(金)北海道 札幌文化芸術劇場hitaru
  • 2022年11月22日(火)岡山県 倉敷市民会館
  • 2022年11月24日(木)三重県 三重県総合文化センター
  • 2022年11月28日(月)熊本県 熊本城ホール メインホール
  • 2022年11月30日(水)福岡県 福岡サンパレス ホテル&ホール
  • 2022年12月5日(月)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
  • 2022年12月6日(火)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
  • 2022年12月9日(金)高知県 高知県立県民文化ホール
  • 2022年12月16日(金)千葉県 森のホール21
  • 2022年12月19日(月)宮城県 仙台サンプラザホール
  • 2022年12月21日(水)福島県 會津風雅堂
  • 2022年12月26日(月)東京都 TOKYO DOME CITY HALL
  • 2022年12月27日(火)東京都 TOKYO DOME CITY HALL
  • 2023年1月23日(月)東京都 日本武道館
  • 2023年1月24日(火)東京都 日本武道館
ポルノグラフィティ
ポルノグラフィティ
岡野昭仁(Vo)と新藤晴一(G)からなるロックバンド。1999年9月にシングル「アポロ」でメジャーデビューし、2000年7月のシングル「ミュージック・アワー」がポカリスエットCMソングに採用され大ヒットを記録する。続く「サウダージ」は初のミリオンセールスとなり、一躍トップアーティストの仲間入りを果たす。その後も「アゲハ蝶」「メリッサ」「ハネウマライダー」などヒット曲を連発する。2014年9月には結成15周年の集大成となるスタジアムライブ「神戸・横浜ロマンスポルノ'14 ~惑ワ不ノ森~」を開催。さらに2016年にも横浜スタジアムライブを行い2日間で6万人を動員するなど精力的にライブやリリースを重ねる中、2017年には初の台湾ワンマンライブを行った。2019年9月にデビュー20周年を記念した単独公演「20th Anniversary Special LIVE “NIPPONロマンスポルノ'19~神VS神~”」を開催し成功を収める。2021年9月に約2年ぶりとなるシングル「テーマソング」をリリースし、同月より全国ツアー「17thライヴサーキット“続・ポルノグラフィティ”」を開催した。2022年8月に5年ぶりとなるオリジナルアルバム「暁」を発表。9月よりライブツアー「18thライヴサーキット“暁”」を行う。

2022年8月10日更新