OWV|唯一無二の色を紐解く、1stアルバム「CHASER」全曲解説インタビュー

OWV(オウブ)が1stアルバム「CHASER」を10月13日にリリースした。

2019年に行われたオーディション番組「PRODUCE 101 JAPAN」で出会い、昨年4月に結成を発表した本田康祐、中川勝就、浦野秀太、佐野文哉の4人。「誰にも真似することのできない唯一無二のグループとなり、この世界で勝利を掴む」という思いのもと、彼らはダンス、ボーカル、ラップのすべてにおいて高いクオリティのパフォーマンスで観る者を圧倒し、今年の9月にはデビュー1周年を迎えた。アルバムにはこれまで発表されてきた4枚のシングル曲を含む全10曲を収録。OWVの成長の記録やこれからへの強い決意が刻まれた作品となっている。

ナタリーではこれまで2度にわたってOWVのグッズ展開を行ってきたが、音楽ナタリーの特集ページには今回が初登場となる。デモ選びから楽曲の内容まで深く携わり、こだわりを持ってパフォーマンスしているOWVの4人だからこそ、1曲1曲じっくりと話を聞きたいと考え、アルバムの全曲解説を申し込んだ。ぜひ4人の言葉と照らし合わせながら、アルバムを堪能してほしい。また特集の最後にはOWVの作品に携わる振付師と作詞家からのコメントも掲載する。

取材・文 / 中川麻梨花撮影 / NORBERTO RUBEN

01
CHASER

──アルバムには今年の4月に開催された1stワンマンライブで初披露された楽曲も含まれています。早い段階でアルバムを想定しながら曲作りを行って、その中からライブで先行披露していたという認識で合っていますか?

本田康祐 そうです。1stシングル「UBA UBA」から最新シングル「Get Away」までの楽曲に加え、新曲が6曲入っているんですけど、新曲のうち「My flow」「PARTY」「Fifth Season」の3曲は半年ぐらい前から作って、QWV(OWVファンの呼称)のみんなと一緒にライブで育ててきた曲なんですよ。みんなと一緒に歩んできたこれまでの道のりと、今のOWVの姿をすべて体現できるようなアルバムになっていると思います。

──音楽ジャンル的にも、歌っている内容的にも、かなり攻めたアルバムですよね。

本田 はい、攻めましたね!

──1曲目であり、リードトラックの「CHASER」はそういった攻めの姿勢を強く打ち出すような楽曲だなと。OWVの根底にある「誰にも真似することのできない唯一無二のグループとなり、この世界で勝利を掴む」という思いを改めて堂々と宣言するような。

本田 まず、1stアルバムでは「僕たちが歩んでいるのはこういう道です」というのを改めて提示したかったんです。“OWVの色”をこのアルバムで出したいとも思っていたので、「僕たちの音楽ってなんだろう?」ということをメンバーとスタッフさんたちで話し合って。そういう思いのもと、できあがったのがリードトラックの「CHASER」です。リリックは挑発的な感じで、「CHASER」というタイトルの通り、「前にいる人たちを追いかけ、越えて行く」という意思が込められていて。2年目に対する思いも入った、1年目の集大成と言える曲になっています。

中川勝就 インパクトがあって、サウンドも今っぽい感じの曲になっているかなと。この曲自体が僕たちの色そのものというイメージです。

浦野秀太 1曲目にすることを前提にして作った曲なので、イントロの入りのインパクトは大事にしたポイントですね。イントロを聴いただけで、OWVの4人が下のほうから上がってくるような絵が浮かぶ感じになっています。

佐野文哉 僕はデモを聴いたときに、まずどういうダンスになるかなということを考えるんです。この曲をダンスで表現できるかどうか。そういう意味でこの曲は、今の僕たちの意思を表現するにあたってぴったりだったのと、耳に残りやすいドロップが今のトレンドに沿っているなと思って。僕らは世界のトレンドを吸収できるところは吸収して、そのうえで唯一無二の音楽を目指したいと思っているので。

