ナタリー PowerPush - 野宮真貴
30周年インタビュー&真貴とレキシのおしゃれ対談
雅-MIYAVI-くんはまさに「スーパースター」そのもの
──今回のアルバムは、結果的にピチカート時代の楽曲が過半数ですが、どうしてこのようなラインナップになったんですか?
自分のシンガーとしての30年のキャリアを振り返って、もう一度歌いたい曲を純粋に選んだら、やっぱりピチカートの10年間が私にとって一番たくさんの曲を歌ってた時期だし、好きな曲が多かったので。
──各曲のプロデューサーの顔ぶれも興味深いです。デビューからかかわっている鈴木慶一さんや、盟友とも呼べる小山田圭吾さん、TOWA TEIさん、さらにはファンとして多大な影響を受けたというヒャダインさんのような若い世代まで幅広くて。一番意外だと感じたのは雅-MIYAVI-さんでしたが、彼がプロデュースした「スーパースター」が個人的には一番のお気に入りです。
雅-MIYAVI-くんには絶対「スーパースター」をやってもらいたくて。曲指定でオファーしたんです。3年前の夏、「ブラジルの渋谷系」って呼ばれているPATO FUのフェルナンダ・タカイさんに呼ばれて、彼女のソロライブにゲストで出たんですよ。雅-MIYAVI-くんは世界中をツアーで回っていて、ブラジルでもすごく人気があったの。ブラジルの街にもポスターが貼られていて「日本人だったら知ってるでしょ、彼を」って。その後、レスリー・キーというカメラマンが“ミュージック”をテーマにいろんな人を撮った雑誌の特集号を出して、そこではたまたま私と雅-MIYAVI-くんが隣同士のページだったんです。彼の音楽は気になってたし、何かお願いしたいなと思ってたら、レスリーを通してTwitter上でつながって。「ちょうど次の週に雅-MIYAVI-くんのお誕生会があるから来ない?」って誘われて初めてお会いしたの(笑)。
──独特のスタンスで活動している方ですよね。ちょっと変わってはいるけれど、ロックスターの匂いがします。
そう! まさに「スーパースター」そのものだと思って。彼は多分渋谷系みたいな音楽は通ってないと思うんですけど、自分がやりたいと思ったらギター1本ですぐに動ける人だから、ミュージシャン同士で話をして作り上げる感じもいいなって。素晴らしいプロデューサーでしたよ。
──逆に、ピチカート大好きっ子を公言しているヒャダインさんは?
超面白かったです。彼はピチカートのハッピーで楽しい部分を一番引き継いでいる人だと思うから「ベイビィ・ポータブル・ロック」が一番合いそうだなと思って、「この曲でお願いします」って頼んだら、彼が一番やりたかった曲だったからうれしかったって言ってました。レコーディングのときに初めてお会いしたんですけど、なんかヘンだった(笑)。ずっとハイテンションでしたね。笑ってるかと思ったら急に泣き出したり(笑)。
──彼はピチカートの、小西さんが持っている内省的な側面にはあえて触れず、あくまでハッピーな要素だけを引き継いでいるような印象があります。
そうですね。最近はそういうハッピーなものがあまりないじゃない? アイドルは別として。そこを受け持っていただけるのはうれしいですよね。
なんとなく面白くなっていきそうな気配は感じてる
──野宮さんが30年間やってきたことって、明確な後継者がいない気がするんですね。野宮さんが思う自分の後継者というと変ですが、この人の活動は自分と近いなっていう人いますか?
うーん、あんまり最近の音楽を聴いてないのでわからないですね。でも、少し前まではファッションにはあんまり関心ないみたいな音楽が多かったけど、最近は派手めの人も出てきているじゃない? なんとなく面白くなっていきそうな気配は感じてる。
──ああ、女王蜂や解散してしまった毛皮のマリーズの存在は、野宮さんやピチカートにも近いものを感じます。毛皮のマリーズはビジュアルも信藤さんでしたし。
そうそう、彼らとかね。いい感じ。きっと私が知らないだけで、素晴らしいアーティストが出てきてるんだと思いますけど。私はやっぱり音楽だけじゃなくて、同時に見た目にも楽しくて素敵な人たちが好きなので。自分もずっとそうありたいけど、若い人たちでもっとビジュアルに凝った人とか、派手な人が出てくるとうれしいです(笑)。
──この10年ぐらいは、作品をビジュアル込みで作り込んでいくような音楽よりも、生身の自分をライブで表現する、みたいな音楽が主流だったように思うんですね。それが僕個人としては少しさびしかったんですけど、確かにここ最近、90年代の音楽にあったワクワク感に近いものが盛り返しているような気配がなんとなくあって。
それは感じますね。なんとなく、ひと回りするのに10年くらいかかったのかなって感じですけど。
CD収録曲
- マキのレキシ -OPENING- / Produced by レキシ
- 東京は夜の七時 / Produced by DJ FUMIYA(RIP SLYME)
- 私の知らない私 / Produced by テイ・トウワ
- ベイビィ・ポータブル・ロック / Produced by ヒャダイン
- スーパースター / Produced by 雅-MIYAVI-
- スウィート・ソウル・レヴュー / Produced by DAISHI DANCE
- マジック・カーペット・ライド / Produced by コーネリアス
- トゥイギー・トゥイギー / Produced by □□□
- 皆笑った / Produced by 高橋幸宏
- ウサギと私 / Produced by 鈴木慶一 & 曽我部恵一
- 悲しい歌 / Produced by 大橋トリオ
- メッセージ・ソング / Produced by カジヒデキ
- 陽のあたる大通り / Produced by YOUR SONG IS GOOD
- マキのレキシ -ENDING- / Produced by レキシ
<BONUS TRACK>
- スウィート・ルネッサンス / Performed by ポータブル・ロック
野宮真貴(のみやまき)
1981年7月にソロ歌手としてデビュー。その後、中原信雄、鈴木智文らとともにポータブル・ロックを結成する。1990年にはピチカート・ファイヴに加入し、その完璧なスタイルと美貌を武器に世界中の音楽シーンを席巻した。2001年のピチカート解散以降はソロ活動を再開。おしゃれな生き方を指南する「おしゃれ手帖」などの著書もあり、ファッションのみならずライフスタイルの面でも幅広い世代の女性から絶大な支持を集めている。2012年1月25日にはデビュー30周年記念アルバム「30 -Greatest Self Covers & More!!!-」をリリース。