音楽ナタリー PowerPush - 大森靖子
これがノスタルジックJ-POP メジャー1stアルバム「洗脳」
わざと弱い言葉を選ぶ
──ところで、今回はサウンドだけでなく「今までだったらこの言葉は使わなかったんじゃないか」みたいな言葉が端々にある気がするんですが。
そうですね。歌詞は頭の中で審議してるみたいな感じ。ピンポーン!ブブー!みたいな、ああいうイメージでやってるんですけど。
──その言葉が歌詞として合格かどうかということ?
基本的に弱い言葉は全部ダメって思ってやってたんです。この「ノスタルジックJ-pop」も(Aメロの)「ちょっと大事すぎて気持ち悪いの」のところとか、まわりくどいしちょっと弱いんです。でも今までは本質的なことと引っ掛け以外は全部消すみたいなとこあったんだけど、今回はだいぶオッケーにしましたね。ずっとピンポーン!って鳴ってる感じ。
──でも普通のJ-POPには、そういう“弱い”言葉がたくさん入ってるわけですよね。
そう。余白がないとやっぱ聴けないんですよ、日本人って。
──冒頭では“甘さ”という言い方をしましたけど、それはJ-POPには必要な余白なのかもしれないですね。メロディも、Aメロからサビまで全部が強いメロディだと、やっぱり疲れてしまうだろうし。
わざとちょっと弱くするのってけっこう大変なんですけど、でもそっちのほうが気持ちよかったりするんですよ。弾き語りは最初から最後まで全部強くないとみんな寝ちゃうんですけど(笑)。
自信があるのは“速さ”
──そもそも大森さんはなぜ音楽でデビューすることを選んだんでしょうか? 絵を描いたりもしてますよね。
音楽が一番早いと思ったんです。だって音楽で売れちゃえば、あとから演劇もやれるし絵も描けるし。画家とかって超遅いでしょ。私はとっとと売れたいから。
──音楽が一番得意だったということ?
いや、そうでもないです。絵と音楽は一緒くらいでしたね。でも人に見られたいっていう欲求が強いのは音楽で、絵はそこまで見られたくなかったかも。描いて吐き出してスッキリして「わー! カッコいい絵描けた!」「終わり!」みたいな。私、器用なんですよ。なんでもできるんです、ほんとに(笑)。
──たぶん大森さんって自分に自信があると思うんですけど……。
うん、ずっとある(笑)。
──その自信ってどこから来てるんでしょう?
んー、私、教師と公務員の娘だから習い事とかもめちゃくちゃやらされてて、勉強も小学校のときはちょっと先のやつまで全部できてたんですよ。だから逆にちょっと寂しかったし、疎外感もあったんですけど、そのときの感覚が今も続いてて、なんだかわからないけどずっと自信はあるんです(笑)。
──じゃあ今、音楽家として、自分自身で一番自信があるのはどこですか?
勘がいいところ(笑)。あと音感はめっちゃいいです。
──勘っていうのはどういうことですか?
勘? 速さ? 音楽って、何人かと演奏するときとか、自分のアコギと合わせるにしてもそうだけど、その状況が求めてる音をどれだけ瞬間で出せるかじゃないですか。だからその反応が遅い人たちのライブとか観てると、決めてきたことの発表会みたいに見えちゃうんですよね。「まあ確かに上質な発表会だったけど」みたいな気持ちになっちゃう。自分はその速さの部分はできてると思います。ちゃんとその場の状況が求めてる音を探してすぐ出すっていう。
──反射神経ということ?
ですね。反射神経と勘がいい。速いっていうのが一番の自信。
──反射神経は曲を書くときにも生きてきそうですね。その勘を生かして何かを捕まえてくるわけで。
そうですね。うん、この音の次、これ来ちゃダメっしょ、みたいなことですよね。
──だからメロディや譜割りがすごく気持ちいいのかもしれない。
譜割りはね、気持ちよくしたいんですけど、ついクセでいっぱい詰めちゃうんで気を付けてます。弾き語りの曲作るときのクセで詰め込んじゃって息継ぎできない、みたいになるんですよ(笑)。
──普通に乗せてくるとこうなるはず、っていう譜割りをちょっと裏切ってきますよね。
うんうん。「ノスタルジックJ-pop」はそこ特にがんばりました。特にサビで「噂とちょっと違う君が わかってくれるわかってくれる」ってとこ速すぎでしょって思いながら。そのへんはやっぱり勘ですよね。経験じゃない気がする。
幸福の的を狙いたい
──ところで、大森さんは「自信があるし、自分は器用なんです」みたいなことを言いますけど、でもそういう人は歌いながらツイキャスして泣いたりしないと思うんですよ。
あはは(笑)。そうですね。
──その二面性については自分ではどう捉えてるんですか?
なんかエモいときじゃないですか。ブログ書くときとか、ツイキャスするときって。でもそういうときも「この振れ幅がある大森靖子をとりあえず残して見せとこう」って思ってる自分はまだいたりするんですよ。
──感情があふれてわけがわからなくなってるわけではないんですね。
だから一番アウトなやつは出してないと思う。一番アウトなやつはほんとに死んじゃったりする可能性があるやつだから(笑)。そんなときには無理ですね、さすがに。
──そういうエモい状態のときに曲ができるんですか?
