OWV「Supernova」|1万3000字メンバー全曲解説&クリエイターコメントで深掘り (3/4)

07. EASY

──「EASY」はライブの光景が見えるような爽快なナンバーですね。これまでもOWVのアルバムには「PARTY」「Weekend」といったライブで披露することを想定した楽曲が収録されてきましたが、「EASY」に関しては、洋楽テイストを感じさせるギターロックのアプローチが新鮮で。

本田 その通りですね。

──昨日大阪で行われたツアー「OWV LIVE TOUR 2025 -VERSUS-」ファイナル公演で初披露されましたが、感触としてはいかがでしたか?(※取材は3月上旬に実施)

中川 みんな初めて聴いたのに、楽しんでくれてるなという感じでした。これからもっとライブで披露して、みんなで作り上げていく楽曲なのかなと思います。

浦野 パフォーマンスしている身としても、めちゃくちゃ楽しかったな。初めて披露したとは思えない感覚。

──皆さんでトラックを選んだんですか?

本田  いえ、「EASY」に関してはJoe OgawaさんとMarcello Jonnoさんのコンビにオファーして作っていただきました。「TALK TALK TALK」(2022年3月発売の5thシングル「You」カップリング曲)のようにライブでみんなと盛り上がれる曲を作りたいというイメージで。

──「TALK TALK TALK」はアコースティックギターを軸としたポップで温かい楽曲で、ライブではいつも一体感が生まれますよね。

中川 「EASY」もみんなでハッピーになれるような曲になったらいいなと思っていました。

本田 JoeさんとMarcelloさんは僕らの意見をいろいろと聞いてくださって。「サビに『Hey!』というような、お客さんが一緒に歌えるパートを増やしたいです」と相談したら、すぐに応えてくれました。JoeさんとMarcelloさんには「EASY」と9曲目の「SORENA」の制作をお願いしたんですけど、どちらも一緒に楽曲を作り上げた感覚が強いです。

中川 JoeさんとMarcelloさんもレコーディングのディレクションに入ってくださって。さっき「Supernova」の話のときに本田くんも言ってましたけど、やっぱり曲を作った人がいてくださると、レコーディングのときの解像度が全然違うんです。「こういうふうに歌ってほしい」というイメージが伝わってきて、こちらとしても表現しやすい。OWVとしての気持ちもクリエイターさんの思いも乗せられて、いい仕上がりになったなと思います。

OWV

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08. SQUARE

──ラブバラードの本田さんと浦野さんのデュエット曲に対して、佐野さんと中川さんの楽曲は、中毒性の高いヒップホップチューン「SQUARE」です。2人でラップをやってみたいという構想は前からあったんですか?

佐野 そういう気持ちはけっこう前からありました。

──それはルーツが一緒だから?

中川 そこが一番大きいかな。

佐野 そうだね。

中川 あと、僕らの声質がけっこう違うから、2人でラップをしたらどんなシナジーが生まれるのか気になりました。もしも文哉とデュエット曲をやるなら、絶対にラップが多めに入った曲をやりたかったので、最初は2番の頭にはあんまりラップがなかったんですけど、自分の意見でちょっと増やしてもらいました。

本田 僕らとは全然違う曲になっていて。デュエットの妙ですね。

浦野 すごくカッコいい。

──歌詞には佐野さんと浦野さんならではの遊び心のあるフレーズがたくさん詰まっていますが、Muginoさんと一緒に3人でどういうふうに作っていったんでしょうか?

佐野 まず、僕と勝就がベースになる歌詞を書いて。それをMuginoさんがブラッシュアップしてくれました。でも、けっこうそのまま使われてるよね?

中川 うん。例えば、2番Aメロで文哉が歌ってる「汗ひとつも無駄にしないこのフロウ」とか、このあたりのバースは文哉のエッセンスだよね。

中川勝就

中川勝就

──2番Aメロの「走れば走るほどぶっちぎるゴール 敵無しで俺ら独走 汗ひとつも無駄にしないこのフロウ」は佐野さんの特技のマラソン、「油断大敵ピーカブーKO」は中川さんの特技のボクシング、「I got ドームシールド ダメージは0」は中川さんが好きな「APEX」をイメージしてますか?

