音楽ナタリー Power Push - うたパスPresents おしゃべりキッチン
#5 渡辺家特製!愛情たっぷり弁当
「物語がある道具」を使いたい
──この連載企画ではゲストにお気に入りの調理器具の話をしてもらっているんですが、今回は実際に使っていた曲げわっぱを持ってきていただいたので、この話を聞かせていただこうかなと。
渡辺 まあ器具というか容器ですけどね。僕、料理を極めようとすると和食にたどり着いちゃうんじゃないかなって思ってるんですよ。もちろんフレンチや中華もすごいと思いますよ。ただ弁当という枠で考えると、常温でおいしい料理は和食だろうと。
──そしてその和食に合う入れ物は曲げわっぱだ、ということですか。
渡辺 はい。あとプラスチックだと水分を通さないから汗をかくけど、これは呼吸するから余分な水分を吸いとるし、作ったものが傷みにくいんです。
おみそはん 料理にも優しいし、人にも優しいですよね。お弁当を開けてごはんが水分でふやけてると泣けます(笑)。
渡辺 手作りのお弁当だから手作りのものに入れたいっていうのもありますね。それに、これは一生使えるものなんで。例えば「これ30年前のプラスチックの弁当箱なんだよね」って言っても誰も喜ばないでしょ?
おみそはん ははは(笑)。私は保育園のときに買ってもらった、ストーブに乗せて温められるアルミ製のやつをいまだに持ってます。スヌーピーとセーラームーンの絵が描いてあるんですけど、削れて顔がわかんなくなっちゃってて。お母さんが書いてくれた名前がちょっと残ってたりして。私、ちっちゃいときのものがホントに捨てられないんですよ。お母さんが作ってくれたお包みも、今でも自分の部屋の椅子にかけてありますし。お弁当箱は上京するときに持ってきて今でも使ってるんですけど、保育園のときの胃袋とは違うから今の私にはちょっと小さいんですよね(笑)。
渡辺 そういうのいいよね。ちゃんと物語が語れるから。道具っていうのは、物語があるものを使うようにすれば自然と大事にする気持ちが芽生えるんじゃないかな。
同世代がいい作品を出すのはすごく刺激になる
──あと、この企画では毎回「料理しながら聴く音楽」をゲストに聞いてるんですけど、朝早くにお弁当作りをしながらだと、音楽を聴く余裕はあんまりないかもしれませんね。
渡辺 いや、聴きますよ。ロックステディ的なゆったりとしたレゲエとか、自分で選曲したジャズコンピ(「BRUSHING WORKS INTER PLAY」シリーズ)とか。あとは女性ジャズボーカルを聴きますね。アニタ・オデイの「Rock 'N Roll Blues」みたいな。
- ♪アニタ・オデイ「Rock 'N Roll Blues」
渡辺 音楽を聴いてると、1曲だいたい3分とかで、時間の経過がわかるじゃないですか。お弁当は40分以内に作るのをルールにしてたから、アルバム聴きながら「わー、あと2曲だ!」「この曲が流れたってことはそろそろヤベーぞ」って。
おみそはん なるほど! キッチンタイマー代わりにアルバムを聴いてたんですね。頭いいですねー!
渡辺 朝は弁当を作るための時間をたっぷり作ってたんで、音楽を楽しむ余裕もありました。もちろん二日酔いで具合が悪いときもありましたが、それでも弁当を作るのがすごく楽しかったから、全然苦じゃなかったです。その時間を使って、お茶のこととかコーヒーのこととかいっぱい学んだし、朝ってクリエイティブな時間だと思いますね。
──ちなみに邦楽でよく聴いていたのは何かありますか?
渡辺 EGO-WRAPPIN'の一昨年のアルバムはよく聴きました。ずーっとプレイヤーに置いてありましたね。
- ♪EGO-WRAPPIN'「steal a person's heart」(アルバム)
渡辺 よっちゃん(中納良恵)の最近のソロアルバム(「窓景」)も、弁当作りながらよく聴いてました。やっぱり同世代がいい作品を出すとすごく刺激になりますね。まあEGO-WRAPPIN'はちょっと下の世代なんだけど、例えばスチャダラパーとか電気グルーヴとか、斉藤和義くん、怒髪天みたいな。そういう世代が「まだまだいけるぜ!」っていう作品を作ってるのはすごくうれしい。
おみそはん 勇気付けられる感じですか?
渡辺 そうですね。みんなあきらめてないんですよ。惰性でロックンロールやってるわけではないっていうか。年を取ると昔の曲で食ってるような人ばかりになるものだと思うけど、彼らは新譜を出し続けて、自分と向き合って新しいことにチャレンジしてるので、見ていて刺激になります。あ、あと高橋優くんのアルバムもかなり聴いたなー。
- ♪高橋優「今、そこにある明滅と群生」(アルバム)
──それはけっこう下の世代ですね。
渡辺 うん。でもすごい。若い人たちへのメッセージが込められた歌詞もいいし。すごく好きですね。
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DJみそしるとMCごはん
(ディージェーミソシルトエムシーゴハン)
女子栄養大学の卒業制作を機に誕生した、ラップ、トラックメーク、アートディレクションを1人で手がける女性アーティスト。「おいしいものは人類の奇跡だ!」をモットーに活動し、2013年7月にはインディーズから1stミニアルバム「Mother's Food」を発表した。リリース前後からそのアイデアとクオリティが話題になり、同年に開催された「Twilight Shower」をはじめさまざまなイベントに出演。11月にメジャー第1作目となる「おりおりのおりょうり~X'mas~」をリリースする。2014年3月よりNHK Eテレの料理番組「ごちそんぐDJ」に出演中。また同年7月に「FUJI ROCK FESTIVAL」への出演も果たす。2015年4月に1stフルアルバム「ジャスタジスイ」をリリースした。
渡辺俊美(ワタナベトシミ)
1966年12月6日生まれ、福島県出身のアーティスト。TOKYO No.1 SOUL SETのボーカル&ギタリストであり、ソロユニットTHE ZOOT16でも活動。2010年に、福島県出身の松田晋二(THE BACK HORN)、山口隆(サンボマスター)、箭内道彦(風とロック)とともに猪苗代湖ズを結成。2012年6月に初のソロアルバム「としみはとしみ」をリリースした。2013年12月にTOKYO No.1 SOUL SETのアルバム「try∴angle」を発表。2014年4月に刊行した初の著書「461個の弁当は、親父と息子の男の約束。」がベストセラーとなり、翌2015年にテレビドラマ化された。また、“でんぱ組.inc×ウルトラバトル列伝”名義で2015年に発表されたシングル「超絶ウルトラ☆Happy Days / ギダギダdaズバズバda!!」の表題曲「ギダギダdaズバズバda!!」に作曲で参加。シシド・カフカのミニアルバム「K5(Kの累乗)」では常磐道ズとして「くだらない世の中で」の作詞・作曲・プロデュースを担当した。
2015年9月24日更新