聴き手の感情を惹きつける奥華子節

──お二人のニューアルバムが同日にリリースされました。奥華子さんは約2年ぶり、10枚目となる「KASUMISOU」です。

奥　今作では、ほかのアーティストに提供した楽曲のセルフカバーや、タイアップ曲といった自分以外の誰かに対して作った曲が多いんです。「トライアングル」もそうですけど、ある意味自分1人ではできなかった曲たちがたくさん入っています。なので、ほかのお花をよりよく見せつつ、それ自体にもちゃんと存在感がある“カスミソウ（KASUMISOU）”をタイトルにしました。私自身、カスミソウが好きで家では常に飾っているので。

藤田　1曲目の「鞄の中のやきもち」からすごくいいですよね。メロディも歌詞もアレンジも全部好きです。サビの締め方はさすがだなって思った。聴き手の感情をグッと惹きつける奥華子節だなって。

奥　やったー！うれしい。

藤田　あと、「ホントはね」のピアノのコードも面白かった！

奥　そうだね。普段はあんまり使わない感じかも。

──デビュー以前に書かれたという「絶対」はかなりインパクトがありますね。歌詞もメロディもピアノのタッチもすごくシリアスな雰囲気で。

奥　この曲は20代の頃に作ったもので、ライブでもあまり歌っていないんです。当時はこういう暗めな曲が多かったというか。「人間の気持ちなんて自分のことですらもわかんないじゃん」「“絶対”なんてないじゃん」という思いがありつつも、一方ではそれをわかりたいと欲している自分がいる……そんなことを歌った曲ですね。20年近く前の曲ですけど、今でも同じことを思っているので、あまり変わってないなって思いました。でも、歌詞に関しては今なら絶対こうは書かないし、書けないなって思います。

藤田　私もこの曲はインパクトがあるなって思ってました。この曲の成り立ちを知らなかったから、今の華ちゃんにもこういう危うい感情があるんだってちょっと驚いたんです。でも実はずいぶん前に書かれたものだと知って納得しました。私自身も絶対的なものを求めて曲を書いているところがあるから、この歌詞にはすごく共感できましたね。

──ラストのタイトル曲「カスミソウ」のアレンジが僕はすごく好きで。1本の映画を見ているような感覚になるんですよね。

奥　それはよかった！あのアレンジは、親戚の知り合いの知り合いにお願いしたものなんです。

藤田　遠いね（笑）。

奥　去年、学習院大学の学園祭でライブをしたとき、親戚から連絡があって、「すごい奥華子ファンの学生さんが見に行くから」って紹介されたんですよ。そこでいただいた名刺を見たら東京音大の作曲科に通ってる学生さんで。しばらくしてこの曲のアレンジをどうしようか考えているときに、ふとその人のことを思い出したから頼んでみたんです。

藤田　えー、すごい！

奥　その人の作品を聴いたことはなかったけど、奥華子のことが好きだと言ってくれているわけだから、絶対に愛情をもってやってくれるだろうって思ったんですよ。結果、素敵なアレンジになってよかったです。縁って大事ですね（笑）。

愛は退屈

──一方の藤田さんはメジャー4枚目となるアルバム「wish」をリリースされました。

藤田　今作は、初カバーアルバムを出したあとのオリジナルアルバムだったので、すごく新鮮な気持ちで制作に臨めました。これまでと比べてタイアップ曲が少ないので、自分の日記を歌にしたような曲や、今の自分として形にしたかった曲がいつもより多いような気がします。

奥　麻衣子ちゃんの歌詞はほんとに素直だよね。だからこそ、いろんな人生の写真が浮かんでくるというか。そういう印象が今回のアルバムは特に強い気がしました。あと、恋愛の怖い部分を描いた曲が少なめじゃない？

藤田　うん、今回は怖い曲がほとんどないの。前回は嫉妬を描いた曲でダークな方向に引っ張ったところがあったんですけど、今回は初回盤の最後に「トライアングル」を入れることを決めていたので、全体のバランスを考えて、それ以上にインパクトの強い曲は選ばないようにしていました。

奥　その分、麻衣子ちゃんの優しさが出た曲がいっぱい入ってるよね。

──サウンドもバラエティに富んでいますよね。

藤田　「何度も何度でも」や「テントウ虫」では、ピアノや弦と一緒に「せーの」で歌を録ったんです。楽器と一緒だからこそ出る表現を大事に、ライブっぽくレコーディングできたのが楽しかったですね。それとは逆に打ち込みの世界観も大好きなので、そこはアレンジャーのIkomanさんにいろんな色の曲に仕上げてもらったりもしました。コーラスをたくさん重ねたりして作りこんでいく作業も、それはそれで脳みその違った部分を使うようで楽しめました。

