Novelbright「seeker / ワンルーム」インタビュー|躍進と進化の先に見つめる、バンドシーンの未来

大阪・大阪城ホールでワンマンライブを行い、テレビ朝日系ドラマ「漂着者」や映画「犬部!」の主題歌を担当するなど、この夏さらなる躍進を遂げたNovelbright。昨年12月に配信リリースしたバラード曲「ツキミソウ」はストリーミング累計再生回数1億回を突破し、大きな盛り上がりを見せている。

そんなNovelbrightが11月24日にメジャー1stシングル「seeker / ワンルーム」をリリースした。シングル表題曲の「seeker」は日本テレビ系ドラマ「真犯人フラグ」の主題歌。絶望の淵でひと筋の光を探してもがき続ける主人公・相良凌介(西島秀俊)の思いに寄り添った内容となっている。もう1つの表題曲「ワンルーム」はインディーズ時代の楽曲「ふたつの影」の続編として制作されたバラードナンバーで、お互いを思って別れた2人のその後の物語が描かれている。

音楽ナタリーではメンバーにインタビューを行い、7月に行われた大阪城ホール公演や現在開催中の対バンツアーといった直近のトピックからシングルの話まで、じっくりと話を聞いた。

取材・文 / 蜂須賀ちなみ撮影 / 須田卓馬

「バンドがちゃんと生きているぞ」と世間に示したい

──約7カ月ぶりのインタビューなので、その間のバンド活動について聞かせてください。まず、2020年末に配信リリースされ、今年4月にリリースされたメジャー1stアルバム「開幕宣言」にも収録されていたバラード「ツキミソウ」が多くの人に聴かれている現状がありますね。ストリーミングの累計再生回数は1億回を突破しましたし、「Walking with you」に続く新たな代表曲が生まれたと言っても差し支えないかと思います。

沖聡次郎(G) うれしいですね。もともとそういう気概で作った曲なので。

──あの曲のどういう部分がリスナーに届いたんだと思いますか?

圭吾(B) 伝わりやすい歌詞とメロ、どこをとってもおいしい展開ですかね。

 それに、今ってバラード戦国時代だと思っていて。

圭吾 うん、間違いない。

 そのタイミングとうまいことハマったのかなとも思います。

竹中雄大(Vo) 確かにストリーミングのチャートを見ていると、エモいバラードや、ボカロ系の曲、ヒップホップが流行っているイメージがありますね。激しいバンドサウンドの曲は最近チャートにはあんまり入ってこない。個人的にはそれが悲しくて。

──バンドマンとしてそういう状況を変えたいという気持ちもありますか?

竹中 そうですね。僕らは「ツキミソウ」以前からバラードも大事にしてきましたけど、アッパーな曲も好きだし、出している曲の数で言ったらバラードのほうが少ないくらいなので。

山田海斗(G) バンドがガンガンチャートインする時代ではないと思うので、僕らはそれをひっくり返そうとがんばっている感じです。だからこそバラードだけではなくアッパーな曲もちゃんとリリースして、「バンドがちゃんと生きているぞ」ということを世間に示そうという活動方針ではあります。

現在進行形で進化し続けられている

──「開幕宣言」以降のNovelbrightは映画「犬部!」の主題歌「ライフスコール」、ドラマ「漂着者」の主題歌「優しさの剣」を配信リリースしつつ、ライブ活動も行っていましたね。中でも、7月に開催された大阪城ホール公演「大阪城公園で交わした約束『2年以内にあっちで会いましょう』を実現するワンマンat大阪城ホール」はNovelbrightにとって初めての有観客アリーナワンマンでした。シングルと同時にライブの模様を収めたBlu-ray / DVDも発売されますが、今振り返ってみて、あのライブは皆さんにとってどんな1日でしたか?

圭吾 僕にとっては“初心者マークを外した日”でした。

竹中 初心者マークって1年でいいんやで?

