MAPA「Calling box/いもうと」インタビュー|プロデューサー大森靖子と考えるグループの成長と今後の課題

MAPAのニューシングル「Calling box/いもうと」が11月9日にリリースされた。

2021年10月に開催された「TOKYO IDOL FESTIVAL 2021」でのグループお披露目を経て、11月9日にアルバム「四天王」でCDデビューを果たしたMAPA。そこからちょうど1年を経てリリースされた本作「Calling box/いもうと」では、メンバー各自がこれまで以上に表情豊かな歌声を聞かせ、また古正寺恵巳がMaison book girl時代から披露してきたポエトリーリーディングが大々的にフィーチャーされるなど、MAPAというグループの個性を色濃く反映した1枚となった。

音楽ナタリーではニューシングルのリリースに合わせて、プロデューサーである大森靖子を交えてのインタビューを実施。この1年でMAPAはどのように変わったのか? 大森にメンバーそれぞれの成長ぶりと現時点での課題を挙げてもらい、今後の目標や展望を語り合ってもらった。

取材・文 / 小野田衛撮影 / 曽我美芽

リズムから解放されることで色濃くなった古正寺の世界観

──今回リリースされたニューシングル「Calling box/いもうと」は、来年2月リリースのシングル「怪獣 GIGA/レディースコミック」との連動作品だと伺っています。ズバリ聴きどころを教えていただけますか。

大森靖子 この2作連動シングルでは、同じ女の人が主人公になっているんです。その女性の人生を肯定するために生まれた怪獣4匹が、幻想的な風景を描いていくというのが全体のコンセプト。4曲それぞれが空想物語に呼応しています。

古正寺恵巳 MAPAの1stアルバム「四天王」に「レディースクリニック」という楽曲がありまして。そこに出てくる女の子は、人生を自分ではどうにもコントロールできなくなってしまった。そこで頭の中で作り出した4匹の怪獣が、この私たちMAPAというわけです。

──なるほど。コンセプチュアルな内容になっているんですね。

大森 もともとMAPAは、Maison book girlが“削除”(=解散)となったあと、古正寺が早く活動再開できるといいなと思って立ち上げたグループなんです。私から言わせると、Maison book girl自体もライブの演出などを含めて古正寺がやりたいことをやるようなグループだったので。だからMAPAでも引き続き古正寺の持ち味を発揮させてあげたかったし、そうなるとやっぱりこの子が得意なポエトリーを今回のシングルでは前面に出したくて。

古正寺 これは偶然なんですけど、大森さんが書いた曲と私の書いた詩の内容がリンクしていたんですよ。そこでいきなり運命を感じました。

古正寺恵巳

古正寺恵巳

──以前から古正寺さんはMAPA楽曲の作詞も手がけていました。

古正寺 今回の連動シングルでは作詞ではなく、あくまでもポエトリーリーディング部分の詩を担当した格好です。

大森 リズムから解放されたほうが、より古正寺らしい世界観が打ち出せるんじゃないかと考えたんですよね。

神西笑夢 今回の「Calling box」と「いもうと」だけでなく、第2弾シングルにもポエトリーリーディングが入っていて。デビュー当時に比べても、コショの色が強くなっていることは間違いないです。詩の内容はもちろん、朗読している姿を見ても「コショっぽいなあ」と感じるんですよね。

宇城茉世 ポエトリーリーディングの入った曲って、そもそも私、今まで聴いたことがあまりなかったんです。だから、すごく新鮮に感じました。「Calling box」には個人的にツボな部分がありまして。それはポエトリーリーディングの途中で挟まれる「……しかし!」というコショの読み上げ方!

古正寺 何それー(笑)。

宇城 こればかりは実際に聴いていただかないと伝わらないと思います(笑)。シングルそれぞれに聴きどころはありますが、とにかくコショの「……しかし!」はインパクト絶大なので、ぜひ注目していただければと。あとはポエトリーリーディングと私の歌が重なるところがすごくきれいに仕上がっているので、そこも聴いてほしいです。ちなみにそのくだりでは私が古正寺をMAPAに引き込むような振りを踊っているんですけど……。

宇城茉世

宇城茉世

大森 グループ結成からすでに1年になるのに、コショは、いまだに「Maison book girlのコショージです」ってうっかり自己紹介することがあるんですよ。いい加減、MAPAに慣れてもらわないと、ほかの3人がかわいそうだなという思いも振付に込めています(笑)。

古正寺 いやいや、さすがにもう身も心も“MAPAの古正寺”ですよ!(笑)

紫凰ゆすら 今回はコショのポエトリーが曲の大事な要素であることは確かだと思うんです。私自身、文章を書いたり読んだりするのが大好きなので、コショの詩からはすごく刺激を受けますね。

バンドの録音に立ち会うことで楽曲に対する意識が変わった

──「いもうと」も古正寺カラー全開のナンバーですね。

古正寺 大森さんから歌詞をもらったとき、「コショ、こういうの絶対に好きでしょ?」って言われたんですよ。実際、その通り(笑)。この曲は対バンでのセットリストでも絶対に入れたいんですよね。

──ポエトリー部分は、わりとホラー的な要素も強いのかなと感じたのですが。

古正寺 そう受け取っていただいてもけっこうです。最初から自分の中で意味を決めつけるのではなく、聴く人によってさまざまな解釈ができるようにしているんですよ。そういう余白のある表現が好きなんですよね。

紫凰 私は昔から大森さんの書く楽曲や歌詞が大好きだったんですけど、コショの書く詩はそれともだいぶアプローチが違いますよね。2人が同じようなテーマについて書いていても、その表現の違いによってMAPAの世界観がますます広がっている感覚はあります。

紫凰ゆすら

紫凰ゆすら

宇城 この「いもうと」に関しては、言いたいことがありまして。実は私、リアル家族構成的にはMAPAのメンバーの中で唯一の末っ子なんですよ。だから曲の中でも妹ポジションを狙っていたんですけど、残念ながら逃してしまった……。

大森 まあグループの中では末っ子キャラという感じでもないからね。そして、その座をゲットしたのが……。

神西 私になります(笑)。いつもは曲を最初に聴いてから、まずは主人公になりきろうと心がけているんですが、この曲は歌詞やポエトリーの意味を理解するのに苦労しました。

神西笑夢

神西笑夢

──1stアルバムの制作時は「あえて時間をかけず、荒々しい初期衝動を大切にした」という話を伺いました。そのときと比べて、今回の変化は?

神西 具体的なことを言うと、使うマイクをいろいろ試してみました。「どんなマイクが自分に合うのかな?」ってメンバーそれぞれが考えて。

大森 やっぱりマイクによって声の質感ってだいぶ変わってくるんですよね。1stアルバムのときは「とにかく聴けるレベルの歌に仕上げよう」という感じだったけど、今回は4人それぞれの声のキャラクターや表現をもっと生かしたかったんです。

MAPA

MAPA

古正寺 あと今回はバンドのレコーディングにもメンバー全員が立ち会ったんです。そこも今までと違うポイントじゃないでしょうか。

紫凰 「ここのベースはこう弾いているんだ!」とか目の当たりにすることで、曲の捉え方が全然変わってきました。より深く理解できるようになったし、自分の歌い方にもかなり影響が出ていると思います。