不安って一番人を成長させるのかな
──ここからは、新作「A GOOD TIME」の収録曲のことを聞かせてください。7inchシングルでもリリースされた「SURELY」ができたことは、バンドにとっても大きかったのでは? 曲も歌詞も明らかに、これまでのネバヤンからギアチェンジしています。
安部 「SURELY」は自分でも大好きな曲です。ポップなメロディで前向きなことを言ってしまうと本当にきれいごとになってしまうし、僕の声とかキーも含めてどういう言葉がフィットするかを考えました。この歌詞は合宿中にできたんです。なかなか歌詞ができなかったんですけど、あるとき薄明光線っていう雲の後ろ側から光が透けて見えるのと青空が広がってた光景と、バターが溶ける感じやその匂いにすごくポジティブな力を感じたんですね。そういう前向きな気持ちを曲に入れたいし、風が抜けるような感じをどうにか僕なりのきれいごとじゃない言葉にしたいと思って。
──直球すぎると言うか、クサいとも言われかねないテーマをこうやって押し通すことができるようになったんだって、この曲をLIQUIDROOMでのワンマンライブ(2017年4月8日開催)で初めて聴いたときに感動しました。ストレートな8ビートにしたのは? ここまで正面きってのオンビートな曲は、ネバヤンにはなかったスタイルですね。
阿南 最初はとまどいました。僕もそんなに音楽的、人間的に開けていないほうなので、この曲をスタジオで合わせ始めたときに「あ、ここまで開けた曲をやるんだ」っていう驚きがちょっとあったんです。だけど、アレンジを重ねたり、歌詞を聴いたり、みんなでコミュニケーションを取っていくうちに、「この曲を僕らがやるのは必然だな」ってことにだんだん気付き始めて。そう思うようになったら、もうめちゃくちゃ感動してました。この曲には、いろんな感情が混ざってるんですよ。「俺らが上がってくぞ」っていう気持ちも入ってるけど、ところどころでは斜に構えたスタンスも感じさせつつ。「fam fam」以降の1年が切り取られてまとめられた曲なんだなと思います。
──1歩も2歩も前に出るという気持ちが出てますよね。
安部 出なきゃいけないと思いました。これまでも「どうでもいいけど」や「喫茶店(あまり行かない喫茶店で)」「明るい未来」とか、いい曲をみんなで作ったけど、歌ってたことはわりと近い距離感のことなんですよ。自分たちの曲をもっと遠くに飛ばすためにはどうしたらいいかを考えてましたね。「SURELY」を遠くに飛ばすことで、これまでの曲ももっと遠くに飛ばすことができると思うんです。いつまでも同じ人たちにしか響かない歌を作るのは全然新しいことじゃないし、それは正直もうこの5人がそろってればできちゃうと思うんです。それよりも、もっと知らないところに行くにはどうしたらいいか。不安だし、ドキドキするけど、不安って一番人を成長させるのかなと最近思ってるんです。落ち着かないことをやってみよう、って。
なんだよ、書けるよ別の歌詞!
──今安部くんが言ったこととも通じますけど、「SURELY」に続くアルバムのラストナンバー「海辺の町へ」もすごく印象的ですよね。このバラードにも知らないところで大きな景色を見る不安というかドキドキ感が歌詞に込められていて。
安部 これはもともと全然違う歌詞だったんですよ。僕が夜な夜なスズケンやマネージャーと遊んでたときのことを書いた、「疲れた、もう寝たい」みたいな歌詞。でもそれを読んだ阿南が「出がらしじゃねえ?」って(笑)。「ほかの曲を引き立たせるための、あえての出がらしなんだ」って言ったんですけど、「ちょっとこれ、ないわ」って反応で。そういうこと初めて阿南に言われたんで、僕は深く傷付いたんですけど(笑)。
阿南 僕はこの曲のオケができたときからすごく思い入れがあったんですよ。だから、「この感じなのに、この歌詞かよ」ってすごくズッコケたんです。
安部 それで僕も「なんだよ、書けるよ別の歌詞!」って感じになって書き直して、ああなったんです。鎌倉に行っていろいろ考えたときのことを書いたんですけど。
──こういう節目になるアルバムが物思いのある曲で終わるのは、すごくいいですよ。前向きな確信だけじゃない隙間が、ファンの気持ちを捉えると思うし。そういう意味では、「白い光」「City Lights」……ほかの新曲の歌詞からも、みんなが好きだったこれまでの“ネバヤンらしさ”からちょっとずつはみ出す変化が感じられます。
安部 だいぶ変化は出てますよね。もっとストレートに伝えてみようって思ってますし。それに、たぶん“ネバヤンらしさ”というものが僕らを一番苦しめるんですよ。だからイメージが定まってないうちにどんどんいろんなことをしていかないと。今のうちに「SURELY」みたいな曲を作らないと、 “ネバヤンらしさ”がどんどん固くなっていって何もできなくなると思ったんです。
──そういう前向きな意識への変化はありつつ、「パンケーキ」とか「キッチン」とか、ちょっとしたかわいらしい言葉が自然と入ってくるのも安部くんの作詞術だなと思います。
安部 「こういうメロディやアレンジと僕の声で、どういう言葉が出てきたら面白いのかな」とか、「僕らの感じがでるのかな」とか、そういうことはすごく考えるんですよ。変わっていくけど、大事なところは絶対に損なってはいけないので。かと言って、内側には向きすぎない。ちゃんと面白い言葉も入りつつ、僕らのことを知らない人も入ってこれて、かつ好きになれるようなイメージをして歌詞は書きました。そういう曲もあって、「SURELY」みたいな曲もある。アルバムの中を通していろんな感情が表現されていて、それでいて1枚として聴き通せるという、そういうことを初めて意図して作ったので、本当にいいアルバムができたなと思いました。
行けるところまで行きたい
──何より一番いいのは、このバンドでやるべきことに対して自覚的になったということですよね。