圭吾 いや、運転の話じゃなくて(笑)。僕はベースを始めて2年半で大阪城ホールに立ったことになるんですけど、それまでのライブで、終わったあとに完全に納得できたことが1回もなくて。「自分はまだこれだけしか弾けへん」「ここミスっちゃったなあ」みたいに劣等感を抱えながらライブをやっていた感覚がありました。だけど、大阪城ホールが終わったときには何1つ悔いがなかった。「ああ、今日で初心者終わりや」と思うことができたので、この日以降、完全に解き放たれた感じです。

圭吾(B)

圭吾(B)

山田 僕はアリーナやスタジアムのステージに立っているアーティストを見て「音楽をやりたい」と思った人間なので、アリーナに立つことで、音楽で生きている今の自分をちゃんと受け入れることができました。それで、MCでめっちゃしゃべりたくなってしまって……。

圭吾 アンコールで5分くらいしゃべってたよね。そのMCもノーカットで映像になっています(笑)。

山田 みんなに「長い」と言われましたけど、そのくらい気持ちがアップした1日でした。

ねぎ(Dr) 僕らの後ろに5面モニターがあったり、演奏中に火が出たり、あそこまで大掛かりな演出は今回が初めてでした。僕らは本番中に演出を見ることができないんですけど、後日映像を見返してみたら迫力がすごくて。「こんなことやってたんやなあ」と、終わってからも自分の中に余韻がずっと残っていました。あと、ずっと関西で活動してきたバンドなので、城ホールでやるとなったら、周りの方々がたくさん祝福してくれて。

竹中 僕、お花(フラワースタンド)が好きなので開演前に見に行ったんですけど、今までで一番数が多かったです。ファンの人からのお花もたくさんありましたし、関係者の方からもたくさんいただいて、すごくうれしかった。ライブに関して言うと、よくも悪くも「初めてのアリーナワンマンだったなあ」と思っていて。

 初めてならではのピュアな緊張感はこの先一生味わえないものだし、ショーとしてのクオリティはどんどん上げていきたいですからね。

竹中 だから、楽しかったしいい経験だったけど、「早く次のアリーナワンマンをやりたいな」と思いました。

──「2年以内にあっちで会いましょう」というライブタイトル通り、Novelbrightがずっと目標にしてきたライブだったけど、目標を達成しても燃え尽きることはなく、むしろ次に向けて気持ちが高まったと。

竹中 はい。大阪城ホールを経て、音楽に対する思い、ライブに対する思いが自分の中でさらに明確になったので「もっとがんばろう」と思えました。あと、大阪城ホールでもほかのアリーナでもいいんですけど、フルキャパでお客さんが声を出せる状態になったらもう一度やりたいですね。「この状態でこんなに楽しいんやったら、お客さんがパンパンに入っていたらもっと楽しいんやろうなあ」「声出せたらもっと楽しいんやろうなあ」と想像が膨らんでいます。

──今は対バンツアー「KICK THE AGE TOUR」を回っている最中ですよね(※取材日は10月下旬)。ゲストはKEYTALK、flumpool、THE ORAL CIGARETTES、go!go!vanillas、SPYAIR、Da-iCEとそうそうたる顔ぶれで、大きな刺激を受けているのではないでしょうか?

竹中 そうですね。去年はフェスもなかったし、最近はワンマンばかりやっていたので、僕ら自身ライブを観ることにも飢えていたんですよ。自分たちの好きなバンドのライブを観られるのはうれしいし、かつ、自分らの企画に出演していただいているので「僕たちもめちゃくちゃがんばろう」という気持ちになれています。

圭吾 城ホールからまだ3、4カ月しか経ってないですけど、ライブは確実によくなっています。

ねぎ もちろん日によってコンディションは変わりますけど、“昨日よりも今日、今日よりも明日”という気持ちはメンバー全員持っていますし、実際も現在進行形で進化し続けられているのかなと感じていますね。

希望があることを信じている歌

──ここからはシングルについて聞かせてください。まず、1曲目の「seeker」はドラマ「真犯人フラグ」の主題歌ですね。皆さんもドラマを楽しみながら見ていらっしゃるそうで。

圭吾 そうですね。毎週楽しみにしています。

山田 真犯人誰なんだろうね?

