ナタリー PowerPush - 野宮真貴
30周年インタビュー&真貴とレキシのおしゃれ対談
デビュー当時の2人
──今回お2人に無理を言って、いろいろと写真を持参していただきましたが……野宮さんのこれはデビュー前、まさにロック少女だった頃のものですね。
池田 ええっ?
野宮 私、KISSが今でもすごく好きで。この頃、衣装も全部作ってたんです。
池田 これは、おしゃれ……ではないですよね(笑)。
一同 あははははは!
池田 カッコいいのはカッコいいですけど。
野宮 これはKISSのバンドコンテストみたいなイベントに参加したときですね。新宿LOFTかどこかの楽屋なんですけど。KISSのコンサートもこういうスタイルで観に行ってました。
──そしてこちらが30年前のデビュー当時。いわゆるニューウェイブ時代真っ只中ですね。
野宮 そう。1981年。
池田 もう、ほかとは違う空気がにじみ出てますもんね。パッと見のオーラが人と違うっていうのは、おしゃれの基盤なんじゃないでしょうか、やっぱり。
野宮 こんな時代もありました。
池田 今見ても普通におしゃれだからすごいですよ。
野宮 そう思う?(笑)
──タイムレスな、時代を問わないおしゃれですよね。でも池田さんも初期の頃から……。
池田 ちょっとやめてくださいよ(笑)。
野宮 全然変わらないですね。これはいくつの頃ですか?
池田 これはデビューの頃だから、多分23歳ぐらいですね。
野宮 このときはもうカツラではないんでしょ? 全部自毛?
池田 ええ。カツラ時代の写真があれば一番わかりやすいんだけどなあ。
──基本はこの頃から全くブレてないですね。
野宮 すごいですよ。
池田 でもね、しんどいわけですよ。アフロも。何回かは「もういいかな」って思ったこともありました。
野宮 手間がかかるんですか?
池田 アフロあててるときってとにかく痛いんです。
KISS「地獄への接吻」はすごくおしゃれ
──野宮さんの場合は時代はおろか、それこそ作品ごとに表情もファッションも違う、変幻自在の30年間だったと思うんですけど。これはピチカート後期、シングル「東京の合唱」のときの写真ですね。
池田 これ浅草ですか?
野宮 そうです。雷門。
──これオフショットだと思うんですけど、絶妙な写真ですね(笑)。
野宮 今回のために写真を探してたら懐かしいものがたくさん出てきて、この写真も偶然見つかったの。全然整理してないけど、写真は山ほどありますよ。ピチカート時代は本当にいろいろやりましたね。アフロのウィッグも、1個じゃなくていっぺんに2つつけたり、3つつけたり。
──これまでのファッションを振り返る本などは作らないんですか? 30周年に併せてやると面白そうですよね。写真で振り返る30年史。
野宮 やりたいけど大変ですよねえ……。
池田 貴重な資料になるんじゃないですか? ファッション史的にも。
野宮 そうかもね(笑)。これはKISSのコンサートに行ったとき。だからこういう人たちがいっぱいいるわけ。
池田 ちょいちょいKISSが出てくるんですね(笑)。
野宮 日本でやったコンサートは全部行ってますからね。
──デビュー前からゆるぎない、憧れのスーパースターというとKISSなんですね。
野宮 そうです。初来日から全部行ってますから。最初にKISSの写真を見たのが「ミュージック・ライフ」に載ってた3rdアルバム(「地獄への接吻 Dressed to Kill」)のジャケットのオフショットなんだけど、モノクロ写真で、このメイクでみんなスーツを着てたの。それがすごくおしゃれだと思っちゃったのね(笑)。そこからハマっちゃって。あとほら、キャラクターっぽいじゃない? グッズもかわいいし。
──ある意味「キャラクターっぽさ」みたいなところもお2人の共通点ですよね。単にスマートなおしゃれではなく、どこか「えっ!?」と引っかかりがあるおしゃれというか。
野宮 ウフフ!
池田 そんな無理に共通点見つけてもらって申し訳ないです(笑)。
まつげも4、5枚つけてました
野宮 レキシの衣装は、借りてくるの?
