OWVがさらなる進化を遂げた2ndアルバム「JACK POT」を全曲解説、7名のクリエイターのコメントも

OWVが2ndアルバム「JACK POT」を7月19日にリリースした。

アルバムにはシングル曲「You」「Time Jackerz」「Let Go」に加え、これまでライブでのみ聴くことができた楽曲「Here & Now」「Caution」、今年の春に行われたライブツアー「OWV LIVE TOUR 2023 -CASINO-」で初披露された新曲「Gamer」「DARK STAR」「Better Day」など全10曲が収録されている。ジャンルレスな楽曲に挑みながらも、どこか余裕のある雰囲気を感じさせる今のOWVには、ツアータイトル「CASINO」、アルバムタイトル「JACK POT」、そしてリードトラック「Gamer」というカジノ場を軸とした遊び心のあるキーワードがよく似合う。

結成から3年間で大きな進化を遂げているOWVの可能性を掘り下げるべく、音楽ナタリーでは1stアルバム「CHASER」に引き続き、今回も全曲解説インタビューを行った。特集の最後にはアルバムの収録曲に携わる作詞家3名、コレオグラファー4名のコメントも掲載する。

取材・文 / 中川麻梨花撮影 / 梁瀬玉実

全曲解説インタビュー

自分たちの強みを研いでいきたい

──今春に行われた「CASINO」ツアーを観て、パフォーマンスにおいても演出においても、さらなる進化を感じました。「俺たちについてくれば大丈夫だから」というような余裕感すら漂っていて。1stアルバム「CHASER」をリリースしてからの1年半の間に、何かターニングポイントになった出来事があったんでしょうか?(参照:OWVが“カジノ”に興じたツアー終幕!歌、ダンス、ラップ、DJのソロステージでも魅了

浦野秀太 「CASINO」ツアーではみんな新しいことに挑戦して、成長できたよね。文哉はDJもやっていたし。むしろ僕にとっては、この1年半だと「CASINO」ツアーがターニングポイントだったかも。

中川勝就 ターニングポイントに関しては、メンバーそれぞれ感じていることが違うかもしれない。僕としては、去年からフェスに出させてもらう機会が多くなったことが大きいかな。ファンの人ばかりではない外部のイベントに参加させていただくことで、アウェーな場所で自分たちを表現する力が付いたと思っていて。吸収するものが多くて、それが「CASINO」ツアーにつながりました。

佐野文哉 僕にとってのターニングポイントは、OCTPATHが誕生したことですかね。「PRODUCE 101 JAPAN SEASON2」の練習生たちで結成されたOCTPATHは、僕らにとっては初めての直属の後輩なんです。OCTPATHが生まれたことによって、さらに自分たちの色を濃く表現していきたい、もっと道を切り開いていかなきゃいけないと強く思うようになりました。OWVとOCTPATHは真反対の色だと思うので、自分たちの強みを研いでいきたいです。そういう気持ちが芽生えた瞬間でした。

OWV

OWV

──ギアを一段階上に入れたんですね。

佐野 やっぱり負けたくないじゃないですか。いい意味でバチバチの関係性でいたいです。

中川 近しいライバルみたいな感じだよね。シンプルに先輩としてカッコよくいたいです。

本田康祐 フェスに出たり、OCTPATHができたりしたことによって、僕らの目指す道がわかりやすくなったというのは確かです。フェスでOWVのことを知らない人にアプローチしたことで「こういう曲が刺さるんだ。僕らのこういうところが強みなんだ」とわかるようになったし、後輩ができたことで「このキラキラ感はOWVには出せないから、僕らは違う方向にいこう」と客観的に自分たちのことを見られるようになった。そういったことがアルバムの選曲にもつながったのかなと思います。

──1stアルバムは「これからOWVの道を進んでいきます」と自分たちの意思を提示するような作品だったと思うんですが、2ndアルバムはOWVの“表現”を徹底的に突き詰めた作品になっているという印象を受けました。軸にあるものは一貫しつつ、いろんな見せ方を手に入れているなと。

浦野 おお! 伝わってますね。

本田 前回は1stアルバムということもあって“OWVらしさ”を出すことを意識していましたが、2ndアルバムに関してはけっこう自由な感じがあったんですよね。「JACK POT」というテーマ的にも、ギャンブルというか、いろんな曲に挑戦してみました。

佐野 1stアルバムをリリースしたあと、最初に出したシングルが「You」だったんですよ。「You」はそれまでのOWVのイメージとはまた違う楽曲で。初手が意外性のある楽曲だったから、「だったらもういろいろチャレンジしていきたいね」という流れになっていきました。

01. Here & Now

──「Here & Now」は2021年11月に「CHASER」ツアーで初披露された楽曲です。資料によると、そのときにはもう2ndアルバムに収録することを想定していたそうですね。