安部 もっとちゃんとしなくちゃってことですよね。プロ意識と言うか、それでお金をもらっているし、僕らに期待してくれてる人がどんどん増えてきてるので、そういう人たちを裏切ることはしたくない。だから「いやだな」思うことがメンバーにあると、僕はすぐ言います。自分で溜めちゃうと僕は脳味噌が痛くなってきて死にそうになっちゃうし、言わないと本当に嫌いになって解散とかしちゃうかもしれないんで。
──バンドって日々の積み重ねが大事だと思うし、それを正直にこうやって出してるのもいいところだと思います。
安部 だいぶガチンコだよね。
阿南 なかなかないんじゃない? こんなガチンコなの。
鈴木 ライブでもけっこうダメな演奏した場合、その人はもう「ごめんなさい」しか言えなくなるくらい普通に怒られますからね。
安部 そうじゃないとお客さんに失礼ですから。その先に行かないと一生大した景色も見えずに終わってしまうので、行けるところまで行きたいなと思ってます。みんなが予想もしてなかったようないいライブだったり、お客さんの熱気だったり、そういう景色を観たときに「わ、すげえ、これ観たことないな」と思う。でもその「観たことないな」は、その瞬間「観たことある」になるんで、それをどんどん更新しなきゃいけない。それが会場の広さかもしれないし、演奏してる側の気持ちよさとか、すごいいい音源ができたとかかもしれないし、そういうのは全部つながってると思うし、1個でも妥協したら崩れていくものなので。それがあって初めて生活も豊かになり、どんどん普段も楽しくなると思うんです。
──そういう意味では共有してる景色というのは、具体的な場所というより、自分たちの内側で感じてるものでもある。
安部 内側で感じてるものって絶対に外に出てくるんですよ。曲もそうだし、ライブでも僕ら5人の動きだったり笑顔だったりに出る。それがまた観てる人たちの内側に入って、興奮したりする。どこの大きな会場でやりたいとかではなく、ライブでのコミュニケーションで自分が予想もしてなかった状態に入ると、「あ、やっててよかった」と思います。
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音楽も遊びも本気でやんなきゃいけない
- never young beach「A GOOD TIME」
- 2017年7月19日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
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初回限定盤 [CD+DVD]
4104円 / VIZL-1196 -
通常盤 [CD]
2808円 / VICL-64814
- CD収録曲
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- 夏のドキドキ
- なんかさ
- 気持ちいい風が吹いたんです
- SUNDAYS BEST
- 白い光
- 散歩日和に布団がぱたぱたと(Band ver.)
- CITY LIGHTS
- SURELY
- 海辺の町へ
- 初回限定盤DVD収録内容
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ONE MAN TOUR "April O'Neil" 2017.4.8@LIQUIDROOM
- Motel
- 自転車にのって
- どんな感じ?
- 散歩日和に布団がぱたぱたと
- 気持ちいい風が吹いたんです
- ちょっと待ってよ
- Pink Jungle House
- どうでもいいけど
- あまり行かない喫茶店で
- fam fam
- 夢で逢えたら
- SURELY
- 明るい未来
- お別れの歌
- never young beach「SURELY / 気持ちいい風が吹いたんです」
- 2017年6月21日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
-
アナログ盤
1620円 / HR7S-044
- 収録内容
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SIDE A
- SURELY
SIDE B
- 気持ちいい風が吹いたんです
ライブ情報
- never young beach 3rd album「A GOOD TIME」TOUR
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- 2017年9月3日(日)岡山県 YEBISU YA PRO
- 2017年9月14日(木)愛知県 THE BOTTOM LINE
- 2017年9月15日(金)静岡県 HAMAMATSU FORCE
- 2017年9月18日(月・祝)北海道 cube garden
- 2017年9月22日(金)香川県 DIME
- 2017年9月23日(土・祝)福岡県 BEAT STATION
- 2017年10月1日(日)大阪府 ユニバース
- 2017年10月14日(土)石川県 Kanazawa AZ
- 2017年10月15日(日)新潟県 NEXS Niigata
- 2017年10月17日(火)宮城県 SENDAI CLUB JUNK BOX
- 2017年10月20日(金)東京都 赤坂BLITZ
- never young beach(ネバーヤングビーチ)
- 安部勇磨(Vo, G)、松島皓(G)、阿南智史(G)、巽啓伍(B)、鈴木健人(Dr)からなる5人組バンド。2014年春に安部と松島の宅録ユニットとして始動し、同年9月に現体制となる。2015年5月に1stアルバム「YASHINOKI HOUSE」を発表し、7月には「FUJI ROCK FESTIVAL '15」に初出演する。2016年には2ndアルバム「fam fam」をリリースし、さまざまなフェスやライブイベントに参加。2017年7月にSPEEDSTAR RECORDSよりメジャーデビューアルバム「A GOOD TIME」を発表した。