奥　「何度も何度でも」を聴いた瞬間、「キター！」って思いました。オーケストラコンサートで歌っている麻衣子ちゃんの姿が鮮明にイメージできたし、麻衣子ちゃんにしか歌えないアレンジになっているなって。すごくいい曲！

藤田　うれしい！オーケストラコンサートを控えているので、それにふさわしい曲を入れたいなっていう気持ちがあったんです。「何度も何度でも」はけっこう最近書いた曲なんですけど、ちょっとスケールの大きな曲にしたいなという思いもあって。

──歌詞のテーマも大きな愛を描いたものになっていますしね。

藤田　そうそう。私の場合、一瞬の場面を切り取った詞を書くことが多いんですよ。でもこの曲はそうではなく、今まであまり書いてきていなかった愛について書いてみようと思って。昔の私は愛って退屈なものだと思っていたんです。だからドキドキするトキメキのある恋のほうが好きだった。でも今はちょっとその感覚が変わってきて、愛だってそんなに悪いものじゃないぞ、いやむしろめっちゃいいものだぞって思えるようになったんですよね（笑）。なので、今の自分として書ける範囲の愛を書いてみようとトライしてみました。

奥　なるほど。“愛は退屈”っていうのは名言だね。でも私は逆に恋が持っているドキドキ感がつらいことのほうが多いかもしれない。だから退屈でも愛を求めてるのかもなあ。そういう違いも面白いね。

──初の共作曲「トライアングル」は両作品の初回限定盤で聴くことができますが、それぞれで歌うパートが逆になっているんですよね。

藤田　そうなんです。華ちゃんのアルバムに入っているのが “奪う女”を華ちゃん、“奪われる女”を私が歌っている本来の形のもので、逆に私のアルバムでは “奪う女”を私が歌っているんです。パートを変えただけでこんなに聴き心地が変わるんだなって衝撃的でした。

奥　まったく違う雰囲気だもんね。

藤田　私が“奪う女”のバージョンでは、華ちゃんがハモってくれているんですよ。華ちゃんがハモること自体、新鮮だったから、それがうれしすぎて（笑）。

奥　あんまりハモれない人だからね（笑）。麻衣子ちゃんはハモりにもめちゃくちゃ厳しくて、ライブのときはめっちゃ緊張しました。そんなことも含め、今回の経験は新鮮なことばかりでしたね。

藤田　そうだね。ほんとに楽しかったです！

ライブ情報

奥華子コンサートツアー2019～弾き語り～

2019年5月17日（金）北海道札幌市教育文化会館小ホール
2019年5月18日（土）大阪府大阪国際交流センター大ホール
2019年5月24日（金）岡山県ルネスホール
2019年5月25日（土）広島県広島市南区民文化センター
2019年6月1日（土）栃木県那須野が原ハーモニーホール
2019年6月2日（日）埼玉県彩の国さいたま芸術劇場大ホール
2019年6月7日（金）愛知県芸術創造センター
2019年6月14日（金）東京都北とぴあさくらホール
2019年6月15日（土）千葉県行徳文化ホールI＆I
2019年6月21日（金）新潟県新潟市音楽文化会館
2019年6月23日（日）富山県高岡文化ホール
2019年6月28日（金）神奈川県横浜関内ホール
2019年6月30日（日）茨城県結城市民文化センターアクロス小ホール
2019年7月6日（土）長崎県長崎ブリックホール国際会議場
2019年7月10日（水）岩手県盛岡劇場メインホール
2019年7月11日（木）福島県福島テルサ FTホール
2019年7月14日（日）宮城県仙台銀行ホールイズミティ21 小ホール
2019年7月20日（土）滋賀県米原市民交流プラザルッチプラザ
2019年7月26日（金）山形県山形テルサアプローズ
2019年7月27日（土）秋田県秋田市文化会館小ホール
2019年7月30日（火）香川県サンポートホール高松小ホール
2019年7月31日（水）愛媛県松山キティホール
2019年8月3日（土）福岡県イムズホール
2019年8月4日（日）熊本県熊本B.9 V1
2019年8月12日（月・振休）静岡県静岡市清水文化会館（マリナート）
2019年8月17日（土）群馬県高崎市文化会館
2019年9月6日（金）京都府京都府立府民ホールALTI
2019年9月7日（土）奈良県秋篠音楽堂

