奥華子×藤田麻衣子|真逆な性格2人の共鳴

常識を超える情熱を持った人、藤田麻衣子

──公私ともに仲がいい奥さんと藤田さんが初めてデュエットした楽曲「トライアングル」はどんな経緯で作られたのでしょうか?

藤田 昨年の秋冬に、3回くらいライブで華ちゃんとご一緒する機会があって。そのスケジュールが決まった段階で、「せっかくだから一緒に曲を作ろうか」って言ってくれたんですよ。私としてはまさか華ちゃんと共作できるなんて思ってもみなかったので、すごくうれしくて。

 2人でごはん食べながら恋愛の話をしてるときに曲のアイデアが浮かんだんです。1人の男性と、それを奪う女、そして奪われたくない女の三角関係を描いた曲を作ったら面白いんじゃないかって。ピアノをポロポロ弾きながらなんとなくのイメージもその場で話したんだよね。

藤田 そうですね。コード進行はこんな感じがいいんじゃないか、くらいでしたけど。

 “奪いたい女”は私がやって、麻衣子ちゃんには“奪われたくない女”をやってもらおうっていう役割分担も決めました。それぞれが自分のパートを作ろうか、という話をしたところで、その日は別れたんです。その後、頭の中でどうしようかいろいろ考えていたところ、麻衣子ちゃんから「なんとなくできました」って連絡が来て。じゃあそれを聴かせてもらった上で、私は自分のパートを書こうかなと思ったんです。それが忘れもしない渋谷の街中ですよ。ヘッドフォンをして音源を聴いたら、コーラスまでバッチリ入ってる完成形だったんです!

左から藤田麻衣子、奥華子。

──奥さんのパートまで作られていたと。

 「ちょっと待って、共作じゃないんだっけ?」と思って(笑)。

藤田 そのとき華ちゃんから「今年一番の衝撃!」というメールが来ました。なんか主人公たちの動きとか、Dメロから始まる女2人のガチバトルとか、曲のすべてが見えちゃったんですよ。ハモるならこうしたいとかいろいろ考えて作ってたら、できあがっちゃってた(笑)。もちろん華ちゃんに添削してもらって、変えたほうがいいところは全然変えてくださいって伝えたんですけど……。

 そんなこと言われても完成してるわけだし、しかもめちゃくちゃいい曲だったから「変えられるかい!」って(笑)。

藤田 あとで「共作だった!」と我に返りました。さすがに怒られるかと思ったけど、面白がってくれたからよかったです。ここでも華ちゃんの大きさを痛感しましたね(笑)。

 私も「さすが藤田麻衣子!」って思いました。「普通だったら」とか「常識的に」とかを超える情熱を持った人なんですよ。そんな麻衣子ちゃんの熱い思いに引っ張られて、曲に対してワクワクする気持ちを改めて思い出しました。音楽って本来こうあるべきだなって。ある意味、初心を思い出させてくれるような刺激が、この「トライアングル」にはありましたね。

人間ってそんなに歌えるんだ!

──レコーディングはいかがでしたか?

藤田 華ちゃんが先にピアノを録ってくれたんですけど……あれってクリックなしだよね?

左から藤田麻衣子、奥華子。

 うん、そう。クリックを使うと全然雰囲気が出ないんですよ。だからすごく揺れたピアノになってはしまうんだけど、そっちのほうがいいかなって。

藤田 でもそれが私にはすごく歌いやすくて。自分以外の人に弾いてもらっても、こんな歌いやすいピアノがあるんだってすごく感動しました。それはやっぱりピアノ弾き語りをずっとやってきている華ちゃんだからこそだとは思うんですけど。すごいなあって。

 いやでも私は麻衣子ちゃんの歌がすごいなって思ったけどね。本当にうまいから、ちょっと歌っただけでOKテイクが録れるんですよ。

藤田 私は逆に華ちゃんのレコーディングを見てビックリしたんだけど。

 私は40テイクくらい歌いましたからね。

藤田 「人間ってそんなに歌えるんだ!」みたいな。

 どういうこと?

藤田 私の場合、集中力も続かないし、そんなに歌ったらノドがもたないんです。でも華ちゃんは集中力を途切れさせず、何回もトライしていて。その精神力にはもう尊敬しかないんですよね。

──奥さんは普段のレコーディングでもそれくらいテイクを重ねるんですか?

 そうですね。ただ「トライアングル」に関しては麻衣子ちゃんと一緒なので、ちゃんとした歌を録らないといけないという緊張感がいつも以上にありました。

藤田 そういう姿を見て、そこでもまた感動したんです。華ちゃんはもともと持っている能力が高くて、なんでもできちゃう人なんだとずっと思っていたんです。もちろんそういう部分もあるとは思うんですけど、裏では人一倍努力している人なんだということを今回のレコーディングを通して知りました。

 40テイクがそんな褒められて逆に恥ずかしいですけど(笑)。本当は少ないテイクでいい歌が録れるのが一番いいんだけどね。でもそこはスタイルの違いなのかな。

藤田 そうだね。どっちがいいとかではなく、それぞれのやり方だもんね。

──2人の声と感情が絡み合うDメロは本当にカオスな仕上がりで、この曲の最大の聴きどころだと思います。

 こんなのよく作れたなって、何回歌っても感動しますね。発想がすごい。

左から奥華子、藤田麻衣子。

藤田 ミュージカルだとたまにこういう構成があるんですよ。1人の男性を奪い合う2人の女性が違ったメロで違った歌詞を同時に歌うっていう。ポップスでそういうことをしている曲があまりないと思ったので、絶対やってみたかったんですよね。しかもバトルの相手が華ちゃんですからね。これはもう堪らないなって(笑)。

 この曲はミュージックビデオもぜひ観てもらいたいですね。現場では監督以上に麻衣子ちゃんの演技指導が激しくて(笑)。

藤田 あははは(笑)。今回はMVに関しても「こうしたい!」っていう強いイメージがあったんです。すべてにおいて熱量高く向き合えたという意味では、私も原点に戻れた気がしましたね。

 そんな麻衣子ちゃんの男性への詰め寄り顔がMVの見どころです(笑)。