本田 はい。2ndアルバムの1曲目に入れることも、去年の時点で考えていました。

──もしかして「Here & Now」がオープニングを飾った2022年2月開催のワンマンライブ「OWV ONEMAN LIVE 2022 -and I-」の時点で、すでにアルバムの1曲目にしようと決めていた?(参照:OWVが始まりの場所・中野サンプラザホールでファンと作り上げたワンマンライブ

本田 決めていました。「and I」公演はOWVのスタイルが変化したライブだと僕は思っているんです。「and I」からエンタテインメント性が強くなったというか。ファンの皆さんも、そういうふうに感じるところはあったんじゃないかな。OWVのライブの形が一層進化した公演だったので、その1曲目として歌った「Here & Now」には思い入れがあります。

本田康祐

本田康祐

浦野 「Here & Now」は初披露から2回目にして、もうライブのオープニングを飾ったんだね。

中川 大型ルーキーだった。

本田 この曲と出会ったのは2021年の夏くらいだったかな?

浦野 みんなめっちゃビビッときてたもんな。

本田 デモを聴いて「これ、めっちゃいいな!」って。OWVっぽい曲ではなかったんですけど、「この曲をやらなきゃいけない」とメンバー全員が肌で感じたんです。レコーディングも2021年のうちにやって。

中川 だから、2021年の僕らの声です。

──OWVはデビューしてから一貫して、次のアルバムに入れる新曲をライブで徐々に先行披露していくというスタイルを取っていますよね。

中川 サプライズしたいんですよ。QWV(OWVファンの呼称)が喜んでいる顔や、「知らない曲だ!」と驚く顔を見たくて。単純に「みんなを喜ばせたい」という気持ちでやってます。

浦野 音源がやっと出たときの喜びもあるよね。「ライブで聴いてた曲がやっと音源化される!」みたいな。

──「Here & Now」はそんなQWVと手を取り合い、夢に向かって一緒に進んでいくような、ポップな楽曲に仕上がっています。

中川 QWVと一緒にライブで育てる曲があったらいいなと思っていたんです。実際にライブを重ねていくごとに「Here & Now」の新たな一面が見えたりして、そういう意味でも楽曲が育っていってるなと実感しています。

佐野 僕は“踊りたい人”なので、この曲はダンスがなくてちょっともどかしいんですけど(笑)、ライブで歌っているとQWVのみんなが楽しんでくれているのが伝わってきます。イントロが流れた瞬間に盛り上がってくれているので。

──1stアルバムの1曲目が強い意思と情熱に満ちたリードトラック「CHASER」だったので、オープニングの時点で前作とはまたガラッと異なる印象を受けました。

本田 そうですよね。あと、今回は1曲目にリードトラックの「Gamer」を置きたくなかったという思いもありました。「JACK POT」と銘打ってカジノをテーマにしているアルバムなので、ルーレットでたまたま曲順が決まったような感覚でアルバムを楽しんでもらいたいなって。リードトラックを先頭に置いて打ち出すというよりは、あえて違う曲を1曲目に持っていきました。

02. Gamer

──「Roar」「CHASER」のような重厚かつクールなトラックがOWVの王道スタイルだと思っていたので、スタジアムロックのようなスケールのある楽曲をリードトラックに持ってきたのは驚きました。NHKホールのオープニングでスタンドマイクで高らかに歌っているのを見て、度肝を抜かれたといいますか。

中川 ダンスチューンはこれまでもたくさんやってきたから、もっとOWVとしての見せ方の幅を広げようと考えたときに「バンドサウンドの曲をやってみたい」と漠然と思ったんですよ。そこからデモを集めをして。

──では、初めからバンドサウンド縛りでデモを集めたんですか?

中川 そうです。全部バンドサウンドだけで。その中で、「Gamer」は「この曲にしよう」とみんなの意見が一致した曲でした。この主人公感、疾走感というか……すべての素材のバランスがよかったのかなと思いますね。ほかの曲とのバランスも鑑みて、そのときに欲しかった1曲でした。

──デビューシングルの「UBA UBA」をはじめ、これまでのOWVの楽曲は“下克上”の精神を感じるような曲が多かったと思います。「CHASER」も「前にいる人たちを追いかけ、越えて行く」という思いが込められたナンバーでした。そんな中、「Gamer」では“誰かに負けない”という思いを描くのではなく、「⾃分に負けない I'm a WINNER」と歌っていて、サウンド面以外のそういった視点も新鮮に感じたんですよね。

浦野 確かに“己に勝つ”という曲ですね。

中川 もちろん今でも自分の中では「もっと上がってやる」という気持ちは全然変わってないです。1年前の自分、昨日の自分に勝って、それを積み重ねることが成長につながる。「Gamer」は自分に勝ち続けることで、いつかは“勝者”になれるということを歌った曲だと思っています。自分自身を奮起させる曲として、リスナーの皆さんの中にも馴染んでくれたらうれしいですね。自分に自信をつけたいときに聴いてほしいです。

