ナタリー PowerPush - 奥華子

初ベストを通じて振り返る7年間の軌跡

今の私の活動は全て震災の日から始まってる

──2011年は東日本大震災という大きな出来事があり、奥さんの活動もちょっとイレギュラーな形になりましたね。

そうですね。世の中としてもそうだと思うけど、私にとっても2011年3月11日があったことで、考え方が大きく変わった気がします。

──どんなところに変化が表れましたか?

いろいろなことを後回しにするのをやめようって思いました。簡単にね、今を大切に生きるとかって言ったりするけど、じゃあ本当に自分はそうしてるかなって改めて思い返すことになったんですよね。そういうことがあったからこそ、自分の中にある嫌な部分とグッバイしようっていう意味で今年「good-bye」というアルバムを出すことができたし、活動の区切りとして今回ベストを出そうっていう気持ちにもなったんです。来年やる弾き語りツアーに「Last Letter」っていうタイトルをつけたこともそうなんですよね。そう考えると今の私の活動は、全てがあの日から始まっているような気もします。

──震災後すぐに配信された「君の笑顔」もベスト盤には収録されていますね。

“smile”にまつわる曲を集めた「君の笑顔 -smile selection-」というアルバムもあるので、今回入れるのはどうかなって思ったんですけど、大きく考えると奥華子の歴史をまとめるベストアルバムにこの曲は絶対必要だなって思ったんです。ファンの方からのリクエストもすごく多かったですし。なので今回は、出来たての弾き語りバージョンで収録することにしました。

新曲はデビュー曲「やさしい花」のアンサーソング

──そして今年。2012年の作品からは「シンデレラ」と「二人記念日」が収録されています。

これ今年なんですね。月日が経つのは早いですねえ(笑)。この2曲もそうですけど、今の奥華子はいろんな人と関わることでどんどん外を向いてきてる気がしますね。そういう状態の、現在の集大成が「good-bye」というアルバムだったなって思うんです。今までで一番外を向いているし、黒メガネにしたり思い切ってスカートもはいてみたし(笑)。音的にもビジュアル的にも新しい挑戦だったんですよね。で、これがダメだったらもうこっち方面はやめようと思ってたんです。

──全然ダメじゃなかったですよね。

うん。これはこれで全然良かったなって思う。自分の中でこれしかないって思えるものができたから悔いはないし、すごくやりきった感じがあります。まあ黒メガネはいつのまにか赤メガネに戻ってますが(笑)。

──そして最新の奥華子を感じられる部分として、今回のベスト盤には新曲「愛を見つけた場所」も収録されています。

今までのCDを持ってくれてる人たちに「おっ!」って思ってもらいたかったので新曲はぜひ入れたかったんです。デビューしてからの歴史をまとめたベストアルバムなので、デビュー曲「やさしい花」から思いをつなげた、アンサーソングのような内容になってますね。

──ああ、確かにそうですね。

対になる作品として、曲調もちょっと似た感じになってます。デビューしてから7年間、本当にあっという間でしたけど、その歴史を流れとして楽しんでもらえたらうれしいです。

サイクルを1回止めて、気持ちを休憩させたかった

──本作のリリース後、年明けからはスタートする全国ツアーは昼夜2回公演なんですよね。まるでアイドルのような(笑)。

そこを目指してるんですけど(笑)。でも実は2008年に同じようなことを1回やってるんですよ、昼夜2回公演っていうのは。今回はせっかくベスト盤も出るんだからということで、ぜひまたやりましょうと。

──昼は弾き語りで、夜はバンドスタイルでのライブになるそうで。内容も全く違うわけですよね。

そうです、全然違うんですよ。弾き語りの奥華子を好きって言ってくれる人が本当に多いんですけど、でもやっぱり1年に1回、お祭り的な感じでやるバンドスタイルのライブも楽しみたいなっていうところですね。1本のライブの中で両方をやるっていう方法もあるとは思うんですけど、あえて2回に分けてやります。

──で、その弾き語りライブには「Last Letter」というタイトルが付いていて。先程チラッと話が出ましたけど、そこには奥さんの今の思いが反映されているわけですよね。

はい。前回「5th Letter」という弾き語りツアーを全国44カ所でやらせてもらってるときからもう、次は「Last Letter」にしようと決めてました。それはさっきも言いましたけど、「good-bye」というアルバムを作ったこと、ベストアルバムを出そうと決めたことと同じ意味で、自分の中でずっと回ってきたサイクルを1回止めて、気持ちを休憩させたいなって思ったんですよね。

──なるほど。

私にとって歌は手紙のようなものだし、それを弾き語りで1対1で届けたいと思ってたから「Letter」というタイトルをずっと付けてたんですけど、そのタイトルが違うものになったとしても弾き語りは自分のスタイルだし歌に対しての私の気持ちは全く変わらないんですよね。7年やってきたことで、そう思える自信もついたし。だったらそういうタイトルに縛られることなく、もっと自由になってもいいんじゃないかなって。

