今年10周年を迎えるNothing's Carved In Stoneが、9thアルバム「Mirror Ocean」を完成させた。
村松拓(Vo, G)が「バンドの個性をさらに洗練した形で表現できた」と語る表題曲「Mirror Ocean」、ポップパンクの進化形とも言える「Winter Starts」、濃密なファンクネスを感じさせる「シナプスの砂浜」、震災に対する思いから生まれたと言う「青の雫」などを収録した本作は、メンバー4人の音楽的ルーツとプレイヤビリティ、海外の音楽シーンとリンクしたサウンドを表現した充実作に仕上がっている。
アルバムのリリースに合わせて音楽ナタリーでは村松、生形真一(G)にインタビュー。「Mirror Ocean」の制作、10年間におけるバンドの変化、10月7日に行われる初の日本武道館公演などについて語ってもらった。
取材・文 / 森朋之 撮影 / 福本和洋
ちょっと余裕が出てきた
──ニューアルバム「Mirror Ocean」は前作「Existence」から1年2カ月ぶりのリリースとなりますが、制作はいつから始まったんですか?
生形真一(G) 前回のアルバムのツアーが終わって、すぐに制作に入ったんじゃないかな。ずっとそうなんですけど、4人でスタジオに入るときは曲を作るようにしているんです。それぞれほかのバンドやプロジェクトもあるし、集まったときは集中して制作して。そうするとおのずと曲もできますからね。今は以前ほど「1年に1枚出したい」とは思ってないんだけど、毎年のツアーも20本くらいだし、それが終われば曲を作るっていうサイクルになってます。ライブと制作しかやることがないですからね、基本的に。
──ロックバンドがやるべきことを続けている、と。
村松拓(Vo, G) そうですね(笑)。
生形 これもいつも通りなんですけど、メンバー全員で曲のネタを持ち寄って、作りたいように作っていて。今回のアルバムは、今まで以上に壮大な感じになったと思います。制作中は意識していなくて、全部できあがったときに思ったことなんですけどね。
村松 うん。ナッシングスはお客さんと近い距離感のライブが得意だけど、スケールがデカい音を鳴らせるバンドだとも思っていて。それが出たのかもしれないですね、今回のアルバムは。ちょっと余裕が出てきたと言うか。
──余裕ですか?
村松 はい。今のナッシングスは無理にテンションを上げなくてもスケールのデカい音が鳴らせると言うか。10年間やってきて、そこにたどり着いた感じもあります。
──自然体で鳴らしていても、自然とスケールの大きい音楽になっていく。タイトル曲「Mirror Ocean」もまさにそういう曲ですが、この曲がアルバムの軸になっているんでしょうか?
村松 そうだと思います。「Mythology」と「Mirror Ocean」が序盤にできたんですけど、特に「Mirror Ocean」は真一がデモを持ってきたときからメンバーの反応が一番よくて。ナッシングスが持っている個性や特徴がすごく出ている曲だと思うんですよ。メンバーのプレイヤビリティも生かされているし、独特のコード感、真一が作るメロディ、全体に漂う哀愁みたいなものも含めて。それをさらに洗練した形で表現できているし、「この曲があれば、アルバムであとは何をやってもいいな」と思えた。
生形 アルバムの中に1曲くらいは、そういう曲があったほうがいいと思っているんですよね。このバンドを知っている人が聴いたときに「ナッシングスっぽいね」と感じるような曲と言うのかな。感覚的なことなんですけどね、それも。今、拓が言ったような“らしさ”は確かにあるし、それはこの10年の間に培ってきたものなので。もちろん、それをどんどん更新していきたい気持ちもあります。
──歌詞に関しても“らしさ”を意識していたんですか?
村松 どうだろう? いつも通り、聴いてくれる人の心象風景に寄り添える曲にしたいという気持ちはありましたけど。今回はアルバムを通して、同じ言葉をあえて繰り返しているんですよ。「鏡」「海」「君と僕」などがそうなんですが、アルバム全体で1つのストーリーが見えてくるようにしたくて。あとはやっぱり、僕にとってリアルかどうかが大事で。「歌う」とか「音」みたいに自分にとって大切なものを歌詞に織り込むことで、僕自身の心を投影しやすくなる。そうじゃないと伝わらない歌もありますからね。
信頼関係から生まれる音
──音楽的な自由度も上がってますよね。「Winter Starts」のようにポップな曲も新機軸じゃないですか?
生形 「Winter Starts」は最初からポップにしようと思っていたんですよ。デモの段階ではわりとシンプルなポップパンクだったんだけど、バンドでアレンジしていくうちに変化して。メジャーコードの曲もそんなになかったし、どんどん間口を広げていきたいですからね。以前はナッシングスらしさを意識してたけど、今は「何をやっても俺らっぽくなる」という自信もあるし。
村松 うん。もともと4人共音楽が好きで、それぞれのルーツがあって。それをぶつけ合って、新しい音楽として昇華するのが俺たちらしいと思ってるんです。新しいことをやることも、年々抵抗がなくなってますね。「Winter Starts」にも自分たちが持っているものが出てるし。ただ「すごくナッシングスっぽいな」って思ってるんですけどね、この曲は。
生形 そうなんだよね(笑)。むしろ今回のアルバムで言えば、「Directions We Know」のほうが新しさを感じるかな。サウンドはナッシングスらしいんだけど、こういうメロディは今までなかったから。
村松 日本語が似合うキャッチーなメロディだからね。俺らにとっては斬新です。
──「青の雫」の美しいメロディも印象的でした。
村松 最高ですよね。早くライブで歌いたいです。「青の雫」は歌詞も真一が書いてるんですよ。込めている思いはすごく伝わってきたし、情景も浮かんでくるような曲だなと思って。
生形 毎回2、3曲は歌詞を書いてるんですけど、この曲では東日本大震災のことをテーマにしていて。どうしてかわからないけど、これまでちょっと抵抗があって(震災に関する歌詞は)書いてなかったんですが、去年、そういうことに触れ合う機会が多かったんです。中津川のフェス(「中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2017」)に出たり、Ken(Yokoyama)さんと対バンしたときも、KenさんがMCで「忘れかけてるから、忘れないようにしたい」という話をしていたり。そんなことが重なる中で書いたのが「青の雫」の歌詞だったんです。そのときに感じていることを書いたほうがいいですからね、やっぱり。
──歌詞のテーマの広がりも、アルバムの壮大さにつながっているんでしょうね。日向秀和さん(B)、大喜多崇規さん(Dr)のリズムセクションもさらに強力になっていて。このリズムの中でギターを弾く楽しさも増しているのでは?
