音楽ナタリー PowerPush - 大森靖子
これがノスタルジックJ-POP メジャー1stアルバム「洗脳」
空っぽだから曲を書く
──大森さんは音楽家として非凡な才能を持っていると思うんですが、そもそも音楽以前に言いたいことや表現欲があふれているタイプの人ですよね。それこそ峯田さんに毎日長文メールを送らなきゃいけなかったほどに。
そうですね(笑)。でも単純に日によって違うし、気分によって変わるから。レコーディングの日は音楽の気分だし、Twitterとかやってるときはとがったこと言わなきゃみたいな気分だし。ただそれだけなんですよね。基本的に空っぽだから。
──自分のことを空っぽだと思うんですか?
思いますね。ゼロ。人としゃべるのも面倒くさいし、おいしいもの食べて寝たいなあ、くらいしか本当に考えてない。
──でも空っぽの人からは、これほどたくさんのメロディと言葉は出てこない気がしますけど。
でももともと自分の中にあるものって感じは全然しないです。通り過ぎてく景色を見て、それに自分が引っかかってるだけで。見てきた景色とかの連鎖でしかないから。
──だからたくさん曲が書ける?
書けますね。まったく困んないです。だから何もない真っ暗な部屋で自分が思考できるかって言われたら、たぶん無理で。
──なるほど。
街に普通に浮かんでて誰も言葉にしてないものってめちゃくちゃあるじゃないですか。このなんかフワフワ浮いてる、気持ち悪い、この街のこの感じ。そういうもの全部にちゃんと明確に言葉とメロディを付けたいんですよね。
──自分の中からあふれてくるものではなく、外にある何かに接して感じたことを曲にしていくということ?
そうそう。それをできるだけ抽象的じゃなく、わかりやすい、明確な言葉にしたいんです。聴いた人に「スッキリしました」とか言われるのが一番うれしいから、うん。
脳みそを洗ってスッキリさせる
──「洗脳」というアルバムタイトルはどういう意味なんでしょうか?
私、ライブのときにお客さんがみんな「はい」って脳みそ見せてくれてるみたいな感じがしてるんです。みんなの顔見てると「俺の脳みそはこういうの!」「こういう人生でした!」「だから感動しました!」「私はこういう人生だったから感動してません!」とか言ってる感じ。そうやって脳みそを掲げて、みんなでジャブジャブ洗ってスッキリ!みたいな気持ちなんです。力が足りないときはそうならない会場もあるんですけど、でもだいたいそういう感じで、それが超気持ちよくって。
──みんなの脳みその中にあることを、歌で洗い流してスッキリさせる?
うん、だからみんなの中に絶対あって、あることにも気付いてなかったレベルのことしか歌ってないと思うんです。
──じゃあ自分だけの個性を表現したいというよりは、みんなが思っているはずのことを改めて歌にしているということ?
そうですね。基本的にラブソングは全部“愛してるあるある”だし、大喜利みたいなものだと思ってるんで。そこに対して、いかにうまい答えを出してやろうか、みたいなことですよね。だったら「私が今一番うまいっしょ?」って思ってる(笑)。
──でも世の中に存在する普遍的な思いを描いて、聴いた人たちが共感しつつ受け入れるというのは、まさにポップミュージックの王道ですよね。
ああ、そうか。うんうん。だから怖いんじゃないですか、たぶん。
──怖いというのは、大森さんの表現が身も蓋もなさすぎて、ということですか?
当たり前のことしか言ってないと思うんだけど、たぶんあれですよ、目の前でおっさんが急にバッて裸になったら怖いじゃないですか。あれと一緒なのかなって思ってて。でも、私はわかんないとか知らないってことのほうが怖いから。私は裸が見たいって感じるタイプの人間なんだと思います。
大森靖子をやり切りたい
──先ほど「自分の自由な姿を見せることで、孤独な人が生きやすい世の中にしたい」という話がありましたが、実際に今は、大森さんの表現やスタンスに憧れている人も増えていると思います。そういう期待を今後引き受けていくわけですよね。
そうですね。2、3年は。
──2、3年だけ?
