ポルカドットスティングレイ全員インタビュー|踊れるアルバム「逆鱗」完成 (2/2)

遅れてやってきた下積み

──メンバーそれぞれに役割があるという話ですが、ウエムラさんはライブのセットリストの調整をしているんですか?

ウエムラ 基本的には雫さんが決めてるんですけど、「ここはどっちがいいかな?」と意見を求められることがあって。

ウエムラユウキ(B)

ウエムラユウキ(B)

 提案が欲しいんですよね。「こういうライブにしたい」というイメージはあるんだけど、細かいところまで決めきれなくて。例えば楽器の持ち替えとか、あまり考えてないんですよ。

エジマ ユウさんはバンドというものに対する解像度や、その文化に対する愛が一番強いんですよ。

ウエムラ そうかも。先輩バンドとの対バンツアーを準備していたときも、雫さんとカフェでミーティングして。

 私自身はお客さんとしてライブに行った経験があまりなくて、バンドの文化みたいなものがよくわかってないんですよ。

──ポルカドットスティングレイ自体、ライブハウスで切磋琢磨してきたバンドではないですからね。

 そうなんです。

ウエムラ まったくないわけではないけど、そういう時期は短いですね。

 ライブハウスでがんばってた時期が短いがゆえに、順風満帆みたいなイメージを持たれることもあって。多くのバンドマンがインディーズで経験する下積みみたいなものが、遅れてやってきたのかもしれないですね。みんなで話し合ったり、ぶつかったりして、ちょっとずつ理解し合ってる。その経験を経てからメジャーデビューするのが当たり前だと思うんですけど、我々はそれを今やっているという。

エジマ 打ち上げもやるようになったし。昔は嫌いでしたけど(笑)。

 トガってたからね(笑)。今は「打ち上げって大切だな」と思うようになりました。スタッフの皆さんとコミュニケーションを取ったり。

ウエムラ 今では何か用事がない限り、みんな打ち上げに出てるよね。

──だんだんバンドらしくなってきたのかも。

 そうだと思います。ポルカドットスティングレイは、ライブハウスで自主企画をやる前に武道館とか幕張でワンマンをやってるんですよ。順番がヘンだったし、今になって「そういえば、あれやってなかったよね」という感じで、いろんなことに挑戦し始めてるところですね。

ウエムラ 新人バンドのつもりで。

 そう。マジで新人バンドです。

ポルカドットスティングレイ

ポルカドットスティングレイ

リリース前から話題沸騰

──「逆鱗」にはバンドの変化もアルバムに反映されていますよね。それを象徴しているのが「キラーレコード」だと思っていて。

 神曲ですよね! みんなが好きなポルカドットスティングレイのド真ん中みたいな曲を作りたくて。メロがキャッチーで、踊れて、派手で、少しダークさがあって、そのすべての黄金比を達成できた曲になっていると思うし、めっちゃ自信あります。

──このタイミングで、名刺になるような楽曲が必要だと?

 まさにそういうマインドでしたね。「JO-DEKI」と「アウト」で自分の気持ちだったり、そのときのポルカドットスティングレイについて歌ったわけじゃないですか。自分語りみたいな曲だったんですけど、その分、みんなが好きな曲を作りたい欲が高まってたんじゃないかなと。「この曲好き」とか「こういうポルカが好き」と言ってもらえるほうが、自分語りをするよりも100億倍大切なので。

ウエムラ うん。

 「JO-DEKI」も「アウト」も曲としてはすごくいいんですよ。どっちの曲も気に入ってるんだけど、本当にやりたいことは?と言われたら、「キラーレコード」みたいな曲を作ることなんです。

ミツヤス 本当にすごい曲だと思いますね。ドラム的には「DENKOUSEKKA」「テレキャスター・ストライプ」「JO-DEKI」あたりをうまく混ぜながら構成できたのかなと。

ミツヤスカズマ(Dr)

ミツヤスカズマ(Dr)

 どれも人気の楽曲だね。それぞれのパートも、みんなが好きそうなフレーズを詰め込んでいて。もう10年もやってるから、みんながどんなポルカを好きかわかってますからね。

ウエムラ イントロも最初は指弾きしてたんですけど、雫さんに「もっと派手にして」と言われて。

 派手なスラップとかできる?って。イントロもウチの十八番というか、しっかり尺を取っている分、一発で覚えられるようにしたかったんですよ。

ウエムラ ハルシもフレーズのアイデアをくれたり、みんなのエッセンスが入ってますね。

 ハルシもリフを6個くらい考えてくれました。その中で“選手権”をやって、2つ採用されて。最強のリフだし、音色も派手なんです。

ウエムラ 爆音で音作りしてて、体調悪くなってたよね。

エジマ がんばりました(笑)。

エジマハルシ(G)

