「OKAMOTO'Sってマジメだね」

──ショウくんはどういう気持ちで3人に「愛をテーマにしたい」って伝えたんですか？

ショウ　このバンドって、メンバーそれぞれの音楽的なルーツがあって、その4つの輪が重なった部分がOKAMOTO'Sらしさになっていると思うんですね。で、その中心に何があるかっていうと、空洞なんですよ。すごくボヤーッとしている。だから、伝わり方が「若くて楽器がうまくて楽しいバンド」っていうふうになってしまうのかなと思って。

──バンドの核はなんなのかと。

ショウ　そう。「次のアルバムでそれを提示できないと、俺たちはヤバい」という危機感を覚えていたんです。バンドって、めちゃくちゃ我の強いボーカリストがいて、そいつの言いたいことを押し出して、周りのメンバーが音楽的に支えるというパターンも多いと思うんですけど。でも、OKAMOTO'Sはそうじゃないんですよね。

──みんな同列の立ち位置だし。

ショウ　そうそう。リーダーもいないし。あとは何かに対して怒り狂ってるとか、泥臭い主義主張みたいなものも俺たちにはないので。じゃあどうすればいいか？って考えたときに、とにかくいい曲をいっぱい作ろうと思ったんです。「欲望」のリリース後に1日1曲ノルマくらいの勢いで曲を書き溜めていって。

──そんなに書いたんだ。

ショウ　書きましたね。でも、結局バンドの核となるものを見据えないとただ曲を作るだけになっちゃうから、どうしようか試行錯誤していたんです。そんなときにシングル「マジメになったら涙が出るぜ / 青い天国」の制作があって。「マジメになったら涙が出るぜ」の歌詞をいしわたり（淳治）さん、「青い天国」の歌詞を小出（祐介 / Base Ball Bear）くんと共作して。初めて4人以外の人に制作に関わってもらったんですよ。そこで、いしわたりさんと小出くんの2人に共通して言われたのが、曲のタイトルにもなっていますけど「OKAMOTO'Sってマジメだね」ということだったんですね。そのときに「俺たちってマジメなんだ!?」って思って。「マジメですか？」って2人に訊き返してる時点でマジメなんだと思うんですけど（笑）。そんなやり取りを経て「マジメになったら涙が出るぜ / 青い天国」をリリースしたときに視界が広がる感じがあったんです。

──確かに「マジメになったら涙が出るぜ」みたいにダークサイドに寄ったシリアスなロックナンバーと、「青い天国」のような元々OKAMOTO'Sがもっている魅力を剥き出しにした陽性のロックンロールを同時にパッケージできたことが、このアルバムの全体像にもたらしているものはすごく大きいと思う。

ショウ　デカいですね。自分たちのマジメなところを認めて、今までは人前に出すとダサいんじゃないかと思っていたことを、それも人間味のひとつと捉えて、堂々と出したほうがカッコいいという価値観を持つことができたから。そこから最終的にはみんなで一緒に歌えるような曲をたくさん作りたいと思ったんです。

──実際にこのアルバムはそういう曲が多いですよね。頭2曲の「Sing A Song Together」、スカパラホーンズと沖（祐市）さんを迎えた「Give&Take」から始まり。

ショウ　そうですね。そこで出てきたキーワードが「愛」だったんです。シンプルで抽象的すぎる言葉ではあるけど、マジメな部分も含めて、OKAMOTO'Sの核を表現できる気がして。

やっぱり俺たち音楽が大好きなんですよ

──ショウくんは愛をテーマに決めてからどれくらい曲を書いたんですか？

コウキ　2、30曲あったよね。

ショウ　最初に作ったデモの段階でアルバムに入るような曲もあって。「Sing A Song Together」や「Give&Take」もそうですね。「Oh! Pretty Baby」とか。

ハマ　いわゆるラブソングタッチのものが早い段階でたくさんできてたよね。

ショウ　「ラブソング」もそうだし。

──アルバムの軸になっている楽曲群ですね。

ショウ　そうですね。みんなにデモを聴かせて、呼び出して「愛でいきたい」って伝えたときに不安もあったんですけど、みんなからもすごくいい反応が返ってきたので。これはいけるぞと。

──ラブソングの体をなしている曲も多いけど、このアルバムで表現している「愛」って、やっぱり音楽愛だと思うんです。

ショウ　うん。そうなんです。やっぱり俺たち音楽が大好きなんですよ（笑）。

──それをシンプルに表現しているのがラストの「Shine Your Light」だと思う。この多幸感はPRIMAL SCREAMの「Screamadelica」感を思わせるムードがあるというか。

ショウ　ああ、そうですね（笑）。これは、他の曲を全部録り終えてから書いた曲なんですけど。素直に言葉が出てきて。「夢みたいに心躍るストーリー オレにだって歌えるんだラララララ いつの日にか君にだって歌えるハズさ」なんて歌詞も恥ずかしげもなくスラスラと出てきて。

──今なら堂々と歌える歌詞だし。

ショウ　そうそう。最後にラララって4人のコーラスで終わるのもポイントで。「OKAMOTO'S」というアルバムのエンディングにふさわしい曲になったと思います。