歌うことを奪われたらただのつまんない女の子

──ありのままの自分を認められるようになった新山さんが今、自分の中で特に大事にしていきたいものって何かあります？

ひたすら悩む、ということもそうだし、なんかうまくいかないなっていう自分自身に対しての不満とかも、今すぐ消し去りたいって思っちゃダメだなとは思います。それをちゃんと受け止めることで、さらにいい方向へ自分が変わっていけることにほんと今さら、最近になって気付くことができたので。思い返せば、そういう悩みとか葛藤は自分の軸でもあったと思うので、そこはずっと持っていていいんじゃないかなって。

──今までは、そういう悩みごとが一切なくなればいいと思っていた？

そうですね。悩んでいるときはほんとにイヤだなって思うことのほうが多いので……誰でもそうだとは思うんですけど。でもなんかそれもひとつの自分だよなって、優しい心持ちでいられたらいいんじゃないかなって思えるようにはなりました。

──日常の中、どんなことで悩むことが多いんですか？

ほんとちっちゃなことでも悩むんですけど、友人との会話の中のひと言とかで悩むことは昔から多いです。自分が言った言葉をあとから思い返して、「そうじゃなかったな」とか。

──本心とは違ったことを言ってしまったということ？

いや、ウソではないんですけど、別の言い方があったなあって思ってしまうというか。

──ああ、なるほど。新山さんって、今こうやってお話していても、ものすごく考えて言葉を発していますよね。だからこそ、自分が放った言葉に対して人一倍責任を感じてしまうところがあるのかも。

そう、なんですかね。あいまいな気持ちを絶対言いたくないし、もちろんウソも言いたくない気持ちが強いから、確かに考えてしゃべるようにはしています。ただ、ちょっと考えすぎなところがあるので（笑）、こういうインタビューでも相手の方をお待たせしてしまうことが多くて。ほんとにすみません。

──いやいや全然大丈夫なんですけど（笑）。

そういう自分なので、会話の中では言えないことを詞にすることはやっぱり多くて。だから自分の素直な感情は、曲たちにすごく反映されてるなとは思います。歌として聴いてもらえば、私が思ってることが伝わるんじゃないかなって。そもそも、中学の頃に「自分にはこれがある」「これがあれば日々やっていけそうな気がする」って思ったのが、自分の思いを歌にすることだったので。歌うことを奪われてしまったら、ただのつまんない女の子になると思います（笑）。

新しい世界の扉を開く作曲陣

──歌に関して言うと、今回のアルバムにはこれまで以上に幅広い表情が詰まっていますよね。それは、サウンドプロデューサーである笹路正徳さんをはじめ、加藤裕介さん、堀向彦輝さん、松隈ケンタさんなど、多彩な作曲家陣が参加されていることも大きな要因かと思うのですが。

はい。そこも、もうひと段階新しい世界の扉を開けるんじゃないかっていう期待を込めて。いろんな挑戦もできましたし、曲が引き出してくれる自分の新しい一面が今回はたくさんありました。ロックな表情とかも。

──「Dear friend」なんかは疾走感のあるロックチューンですもんね。ロック好きな新山さんの表情を感じることができました。

「Dear friend」は今までにあんまりなかったタイプの曲で。曲調が攻め攻めな感じだったので、そこにあえて儚い詞を付けたらグッと響くんじゃないかと思い、一昨年友人と花火を見に行ったときの出来事をそのまま書きました。リズムに乗っかって歌うのがすごく気持ちよかったですね。サビで花火みたいにパッと一気に開く感じがあるので。

──タイトルからズバリな「しおりのR&R」という曲もあります。

はい。ライブ映えする曲が欲しくて制作しました。作詞面では、この曲が一番悩みました。このタイトルがデモの段階で仮で付いていたので、それを生かして自分自身に向かって投げかけている内容にしたんですけど。この詞で自分のことを客観的に見られたからこそ、改めてありのままでいいかなって思えるようになったところもありましたね。

──歌ではかなりシャウトもしてますね。

うふふふ（笑）。自分が好きで聴いてる音楽がこういうロックンロール寄りのサウンドだから、歌ってても楽しいです。ちょっと挑戦した歌でもあったので、いろいろ考えて試しながらレコーディングして。この曲はいい意味でおちゃらけた気持ちで歌いました。ライブでもかなり映えると思います。