ポルノグラフィティのニューシングル「カメレオン・レンズ」が3月21日にリリースされた。
先日放送が終了したドラマ「ホリデイラブ」の主題歌として書き下ろされた表題曲は、ドラマの世界観に寄り添ったシリアスな詞世界と、ポルノグラフィティのパブリックイメージを覆すマイナー調のダンサブルなサウンドによって大きな反響を呼んだ1曲だ。
今回、音楽ナタリーではシングルリリース直後のタイミングで岡野昭仁(Vo)と新藤晴一(G)にインタビューを実施。本作の制作エピソードと、9月8、9日に広島県・広島県立びんご運動公園で開催される野外公演「しまなみロマンスポルノ'18」への意気込みをじっくりと聞いた。
取材・文 / もりひでゆき
「ポルノとはこうあるべき」を取っ払えた
──先日まで放送されていたドラマ「ホリデイラブ」の主題歌として書き下ろされた新曲「カメレオン・レンズ」は、ポルノのクリエイティビティの幅広さを提示するナンバーになりましたね。
新藤晴一(G) こういうタイプの曲をシングルにできたのはすごくよかったと思いますね。今は時代的にタイアップが付いていないとシングルが出しにくい状況だし、タイアップとなればいわゆるポルノらしい曲……ハイテンポであったり、ラテン色であったりする曲を求められることが多いんですよ。もちろんそこが自分らの強みだという自負はあるので、そういう依頼をもらえばいかんなく発揮するわけなんだけど、逆に言うとそれ以外のタイプの曲がなかなかやりにくい状況でもあるわけで。例えば、バラードをシングルにするとかは難しかったりするんですよね。
──それが今回はタイアップ楽曲でありながらも、パブリックイメージとは違った側面を打ち出すことができたと。
新藤 そう。そのことはポルノのストーリーの中でのいいアクセントになると思うんです。この曲があるからこそ次の何かにつながる可能性もあると思うので。
岡野昭仁(Vo) 今回はドラマサイドの方々がすごく愛を持って僕らに接してくれたと言うか。「ポルノグラフィティとしての振り幅の広さを出してほしいです」みたいなことを言ってくださったので、僕らも自由に発想することができたんですよ。これまでの活動を振り返ると、自分たちの中にも「ポルノとはこうあるべき」というような凝り固まった考え方が生まれていた気もするから、それを今回は取っ払えたと言うかね。新鮮な作業でしたよ。
新藤 とは言え、こういった打ち込みの四つ打ち的な楽曲は今までもやってましたから。ポルノのことを理解してくれてる人たちにとってはそれほど違和感なく聴いてもらえるだろうなって感覚もあるんですけどね。
──今回、ドラマサイドからは具体的にどんなオーダーがあったんですか?
新藤 タイアップの打ち合わせをする場合、「ミュージック・アワー」や「愛が呼ぶほうへ」「ハネウマライダー」「サウダージ」みたいな曲を引き合いに出されることが多いんだけど、今回は具体的に「『渦』みたいな曲を」って言われて。
──それは意外なところを求められた感じですね。
新藤 うん。「渦」は自分らの中でも特殊な曲ではありますからね。そう言われたからといってまったく同じような曲を作るつもりはもちろんなかったけど、ポルノの“1つ目の層”じゃない部分を求められたことは純粋にうれしかったです。
人の耳を捉えるものを意識して変化していったメロディ
──作詞作曲は晴一さん。そのオーダーをもとにどう作っていったんでしょう?
新藤 僕は職業作家の方ほどのスキルがないので、そのときに好きな音楽を聴きながら、とにかくギターを弾いて、鼻歌を歌って、そこで出てきたものを取捨選択していく感じなんですよ。「こういう曲を作るぞ」ってイメージ先行で作ることはあまりなくて。今回も同様の感じでしたね。ただ、最初の段階からレゲエビートを使いたいっていうようなことは考えてました。
──そのビートのアイデアはサウンドに生かされていますね。
新藤 そうですね。アイデアをまとめる作業は、この曲のアレンジをやってくれてる篤志と一緒に僕のプライベートスタジオでやるんですけど、そこである程度、形になったものの感触がすごくよかったんですよ。なので、そのイメージは最終的なアレンジにも踏襲されています。ただ、メロディに関してはシンセメロのままだとそこにどのくらいポテンシャルがあるのかがよくわからなくて。だから昭仁に仮歌を入れてもらうわけですけど、今回はトータル5回くらいは歌ってもらったんじゃないかな。
岡野 うん。どれがホントのメロディなのかわからなくなるくらい何度も歌いました(笑)。楽曲の世界観は最初の段階から一貫していたけど、メロディは仮歌を入れるごとにシャープに研ぎ澄まされていった印象があって。そういう意味では制作の過程でどんどん育っていった曲だと思います。
新藤 最初の段階のものと比べると、Aメロの部分しか残ってないですから。
──メロのリライトを繰り返すことで、かなり大きく変わっていったんですね。
新藤 人の耳を捉えるようなキャッチーさを求めてメロディを変えていったことで、最終的に今の形へたどり着いた感じでした。ただ、今のメロディラインが出てきたときに、Aメロとサビの音域が違いすぎるような印象になってしまって。そこで出たのが、サビでガラッと転調するというアイデアだったんですよ。
──確かにあの転調は大きなフックになっています。
新藤 サビ前に「Non Non~」っていうコーラスが入ってるんですけど、サビで転調することでその部分の聴こえ方が全然変わったんですよ。それがいわゆるキャッチーさと言うか、耳を捉えるいい要素になったとは思いますね。
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人間同士はわかり合えないから……
- ポルノグラフィティ「カメレオン・レンズ」
- 2018年3月21日発売 / SME Records
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初回限定盤 [CD+DVD]
1900円 / SECL-2271~2 -
通常盤 [CD]
1300円 / SECL-2273
- CD収録曲
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- カメレオン・レンズ
- 前夜
- カゲボウシ
(Live at NHKホール・2018/01/31)
- 初回限定盤DVD収録内容
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- カメレオン・レンズ Video Clip
- Working men blues Video Clip
ライブ情報
- ポルノグラフィティ
「しまなみロマンスポルノ'18」 - 2018年9月8日(土)広島県 広島県立びんご運動公園
- 2018年9月9日(日)広島県 広島県立びんご運動公園
- ポルノグラフィティ
- 岡野昭仁(Vo)と新藤晴一(G)からなるロックバンド。1999年9月にシングル「アポロ」でメジャーデビューし、2000年7月のシングル「ミュージック・アワー」がポカリスエットCMソングに採用され大ヒットを記録する。続く「サウダージ」は初のミリオンセールスとなり、一躍トップアーティストの仲間入りを果たす。その後も「アゲハ蝶」「メリッサ」「ハネウマライダー」などヒット曲を連発する。2014年9月には結成15周年の集大成となるスタジアムライブ「神戸・横浜ロマンスポルノ'14 ~惑ワ不ノ森~」を開催し、さらに2016年にも横浜スタジアムライブを行い2日間で6万人を動員するなど精力的にライブやリリースを重ねる中、2017年には初の台湾ワンマンLIVEを開催。夏には「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」を始めとするフェスや野外ライブイベントに参加した。同年10月に通算11枚目のオリジナルアルバム「BUTTERFLY EFFECT」をリリースし、11月より「15thライヴサーキット“BUTTERFLY EFFECT”」を開催。2018年3月にシングル「カメレオン・レンズ」を発表した。9月には地元の広島・広島県立びんご運動公園にて野外ライブ「しまなみロマンスポルノ'18」を行う。