生形 うん、もちろん。2人のリズムはすごく自由だし、芯がありますからね。ナッシングスはレコーディング中にフレーズが変わることもけっこうあるんですけど、そのたびにどう対応するか考えて。メンバーの役割もやればやるほどはっきりしてきて、アンサンブルの深さも増していると思うんですよ。俺らは全員が主張しているように思われがちだけど、引くところは引くし、お互いのよさを引き立てているので。
村松 しっかりした信頼関係がありますからね。お互いのフレーズに反応しながらアレンジを組み立てていくと、摩擦を起こすこともあるじゃないですか。毎回それを超えていくのは簡単ではないけど、10年間曲を作り続けてきたという結果が自分たちの自信になっているし、お互いのバランス、押し引きも洗練されてるので。「お前のいいところはわかってる。それを引き出してやるから、ここは俺の言うことを聞いて」みたいなこともあるし。
──このアルバムの曲をライブで演奏すると、さらにいろんな化学反応が起きるんでしょうね。
生形 まだリハもやってないからわからないけど(笑)、しっかりした世界観があるアルバムだし、ライブではそれがさらに大きくなるんじゃないかな。楽しみです。
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初ライブ映像は恥ずかしくて観れない
- Nothing's Carved In Stone
「Mirror Ocean」 - 2018年2月14日発売
GROWING UP Inc. / Dynamord Label -
[CD] 2700円
GUDY-2021 -
[アナログ+CD] 3456円
GUDY-5003
- CD・アナログ収録曲
-
- Mythology
- Mirror Ocean
- Directions We Know
- Winter Starts
- シナプスの砂浜
- Flowers
- Go Out
- Stories
- Damage
- 青の雫
- Nothing's Carved In Stone
「Live on November 15th 2017 at TOYOSU PIT」 - 2018年3月14日発売
GROWING UP Inc. / Dynamord Label -
[Blu-ray] 5184円
GUDY-3006 -
[DVD] 4212円
GUDY-3005
- Blu-ray / DVD収録内容
-
- Spirit Inspiration
- Like a Shooting Star
- The Poison Bloom
- Rendaman
- Brotherhood
- (as if it's)A Warning
- Words That Bind Us
- Assassin
- Red Light
- Chain reaction
- Milestone
- Shimmer Song
- In Future
- Sing
- Out of Control
- Isolation
- November 15th
- Sands of Time
- YOUTH City
-
- Adventures
- Like a Shooting Star
MUSIC VIDEO
- Nothing's Carved In Stone「Tour 2018」
-
- 2018年3月8日(木)千葉県 千葉LOOK
- 2018年3月10日(土)茨城県 mito LIGHT HOUSE
- 2018年3月14日(水)東京都 WWW X
- 2018年3月16日(金)宮城県 Rensa
- 2018年3月20日(火)福岡県 DRUM LOGOS
- 2018年3月21日(水・祝)佐賀県 SAGA GEILS
- 2018年3月28日(水)岐阜県 CLUB ROOTS
- 2018年3月30日(金)岡山県 CRAZYMAMA KINGDOM
- 2018年3月31日(土)愛媛県 WStudioRED
- 2018年4月6日(金)群馬県 高崎clubFLEEZ
- 2018年4月8日(日)富山県 MAIRO
- 2018年4月11日(水)青森県 青森Quarter
- 2018年4月13日(金)北海道 札幌PENNY LANE24
- 2018年4月15日(日)北海道 函館club COCOA
- 2018年5月15日(火)愛知県 DIAMOND HALL
- 2018年5月18日(金)大阪府 なんばHatch
- 2018年5月22日(火)東京都 新木場STUDIO COAST
- Nothing's Carved In Stone
10th Anniversary Live at BUDOKAN -
- 2018年10月7日(日)東京都 日本武道館
- Nothing's Carved In Stone(ナッシングズカーブドインストーン)
- 2008年に生形真一(G)が在籍するELLEGARDENの活動休止を機に、日向秀和(B)、大喜多崇規(Dr)、村松拓(Vo, G)と結成。2009年2月に初ライブを行い、5月に1stフルアルバム「PARALLEL LIVES」をリリースした。同年夏には「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」「SUMMER SONIC」などの大型ロックフェスに出演。毎年オリジナルアルバムを1枚リリースするなどコンスタントに作品を発表。2018年2月に9枚目となるアルバム「Mirror Ocean」を発表。10月7日に東京・日本武道館で結成10周年ライブ「Nothing's Carved In Stone 10th Anniversary Live at BUDOKAN」を行う。