音楽ナタリー Power Push - 「Festival M.O.N-美学の勝利-」 門田匡陽×伊藤大地対談

3組の門田バンドが集う理由

門田匡陽がこれまで所属したバンドが集結するイベント「festival M.O.N-美学の勝利-」が9月から10月にかけて、東名阪で開催される。2000年代初頭の下北沢シーンで人気を博し、インディーズのバンドながら当時新宿で営業されていたLIQUIDROOMでのワンマンを成功させ、昨年約10年ぶりの復活を果たしたBURGER NUDS。ファンタスティックな世界観を追求した作品を発表し、オリジナルメンバーとしては約6年半ぶりにライブを行うGood Dog Happy Men。そして2013年に活動を始め、現在「夜しかない街の物語」を描いたコンセプチュアルなプロジェクト「A Place, Dark & Dark」を展開中のPoet-type.M。このイベントには果たしてどんな思いが込められているのだろうか。今回音楽ナタリーでは門田とともに、Good Dog Happy Menのメンバーであり高校の同級生でもある伊藤大地を迎え対談を行った。

取材・文 / 金子厚武 撮影 / 上山陽介

3組のバンドが集まる意義

──まずは「festival M.O.N」の開催を決めた理由について、門田さんから話していただけますか?

左から伊藤大地、門田匡陽。

門田匡陽 この日集まる各バンドのメンバーは売れるとか売れないとかそういったことは置いておいて、とにかく今やりたいことしかできない人たちなんですよ。誰にも合わせたりせず、自分だけの価値観を持ってる。去年BURGER NUDSを再結成したことで、彼らともう1度集まれるなって思って。「BURGER NUDSの3人で会うことはもうない」って、この10年ずっと思い続けてたんですけど。

伊藤大地 バンドでずっと時間をともにすれば、仲が悪くなることなんて誰にでもありますからね。俺らだって殴り合いのけんかをするような人種ではないけど、ギスギスする瞬間はあって「なんだよ、門田」と思ったことはあるし。でもホントに仲が悪かったらこうして戻れないと思うんですよ。おっさんになってきて若い頃を懐かしく思えたから、今回みたいなことがやれるっていうかね。

──BURGER NUDSが解散したのはメンバーの関係性が破綻したことが原因でしたが、10年経ってそれが解消された。それに比べれば、Good Dog Happy Menの復活は決してハードルの高いことではなかった?

門田 そうでしたね。Good Dog Happy Menの4人はずっと仲がよかったので。みんなのスケジュールがどうしても合わなくて活動ができなくなっただけだから。あともう1つ大きいのは、今Poet-type.Mで「A Place, Dark & Dark」っていうプロジェクトをやってるからで。これは「どこかで聞いたことのあるコンセプトだな」って気が付いた人もいると思うんです。つまりGood Dog Happy Menの「the GOLDENBELLCITY」から地続きのことを、今は1人でやっていて。「A Place, Dark & Dark」を理解してもらうためにも、「この物語はGood Dog Happy Menの頃から始まってるんだよ」っていうことをライブで示せたら面白いと思ったんです。

「今が絶対人生の中で一番楽しいときだよな」

──そもそもお2人はBURGER NUDSやGood Dog Happy Menのほかのメンバー同様に、高校の同級生とのことで。卒業後門田さんがBURGER NUDSを組む以前から一緒にバンドをやっていたこともあるとか。

門田 サンチェスターってバンドをやってて、そのときは俺と(内田)武瑠(BURGER NUDS、Good Dog Happy Men、ショピン)がギターボーカルで、大地がドラム、マルジュン(丸山潤 / BURGER NUDS)がキーボードで、もう1人の友達がベースでした。国立のリバプールっていうライブハウスで2回ライブをやったはず。

──そのバンドが解散して、門田さん、武瑠さん、マルジュンさんでBURGER NUDSが結成されると。

伊藤 俺はずっとスタジオミュージシャンになりたくて、その頃はバイトをしながらアマチュアのバンドをいくつか掛け持ちしてました。当時BURGER NUDSは下北沢GARAGEに出演するようになって、ハイラインレコーズにカセットテープを置いたりとか、オシャレな音楽のやり方を取り入れるのが早いなって感じていて。サンチェスターは高校を卒業してもメンバーが一緒に遊んでいたいから、っていう理由で組んだバンドだったんですけど、その後門田たちは本気でBURGER NUDSをやり始めて、当時の下北沢のシーンでどんどんお客さんを増やしていったんです。でもその頃も一緒に遊んでましたけどね。彼らのライブを観に行って、終わったら合流してたし。

