Novelbrightがメジャー3rdフルアルバム「CIRCUS」を4月3日にリリースした。
昨年9月に結成10周年を迎えたNovelbright。アルバムタイトルには、結成10周年のテーマにもなった「ODYSSEY(長い冒険)」から継続して世界中を旅していくという思いが込められている。アルバムには新録7曲を含む、全15曲を収録。新曲には村山☆潤、ESME MORI、久保田真悟(Jazzin'park)、SUNNY、TeddyLoid、JIGGといったアレンジャーが参加し、Novelbrightの新たな表情を引き出している。
音楽ナタリーでメンバーにインタビューを行い、結成10周年を迎えた心境やアルバムの制作について話を聞いた。
取材・文 / 蜂須賀ちなみ撮影 / 斎藤大嗣
10年間で一番いいライブができた
──2023年のNovelbrightを振り返ると、ライブ活動が充実していましたね。結成10周年を記念した全国ツアー「Novelbright LIVE TOUR 2023 ~ODYSSEY~」、韓国での初の海外単独公演、パシフィックフィルハーモニア東京を招いての初のオーケストラコンサートなど、さまざまなライブがありました。そしてこのたび、ニューアルバム「CIRCUS」と、昨年10月に行われた神奈川・横浜アリーナ公演の模様を収めたライブBlu-ray / DVDが同時リリースされます。
竹中雄大(Vo) メジャーデビューしてからずっとコロナで制限があったし、それより前はそもそもお客さんの数が少なかったので、たくさんのお客さんの生の声をやっと初めて聞けました。それもあって、10年やってきた中で、去年が一番ライブが楽しかったです。特に今回映像化されたツアーファイナルの横浜アリーナ公演は、歌の調子もよかったし、10年間で一番いいライブができたと思う。まあ、一番いいライブができたというのは、横浜アリーナ公演の10月15日時点での話ですけどね。あれからもう何カ月か経っているので、もちろん今のほうがいいライブができます。
ねぎ(Dr) 本当にライブが楽しい1年でした。いろいろな制限が全部なくなった状態でライブをするのがひさびさだったから、全国を回りながら「ライブってこんな感じやったな」と思い出せて。横浜アリーナで1万人以上の方の生の声を聞けたときは衝撃的だったし、10周年を迎える記念の年でもあったので「10年間、早かったな」と感慨深い気持ちにもなりました。
圭吾(B) 僕は韓国でのワンマンライブが印象に残ってます。1000人ぐらい集まってくれたし、盛り上がり方もすごかったんですよ。自分たちは洋楽テイストのバンドではないけど、日本の音楽が求められているんだなと直に感じることができて。海外に挑戦するチャンスもありそうだなと可能性を感じました。まずはアジアを皮切りに攻めていきたいですね。
ここらでいっちょ確変起こしたい
──結成10周年にあたってNovelbrightは「ODYSSEY」というワードを掲げていました。昨年10月に配信リリースされ、今回のアルバムにも収録されている「ODYSSEY」は、結成10周年を記念して作られた楽曲ですね。
竹中 「ODYSSEY」=長い冒険旅行という単語の意味を海斗くんから聞いて、いい言葉だなと思って。自分たちの軌跡を日記みたいに残しておこうかなと書いた曲です。僕、バンドに向けて曲を書くのは節目を迎えたときだけでいいと思っているんですよ。例えば「時を刻む詩」(2020年5月発売の1stフルアルバム「WONDERLAND」収録曲)は、上京してやっと音楽で飯が食えるようになるぞ!というタイミングで作った曲でした。今回は10周年ということで……正直僕自身は10周年にあんまりこだわってなかったですけど、みんながお祝いしてくれて、周りの人がNovelbrightの10年を大切に思ってくれているんだなと感じたので、バンドの曲を書こうと思えましたね。ただ、次こういう曲を書くとしても「15周年だから」という理由ではないだろうし、いつどんなターニングポイントを迎えることになるのかもわからない。
──「ODYSSEY」には「もう何年も命削って心燃やして 大どんでん返し頂点まで突き進んできた」というフレーズがありますが、これまで頂点に向けて突き進んできたNovelbrightが、今どこを目指しているのか気になります。15周年を迎えるときにはどんなバンドになっていたいですか?
圭吾 5年後と言ったら、みんな30代半ば?
