音楽ナタリー Power Push - 南壽あさ子特集
歌とゲーム、それぞれが描く「旅」
7月にヤマハミュージックコミュニケーションズへ移籍し、同月に「エネルギーのうた(弾き唄い Ver.)」、8月に「八月のモス・グリーン」を配信限定シングルとして発表した南壽あさ子。9月に移籍後初のCDシングルとしてリリースされた「flora」の表題曲とカップリング曲「このごろ、そのひぐらしで」は、コーエーテクモゲームスのガストブランドより11月2日に発売予定のPlayStation 4 / PlayStation Vita用ゲーム「フィリスのアトリエ ~不思議な旅の錬金術士~」のテーマソングとして使用される。
今回の特集では南壽がインディーズ時代によく出演していたという吉祥寺のライブハウス・STAR PINE'S CAFEで、彼女と「フィリスのアトリエ」のプロデューサーを務める岡村佳人の対談を実施。ゲームへの提供曲のコンセプトやテーマソングに採用されたいきさつなどを大いに語ってもらった。
取材・文 / 高橋拓也 撮影 / 入江達也 取材協力 / STAR PINE'S CAFE
ライブの原点・STAR PINE'S CAFE
──本日の取材で使用させてもらっているSTAR PINE'S CAFEは南壽さんゆかりの場所だそうで。
南壽あさ子 以前はよくここでライブをしていました。活動初期の頃からスタッフの皆さんが応援してくれて、今所属している事務所を紹介してくれたのもここのスタッフさんなんです。でもメジャーデビューしてからはなかなかステージに立つ機会がなくて。シングル「flora」の発売記念イベントでひさしぶりにライブをさせてもらって、とても感慨深かったです(参照:「私の原点のような場所」南壽あさ子、思い出の地でシングル発売記念ミニライブ)。
──当時からピアノの弾き語りのスタイルだったんですか?
南壽 ピアノを演奏していた子と2人で出たこともあったし、バンドで出演したこともあります。今は座ってピアノを弾きながら歌うスタイルが自分の中で定着しましたけど、当時は立って歌うこともありました。右も左もわからず、どういうふうにライブをやったらいいかわからなかった中、大学生時代はスタッフの皆さんにお世話になりました。
岡村佳人 厳かな雰囲気の会場ですね。
南壽 照明もきれいだし、ステージ後ろの段々になっている壁に映る照明の演出もすてきなんです。
「アトリエ」はファンタジー感が失われない
──「アトリエ」シリーズで南壽さんの楽曲が使用されるのは、最新作「フィリスのアトリエ」で3回目になります。そもそも、南壽さんの楽曲が使用されることになったきっかけはなんだったんでしょうか?
岡村 「アトリエ」シリーズは音楽に力を入れていて、いろんなアーティストさんに楽曲を提供していただいているんです。その中で新たなアーティストさんにお願いしてみたいと思い、コーディネーターさんに相談したら南壽さんを紹介してくれて。実際にリリースされている楽曲も聴いたうえでオファーしました。
──南壽さんが「アトリエ」シリーズに初参加したのは、2013年リリースの「エスカ&ロジーのアトリエ ~黄昏の空の錬金術士~」のときですね。
岡村 「エスカ&ロジーのアトリエ」のときは南壽さんのミニアルバム「Landscape」の収録曲「回遊魚の原風景」を使用させていただきました。ユーザーからの評判がすごくよくて、翌年リリースした「シャリーのアトリエ」でも声をかけさせてもらったんです。そのときは「みるいろの星」という新曲を使わせてもらって。
──南壽さんは以前から「アトリエ」シリーズはご存知でしたか?
