TENDOUJI×ROY(THE BAWDIES)|「CRAZY」なコラボ実現!2組が考えるガレージ感の生み出し方、英語で歌うこと

2020年のTENDOUJIは両A面シングル「HEARTBEAT / SUPER SMASHING GREAT」リリースを皮切りに、配信シングル「YEAH-SONG」「SURFPUNK」「FIREBALL」の発表、プラグレスツアー「TENDOUJI UNPLUGGED TOUR POTATO」開催および配信など、コロナ禍をものともしない活動を展開してきた。2021年は「MONSTER」「Smoke!!」の2枚のアルバム発売をアナウンスし、さらに活発な動きを見せようとしている。

音楽ナタリーではアルバム「MONSTER」の発売に合わせ、TENDOUJIとアルバムの冒頭を飾るナンバー「CRAZY」のフィーチャリングゲスト・ROY(THE BAWDIES)へのインタビューを実施。2組の出会いやレコーディング時のエピソードを語ってもらった。さらに特集の後半では安部勇磨(never young beach)、今泉力哉、植野秀章(HOLIDAY! RECORDS)、小沢一敬(スピードワゴン)、片寄明人、JIN KAWAGUCHI、Daoko、DAWA(FLAKE RECORDS)、山内総一郎(フジファブリック)、レイくん(「柏レイソル」公式マスコット)から届いたコメントも紹介する。

取材・文 / 天野史彬 撮影 / 後藤壮太郎

ちゃんと海外の匂いがするロックをやってる

──TENDOUJIのニューアルバム「MONSTER」の1曲目「CRAZY」にROYさんが参加されていますが、このフィーチャリングはどのような経緯で実現したんですか?

モリタナオヒコ(Vo, G / TENDOUJI) 「CRAZY」は昔のロカビリーとかガレージを彷彿とさせる、歪んだ声が欲しかったんです。でも、自分の声はどちらかというと丸い感じだから微妙で、曲を作っているときにROYくんの声が思い浮かんだから、「お願いしてみようか」ということになって。

ROY(THE BAWDIES) デモ音源と一緒にメールをいただいたんですけど、そこに今言ってくれたことが書いてありましたね。デモは1人の声で録ってあったけど、その時点ですごくよかったし、自分の声が加わったときのイメージも浮かびやすかった。もともとの楽曲がカッコよかったので、そこに自分の声を入れてくれたのはうれしかったです。

左からモリタナオヒコ(Vo, G / TENDOUJI)、ROY(THE BAWDIES)。

──ROYさんは自分の声が曲と合わなく感じる、ということはありますか?

ROY ありますよ。歪んでいるし、ブラックミュージックやアメリカンガレージからの影響が強いので、例えばThe Beatlesっぽい曲だと、意外と自分の声は合わないんです。そういうときは丸くなるように歌ったり、できるだけ歪みを除くようにしますね。

──そもそも2組の交流はどのようなものだったのでしょう?

ROY 僕は普段、日本の音楽シーンのバンドはあまり探らないんですけど、2、3年前にたまたまTENDOUJIのミュージックビデオを見つけて、「めちゃくちゃカッコいいな」と思ったんです。そのときはTENDOUJIとDYGLがすごく引っかかって、「新しい世代でこういう音楽をやっている人がいるのは日本の宝じゃないか」って、コラムか何かに書いたんですね。そうしたらうちのマネージャーが面倒を見ているSlimcatというバンドとTENDOUJIが競演してて。そのマネージャーを介して、「ARABAKI ROCK FEST.」の会場で直接会ったんですよね。

──最初にTENDOUJIを発見したとき、どんな部分がROYさんの琴線に触れたんだと思いますか?

ROY インタビューを読むと「売れたい」ってよく言うじゃないですか、TENDOUJIは。

アサノケンジ(Vo, G / TENDOUJI) そうっすね(笑)。

ROY でも、そう言っているわりには、やっている音楽はそういう感じではないというか(笑)。

TENDOUJI はははははは!

ROY この4人は「こうすればお客さんが喜ぶ」ということはやらないですよね。自分たちが信じていること、テンションの上がることだけをやっているように見えて。J-POPやJ-ROCKと呼ばれるものとは全然違っていて、海外の音楽の匂いがちゃんとするし。日本の音楽シーンの流れに乗っている感じではなく、本当に自分たちの好きな音楽をやっているところがすごくいいなと。

──逆に、TENDOUJIから見たTHE BAWDIESの印象は?

オオイナオユキ(Dr / TENDOUJI)

オオイナオユキ(Dr / TENDOUJI) 僕らがバンドを結成した頃、THE BAWDIESはすでに売れていたから、今こうやって会えることがすごくうれしいんですよ(笑)。

モリタ 日本国内の英語で歌っているバンドで、唯一好きなのがTHE BAWDIESだったんです。俺もROYくんと同じで、日本の音楽シーンの曲をディグることはあんまりしないんですけど。

アサノ 英語詞で歌っていて、メジャーで活躍しつつカッコよさも失っていない、そのバランスが取れている先輩ってTHE BAWDIESしかいないと思った。THE BAWDIESがさまざまな前例を見せてくれたから「英語詞でやっていこう」「俺らももっと上に行ける」と信じられたし、今でも理想にしていますね。

ヨシダタカマサ(B / TENDOUJI) THE BAWDIESがいるから先が見えるっていうのはあるよね。僕は大学に入ったあたりから日本のバンドを全然聴かなくなったんですが、そんな自分でもTHE BAWDIESのことは知っていたし。それからTENDOUJIを結成する前は会社員でドラッグストアに勤務していたんですけど、化粧品担当の女性スタッフがTHE BAWDIESの熱烈なファンで。すごくきれいでロックな人だったんです。