佐野 おー!

中川 正解ですね。うれしい。

佐野 ちなみにそのあとの「Haters to the void, woot」の「void」も、「APEX」の「虚空」(周囲からの干渉を受けなくなる戦術アビリティ)から取っています。

中川 「虚空」を英語にすると「void」なので。

佐野 「アンチは虚空に入れちゃうよ」という。

中川 「遊び心を入れたい」というのは、2人の共通意識としてありました。Muginoさんも遊び心を出すのが上手なので、僕と文哉が出した言葉以外のところでも、僕たちのことをユニークな歌詞にしてくれてるんですよ。例えば、「直感的で知覚的なケミストリー」のところとか。

──そのフレーズ、気になっていました。

佐野 “直感的”と“知覚的”は、僕と勝就のMBTIで唯一違うところなんですよ。

──ほかは一緒なんですか?

佐野 そうです。僕が知覚的で、勝就が直感的。MuginoさんにチラッとそのMBTIの話をしたら、こういうフレーズを書いてくれました。このケミストリーが生むパッションがあるんじゃないかっていうことですね。

佐野文哉

佐野文哉

──サビの「凸凹なFriends」というフレーズも、身長差のある凸凹コンビならではの表現ですね。

中川 これは文哉が出したフレーズですね。

佐野 「でこぼこフレンズ」(NHK「おかあさんといっしょ」で放送されていたショートアニメ)を観ていた世代でもあるので、そこからもインスパイアされています。「凸凹なFriends」を増やしたいなあと思っていますね。

中川 えっ!? 「凸凹なFriends」は2人だけじゃなくて? 増やしたいの?

佐野 僕らは「凸凹」で、僕らを支持してくれる仲間たち=ファンの方々を含めて「凸凹なFriends」というイメージかな。

中川 あー、なるほどね。

──歌割りが細かいところもいいなと思いました。ワンフレーズずつ入れ替わって前に出てくるようなスピード感があって。ライブでのパフォーマンスがどうなるのか、期待も膨らみます。

中川 歌割りもMuginoさんと3人で考えたんですけど、ライブをイメージしていたよね。

佐野 うん。ラップ曲なので、どっちかが手持ち無沙汰になってステージに立ってるだけにならないように。ずっと目まぐるしく、まくしたてれるように塩梅を考えました。

中川 早くパフォーマンスしてみたいね。

09. SORENA

──「SORENA」はビッグルーム的なEDMナンバーです。最新ツアー「OWV LIVE TOUR 2025 -VERSUS-」でひと足早く披露されていましたが、フロアの盛り上がりを見ても、すでにライブのキラーチューンになっていますね。

佐野 “EDM最強の時代”と言われていた2010年代のサウンドをイメージしていますね。ひと昔前の“あの頃”みたいな。

本田 僕らはデビュー当時から、“あの頃”みたいな曲をやりたいと思ってたんですよ。

中川 みんなで何も考えずに盛り上がれるような曲が欲しかった。

本田 でも、なかなか作ってもらえる人が見つからなくて、気付けば5年が経っていました。

中川 でも、そんなときにJoe Ogawaさんが現れて。

浦野 聴いた瞬間に「あの頃だ!」って。

本田 めっちゃカッコいいなあと思いましたね。Joeさんは「EASY」も作ってくださったんですけど、制作的には「SORENA」のほうが先だったので、この曲がJoeさんとの出会いでした。

中川 Joeさんは幅広いジャンルの楽曲を作っていらっしゃる方なので、「ルーツはなんなんだろう?」と思ってレコーディングのときに聞いたら、もともとはずっとパンクロックをやっていたらしくて。ますますJoeさんのことがわからなくなりました(笑)。

