音楽ナタリー Power Push - 南壽あさ子特集
歌とゲーム、それぞれが描く「旅」
デビュー前の曲を再び歌う
──「このごろ、そのひぐらしで」は“イベントリスタートテーマ”と資料では紹介されていますが、これはどのようなシーンで使用されるんでしょうか?
岡村 「フィリスのアトリエ」は主人公のフィリスが錬金術士の試験を受けるために旅をするというストーリーなのですが、彼女が錬金術士になったあと、自分が本当にしたいこととは何か、それを探すために新たな旅に出るんです。その旅立ちのきっかけとなるシーンで使用されるのが「このごろ、そのひぐらしで」なんです。
──物語のターニングポイントになるシーンですね。
岡村 フィリスにはお姉さんがいるんですけど、ものすごく仲がよくて一緒に旅に出るんです。でもいろいろありまして……。ネタバレになるので詳しくは言えないんですけど(笑)、その重要なシーンで使われます。これも偶然なんですけど、「このごろ、そのひぐらしで」はフィリスとお姉さんの関係を表すような歌詞になっていたんです。
南壽 岡村さんに「この楽曲を使用したい」って言われたときはビックリして。サビで旅立ちについて描かれてはいるんですけど、「flora」よりも日常感が強い歌詞なんですよね。
岡村 「フィリスのアトリエ」は旅がテーマではあるんですけど、いろんなキャラクターが出てきて、フィリスがその人たちと関わることで成長していく様子も描かれているんです。そんな日常を表すシーンにピッタリきた曲が「このごろ、そのひぐらしで」でした。
──この曲はデビュー前に作った曲なんですよね?
南壽 はい。事務所に入る前、1人で活動していた頃に書きました。当時は先が見えなかったけど夢はあって、「日常のサイクルから飛び出していきたい」って気持ちを込めて作った曲なんです。こうやって時を経てゲームに使用されることになったのは不思議な感覚でした。アレンジはインディーズ時代からお世話になっている湯浅(篤)さんにお願いして、当時の気持ちを思い出しながらレコーディングしました。
岡村 歌い直してみていかがでした?
南壽 今だとこんな歌詞は書かないだろうし、感慨深さがありましたね。当時は「きっと無駄じゃない」って思いながら歌い続けていたんですけど、やっぱり先が見えない不安は感じていて。この曲を再び歌えたことで、迷いながらも歩いていくことは無駄じゃないということが確信につながりましたし、同じように不安を抱えている人の力になれたらいいなって思っています。
変わらないよさを持ち続ける
──岡村さんは南壽さんの楽曲の魅力はなんだと思いますか?
岡村 どの楽曲も共感できる歌詞になっていますし、それが透明感のある歌声と融合して、南壽さんにしか出せないような優しい雰囲気を醸し出していますよね。聴いていて気持ちが安らぐような曲が多いです。ご本人を目の前にして恥ずかしいですが(笑)。
──今回の2曲も、南壽さんの魅力が伝わる楽曲になりました。
岡村 「flora」「このごろ、そのひぐらしで」は南壽さんのこれまでの楽曲になかったようなテンポ感で、前に進んでいくような雰囲気にもなっています。新たな南壽さんの魅力も感じていただけるんじゃないかと思います。
──南壽さんは楽曲提供という形で「アトリエ」シリーズに関わってきましたが、この作品の魅力はなんだと思いますか?
南壽 ファンタジックで優しい雰囲気はもちろん、女の子たちが成長していく過程を見守り、自分も元気がもらえるようなところが魅力だと思いますね。
岡村 RPGって壮大なテーマや目的を掲げた作品が多いんですけど、「アトリエ」シリーズはゆったりと遊べるような内容を心がけているんです。かわいい女の子が一生懸命がんばって自分の夢や目的を叶えるという、物語としてはすごくシンプルなものですから気負わずに遊んでほしいですね。
──「アトリエ」シリーズは「フィリスのアトリエ」で18作目を迎えます。
岡村 来年「アトリエ」は20周年なんですが、シリーズを重ねていく中、皆さんに支持されている要素を大事にしてきたからこそ、ここまで続けることができたと思っています。変わらないよさを持ち続けるのって難しくて。よくインタビューで「『アトリエ』シリーズを『釣りバカ日誌』や『男はつらいよ』のような作品にしていきたい」って話すんです。それぐらいポピュラーなシリーズにしていきたいですね。
──ほぼ1年に1本のペースで新作をリリースしてますよね。
岡村 最近はだいぶ大変になってきました(笑)。制作にかかる時間が年々増えているんですが、今のところ1年に1本というペースを保ち続けています。ユーザーの皆さんの手元に新作が届く頃には、さらに新しい構想を練っていたりしますから。
──息の長いシリーズを続けていくことにプレッシャーを感じることはないですか?
