ナタリー PowerPush - 大橋トリオ

注目マルチプレイヤーがメジャーシーンに進出 ジャンルレスな音楽性の魅力を解き明かす

奥の深い音楽なら何でも好き

──大橋トリオは作曲と編曲、ほとんどの演奏を大橋さんが1人で手がけているのに、歌詞だけは作詞家が書いているというスタイルですよね。

今回の6曲は、ドラムとベースは人に演奏してもらったんですけどね。詞は昔から完全に分担作業、お任せですね。よほどイメージが固まってるときは言いますけど。車で聴く感じとか、あんま暗くならないようにとか。音楽は何かを人に訴えるものではなくて、僕の中では作品なのかなって。もし世の中に言いたいことがあればMCで言えばいいかなって(笑)。ただ、言葉の美しさは大事にしたいですよね。あと、メロディを活かす詞にするっていう点だけは絶対譲れないかな。

──そういうスタンスが、たとえば「Carnival」のスウィング感や、「A BIRD」全体から感じる風通しの良さを生み出しているんでしょうかね。

僕としてはシンプルにやってるだけなんですけどね。中にはへんちくりんなアイデアが生まれてくるときもありますけど。まあ、アレンジするときに、あんまりガチガチにキメこまないようにはしてますね。キメが多過ぎ るのはあんまり好きじゃないんです。感覚でやってる感じで十分だなっていうか。そのときに思いついたものがあれば、変な音だとしても入れるようにはしてますね。

──それはジャズの即興性から生まれた感覚?

あ、それはそうかもしれないですね。完全に自分の感覚と技術のみでやってるんで。ジャズってそういう音楽ですからね。要は手癖というか。即興といえど、ゼロからのスタートではなく、自分の持ってるフレーズという 、引き出しの中にあるものを組み合わせる作業なんで。

──ジャズはもちろんですが「Full Circle」のネオアコっぽい感覚とか、「Pretty Little Darling」のようなサーフミュージックっぽさ、「赤い傘」のようなジャパニーズフォークな雰囲気とか。シンプルな 中にいろんな要素がまざりあっているのが大橋トリオの魅力だと思うんですよね。

基本的にはジャンルにこだわらずいろいろ聴いてますからね。アコギ1本でやるのも好きだし、クラシックもいいなって思うし。奥の深い音楽なら何でも好きですね。薄っぺらいものじゃなく、本物だなって思う音楽は何でも好き。だから英語でも日本語でもやるし。ただ、ソウルは大好きなんだけど、リズムが強い音楽だから自分の声には向いてないなぁって思うところもあって。ジェームス・テイラーとか、ああいうゆるいシンガーソングライターっぽいものは前から好きで歌ってたんですけど。

──では最後に、大橋トリオの今後の野望は何ですか?

海外に出てみたいですね。一番の理想は、日本語でやってるのを向こうの人がいいって言ってくれて広がるっていう形。今英語でやってるのは趣味というか(笑)。あとは、楽曲提供とかももっとできるといいですね。

アーティスト写真

ミニアルバム『A BIRD』 / 2009年5月13日発売 / 2100円(税込) / rhythm zone / RZCD-46205

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CD収録曲
  1. はだかの王様
  2. Full Circle
  3. A BIRD
  4. Today, Tonight
  5. Pretty Little Darling
  6. Carnival
  7. Shine
  8. 赤い傘
大橋トリオ(おおはしとりお)

マルチプレイヤー大橋好規によるソロプロジェクト。 音楽大学を卒業後、2003年に映画「この世の外へ クラブ進駐軍」にピアノ演奏とビッグバンドアレンジで参加。その後も映画やCMの音楽制作や楽曲提供、サ ポート演奏などで幅広く活躍する。2007年に大橋トリオ名義のアルバム「PRETAPOTER」、2008年に「THIS IS MUSIC」、2009年5月にメジャー1stミニアルバム「A BIRD」をリリース。クオリティの高い音楽性と独自のセンスで多くのファンを魅了してい る。