──ご自身のブログでもそういう説明をしっかりされていましたけど、ちょっと不安になっているファンも多いみたいですよね。

そうですよね。ベスト盤に入る新曲が「愛を見つけた場所」だから、「結婚するんですか!?」みたいな(笑)。普段失恋ソングが多いから、ちょっと幸せな曲ができるとそう思われてしまうっていう(笑)。

──弾き語りを辞めるわけではないし、歌うことを辞めるわけでもないと。

うん。ただ、デビューしてから本当に今日が何日かわからないような生活がずっと続いていたので、それをちょっと正したいなっていう気持ちもありますね。ほんのちょっとでも自分の時間を過ごすことで充電できればなって。今まではね、「そんなこと言ってる場合じゃないだろ!」みたいな感じだったと思うし、実際のところ今もそんな場合じゃないかもしれないんですけど(笑)、でも決めたんです。震災以降、後回しにすることをやめたっていうのが、そこにもつながってるんです。そういう自分の時間をもらうのは今しかないと自分で思ったので、その気持ちを後回しにはしたくないなっていうことですね。

──その休憩は確実に次の活動につながるものにもなるでしょうしね。

うん。きっとそうだと思います。

ベストアルバム「奥華子BEST -My Letters-」 / 2012年10月17日発売 / ポニーキャニオン
ベストアルバム「奥華子BEST -My Letters-」HANAKO BOX [CD3枚組+DVD2枚組+フォトブック+グッズ] 8750円 / PCCA-03693
ベストアルバム「奥華子BEST -My Letters-」Special Edition [CD3枚組+DVD] 4900円 / PCCA-03692
ベストアルバム「奥華子BEST -My Letters-」通常盤 [CD2枚組] 3300円 / PCCA-03691
DISC1 CD収録曲
  1. ガーネット
  2. 魔法の人
  3. 恋(2012 Arrange version)
  4. 最終電車
  5. 変わらないもの
  6. シンデレラ
  7. 秘密の宝物
  8. トランプ
  9. 夕立
  10. 透明傘
  11. あなたに好きと言われたい
  12. 一番星
  13. 僕の知らない君
  14. 最後の恋
  15. 初恋
DISC2 CD収録曲
  1. やさしい花
  2. しあわせの鏡
  3. Birthday
  4. 笑って笑って
  5. 帰っておいで
  6. 迷路
  7. 君の笑顔
  8. 二人記念日
  9. Happy days
  10. タイムカード
  11. 手紙
  12. そんな風にしか言えないけど
  13. 愛を見つけた場所
  14. 元気でいてね(2012 Acoustic version)
  15. 明日咲く花
HANAKO BOX / Special Edition
DISC3 CD収録曲
  1. 押し花
  2. 月光
  3. それぞれ
  4. つながる場所 -野音の歌-
  5. 小さな輝き -a song for Borneo-
  6. どさん子華子のうた
  7. 働くネコ
HANAKO BOX / Special Edition
DISC4 DVD収録内容
  1. 魔法の人
  2. ガーネット
  3. 小さな星
  4. 手紙
  5. 初恋
  6. シンデレラ
HANAKO BOX
DISC5 DVD収録内容
  1. 路上ライブ
  2. ギター弾き語り? 「私を振った男達日本北上 17連発!」
  3. 花火(60秒PV)
  4. My Letters(レコーディング風景)
  5. 裸眼でトーク!
「奥華子2013 LIVEツアー」決定!
弾き語りとバンドライブで1日2回公演!

<昼公演> 奥華子 弾き語り 2013 Last Letter
<夜公演> 奥華子 BAND LIVE TOUR 2013

  • 2013年1月12日(土)大阪府 Zepp Namba OSAKA
  • 2013年1月14日(月・祝)神奈川県 横浜BLITZ
  • 2013年1月19日(土)東京都 Zepp Tokyo
  • 2013年1月26日(土)北海道 Zepp Sapporo
  • 2013年2月16日(土)福岡県 Zepp Fukuoka
  • 2013年2月24日(日)愛知県 Zepp Nagoya
奥華子(おくはなこ)

奥華子

“10万人が足を止めた魔法の声”と称されるシンガーソングライター。キーボード弾き語りによる駅前路上ライブを2004年に渋谷でスタートさせる。1年間に2万枚の自主制作CDを手売りするなどの驚異的な集客力が話題となり、2005年7月にシングル「やさしい花」でメジャーデビュー。2006年には劇場版アニメ「時をかける少女」の主題歌に「ガーネット」、挿入歌に「変わらないもの」が起用されスマッシュヒットとなる。2010年3月発売のシングル「初恋」は自身初のオリコンウィークリーチャート初登場10位を記録。2011年4月には東日本大震災を受け制作された新曲「君の笑顔」をデジタル配信。この楽曲の収益全額は被災者および被災地の復興支援、そして今後必要とされる活動のために寄付された。グランドピアノとキーボードのみで行う全国弾き語りツアーは2012年で5度目を迎え、自身最多の全国44公演を成功させた。これまでにシングル12枚アルバム6枚を発表。CMソングも多く手がけており、まっすぐに届く歌詞と歌声は老若男女、年齢を問わず幅広い世代からの支持を集めている。10月には初のベストアルバム「奥華子BEST -My Letters-」をリリース。