岡村 毎年続けてきたことなので、今はもうそんなにプレッシャーは感じていないです。当然私としては今後もゲームを作り続けていきたいと思いますし、「アトリエ」シリーズをこれからも続けることができたらありがたいですね。
南壽 これから先もまたご一緒できるよう、私も日々がんばっていきます。
岡村 もちろん、今後ともよろしくお願いします。
- ニューシングル「flora」 / 2016年9月28日発売 / ヤマハミュージックコミュニケーションズ
- 豪華盤 [CD+DVD] / 3240円 / YCCW-30055/B
- ゲームデザイン盤(初回限定盤)[CD] 1620円 / YCCW-30056
- ゲームデザイン盤(通常盤)[CD] 1080円 / YCCW-30057
- アーティストフォトデザイン盤(初回限定盤)[CD] 1620円 / YCCW-30058
- アーティストフォトデザイン盤(通常盤)[CD] 1080円 / YCCW-30059
豪華盤CD収録曲
- flora
- このごろ、そのひぐらしで
- flora(弾き唄い Ver.)
- このごろ、そのひぐらしで(弾き唄い Ver.)
- flora(Instrumental)
- このごろ、そのひぐらしで(Instrumental)
- flora(Piano Instrumental)
- このごろ、そのひぐらしで(Piano Instrumental)
豪華盤DVD収録内容
- flora(Music Video)
- flora(弾き唄い Ver. / Studio Live)
- このごろ、そのひぐらしで(弾き唄い Ver. / Studio Live)
- flora Special Clip
ゲームデザイン盤(初回限定盤)収録曲
- flora
- このごろ、そのひぐらしで
- flora(弾き唄い Ver.)
- flora(Instrumental)
- このごろ、そのひぐらしで(Instrumental)
- flora(Piano Instrumental)
アーティストフォトデザイン盤(初回限定盤)収録曲
- flora
- このごろ、そのひぐらしで
- このごろ、そのひぐらしで(弾き唄い Ver.)
- flora(Instrumental)
- このごろ、そのひぐらしで(Instrumental)
- このごろ、そのひぐらしで(Piano Instrumental)
アーティストフォトデザイン盤(通常盤) / ゲームデザイン盤(通常盤)収録曲
- flora
- このごろ、そのひぐらしで
- flora(Instrumental)
- このごろ、そのひぐらしで(Instrumental)
南壽あさ子(ナスアサコ)
1989年千葉県佐倉市出身のシンガーソングライター。幼少の頃からピアノを始め、大学時代に軽音部に所属。その後音楽活動を本格化させ、2010年よりライブ活動を行う。2012年6月には湯浅篤をプロデューサーに迎えたシングル「フランネル」でインディーズデビュー。翌2013年10月にはシングル「わたしのノスタルジア」でTOY'S FACTORYよりメジャーデビューを果たした。2016年7月に所属レーベルをヤマハミュージックコミュニケーションズへ移籍することを発表。同月に「エネルギーのうた(弾き唄い Ver.)」、8月に「八月のモス・グリーン」を配信限定シングルとして発売し、9月に移籍後初のCDシングル「flora」をリリースした。
- 南壽あさ子 official home page
- 南壽あさ子 公式ブログ Powered by LINE
- nasuasaco (@nasuasaco) | Twitter
- nasuasaco (@nasuasaco) | Instagram
- 南壽 あさ子(nasuasaco) | Facebook
- 南壽あさ子の記事まとめ
岡村佳人(オカムラヨシト)
株式会社コーエーテクモゲームス所属。現在は同社のガストブランドにて人気RPG「アトリエ」シリーズのプロデューサーを担当している。同シリーズには2003年発表の「ヴィオラートのアトリエ ~グラムナートの錬金術士2~」から制作に携わり、2005年発表の「イリスのアトリエ ~エターナルマナ2~」よりプランナーとして参加。2009年発表の「ロロナのアトリエ ~アーランドの錬金術士~」以降、各シリーズのディレクターを務めた。2016年11月2日にはシリーズ18作目にあたる新作「フィリスのアトリエ ~不思議な旅の錬金術士~」を発売する。
2016年11月28日更新