人間同士はわかり合えないから……
──歌詞はどんなイメージで書いていったんでしょう? ドラマを観ていた人たちの間では、内容との密接なリンク具合が大きな話題になっていましたが。
新藤 ドラマのように不倫を描いた歌詞ではないんですけどね(笑)。当てはめてみれば当てはまるっていう。僕の中でも大きなテーマの1つである「人間同士は果たしてわかりあうことができるのか?」が歌詞のモチーフです。基本的にはわかりあえないものだと思うから、だったらどう触れ合っていくべきなのか。
──同じものを見ていたとしても、実際お互いにどう見えているかはわからない。人間は自分が見たいものを、見たいように変化させて見るものだから。そんな真理が「カメレオン・レンズ」というタイトルにかかっていますよね。
新藤 そう。だから本当の意味でわかりあうことはできないんだよっていう。ただ、ドラマでは不倫した夫婦の再生がテーマになっていると聞いていたので、一度は違うものを見た2人が必死に同じものを見ようとしている様をイメージしながら書いていったところはありました。
岡野 すごく新藤らしい歌詞なんですけど、制作の終盤でサビの最後のフレーズがちょっと変わったりもしたんですよ。
新藤 あー、そうだ。1サビと3サビの最後を英語から日本語にしましたね。プロデューサーに「英語が多すぎる」って言われたからなんだけど(笑)。
岡野 それによって曲の世界がまたぶ厚くなったような気がしたんですよね。最後に英語で終わるカッコよさもあったけど、「双子の月」とか「月蝕の夜」とか、よりイメージしやすい日本語のワードに変わったことで聴き手への伝わりやすさは確実に強まったと思うから。
Skoop On Somebodyが添えた「Hotel California」的コーラス
──そんな歌詞を昭仁さんはどうボーカルで表現しようと思いましたか?
岡野 ドラマの題材もそうですし、楽曲としてもマイナー調で陰鬱とした世界観ではあると思うんですよ。でも僕はその中に純粋なものと言うか、どこか瑞々しさを感じたところがあって。ドロドロした関係であったとしても、相手を求める愛情には純な強さがあるじゃないですか。なので、そういった対照的なイメージをAメロ、Bメロ、サビそれぞれで声の違いとして表現できたらいいなっていう思いはありましたね。今回、コーラスでSkoop On Somebodyのお二人に参加してもらえたことも含め、人の心を打つようなさまざまな要素を曲に込めることができたような気がしています。
──そう、この曲のコーラスにはSkoop On SomebodyのTAKEさんとKO-ICHIROさんが参加されているんですよね。
新藤 さっき話した転調のアイデアが出る前、曲が8割方できた段階でBメロのコーラスを考えていたんですけど、そこで出てきたのがThe Eaglesの「Hotel California」だったんですよ。シンセを使った今っぽいサウンドに対して、ちょっと懐かしい「Hotel California」的なコーラスを融合させたらきっと面白くなるだろうと。で、そのコーラスを再現するにはいつものように1人でハモるだけじゃダメだろうってことで、誰かにお願いしたいなという話になったんです。
──そこで事務所の先輩でもあるSkoop On Somebodyのお二人を迎えようと。
新藤 そう。最初は「やってくれたらいいよね」くらいなノリだったんですけど、実際にブッキングしてもらえて。「うわ、ホントに来てくれたんだ!」みたいな(笑)。結果、すごくぜいたくな仕上がりになりましたよね。
岡野 現場は楽しく和気あいあいとした雰囲気でしたけど、いざ歌ってもらうとね、「TAKEさん、うまいわあ!」とか「この微妙なラインをKO-ICHIROさんは縫って歌えるんだ!」みたいな驚きもあり。
新藤 当初はBメロだけコーラスをお願いする予定だったんですよ。でも、お二人とも上手だからあっと言う間にレコーディングが終わってしまって。急遽TAKEさんにフェイクを入れてもらうことにしたんです。
岡野 最後のフェイクなんかは、「日本でああいった表現ができるボーカリストはTAKEさん以外にはいないよな!」って思わせてくれるほどに強烈なインパクトがあって。お二人のコーラスが入ったことでもまた曲が育っていく過程を感じることができました。
新藤 うん。いいエッセンスになったと思います。
──Skoop On Somebodyのお二人のコーラスは、昭仁さんの歌入れがすべて終わってから入れたものなんですか?
新藤 時間的な問題で、昭仁の歌入れの途中でコーラス録りをしたんですよ。だからTAKEさんが入れてくれたコーラスに引っ張られて、昭仁の英語の発音がそれっぽくなったところもあって。
岡野 あー、そうだね。TAKEさんは英語の発音が上手なんで、それを参考にできたのは正直、助かりました(笑)。
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音のよさが際立つカップリング曲「前夜」
- ポルノグラフィティ「カメレオン・レンズ」
- 2018年3月21日発売 / SME Records
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初回限定盤 [CD+DVD]
1900円 / SECL-2271~2 -
通常盤 [CD]
1300円 / SECL-2273
- CD収録曲
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- カメレオン・レンズ
- 前夜
- カゲボウシ
(Live at NHKホール・2018/01/31)
- 初回限定盤DVD収録内容
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- カメレオン・レンズ Video Clip
- Working men blues Video Clip
ライブ情報
- ポルノグラフィティ
「しまなみロマンスポルノ'18」 - 2018年9月8日(土)広島県 広島県立びんご運動公園
- 2018年9月9日(日)広島県 広島県立びんご運動公園
- ポルノグラフィティ
- 岡野昭仁(Vo)と新藤晴一(G)からなるロックバンド。1999年9月にシングル「アポロ」でメジャーデビューし、2000年7月のシングル「ミュージック・アワー」がポカリスエットCMソングに採用され大ヒットを記録する。続く「サウダージ」は初のミリオンセールスとなり、一躍トップアーティストの仲間入りを果たす。その後も「アゲハ蝶」「メリッサ」「ハネウマライダー」などヒット曲を連発する。2014年9月には結成15周年の集大成となるスタジアムライブ「神戸・横浜ロマンスポルノ'14 ~惑ワ不ノ森~」を開催し、さらに2016年にも横浜スタジアムライブを行い2日間で6万人を動員するなど精力的にライブやリリースを重ねる中、2017年には初の台湾ワンマンLIVEを開催。夏には「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」を始めとするフェスや野外ライブイベントに参加した。同年10月に通算11枚目のオリジナルアルバム「BUTTERFLY EFFECT」をリリースし、11月より「15thライヴサーキット“BUTTERFLY EFFECT”」を開催。2018年3月にシングル「カメレオン・レンズ」を発表した。9月には地元の広島・広島県立びんご運動公園にて野外ライブ「しまなみロマンスポルノ'18」を行う。