エジマハルシ(G)

──確かに“らしさ”が詰まってますけど、新しさもしっかり感じられて。

 うれしいです。歴代の“みんなが好きなポルカ曲”の感じもあるんですけど、それがさらにブラッシュアップされて、新しくなってます。アレンジもサウンドも今までで一番だと思うし、歌詞も“今のポルカドットスティングレイ”を意識してるんですよ。

ミツヤス ライブでもめちゃくちゃ盛り上がってくれてるしね。

 そう! ライブのあと、“ポルカ”とか“雫”だけじゃなくて“キラーレコード”でもエゴサしてるんですけど、「『キラーレコード』が一番よかった」とか「早くリリースしてほしい」という書き込みを見てニチャアと笑いながら「いいね」を押してます。リリースしてない状態でこんなに盛り上がってるんだから、アルバムが出たらもっとすごいことになると思います。めちゃくちゃ楽しみ。

こいつらのびっくりする顔を見てやろう

──アルバムタイトルの「逆鱗」については?

 締め切りギリギリに決めました。最初は「奇ナリ」というタイトルにしようと思ってたんですけど、発表の2日前に「逆鱗」に変えて。いろいろあったよね、「事実は小説より奇なり」だよね……みたいな達観したタイトルではなくて、「全員ぶちのめしてやる! かかってこいよ!」というのがポルカドットスティングレイだなと思って。今のポルカの勢い、調子を取り戻すどころか、さらに超えていってる感じを表現するのは「逆鱗」だなと。急に変えたからロゴを作り直したりして大変でしたけど、トガってるのがポルカですからね。

雫(Vo, G)

雫(Vo, G)

エジマ 僕は落ち着きましたけどね。

 丸くなった?

ミツヤス いびつな丸だけどね(笑)。

 そうかも(笑)。しっかり仕事するし、求められることもやるんだけど、なんだかんだトガってるという。そういうバランスでやらせてもらってます。

──確かにカウンター的なところがあるバンドですよね。

 なんでだろう? 逆張りオタクだからかな。

ウエムラ それはマジでそうかも。

 1つのところに落ち着きたくないんですよね。「ポルカと言えばこういう曲だよね」みたいなことはマジで言われたくなくて。毎回驚かせたいし、「こいつらのびっくりする顔を見てやろう」と思いながら作ってます。同じことをやると「暇だな」と思っちゃう。

ウエムラ だから今回のアルバムにはバラードが入ってないんですよ。

 バラードを聴いてると暇になるから入れてないわけじゃないよ(笑)。今までのアルバムにはバラードも入ってたんですけど、今回は違うかなと。

エジマ 「逆鱗」というタイトルにはふさわしくないからね。

 そう。今回はグイグイくる曲、踊れる曲ばっかりでいきたかったんですよね。

──「逆鱗」は高いテンションのまま、体感的にはあっという間に終わります。

ウエムラ それ、めっちゃいいですね。

 そういうアルバムにしたかったのかも。今まで以上に満足感があるはずだし、何度でも言いますけど、めちゃくちゃ自信があります! あ、そういえばオンラインストア(UNIVERSAL MUSIC STORE、Amazon.co.jp、タワーレコード、楽天ブックス)で販売する限定盤には、メンバーそれぞれがプロデュースした曲を入れたCD「ポルカの実験音源」が付いてるんですよ。Amazon.co.jpはミツヤスが担当していて、バラードが入ってます。

ミツヤス 名曲です。

 いい曲だよね。これからもやりたい曲がいっぱいあるんですよ。

──素晴らしい。「逆鱗」によって、バンドの活動もさらに加速しそうですね。

 そうしたいですね。次の節目は2027年のメジャーデビュー10周年なんですけど、それまでにまとまった作品も出したくて。挑戦したいことはたくさんあるし、タイアップもやりたい。そうやってがんばっていけば大丈夫じゃないかなと思ってます。

ポルカドットスティングレイ

ポルカドットスティングレイ

プロフィール

ポルカドットスティングレイ

福岡出身の4人組ギターロックバンド。2015年に活動を開始し、2017年に1stフルアルバム「全知全能」でメジャーデビュー。結成5周年である2020年1月に、2万枚完全生産限定盤「新世紀」をリリースする。2020年12月に3rdフルアルバム「何者」、2022年9月に4thフルアルバム「踊る様に」を発表。2025年1月に結成10周年を迎え、12月には5thフルアルバム「逆鱗」をリリースした。