池田 いえ、買うんです。ネットで(笑)。イメージを固めるために歴史民俗博物館とかに行って「こういうのがいい」ってスタッフに伝えて。
──KISSに憧れてる人が写真を見て「この衣装を」って言うのと同じ感覚ってことですよね。憧れの対象がたまたま平安時代だったりするだけで(笑)。
池田 コスプレですもんね(笑)。まあ、あとはインパクトです。
──秋葉原のコスプレ文化圏にお2人が支持される可能性もありますよね。
野宮 そうですね。ピチカート時代はそれこそ今で言うコスプレっぽい衣装もいっぱい着たし、いろんな色のウィッグを使ったり、まつげも4、5枚つけてましたしね。村上隆さんが話題になるちょっと前だったと思いますが、日本独自のカルチャーとして捉えられていたところはありますね。キティちゃんみたいに。
──いろんなパターンがあるけど、どこか徹底した野宮イズムみたいなものを感じます。ここまでやっても様になるという(笑)。ちょっとレキシっぽいですね。
池田 今回僕アー写で柔道着を着てるんですよ。次のツアーが「レキシでも金」っていうタイトルで(笑)。ゴールデンウイークにやるから。ちょっとかぶってますね。
野宮 このときはね、あそこで撮ったんです。浅草のマルベル堂。
池田 プロマイドの。
野宮 だからいろんな格好してるの。セーラー服も着ちゃったし。小西くんは学生服。テニスルックとか、そういう懐かしい感じのをいろいろ撮ったんです。
──防具すらおしゃれに見えてくるっていうのはすごい力だなと。
野宮 本当?(笑)
──野宮さんは日本らしい風景で撮ると日本人離れした感じに見えるし、海外だとすごく日本人らしく見えるんですよ。自分の中の日本人性みたいなものって意識されることはあるんですか?
野宮 あんまり意識はしないかな。
池田 ほら!
野宮 え?
池田 僕が最初言ったやつでしょ? 意識してないんですよ。これが自然なんです、逆に。意識してる人がここまでなじめないっていうか。ほらね。
CD収録曲
- マキのレキシ -OPENING- / Produced by レキシ
- 東京は夜の七時 / Produced by DJ FUMIYA(RIP SLYME)
- 私の知らない私 / Produced by テイ・トウワ
- ベイビィ・ポータブル・ロック / Produced by ヒャダイン
- スーパースター / Produced by 雅-MIYAVI-
- スウィート・ソウル・レヴュー / Produced by DAISHI DANCE
- マジック・カーペット・ライド / Produced by コーネリアス
- トゥイギー・トゥイギー / Produced by □□□
- 皆笑った / Produced by 高橋幸宏
- ウサギと私 / Produced by 鈴木慶一 & 曽我部恵一
- 悲しい歌 / Produced by 大橋トリオ
- メッセージ・ソング / Produced by カジヒデキ
- 陽のあたる大通り / Produced by YOUR SONG IS GOOD
- マキのレキシ -ENDING- / Produced by レキシ
<BONUS TRACK>
- スウィート・ルネッサンス / Performed by ポータブル・ロック
野宮真貴(のみやまき)
1981年7月にソロ歌手としてデビュー。その後、中原信雄、鈴木智文らとともにポータブル・ロックを結成する。1990年にはピチカート・ファイヴに加入し、その完璧なスタイルと美貌を武器に世界中の音楽シーンを席巻した。2001年のピチカート解散以降はソロ活動を再開。おしゃれな生き方を指南する「おしゃれ手帖」などの著書もあり、ファッションのみならずライフスタイルの面でも幅広い世代の女性から絶大な支持を集めている。2012年1月25日にはデビュー30周年記念アルバム「30 -Greatest Self Covers & More!!!-」をリリース。
池田貴史(いけだたかふみ)
1974年2月15日、福井県鯖江市生まれ。1997年にSUPER BUTTER DOGのキーボーディストとしてデビューし、ハイクオリティなプレイとエンタテインメント性あふれるパフォーマンスで人気を博す。2004年からは中村一義が結成したバンド、100sのメンバーとしても活躍。2007年にソロプロジェクト、レキシとしての1stアルバム「レキシ」をリリース。豪華ゲスト陣とともに、日本史の登場人物や史実をポップミュージックに乗せて歌うスタイルで大いに注目を集めた。2012年5月2日には東京・LIQUIDROOM ebisu、6日に大阪・umeda AKASOにてワンマンライブ「レキシでも(金)」を行う。