南壽 実はゲームについては疎くて。「アトリエ」シリーズのことはちゃんと知らなかったんですけど、お話をいただいてからプレイしてみました。ゲームは幼少の頃、兄の影響でちょっとやったことがあったんですけど、そのときのイメージとは全然違っていて。映像が美しくて驚きました。
岡村 ありがとうございます。
南壽 最近のゲームのグラフィックはリアルになっていますけど、「アトリエ」シリーズはファンタジー感が失われていなくて。そこは私が最初にゲームをした頃の感覚と近いものを感じました。現実とは違った世界に夢中になれる、ゲームならではの魅力がすごく盛り込まれた作品だと思います。
岡村 ほかのRPGよりもファンタジックな雰囲気を生み出せるよう目指しています。もちろんシリーズを重ねることで変化している部分もあるんですけど、その点は常に意識しています。
南壽 あと、ゲームに歌が入った楽曲が使用されるというのも最初はビックリしました。ゲームにはインストゥルメンタルの曲が使われている印象が強くて。
岡村 ボーカル曲は毎作7~8曲は用意してますね。インストゥルメンタルはだいたい100曲近く。サウンドトラックも毎作3枚組ぐらいになってしまうんです(笑)。
──「アトリエ」シリーズではオープニングやエンディングだけでなく、ゲーム中の戦闘シーンやイベントシーンでも、ボーカル曲が使用されています。
岡村 ゲームの世界観に合った楽曲をご提供いただいているからこそ、よりよい演出ができると思うのでどんどん使用しています。新しいことをやってみたいというのもあるので。
──アーティストもこれまで霜月はるかさんやチリヌルヲワカ、やなぎなぎさんなどさまざまな方が参加されています。
岡村 昔はアニメやゲームの主題歌を歌ってらっしゃる方をメインにオファーしていたんですが、その分野だけに偏ってしまうのはもったいなくて。「アトリエ」シリーズの世界観を広げてくださるようなアーティストさんに積極的にお願いしています。
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- ニューシングル「flora」 / 2016年9月28日発売 / ヤマハミュージックコミュニケーションズ
- 豪華盤 [CD+DVD] / 3240円 / YCCW-30055/B
- ゲームデザイン盤(初回限定盤)[CD] 1620円 / YCCW-30056
- ゲームデザイン盤(通常盤)[CD] 1080円 / YCCW-30057
- アーティストフォトデザイン盤(初回限定盤)[CD] 1620円 / YCCW-30058
- アーティストフォトデザイン盤(通常盤)[CD] 1080円 / YCCW-30059
豪華盤CD収録曲
- flora
- このごろ、そのひぐらしで
- flora(弾き唄い Ver.)
- このごろ、そのひぐらしで(弾き唄い Ver.)
- flora(Instrumental)
- このごろ、そのひぐらしで(Instrumental)
- flora(Piano Instrumental)
- このごろ、そのひぐらしで(Piano Instrumental)
豪華盤DVD収録内容
- flora(Music Video)
- flora(弾き唄い Ver. / Studio Live)
- このごろ、そのひぐらしで(弾き唄い Ver. / Studio Live)
- flora Special Clip
ゲームデザイン盤(初回限定盤)収録曲
- flora
- このごろ、そのひぐらしで
- flora(弾き唄い Ver.)
- flora(Instrumental)
- このごろ、そのひぐらしで(Instrumental)
- flora(Piano Instrumental)
アーティストフォトデザイン盤(初回限定盤)収録曲
- flora
- このごろ、そのひぐらしで
- このごろ、そのひぐらしで(弾き唄い Ver.)
- flora(Instrumental)
- このごろ、そのひぐらしで(Instrumental)
- このごろ、そのひぐらしで(Piano Instrumental)
アーティストフォトデザイン盤(通常盤) / ゲームデザイン盤(通常盤)収録曲
- flora
- このごろ、そのひぐらしで
- flora(Instrumental)
- このごろ、そのひぐらしで(Instrumental)
南壽あさ子(ナスアサコ)
1989年千葉県佐倉市出身のシンガーソングライター。幼少の頃からピアノを始め、大学時代に軽音部に所属。その後音楽活動を本格化させ、2010年よりライブ活動を行う。2012年6月には湯浅篤をプロデューサーに迎えたシングル「フランネル」でインディーズデビュー。翌2013年10月にはシングル「わたしのノスタルジア」でTOY'S FACTORYよりメジャーデビューを果たした。2016年7月に所属レーベルをヤマハミュージックコミュニケーションズへ移籍することを発表。同月に「エネルギーのうた(弾き唄い Ver.)」、8月に「八月のモス・グリーン」を配信限定シングルとして発売し、9月に移籍後初のCDシングル「flora」をリリースした。
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岡村佳人(オカムラヨシト)
株式会社コーエーテクモゲームス所属。現在は同社のガストブランドにて人気RPG「アトリエ」シリーズのプロデューサーを担当している。同シリーズには2003年発表の「ヴィオラートのアトリエ ~グラムナートの錬金術士2~」から制作に携わり、2005年発表の「イリスのアトリエ ~エターナルマナ2~」よりプランナーとして参加。2009年発表の「ロロナのアトリエ ~アーランドの錬金術士~」以降、各シリーズのディレクターを務めた。2016年11月2日にはシリーズ18作目にあたる新作「フィリスのアトリエ ~不思議な旅の錬金術士~」を発売する。
2016年11月28日更新