竹中 そうなると、いろいろ変わっていると思うんですよ。結婚しているメンバーもいるかもしれませんし。そのうえで、もちろん音楽はずっとアクティブにやっていたいです。ドーム公演が当たり前にできるアーティストになっていたらうれしいかな。
ねぎ 海外ツアーも回って、アジアだけじゃなく、アメリカやヨーロッパにも進出できていたら最高ですね。
竹中 おそらく5年後も叶ってない夢なんて死ぬほどあるんでしょうね。「悔しい」と感じることはまだまだあると思うから、落ち着かずにハングリー精神全開でいたいです。
──「ハングリー精神をずっと持っておきたい」という気持ちは、新しいアルバムにも表れていますよね。
竹中 そうですね。「ここからもっと新たなフェーズに行くんだ」という気持ちで作ったアルバムなので。
沖聡次郎(G) 2023年はアリーナ公演があったり、出たかったフェスに出られたり、よかったこともたくさんあったんですけど、自分たちが思い描いている理想と現状とのギャップに葛藤した年でもありました。
竹中 ぶっちゃけ悔しい気持ちになることが多い1年だったんですよ。2022年に出した「愛とか恋とか」を超えるヒット曲は作れなかったし。「面影」(2023年9月配信リリース)とかは自分の中で気に入ってる楽曲だから、もっと数字がいくんちゃうかなと思っていたけど、そんなに伸びきらず……。自分たちがいいと思って作っているものが世に評価されなくて、「どうしたらいいんやろ」とわからなくなることがめちゃめちゃありました。
沖 だけど悲観しているわけじゃなくて。「僕から見たメンバーはマジでカッコいいから、このカッコよさをもっと音楽で見せていけるようにならなきゃ」とポジティブに考えていった感じです。2024年にひさびさにアルバムを出すことが決まっていたので、もう一度しっかり気を引き締め直して勝負しようと決意した1年でもありました。前作から2年空いたので、「これまでのアルバム『開幕宣言』『Assort』と同じようなことをずっとしていても意味がないよね」とみんなで冷静に話し合う時間を持てたのもよかったです。
──その話し合いでは、どんなことを共有しましたか?
山田海斗(G) 「今までは“Novelbrightといえばこういう曲”というイメージに寄り添いすぎていたかもしれない」「今俺らがやりたいことにもっと挑戦していっていいんじゃないか」という話をしました。そこから、新曲ではアレンジャーを入れて、幅広いエッセンスを取り入れようという話も出ましたね。今回はフィーチャリング楽曲を作ってみたり、僕がメロディを付けたり、新しい作り方にも柔軟に挑戦できました。それぞれのパートについて意見を交換し合うことも多かったし、ディスカッションしながら作ることが全体的に増えましたね。
竹中 ディスカッションと言っても、感覚的な部分を大事にしながら進めることも多かったですけどね。例えば「Empire feat. Novel Core」や「Turn Back Time」は、海斗くんのやりたいことと僕のやりたいことが自然とマッチして形になった曲なんですよ。今までのように「こういうものにしよう」とすり合わせていく感じではなくて。この2曲のボーカルは今までにないテイストだったので、レコーディングは大変でしたけど、ボーカリストとしてパワーアップできたんちゃうかなと思ってます。というか今回、僕は今までで一番制作を楽しめましたね。完成してからも繰り返し聴いているし。
──どんなところに楽しさを感じましたか?
竹中 自分たちのイメージしていたことがちゃんと形になっていくのが楽しかったというのが、まず1つ。あと、例えば長年一緒にいる夫婦でも、何か新鮮なことがあったほうがマンネリ化しなくていいじゃないですか。同じように、バンドを続けていくためには新しいことにどんどん挑戦していったほうがいいと思ってるんですけど、「えっ、お前そんな表情もするんや?」みたいなことを自分のバンドに対して思えたというか。例えが難しいですけど(笑)。そんな感じで、今回制作をすごく楽しめたんですよね。
──バンドの潜在的な魅力を引き出せたという。
山田 そうですね。まだ世に出ていない、メンバーそれぞれが持っている力をこのアルバムに注ぎ込めたんじゃないかと思ってます。
沖 作っている最中とか曲が完成したときに、僕たち自身「やっぱり俺たちっていろいろなことができるな」という可能性を感じられたんですよ。きっと聴いてくれた人にも「こういう曲、今までになかったけど意外といけるな」と思ってもらえるんじゃないかと。
ねぎ 聴いてくれた皆さんの感想が楽しみですね。このアルバムを通じて「こんな顔もあるんだぞ」と知ってもらえると思うので。
圭吾 今までよりもさらにクオリティの高い作品ができました。口コミとか友達同士の会話でどんどん広がっていくアルバムになる気がしています。
竹中 個人的には、Novelbrightは2019年が一番勢いがあったと思っているんですよ。まったくの無名から這い上がっていくというストーリーがありましたし。だけど僕ら的にはこのアルバムで攻めの姿勢を見せられた手応えがあるので、ここらでいっちょ確変起こしたいですよね。来年はもっとデカい規模でツアーをやろうと企んでいるので、このアルバムから始まる2024年は、2019年以上の年にしたいです。
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余白を持たせる考え方ができるようになった