──ジャンルを問わずいいものを柔軟に吸収して、自分たちの音楽を作り上げていくという姿勢はデビュー曲の「UBA UBA」から一貫していますよね。例えば「UBA UBA」のダンスの話のときに佐野さんが「シルエットがきれいに見えるK-POPっぽい感じと、歌詞に寄り添ったJ-POPっぽい感じを混ぜている」とおっしゃっていたのが印象的で(参照:OWV × ナタリー デビューシングル「UBA UBA」発売記念コラボレーション)。

佐野 そうですね。その1つのターニングポイントになったのが、僕は3rdシングルの「Roar」だと思ってるんです。1stシングル曲の「UBA UBA」は、ともかく「ここからやるぞ!」という曲だったような気がして。そのあと2ndシングルの「Ready Set Go」でスタートを切って、「Roar」で僕たちが当初からイメージしていたOWVの本軸を全面に押し出して表現できた。そんな「Roar」のニュアンスを踏襲しつつ、「UBA UBA」にあった下克上のマインドもしっかり込めたものが「CHASER」。僕のイメージはこういう感じです。

中川 相違ないですね。

──ここで明かさないほうがいいのかもしれませんが、この曲は歌詞にいろいろとギミックがあるんですよね? 隠しワードが入っていたり。

浦野 はい。QWVの皆さんに「えっ、入ってる!」って気付いてもらえたらうれしいです。

左から浦野秀太、中川勝就。

本田 いただいた歌詞を見て、こういう攻めの曲に遊び心を少し入れているのがすごくいいなと思いました。バキバキに力を入れながら、裏で面白いことをやるのがOWVっぽい。勝負をしてるけど、どこか余裕を感じるような。今回の僕らの衣装もけっこうパシッとした感じなんですけど、ベルトには柔らかい素材を使ってもらってるんです。

浦野 カマーバンドね。

中川 あれ? 本田くん、衣装のボタン外れてない?

本田 あっ……これもあえてボタンを1個とめないという遊び心ですね!

佐野 こういうふうに歌詞のギミックにも気付いてもらいたいということで(笑)。

──(笑)。ダンスの振り付けはジャスティン・ビーバーやBTSのコレオも手がけるキーオン・マドリッドさんが担当しています。振り付けを誰に頼むかは、メンバーの皆さんで考えてきたんですか?

佐野 そうですね。

浦野 曲を聴いたうえで、この振付師さんが合うんじゃないかって相談させていただいています。

佐野 ダンスって、国によって特徴があるなと感じていて。僕たちの今までの楽曲は、日本、韓国、アメリカの振付師さんにお願いしています。例えば日本の振付師さんの作品は、統一感がありながらも個々を尊重するようなダンスが多い。ファンの皆さんとコミュニケーションが取れるような振り付けが得意な印象もあります。韓国の振付師さんが作るコレオは、全員の動きをそろえて、構成で見せる。一緒に振り付けを楽しむというよりは、踊り手がパフォーマンスを見せて、観る人を引き込むのが特徴だと思っています。アメリカの振付師さんは、その二面のバランスが絶妙というか。バチバチにそろえる振り付けでもなければ、個々で自由に見せつけていいというものでもない。「CHASER」を練習しているとき、そこの塩梅が難しかったです。でも、アメリカの振付師さんの作品で一番大切なのはパッションだと思っています。4人しかいないので、フィジカルとパッションで大所帯のグループに負けない迫力をいかに出して、唯一無二のパフォーマンスに仕上げるかというところを意識しました。

02
UBA UBA

──8月31日に「UBA UBA」のミュージックビデオが公開されてから1周年を迎えたということで、QWVの方々がTwitterでお祝いしているのをトレンドで見ました。

浦野 本当にありがたいですよね。

──QWVの方々にもOWVの始まりの歌として大切にされている曲だと思うのですが、4人にとって「UBA UBA」は改めてどういう曲ですか?