いや、そういうときは曲とか作んないです。もう基本的に楽しくて、おなかもいっぱいで、超満たされてて、布団で寝ながらゴロゴロして、Twitterもたまに見てて、っていうときに曲書いてます(笑)。
──じゃあ高まった感情を泣きながら曲にぶつけるみたいなことではないわけですね。
もう大っ嫌いです、そういうの(笑)。なんか悔しいじゃないですか。
──悔しい?
悲しければ悲しいほど快楽が得られる、みたいなのが好きじゃないんです。ほんとに忠実に楽しいものをちゃんと追い求めた人が楽しいものを得られる世の中のほうが好き。悲しいときに「あっ、そうか」ってわかっちゃったりすることもあるんですけど、それを踏まえた上でちゃんと幸福を狙って、幸福の的を落としてる人のほうが好きなんですよね。
──今の大森さんは楽しいものを追い求められていますか?
うん、アルバム作ってるときは本当に楽しかった。今はどんどんやりたいことができていってる感じがめちゃくちゃあるんで、自分的にはいいんじゃないかって思ってます(笑)。
- メジャー1stアルバム「洗脳」2014年12月3日発売 / avex trax
- type■ 洗脳CD+DVD(ピントカライブ) / 5184円 / AVCD-93072/B / Amazon.co.jp
- type★ 洗脳CD+DVD(モリステ特大号) / 4104円 / AVCD-93073/B / Amazon.co.jp
- type▲ 洗脳CD / 3024円 / AVCD-93074 / Amazon.co.jp
CD収録曲(※全タイプ共通)
- 絶対絶望絶好調
- イミテーションガール
- きゅるきゅる
- ノスタルジックJ-POP
- ナナちゃんの再生講座
- 子供じゃないもん17
- 呪いは水色
- ロックンロールパラダイス
- 私は面白い絶対面白いたぶん
- きすみぃきるみぃ
- 焼肉デート
- デートはやめよう
- おまけ♡~スーパーフリーポップ~
ピントカライブDVD(※type■のみ)
- 2014.10.3大森靖子&THEピンクトカレフ「2日間で超楽しい地獄をつくる方法」東京キネマ倶楽部ライブ映像ver.(約60分収録予定)
モリステ特大号DVD(※type★のみ)
- 絶対絶望絶好調(Video Clip)
- ノスタルジックJ-POP(Video Clip)
- スタッフクソキノコによる大森靖子メジャーデビュードキュメンタリー「一生無双モードって言ったじゃん!せいこはつらいよ'14」ver.(約60分収録予定)
※「type■」の初回盤には写真家・佐内正史によるニューヨーク撮り下ろしの80ページのフォトブック付き
大森靖子全国ツアー♥爆裂!ナナちゃんとイくラブラブ洗脳ツアー♥
- ~ノスタルジック 松山 キティホール~
2015年3月8日(日)愛媛県 松山キティホール - ~ノスタルジック 広島 ヲルガン座~
2015年3月14日(土)広島県 音楽喫茶 ヲルガン座 - ~ノスタルジック 岡山cafe moyau~
2015年3月15日(日)岡山県 cafe moyau - ~ノスタルジック 名古屋 CLUB QUATTRO~
2015年3月27日(金)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO - ~ノスタルジック 鳥取 三朝 ニューラッキー~
2015年3月29日(日)鳥取県 三朝ニューラッキー - ~ノスタルジック 札幌 コロニー~
2015年4月3日(金)北海道 COLONY - ~ノスタルジック 仙台 enn 2nd~
2015年4月4日(土)宮城県 enn 2nd - ~ノスタルジック 秋田 ゴマシオキッチン~
2015年4月5日(日)秋田県 gomashio-kitchen - ~ノスタルジック鹿児島 大津倉庫~
2015年4月10日(金)鹿児島県 大津倉庫 - ~ノスタルジック 福岡 ROOMS~
2015年4月11日(土)福岡県 ROOMS - ~ノスタルジック 大分 別府 永久劇場~
2015年4月12日(日)大分県 永久別府劇場 - ~ノスタルジック 大阪 梅田 AKASO~
2015年4月16日(木)大阪府 umeda AKASO - ~ノスタルジック 中野サンプラザ~
2015年4月26日(日)東京都 中野サンプラザホール
大森靖子(オオモリセイコ)
愛媛県生まれのシンガーソングライター。弾き語りスタイルでの激情的な歌が耳の早い音楽ファンの間で話題を集め、2012年4月にミニアルバム「PINK」をリリース。2013年3月に1stフルアルバム「魔法が使えないなら死にたい」を発表し、同年5月に東京・渋谷CLUB QUATTROでワンマンライブを実施。レーベルや事務所に所属しないままチケットをソールドアウトさせ大成功に収める。その後12月には直枝政広(カーネーション)プロデュースによる2ndフルアルバム「絶対少女」をリリース。レコ発ツアーファイナル公演を2014年3月、東京・LIQUIDROOMにて開催する。同年9月にはシングル「きゅるきゅる」でエイベックスからメジャーデビューし、12月にメジャー1stアルバム「洗脳」を発表。自身がボーカルを務めるロックバンド、THEピンクトカレフでの活動も継続中。