あはは(笑)。だってババアになってもやり続けてたら、もうなんか偉くなっちゃうでしょ。ずっと下のほうから「クソ野郎!」みたいなこと言ってる立ち位置のほうが気持ちいいし。でもたぶん2、3年やってたら上に行っちゃうんですよ。
──売れたらそうなりますよね。
そうそう。それって超つまんないから。その立ち位置になったら若い子を動かしたい。2、3年で大森靖子をやり切って、早くプロデュースやりたいんですよ。若くてもっと魅力あって、自分の力持ってて、でも言葉が足りない子とか、メロディが足りない子とか。そういう子に曲をあげるほうが世の中動かせる気がするんですよね。まあ2、3年でそこまで行けなかったらもうちょっとがんばりますけど(笑)。でもそれをやるには大森靖子っていうキャラを強くしすぎたから……。
──あ、自分がキャラクターとして強いという自覚もあるんですね。
ありますね。ちょっと強くしすぎたな、でもこんぐらいやらなきゃ今は売れないな、みたいな気持ちです。今は普通にうまくて賢いミュージシャンいっぱいいるじゃないですか。でも私は全員がもっと感情的で、みんながみんな好きなこと言って、ぶつかり合って殴りあって面白いもの作っていこうぜ!っていう社会のほうが好きなんですよね。
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- メジャー1stアルバム「洗脳」2014年12月3日発売 / avex trax
- type■ 洗脳CD+DVD(ピントカライブ) / 5184円 / AVCD-93072/B / Amazon.co.jp
- type★ 洗脳CD+DVD(モリステ特大号) / 4104円 / AVCD-93073/B / Amazon.co.jp
- type▲ 洗脳CD / 3024円 / AVCD-93074 / Amazon.co.jp
CD収録曲(※全タイプ共通)
- 絶対絶望絶好調
- イミテーションガール
- きゅるきゅる
- ノスタルジックJ-POP
- ナナちゃんの再生講座
- 子供じゃないもん17
- 呪いは水色
- ロックンロールパラダイス
- 私は面白い絶対面白いたぶん
- きすみぃきるみぃ
- 焼肉デート
- デートはやめよう
- おまけ♡~スーパーフリーポップ~
ピントカライブDVD(※type■のみ)
- 2014.10.3大森靖子&THEピンクトカレフ「2日間で超楽しい地獄をつくる方法」東京キネマ倶楽部ライブ映像ver.(約60分収録予定)
モリステ特大号DVD(※type★のみ)
- 絶対絶望絶好調(Video Clip)
- ノスタルジックJ-POP(Video Clip)
- スタッフクソキノコによる大森靖子メジャーデビュードキュメンタリー「一生無双モードって言ったじゃん!せいこはつらいよ'14」ver.(約60分収録予定)
※「type■」の初回盤には写真家・佐内正史によるニューヨーク撮り下ろしの80ページのフォトブック付き
大森靖子全国ツアー♥爆裂!ナナちゃんとイくラブラブ洗脳ツアー♥
- ~ノスタルジック 松山 キティホール~
2015年3月8日(日)愛媛県 松山キティホール - ~ノスタルジック 広島 ヲルガン座~
2015年3月14日(土)広島県 音楽喫茶 ヲルガン座 - ~ノスタルジック 岡山cafe moyau~
2015年3月15日(日)岡山県 cafe moyau - ~ノスタルジック 名古屋 CLUB QUATTRO~
2015年3月27日(金)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO - ~ノスタルジック 鳥取 三朝 ニューラッキー~
2015年3月29日(日)鳥取県 三朝ニューラッキー - ~ノスタルジック 札幌 コロニー~
2015年4月3日(金)北海道 COLONY - ~ノスタルジック 仙台 enn 2nd~
2015年4月4日(土)宮城県 enn 2nd - ~ノスタルジック 秋田 ゴマシオキッチン~
2015年4月5日(日)秋田県 gomashio-kitchen - ~ノスタルジック鹿児島 大津倉庫~
2015年4月10日(金)鹿児島県 大津倉庫 - ~ノスタルジック 福岡 ROOMS~
2015年4月11日(土)福岡県 ROOMS - ~ノスタルジック 大分 別府 永久劇場~
2015年4月12日(日)大分県 永久別府劇場 - ~ノスタルジック 大阪 梅田 AKASO~
2015年4月16日(木)大阪府 umeda AKASO - ~ノスタルジック 中野サンプラザ~
2015年4月26日(日)東京都 中野サンプラザホール
大森靖子(オオモリセイコ)
愛媛県生まれのシンガーソングライター。弾き語りスタイルでの激情的な歌が耳の早い音楽ファンの間で話題を集め、2012年4月にミニアルバム「PINK」をリリース。2013年3月に1stフルアルバム「魔法が使えないなら死にたい」を発表し、同年5月に東京・渋谷CLUB QUATTROでワンマンライブを実施。レーベルや事務所に所属しないままチケットをソールドアウトさせ大成功に収める。その後12月には直枝政広(カーネーション)プロデュースによる2ndフルアルバム「絶対少女」をリリース。レコ発ツアーファイナル公演を2014年3月、東京・LIQUIDROOMにて開催する。同年9月にはシングル「きゅるきゅる」でエイベックスからメジャーデビューし、12月にメジャー1stアルバム「洗脳」を発表。自身がボーカルを務めるロックバンド、THEピンクトカレフでの活動も継続中。