──作詞クレジットにはJoe Ogawaさん、Marcello JonnoさんとともにOWVの名前が入っています。

本田 歌詞の案をみんなで考えましたね。

浦野 サビの「Dirty party monster!」とかね。

本田 「SORENA」というワードはJoeさんの提案です。フックになる言葉としてそれが出てきたときはすごいなと思いましたね。

中川 日常的な言葉だからこそ、逆になかなか出てこないよね。あとから知ったんですけど、今小学生の間で一番流行ってる言葉は「それな」らしくて。そろそろ小学校から「『SORENA』を踊ってほしい」というオファーがきたりするんじゃないかな?(笑)

佐野 ファン層に新しく小学生を取り込みたいと思っていたので、ちょうどよかったです。

──佐野さんが担当した「SORENA」の振付は、なんといってもサビの「SORENA」というフレーズに合わせて人差し指を下に向けるキャッチーな振付が印象的ですね。

佐野 そこに注目してほしいので、あえてほかにフックになるような動きは入れませんでした。パーティチューンなので、ダンススキルの有無にかかわらず、お客さんもみんなで楽しく踊れるような曲にしたくて。

OWV

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10. LOVE BANDITZ

──アルバムのラストを飾るのは、9thシングル曲「LOVE BANDITZ」です。

本田 この曲はライブで育ちました。もともとカッコいい曲だと思っていたけど、ライブでやるごとにお客さんのボルテージも上がっていって。今ではイントロが流れた瞬間に、「わー!」とみんな盛り上がってくれる曲になりました。

──ダンスブレイクの部分以外、“あえて踊らない”という選択が大きかったですよね。そのぶんブレイクが際立っていて。

本田 「LOVE BANDITZ」はその選択が一番大きかったかもしれないです。

中川 ダンスブレイクに入ったときの歓声が気持ちいいよね。そういうイメージを持って作った曲なので、作戦通りです(笑)。とはいえ、「LOVE BANDITZ」みたいな踊らない曲ばかりだと、そんなふうには盛り上がらないので。僕らの中では“異端児”みたいな曲だと思います。

──このアルバムで作詞作曲に携わってみていかがでしたか? デビュー時から中川さんは「作詞をしたい」、浦野さんは「作曲をやりたい」と言ってましたよね。

中川 プロの作詞家さんはどうやって歌詞を書いてるんだろうなってずっと気になっていたんですよ。Muginoさんの仕事を間近で見て、本当に勉強になりました。

浦野 確かに僕はデビュー当時に「作曲をやりたい」と言っていましたけど、僕とは程遠いものだとも思っていたんです。でも、いざこうやって携わってみると、トラックに「らららー🎶」とメロディを付けていけば、それが曲になる。「楽しい!」の延長線上で曲ができあがることに感動したんですよね。「無理!」とか「作曲は難しくて手が届かない」と思わなくてもいい。楽曲制作に対する考え方が変わりました。Muginoさんが「歌は“しゃべり”にメロディが付いただけ」とおっしゃっていたんですが、本当その通りだなと思いました。

──佐野さんと本田さんは作曲作詞をしてみてどうでしたか?

佐野  愛着が湧きますよね。

──楽曲に対する?

佐野 はい。愛着というか、どう見せるかという表現的な部分なのかな。自分たちの思いと乖離してるフレーズを表現するのは、やっぱり難しいんですよ。わかりやすく言うと、自分が恋愛に対してドライなのに、めっちゃ恋愛に前向きな人の歌詞だったら、感情と乖離してるからパフォーマンスするのが難しい。でも、このアルバムに入っているのは自分たちの思いが完全に落とし込まれた楽曲だから、ありのままの自分でパフォーマンスできる。こうやって取材してもらっていても、ちゃんと根っこの部分から話ができている感覚があります。今作で挑戦した制作スタンスを極めて進んでいけたら、僕らの魅力がリスナーの皆さんにもっと伝わるんじゃないかな。

本田 コライトに参加してみて本当に楽しかったです。作曲の仕方を知って勉強になったし、作詞に関しては言葉遊びがうまくならないといけないなと感じたので、これから学んでいきたいですね。今後も積極的にやっていきたいなと思っています。