──OWVは「誰にも真似することのできない唯一無二のグループとなり、この世界で勝利を掴む」という思いを掲げて活動してきましたが、その気持ちの出し方、表現の仕方が広がっているんじゃないかなと、「Gamer」を聴いて改めて感じました。

浦野  “誰にも真似することのできない唯一無二のグループ”のイメージって、デビュー当時と今とで違うと思うんです。デビューから3年経って、その間にいろんなボーイズグループが増えて。一緒にシーンを盛り上げていきたいですけど、ライバルでもある。そんな中で僕たちの表現の幅を広げていかないといけないし、「Gamer」で歌っているように、自分自身を高めてOWVとしてステップアップして、唯一無二の存在にならないといけないなという気持ちがあります。

浦野秀太

浦野秀太

──「Gamer」は「All or nothing 雑音だらけの世界へ今」という本田さんの歌い出しからギアが入っていて、ここでまずグッと引き込まれますね。

浦野 わかります!

本田 ありがとうございます(笑)。でも、ここはレコーディングのときに怖い気持ちもありました。ドラムの「ダダッ!」という音しかないから、そこに負けないように声色を考えないといけなかったんです。ちょっとがなる感じで歌ってみて、最初挑戦したときは怖かったですけど、ライブでやっていくうちに「いいな」とノれるようになってきました。

浦野 僕はサビ頭から歌ってるんですけど、奮い立たされるというか、前のパートを歌っているメンバーたちから思いを託されているような感覚があるんです。「CASINO」ツアーのオープニングでも、本田くんの歌で始まり、Aメロ、Bメロとお客さんもどんどんノってきている感じがあって、そこでのサビなので気合いが入りました。レコーディングのときも、あえてほかのメンバーが歌ってるパートから聴くことで気持ちを高めて、「Against all odds」というところは特に力を込めて歌いましたね。

佐野 僕はDメロの「宙に浮いた」の部分で自分の持ち味のエアリーな声を生かしたり、逆にサビの「Game on baby」は強い感じで歌ったり、そこのコントラストを特に意識しました。自分はダンスで魅せるイメージが強いと思うんですけど、2ndアルバムでは歌での可能性もお見せできるように、表現力の幅を意識してがんばりました。

──佐野さんの中で、この3年間で歌うことに対する向き合い方や意識は変化しましたか?

佐野 昔は歌うことにあまり関心がなくて。

──デビューシングルのインタビューでもおっしゃっていましたよね(参照:OWV × ナタリー デビューシングル「UBA UBA」発売記念コラボレーション)。

佐野 自分の声を聴き慣れていなかったんですよ。自分の耳を通して聞こえる声と、録音した実際の声って違うじゃないですか。「僕、こんな声してるんだ」って、そのギャップに最初は戸惑って。でも、この3年間で自分の声をたくさん聴いてきて、2枚目のアルバムである程度の感覚をつかめた気がします。なので、「Gamer」の「Game on baby」のところもひよらずに踏み込んで、新しい表現にチャレンジできました。

中川 「Gamer」はアルバムの中でもリリックをメッセージとして強く伝えられる曲だなと思っていて。聴いてくださっている皆さんの心に刺さるような曲にしたいなとイメージしながら、気持ちを入れて歌いました。悩んでいる人には特に刺さる曲かなと思うので、そういう人にとって、この曲が一歩踏み出すきっかけになったらうれしいです。

──コレオはs**t kingz のkazukiさんが担当されています。デビューシングル「UBA UBA」以来のタッグですね。

本田 バンドサウンドなので、ライブでQWVと一緒に盛り上がるような振付にしたくて、kazukiさんにお願いしました。

──本田さんと佐野さんはコレオプロジェクト・KF projectとして自分たちでも振付を手がけてますが、コレオを誰にお願いするかはお二人で話し合っているんでしょうか?

本田 そうですね。文哉と話し合って、「kazukiさんにお願いしようかなと思う」という話をこの2人(浦野と中川)にも伝えました。

浦野 それから「いいと思う!」という最終決定のハンコを僕が押して、kazukiさんにお願いさせてもらいました。

本田 最終決定は秀太だったのか。

中川 すごく偉そうな感じで書いておいてください(笑)。

浦野 いやいや、嘘です(笑)。どの振付師さんにお願いしようかという方向性は、本田くんと文哉に決めてもらっています。

佐野 「Time Jackerz」や「Caution」など、このアルバムの中に入っているダンス曲は、僕らのパフォーマンスをフルマックスで見せることを重視した曲が多いんですけど、「Gamer」に関しては歌詞に沿ったような振付もあって、余裕感みたいなものが生まれたなと思っています。ファンの方々の目を見ながらパフォーマンスできる曲ですね。

本田 「Gamer」は新しいOWVを提示してくれる曲だなと思います。今年の夏は、この曲が僕たちをリードしてくれそうですね。