アサノ すげえな、それ。

ヨシダ なので、僕が会社を辞めてTENDOUJIを始めるきっかけになったのは、もしかしたらTHE BAWDIESじゃないかなって……。

一同 (笑)。

モリタ THE BAWDIESは初期からブレていないですよね。そこが本当にすごい。キャパが大きくなるにつれて、どうしても音楽性が変わってしまったり、リスナーに迎合してしまうものだけど、THE BAWDIESはクレイジーさを貫いているなって思う。めちゃくちゃリスペクトしています。

TENDOUJIとTHE BAWDIESが英語で歌う理由

──アサノさんが言うように、英語詞というのは2組の大きな共通点だと思います。THE BAWDIESは音楽をすごく身体的なものとして奏でている感じがありますよね。

ROY(THE BAWDIES)

ROY 日本人は歌詞の意味を知りたがる人が多いけど、それは素晴らしい日本語詞の音楽がたくさん存在しているからだと思うんですよね。悪いことではないんだけど、逆に音を聴いたらおのずと踊っちゃうような音楽は少なくて。そういう音楽こそロックンロールだし、俺らはその喜びを伝えたいんです。でも、日本人にロックンロールの感覚がまったくないかと言えば、そうではなくて。例えばお祭りだと、神輿を担ぎながら「わっしょい! わっしょい!」とやりますよね。そのときに「わっしょいって言葉の意味、いいよな」と考える人はいないと思うんです。何も考えず、その言葉とグルーヴに身を任せることですごい熱量が生まれる。祭りの神輿のあの感覚って、ロックンロールにすごく近いと思う。そう考えると、日本人も意味を理解せずとも、音楽に体で反応する感覚は持っているはずで。その感覚を、自分たちのロックンロールで呼び起こしたいんです。

モリタ 正直、TENDOUJIの人気が出始めた頃は「なんで英語詞のバンドなのに、こんなに盛り上がってくれるんだろう?」と感じたこともあったんですけど、今ならその理由がわかるし、ROYくんが言った「わっしょい」の話もすごく理解できる。俺は歌詞って、あまり意味はないと思うんです。自分にとっていい音楽って、体が勝手に反応しちゃうもので。もちろんいい歌詞はあるんですけど、それって実は歌詞だけでなく、メロディやリズム、空気感が人の心を興奮させているんじゃないかと。それだったら歌詞に使う言語はあんまり関係ないし、自分はずっと英語の音楽を聴いてきたから、英語で歌うほうがいいなと思ったんです。

──TENDOUJIの場合、日本語に訳した歌詞が完全に意訳になっているところも面白いですよね。

モリタ 俺は小さい頃海外に住んでいたんですけど、日本に帰ってきたあと、海外アーティストの国内盤CDの歌詞カードを見たとき、日本語の訳詞がそのまま直訳してる感じでめちゃくちゃ違和感があったんですよ。今振り返ると、それはそれでいい文化だと思うんですけどね。でも、英語の中にはもっといろんな意味が込められていて、その奥深さがあるので。自分たちの曲の英語詞を意訳して公開するのは、そういう理由がありますね。

全部ROYくんに持っていかれそうで超焦りました

──「CRAZY」はどのように制作されたんですか?

モリタ 俺が作ったオケと歌詞をROYくんに聴いてもらって、少しアレンジしてもらいました。ROYくんのレコーディング、スムーズすぎてビックリしたんですよ。3回くらい通して歌って、それで終わりだったから。

左からアサノケンジ(Vo, G / TENDOUJI)、ROY(THE BAWDIES)。

アサノ あれ、ヤバかったよね。普段からあんなに早いんですか?

ROY 基本的には数回通しで歌って完成かな。たまにAメロだけとか、一部歌い直して差し替えるときはあるけど、音程も直さないし。

アサノ えっ、直さないんですか?

ROY うん。音程を変えるのって、要は歌っていないテイクを使うようなことだから。それならちゃんと自分で歌ったテイクの中から、いいやつに差し替えてもらったほうがウソはないかなって。

モリタ 音源で聴くと、ROYくんの声ってめちゃくちゃデカいし歪むじゃないですか。今回のレコーディングで直接その声を聴いたとき、「ヤベエ!」ってビビった。しかも3回くらい歌ってパッと終わらせるし、「この曲、全部ROYくんに持っていかれる!」と思って、超焦りました(笑)。

ROY 実は練習してきたからね(笑)。以前、僕らの楽曲のレコーディングで甲本ヒロト(ザ・クロマニヨンズ)さんにブルースハープを吹いてもらったことがあったんだけど、そのときのヒロトさんがすごくて。「ちょっと音出していい?」って軽く音のバランスを整えたら、「じゃあ、やるね」って、1回だけ吹いて帰っていったんですよ。めちゃくちゃカッコよくて、それを試してみたかったんだよね。あのときのヒロトさんはたぶん練習してないと思うけど、俺は家でめちゃくちゃ練習した(笑)。

TENDOUJI (笑)。

ROY 本当はもっとおしゃべりしたかったけど、カッコつけるために無駄話を我慢して帰ったし(笑)。

アサノ 俺やナオは歌撮り前日にやっと歌詞を書き終えて、当日も1行歌うたびに「すいません」って謝っているような感じで(笑)。ROYさんの話を聞くと自分が恥ずかしくなってきますね。俺らもちゃんと練習しないと……。

モリタ そうだね……。