本田 やっぱりデビュー曲というのは、この先何年経っても色褪せないだろうなと思います。思い入れのある特別な曲で、それは間違いなくこの先もずっと変わらない。デビュー曲って将来的に一番成長を感じられる曲になると思うので、何年後かに歌っても味が出てるんじゃないかなって。

──昨年9月の「東京ガールズコレクション」に始まり、これまでで一番多くパフォーマンスしている曲ですよね(参照:OWV「TGC」でデビューシングル収録曲をパフォーマンス、画面越しに熱を届ける)。

浦野 はい。たくさん披露させてもらったなあ。

佐野 8月のライブ(「OWV SUMMER LIVE 2021-WIND-」)でも、歓声は出せないものの、QWVの皆さんのリアクションが「UBA UBA」はやっぱり大きかったです。「東京ガールズコレクション」の頃と比べて、今は歌とダンスに表情での表現が加わっているので、僕らの見せ方も進化してるんじゃないかなと。1年間パフォーマンスをしてきて、OWVに対する個々の感情、思い入れも「UBA UBA」というデビュー曲により強く込められていると思います。

中川 この先、成長した僕たちでもう1回「UBA UBA」をレコーディングしてみたい気持ちもあって。

本田 いいね。いつかアニバーサリーのタイミングでやりたいな。

03
My flow

──「My flow」は4月にライブで披露されたとき、1回聴いただけでキャッチーなサビが強く耳に残りました。

本田 思惑通りです(笑)。

浦野 「My flow」は最初からライブを意識して作らせていただたいた曲なので。コール&レスポンスのようなファンの方と一緒に楽しめる要素と、OWVらしいカッコよさがバチッとハマった曲です。

──キャッチーさはありつつ、「自分の道を進み続ける」という芯の強さを感じるような曲ですよね。その思いを打ちつけるようにラップもとてもパワフルで。

中川 トラック自体はアップテンポで、特にサビはキャッチーでポップな感じなんですけど、リリックには僕たちが伝えたい思いをしっかり乗せたかったんです。

──「そう君とShining」というワードも入っていて、ファンの方々と一緒に進んでいくようなメッセージも感じられました。

左から本田康祐、佐野文哉。

佐野 例えば「PARTY」や「What you waitin' for」(3rdシングル「Roar」カップリング曲)はファンの方と一緒に音楽を楽しむことができる曲で、逆に「Roar」などはパフォーマンスを見せることに特化した曲なんです。でも、「My flow」はそのどちらも両立している、一緒に楽しめてパフォーマンスも見せられるような曲だと思っていて。このアルバムの10曲の中で、野球のポジションで言うとショートのようなイメージです。

──なるほど。「My flow」は8月のライブに向けて行われていた、“ライブで聴きたい曲”のファン投票でも上位でしたね。

佐野 「こういう楽曲があったら盛り上がるよね」とライブをイメージしながら「My flow」を作ったので、皆さんが投票で上位に入れてくださったのはうれしかったです。僕たちとQWVの皆さんのマインドが同じベクトルを向いているなと感じました。

──カッコよさとかわいさを兼ね備えた振り付けも、人気の理由の1つなんじゃないかなと。この曲と、アルバムにも収録されている4thシングル曲「Get Away」のコレオはReiNaさんが担当していますが、直接話す機会もあったんですか?

佐野 はい。一緒にコミュニケーションを取りながら作品を作りましたね。「Get Away」に関してはノリやグルーヴ重視で、QWVのみんなと楽しめるような雰囲気でお願いしますとお伝えしました。

浦野 この曲の振り付けはみんな真似できそうですよね。

佐野 サビのあとの煽りパートがキャッチーなので、コロナ禍じゃなければ、みんなで踊り狂ってもらってもいいくらいです(笑)。