藤田麻衣子ニューアルバム「wish」発売記念フリーライブツアー

2019年3月21日（木・祝）奈良県イオンモール大和郡山 1F 北小路コート［1回目］START 13:00
［2回目］START 16:00
2019年3月22日（金）東京都サンシャインシティ噴水広場START 18:00
2019年3月24日（日）愛知県エアポートウォーク名古屋 3F イベントステージ［1回目］START 13:00
［2回目］START 16:00

藤田麻衣子オーケストラコンサート2019

2019年5月25日（土）東京都文京シビックホール大ホール

奥華子「KASUMISOU」: 2019年3月20日発売 / ポニーキャニオン; 初回限定盤 [CD2枚組]
4320円 / PCCA-04766

Amazon.co.jp; 通常盤 [CD]
3240円 / PCCA-04767

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収録内容

CD収録曲

鞄の中のやきもち
ホントはね
逢えなくても
絶対
願い
一歩前に

恋の果て
同窓会
素顔
クリスマスの夜
セピア色
カスミソウ

初回限定盤付属CD収録内容

トライアングル（Piano ver. / duet with 藤田麻衣子）
MOTHER
君が待つあの丘へ
心が帰る場所

藤田麻衣子「wish」: 2019年3月20日発売 / Victor Entertainment; 初回限定盤 [CD+DVD+ブックレット]
5076円 / VIZL-1564

Amazon.co.jp; 通常盤 [CD]
3240円 / VICL-65166

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収録内容

CD収録曲

出会えただけで
これからも
in fact
wish ～キボウ～
何度も何度でも
またね

始まり
ハピネス
気持ちの整理できるまで
テントウ虫

初回限定盤ボーナストラック

トライアングル（Piano ver. / duet with 奥華子）

初回限定盤DVD収録内容

wish ～キボウ～ Music Video
wish ～キボウ～ NHK みんなのうた
トライアングル（duet with 奥華子）Music Video

奥華子（オクハナコ）: “10万人が足を止めた魔法の声”と称されるシンガーソングライター。キーボード弾き語りによる駅前路上ライブを2004年に渋谷でスタートさせる。1年間に2万枚の自主制作CDを手売りするなどの驚異的な集客力が話題となり、2005年7月にシングル「やさしい花」でメジャーデビュー。2006年には劇場版アニメ「時をかける少女」の主題歌に「ガーネット」、挿入歌に「変わらないもの」が採用されスマッシュヒットとなる。2011年4月には東日本大震災を受け制作された新曲「君の笑顔」をデジタル配信。この楽曲の収益全額は被災者および被災地の復興支援、そして今後必要とされる活動のために寄付された。2012年10月には初のベストアルバム「奥華子BEST -My Letters-」をリリース。2016年夏には、デビュー10周年を記念して奥華子がこれまで発表してきた150曲を超える全楽曲を弾き語りで披露するライブツアー「奥華子 10周年ありがとう！弾き語り全曲ライブ！」を全国4都市で開催した。2017年2月にテレビアニメ「セイレン」のオープニング曲を含む両A面シングル「キミの花 / 最後のキス」を、同年5月にはアルバム「遥か遠くに見えていた今日」をリリース。2019年3月に10枚目のアルバム「KASUMISOU」を発表した。

藤田麻衣子（フジタマイコ）: 愛知県名古屋市出身のシンガーソングライター。2006年9月「恋に落ちて」でインディーズデビュー。すべての楽曲の作詞作曲を手がけるほか、アーティストへの楽曲提供も行っている。フリーライブを軸に活動しながらファンを増やし、2012年に東京・渋谷公会堂公演、2013年7月に東京・NHKホール公演を実施。同年10月には東京・日本武道館での弾き語り無料ワンマンライブを成功させた。2014年3月に「涙が止まらないのは」でメジャーデビュー。同年10月にメジャー1stアルバム「one way」をリリースした。2016年には47都道府県ツアーを行い、11月にCDデビュー10周年を記念してベスト盤「10th Anniversary Best」を発表した。2017年4月に東京・すみだトリフォニーホールで念願のオーケストラコンサートを初開催。2018年1月にニューアルバム「思い続ければ」を、9月にはキャリア初となるカバーアルバム「惚れ歌」をリリースした。2019年5月には東京・文京シビックホール大ホールで2度目のオーケストラコンサートを行う。