ナタリー PowerPush - THE NOVEMBERS

実験と挑戦の先に見えた柔らかな光「GIFT」

2012年は意欲的に自主企画イベントを開催したり、ファッションショーの音楽をライブ演奏というスタイルで担当するなど、これまでのフィールドを越境した活動を行い、バンドの可能性を更新してきたTHE NOVEMBERS。

「人と関わることから生まれるいい変化」を実感してきた彼らが必然的に生み出したのが、今回の新作「GIFT」だ。実は新しい試みに満ちていながら、あえてその手法を事前に情報として発信していない本作。その理由や、アルバムの内容に至る経緯をフロントマンの小林祐介(Vo, G)に訊いた。

取材・文 / 石角友香 インタビュー撮影 / 福岡諒祠 撮影協力 / 風知空知

いろんな人に会ってみたくなった

──前作以降、自主企画ライブやファッションショーでのライブなど、新しいことに挑戦していますね。

インタビュー写真

そうですね。全般を通して言えるのが、他人との関わり合いが増えたし、増やしたしっていうところですかね。

──きっかけはなんだったんですか?

去年「LAD MUSICIAN」のショーに招待されて観に行ったんです。会場は代々木の第二体育館で椅子が円状に舞台装置として設置されてる真ん中に、幾何学的なモチーフのストロボみたいな照明があって。ショーが始まると真っ暗になってあり得ないくらいスモークが焚かれて、爆音のジョン・ケージが流れて美しいモデルたちがそこを歩くっていう演出だったんです。それを見たときに、自分たちがやりたいことをどこまでも徹底するっていうのは、良い悪いを越えたすごみがあるんだなと実感して、そこから突き動かされるかのように個人的に曲を作ったんです。

──その時点では発表する予定はなかったんですね。

そうです。人と関わることや誰かに触発されたことを、自分の中で昇華したり還元したりできるんだなとか、あるいはそういうことをするのが素敵だなと感じて、そのモニュメントというか記念になったというか。

──そしてそこから実際に行動を起こしていった?

はい。その曲を作ったことで、ファッションと音楽の関わり合いだけじゃなくて、自分が関わる環境の全てにそうした可能性が残されてるんだなあと思うと、いろんな人に会ってみたくなって。例えば同世代で同じような音楽を聴いて育って、カッコいいことをやってるあのバンドはどんな人たちなんだろう?っていう興味がどんどん湧いていて。それで実際そういう人たちに会いに行きつつ、会うだけじゃなく、そのときに自分の心の中で起こる変化にも興味があったし、その人の中で僕っていう人格が形成されていくことを想像したりする楽しみもあって、そういういろいろが楽しくて、あっという間に今になっちゃったっていう気分ですね。

自主企画ライブ「Moire(モワレ)」

──自主企画ライブの「Moire(モワレ・正式表記はeの上にアクサンテギュ)」は知り合いのバンドマン同士で「じゃ、次は対バンやろうね」っていうノリではなかったんですね。

むしろゼロから出会いに行った形ですね。PLASTICZOOMSの場合は同時期にお互いがお互いのバンドのことを思ってて、まず彼らが僕らのライブを観に来てくれたんですけど、ちょうど誘おうと思っていた時期なので、うれしかったですね。そしていざ話してみたら思っていたとおり素敵な人たちで。思っていた以上に野心的というか。僕は野心をクールに見せている人たちが実はすごく好きなので。

──2回目のゲストのLillies and Remainsは全くのゼロからですか?

リリーズはホントにゼロからで。レーベルのメールフォームがあったので、「これこれこういうもので……」って連絡して。

──レーベル担当に?(笑)

はい(笑)。それでその担当の方とボーカルのKENTくんとうちのマネージャーで会って話をして。やっぱりすごく面白い人でしたね。リリーズはリリーズなりにシーンに対して自分たちのやり方で虎視眈々というか、敵対するんじゃなくて自分のやり方を提案する人たちなんで。PLASTICZOOMSもリリーズもすごくポジティブだと思いますね。

LAD MUSICIANのショーの衝撃

──他人との関わりを増やした発端であるLAD MUSICIANのショーに今年はライブという形で出演もしましたね。

インタビュー写真

出ましたね(笑)。

──ショーで音楽を演奏するだけでなく、後半は完全にTHE NOVEMBERSのライブになっていて。しかも誰からともなく観客が前に押しかけるという(笑)衝撃的な結果になって。

僕らにとっても衝撃でした(笑)。

──その中で小林さんが観客の目の前50cmぐらいのところで正面を向いて演奏していたのが印象的でした。

あの環境はすごかったですね。モデルがいきなり目の前で踊り始めたとき、すごいびっくりしたんですけど。でもずっと長くライブを見てくれてる友達が、あの日が一番面白かったと言ってくれたり、ファン以外の人が圧倒的に多い中で、普段の僕らのお客さんとは違う楽しみ方をみんながしてくれたというか。踊る人、暴れる人、写メを撮りまくる人とか、いろんな人がいて。

──そんなに冷静に観てたんですか?

いや、それはあとから映像を観てですけどね。そのときは写真とか撮られてるし、僕も興奮してるから「何、撮ってんだよ!」って叫んでたんですけど(笑)、でもすごく楽しかったですね。

THE NOVEMBERS(ざのーべんばーず)

プロフィール画像

小林祐介(Vo, G)、ケンゴマツモト(G)、高松浩史(B)、吉木諒祐(Dr)からなるロックバンド。2005年から活動をスタートさせ、2007年11月に「THE NOVEMBERS」でデビュー。2008年6月に初のフルアルバム「picnic」、2009年3月に「paraphilia」、2010年3月に2ndアルバム「Misstopia」をリリース。2011年8月にシングル「(Two) into holy」とアルバム「To (melt into)」を2枚同時に発表し、2012年3月には台湾で行われたロックフェス「MEGAPORT FES 2012」にも出演。同年11月に「GIFT」をリリース。