竹中 実は僕、歌詞を書くにあたって真犯人が誰なのか教えてもらったんですよ。

ねぎ え!? じゃあ歌詞を縦読みしたら、犯人の名前が出てきたりする?

竹中 ……すみません、嘘です。僕も真犯人が誰なのかは知らないです(笑)。

──(笑)。曲を制作するにあたって番組サイドから何かオーダーはありましたか?

 サスペンスドラマなので、「Novelbrightが持っているダークな一面を出した楽曲を」というふうにおっしゃっていました。最初はもう少しソフトな曲調に仕上げたんですけど、番組のスタッフの方々から「もっと攻撃的でもいい」「思いっきりやっちゃってください」というふうに言っていただいて。そういうやりとりを何回か重ねながら、この曲調に固めていきました。番組スタッフの方々がもともとNovelbrightのことを好きでいてくれたらしく、自分たちの過去の曲名を出しながら「こういう雰囲気で」と具体的に伝えてくださったので、すごくスムーズに進みましたね。

沖聡次郎(G)

沖聡次郎(G)

竹中 歌詞は、主人公の心情に寄り添うことを大事にして書きました。とはいえ、僕の心情もかなり入っていますし、「自分は普通に生きていただけなのに、勝手にレッテルを貼られて、幸せな日常が急に奪われて……」という展開は現実にも起こり得ることだから、今自分たちが生きている社会にも置き換えられるような内容になりましたね。

──ドラマは今のところシリアスな内容ですが、最終的に希望を描くことは大切にしたかったのでしょうか?

竹中 はい。僕はドラマの結末を知りませんが、もがきながら前に進んでいく主人公は、希望があることを信じているんじゃないかと感じていて。サビで歌っている「希望がなくなったわけではなく、今は隠れているだけ」「だから自分を強く持って生き抜いていこう」という内容は僕がリスナーに送りたいメッセージでもあるので、それが伝わればいいなあと思います。

──制作過程で挙がった「攻撃的な」というワードは各パートのアプローチを考える際にも意識しましたか?

ねぎ そうですね。ドラムに関しては、聡ちゃん(沖)と「とにかく攻撃的に」と話しながら固めていきました。僕はこういう激しめの曲が好きなので、やりたいことをたくさんやらせてもらえた手応えがあって。自分の中にある引き出しを全部出しました。

──ドラムは1音1音がとてもみずみずしいですね。

ねぎ 演奏しているときの手が見えるような音ですよね。こんなに激しいのに聴きやすいし。今そう言っていただいて思い出したんですけど、僕、レコーディングが終わってミックスしてもらった音を聴いたときに「ドラムの音、Novelbrightの曲の中で一番いいなあ」と思ったんですよ。レコーディングのときのテンションがよかったのもありますけど、一番はエンジニアさんの力です。

──ギターはかなりロックですね。ストリングスと一緒にメインテーマを演奏する箇所や、ツインギターでL-Rから畳みかけてくる間奏が印象的でした。

山田 L-Rで掛け合うギターソロって、90年代のビジュアル系でよく聴くやつですよね。

圭吾 あれ、クサくていいよねー。俺、「なつかしい」と思いながら聴いてた。

山田 でも、今の世代の人にとっては逆に新しいと思うんだよね。最初にも話したように、ロックなギターが鳴っている曲がチャートにもなかなか入らない……ストレートな言い方をすると流行っていない状況だからこそ「やるならやりきろう」という気持ちがあって。それで遊び心として、ああいうソロを入れてみたり、ストリングスだけでも成立するところをあえてギターでユニゾンしてみたりしました。ツインギターのところは「せーの」で録ったので面白かったですね。

山田海斗(G)

山田海斗(G)

 こういうこと、普段あんまりやらないからね。ニヤニヤしながら弾いていたらすぐ終わりました(笑)。

──ベースもかなり存在感がありますね。

圭吾 いつもより歪んでいますからね。こういう曲の場合、ベースの存在感が強いとロック感も出ると思うので、音作りにはかなりこだわりました。あと、シンプルに音量もデカいです。