──門田さんは当時の下北沢のシーンとは距離があったっていうことをおっしゃってますよね。だからこそほかのバンドではなく、大地さんとつるんでいたと。

門田匡陽

門田 大地はしょっちゅうライブに来てくれて、俺も「打ち上げなんか出なくていいから」って大地の車でいつも一緒に帰ってました。よく朝まで話をしてましたね。その頃のことで印象的なのは、「今が絶対人生の中で一番楽しいときだよな」って2人で言ってたんですよ。まだ俺も大地も自分の地盤がないから、日本の音楽シーンが自分たちをどういう風に捉えているのか分かってなくて、そこに打って出る感覚をすごく楽しんでた覚えがありますね。

伊藤 20代前半なんてある意味自信満々だから、「プロを目指しての活動がうまくいかなかったら」なんてまったく考えてないんですよ。俺らは東京で生まれ育ってるから、地方から出てきてバイトしてますって人たちとも違って、生活する上での不安もなかったし。当時どんどん人気が高まっていく門田たちを見て、一緒に音楽をやってたやつを観に来る人がいっぱいいるってことに対して誇らしい感覚もあったんじゃないかな。

門田 大地はその頃新宿の薬局でバイトをしてて。それで大学の帰りに合流して、ラーメン食べて、タワレコに行って、閉店までずっといて帰るっていうライフスタイルでした。時間だけはとにかくあった。

伊藤 サンチェスターが終わって一緒にやらなくなったからこそ、話せる話がたくさんあったんですよね。別にお互い愚痴を言い合ってたわけじゃないけど、「今自分はこういう感じなんだよね」っていうのを確かめ合う相手だったっていうか。

──BURGER NUDSの3人の関係性が徐々にギクシャクしていった中で、門田さんにとって大地さんの存在はより大きなものになっていたのでは?

門田 正直そうでしたね。そもそもBURGER NUDSはデモテープを作る段階でよく大地に手伝ってもらってたんです。大地はハードディスクレコーダーを持ってて。それは当時すごく画期的なアイテムだったんですよ。特にBURGER NUDSの最後の1年、「symphony」を作ったときは密に関わってもらって、ドラムセットも大地のを借りて録ったんですよね。そういう中で武瑠やマルジュンには話せないことも話していて、「辞めたいんだよね」ってことも打ち明けてたし。

伊藤 解散する前からそういう話は聞いてて、「マジかよ」って思ってましたね。

Festival M.O.N-美学の勝利-

  • 2015年9月26日(土)愛知県 APOLLO BASE
  • 2015年10月3日(土)大阪府 Music Club JANUS
  • 2015年10月24日(土)東京都 LIQUIDROOM

<出演者>
Poet-type.M / BURGER NUDS / Good Dog Happy Men

Poet-type.M ミニアルバム「A Place, Dark & Dark -ダイヤモンドは傷つかない-」 / 2015年7月1日発売 / 1620円 / I WILL MUSIC / PtM-1031
「A Place, Dark & Dark -ダイヤモンドは傷つかない-」
収録曲
  1. バネのいかれたベッドの上で(I Don't Wanna Grow Up)
  2. その自慰が終わったなら(Modern Ghost)
  3. 窮屈、退屈、卑屈(A-halo)
  4. 神の犬(Do Justice To?)
  5. 瞳は野性、星はペット(Nursery Rhymes ep2)
  6. ダイヤモンドは傷つかない(In Memory Of Louis)
Poet-type.M(ポエットタイプエム)

門田匡陽のソロプロジェクト名義。1999年に中学と高校の同級生であった丸山潤(B, Cho)と内田武瑠(Dr, Cho)とともにBURGER NUDSを結成。2003年8月に唯一のアルバム「symphony」をリリースし、2004年6月に東京・新宿LOFTでのライブをもって解散した。同年より内田、韮沢雄希(B)、伊藤大地(Dr, Per)、城所祐一(G)とともにGood Dog Happy Menの活動を開始。3作からなる「the GOLDENBELLCITY」シリーズなど、ファンタスティックな世界観を追求したコンセプトの作品を発表する。2011年にはソロアルバム「Nobody Knows My Name」をリリース。2013年4月1日からはソロ名義を「Poet-type.M」に変更し、現在「夜しかない街の物語」を描くプロジェクト「A Place, Dark & Dark」全4部の制作を行っている。

伊藤大地(イトウダイチ)

1980年東京都生まれ。高校卒業後にドラマーとしての活動を開始し、2000年には星野源(G, Marimba)がリーダーを務めるSAKEROCK、2004年には野村卓史(Key)とともにグッドラックヘイワを結成。Killing FloorやCherry'sにも参加し、現在は細野晴臣、星野源、安藤裕子らのライブサポートメンバーや、カイ・ギョーイ(奥田民生)、ジューイ・ラモーン(岸田繁 / くるり)とともにサンフジンズのメンバー、ケン・シューイとしても演奏を行っている。門田匡陽は高校時代の同級生であり、Good Dog Happy Menのメンバー。BURGER NUDSのレコーディングのほか、Poet-type.Mの演奏メンバーとして活動をともにしてきた。