初めてのワウペダルでチャカポコ
──各楽器のサウンド面でのこだわりや聴きどころを聞かせてください。ちょっとマニアックな話になるかもしれませんが機材についてもお伺いしたいです。ではまずリズム隊のお二人から。
タケイ 16分を基調としたファンキーで細かく複雑なリズムなので難しい曲ではあるんですけど、ドラムではいかにノリをよくできるかを大切にしました。レコーディングだからといってかっちりリズムにハメようとしていくとノリが悪くなるので、僕としてはライブのノリをイメージして、あまり細かいことは考えずに“大きな波”を作れるように叩きました。
──機材は新しく手に入れたものだったんですか?
タケイ レコーディングのときはライブで使っていた機材をそのまま使いました。普段はライブとレコーディングでシンバルを変えたりするんですけど、今回はライブのセットそのまんまでした。
藤田 私がレコーディングで使ったベースはFENDERのビンテージのジャズべで、いつものRECと同じものです。朝日の作ってきたリフのフレーズがかなり細かかったんですけど、それに合わせて自分も気持ちいいベースのリフを弾けたらいいなと思ってました。細かいフレーズのギターリフとタケちゃんの“大きな波”のグルーヴを合わせるのは大変だったけど、楽しかったです。あとラスサビのフレーズは最終的にメンバーからの意見を受けつつ、ドラマチックにしたつもりです。
──ありがとうございます。では次に中村さんは、どんな機材で臨みましたか?
中村 年始に買った88鍵のDexibell「VIVO S9」というキーボードを使いました。当初は朝日さんに寄せて細かく弾こうと思っていたんです。でも鍵盤では朝日さんたちよりはシンプルなフレーズにすることにしました。ソロはレコーディング中にその場で弾きながら作るタイプなので、そのときの指の動きで今のソロになって。軽快でシンプルを目標にしたらあんな感じになったんですよね。後半のフレーズをギターに寄せてほしいみたいなやり取りはあったので、途中のフレーズに一部変更があったんですけど、全体的には自由な感じで作れたかな。
──続いてもっささんは?
もっさ ギターの演奏自体はそんなに難しくないので、カッチリ弾いてます。でも歌はふざけてると言いますか。「首から上はふざけてて楽しくて、下はカッチリやろう」という意識でやりました(笑)。
──器用ですね(笑)。
もっさ 歌のリズムを少し崩すこともあるけど、ギターだけはちゃんとリズムを守らなきゃと思っていたので。新しい機材は……そうや! 朝日さんがワウ買ったときに一緒に買ったのがあります。VEMURAMのJan Rayっていうオーバードライブ。人生で初めてあんな高いエフェクターを買ったんですけど、めちゃくちゃよくて(笑)。「CHAKAPOCO」は全部それを通して録ってますね。
──Jan Rayのどこが気に入ったんですか?
もっさ 普通のカッティングとかコード弾きもいいし、ちょっとしたリードなら強く弾けばちゃんと音が前に出てくれる。めちゃめちゃ歪んでいるわけじゃないのにきれいに鳴ってくれるんですよね。すごく幅広く使える。それだけあればもしかしたらなんでもできちゃうかもしれないくらい。
──もっささんのギターサウンドにも注目ですね。では最後に朝日さんお願いします。
朝日 この曲は楽しく弾きたいという思いとは裏腹に本当に難しいんですよね。ちょっと間抜けな曲なのにリズム自体がすごくシビアで、少しでも崩れるとグズグズになっちゃう。もっさが「CHAKAPOCO」と叫んだあとに来るイントロのリフがあるんですけど、アクセントがずっと裏の拍なんですよ。
もっさ それ最初めっちゃ嫌やったわ(笑)。「は?」って言ってたよ、ずっと。
朝日 もっさは曲頭の拍を理解してなくて、わからないまま1回目を録り終えたくらい(笑)。でもそのノリがずっと続く曲なので、これをバシバシライブでやってたらレベルアップにつながるんじゃないかな。“大リーガー養成ギプス”みたいな曲なので、ぜひ全国の高校生にコピーしてほしいなって思います。
もっさ それ毎回言うやん(笑)。
──ネクライトーキーの楽曲はバンドで合わせるのが大変そうですよね。
朝日 初期曲の「オシャレ大作戦」あたりはぬるかったんだなって思うぐらい今回、難しいです。「オシャレ大作戦」の難しさを10とするなら「CHAKAPOCO」は38くらい。
もっさ 38って絶妙やな(笑)。
朝日 個々の楽器の難易度としてはそこそこって感じですけど、「CHAKAPOCO」は5人で合わせるときの難易度がすさまじい。でもその分、ノレたときはすごく楽しいんです。
──朝日さんはワウペダルをこの曲のために買ったんですか?
朝日 はい。「CHAKAPOCO」という曲をやりたくて、仕方なく。キャリアとしては10年近くバンドをやってるんですけど、初めてのワウです(笑)。楽器屋でいろいろ試奏させてもらって、FULLTONEのCLYDE WAH DELUXE Blackというモデルを買いました。最近、足元のエフェクターが増えてきて音痩せがけっこう気になっていたこともあったので、これはトゥルーバイパスでよかった。さらによかったのが3種類のモードの1つに「Jimi」っていうモードがあって。「ジミヘンぽいワウだぞ!」ってことで、これにしました(笑)。
もっさ 「CHAKAPOCO」のフレーズはそのジミーさんで録ったの?
朝日 「Jimi」モードね。「Voodoo Child」を弾いてるつもりで「CAKAPOKO」のフレーズを弾いてました。
──今回の曲で重要なエフェクターですよね。ワウのフレーズをチャカポコと表現しますし。
朝日 ワウを使ってギター弾いてたらもっさがびっくりしてました。「チャカポコって音に聴こえる!」って(笑)。ああ、ワウがそう聞こえるもんだとは知らんかったんやって。
もっさ ワウの音は知ってたけど、それが「チャカポコ」に聞こえるってのは今回のレコーディングでわかった。半濁音が付いてる言葉なのに、なんでギターの音がチャカポコに聞こえるのか不思議。
“言葉”は人の感情を形にしたもの
──「CHAKAPOCO」というフレーズが強烈なフックになっていますが、楽曲全体の歌詞にはどんなメッセージが込められて入るんでしょうか?
朝日 歌詞を書くにあたって「鷹の爪」の監督・FROGMANさんとお話をしたとき、今回のアニメは“言葉”がテーマになると聞いたんです。最近は言葉というと、インターネットがあるから気軽にいろんな垣根を飛び越えてしまうことがありますよね。言葉の重さがどんどん減ってきて、いろんなところを飛び交ってしまう現状で、言葉の価値について普段からすごく考えているので、その歌詞なら書けると思いました。でも「もっとこうしようぜ!」というメッセージは特になくて。いろんな言葉があって、それが刺さったり、隣で寄り添っていたり、なんかムカついたり、うれしかったりといろんなことがあるということを歌った曲です。
──今おっしゃった話で、SNSで飛び交う言葉が最近では誹謗中傷や何かへの批判などネガティブな方向に向かいがちだなと思うことがあるのですが、この曲ではそういう今の時代において浮き彫りになりがちな“言葉”について表現されていることもあるんでしょうか?
朝日 それもあります。結局、その言葉を扱うのは人ですよね。騙したり、ウソついたり、嫌なこと言ったりするって今に始まったことじゃなくて、ずっと昔からあったもので。そもそも言葉は感情を形にしたものだし。仮に人間が進化しすぎて色相だけで会話するような時代が来ても、きっと今と同じ悩みはあり続けるんじゃないかな。だから言葉の問題は今どきっぽいテーマだと思いつつも、昔からある根深いものだとも認識してます。それにしても今はめちゃくちゃだなって思いますけどね。言葉が好き放題に飛び交っていて。でもそれはインターネットがあるからそうなってるんじゃなくて、SNSで自分の思ったことを発信しやすい世の中になって、それがただ表面化したんだなっていう。いろいろ思いながらも、結局どうやって言葉と向き合うのが正解なのかはわからないですね。
──もっささんはこの歌詞についてどう思いますか?
もっさ そもそも「鷹の爪」さんとネクライトーキーのニュアンスには、似てる部分を感じていたんです。「鷹の爪」はちょっとくだらないことをめちゃくちゃ面白く描いてますよね。ネクライトーキーの「CHAKAPOCO」も「チャカポコってなんやねん」みたいに、ふとしたときに笑わせてくれる感じがするし、サビではいいこと言ってるなって思いました。
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お客さんの顔を見ながら演奏できる喜び