ナタリー PowerPush - ナノ

「自分にリミットをかけない」挑戦が詰まった4thシングルの秘密

今まで歌った曲の中でも上位にくる気持ちよさ

──「Born to be」は曲の構成も面白いですね。テレビサイズだとAメロ、Bメロ、サビだけが流れますが、CDではそこからAメロに戻るのかと思いきや、また別のパートに突入する。同じパートの繰り返しがあまりない、挑戦的な曲だなと思いました。

「Born to be」をレコーディングしたのが去年の11月だったんですけど、自分としては早くフルバージョンを聴かせたくてウズウズしてたんですよ。2コーラス目に入ってからガラッとメロディが変わるところが、自分の中で一番の推しポイントで。あそこは歌っていても気持ちいいし、大袈裟かもしれないけど今まで歌った曲の中でも上位にくる気持ちよさなんです。それに歌詞においても、このパートに自分が一番伝えたいメッセージが込められているので、聴いてる人にもこのパートをちょっと意識して聴いてほしいなと思ってます。

──アニメを観てこの曲が気になった人がCDでフルバージョンを聴いたら、この先の読めない展開に間違いなく驚くでしょうね。

「えっ? 違う曲が始まった?」って思うんじゃないかな(笑)。自分自身いろんな方と関わっていろんな影響を受けるようになったので、常に進化できてたらうれしいと思いますし、逆にリスナーを飽きさせたくないという思いもありますし、こういう挑戦は大事だと思いますね。もちろんリスナーからのリアクションを反映させることも大切ですけど、まず自分が納得してなかったら聴いてる側も納得しないと思うし。これからも自分の気持ちを大事にして制作に臨みたいです。

──この攻め続ける姿勢は、すでにナノさんのスタイルになりつつありますよね。

そうですね。やっぱり音楽が本当に大好きなんだなって、活動を続ければ続けるほどそこに気付かされます。しかも入院していた1カ月間、まったく活動をしていなかったときに「自分にはこれしかない!」って改めて実感できたし。大好きじゃなかったら、ここまで続けられないなって思います。

音楽って無限なものだから、なんでも挑戦できる

──カップリング曲の「NEW WORLD」はアニメ「魔法戦争」の挿入歌ですが、この曲も今までのナノさんからするとかなり異色ですね。

これは正直自分でもビックリしましたね。今まで本当にやったことないタイプの楽曲なんですけど、もともとは自分が歌う前提で作られたものではなかったんです。

──そうなんですね。この曲はバンドサウンドに振り切った「Born to be」とは真逆の、ダンスミュージック側に振り切ったアレンジですね。いわゆるダンスミュージック寄りの楽曲というと、過去には「BE FREE(WITH MUSIC)」がありましたが。

「BE FREE(WITH MUSIC)」は歌を軸にしたアレンジでしたけど、今回の「NEW WORLD」はリズム重視の、本当の意味でのダンスミュージックというか。

──以前、アルバム「N」のインタビューのときに「BE FREE(WITH MUSIC)」を例に挙げて、「今後はもっとダンス寄りの曲も聴いてみたい」と言いましたが(参照:ナノ「N」インタビュー)、今回の「NEW WORLD」を聴いたときに「あ、ナノがドンズバのハウスサウンドをバックに歌うと、こういう感じになるんだ」と新鮮な驚きがありましたよ。

うれしいですね。自分の中では音楽って無限なものだと思ってるし、だからこそどんなことにでも挑戦できると信じていて。今回「NEW WORLD」をやれたことは自分にとっても大きな自信になりました。今のところ自分の中で「ナノ=○○」っていう決めごとがあるわけじゃないし、自分にリミットをかけずにこれからもっといろんなことに挑戦したいですね。

──そこを制限しないでこの2年突っ走ってきたから、こういう音楽的な幅広さを持ててるんでしょうね。それこそ前作でのアコースティックバラード「Our Story」やピアノバラード「Silver Sky」みたいなタイプの曲もやれるわけで。でもナノさんが歌うことで統一感がしっかり生まれているので、安心して聴けるんです。

だから逆に、次のアルバムの内容がどうなるのか、まったく想像できないんです。まあそれは考え方を変えれば、すごく楽しいことなんですけどね。

人生をシミュレーションゲームに例えて作詞

ちびナノ

──両極端に振り切れた2曲のあとにもう1つのカップリング曲「Happy Ending Simulator」を聴くと、ちょっとホッとするんですよね(笑)。

あははは(笑)。「Born to be」と「NEW WORLD」の中間で、これまでのナノのスタイルに一番近い曲ですしね。

──だけど過去の焼き直しではなくて、しっかりグレードアップされている。イントロのディレイがかかったギターフレーズ1つ取っても、これまでにはない世界観が作り上げられてると思いました。

これはあとから聞いた話なんですけどね、そのギターフレーズは偶然の産物らしくて。ギターをレコーディングするときに、バンドメンバーのOmmyさんがディレイをかけた状態のままギターに何かを引っ掛けちゃったら、あの「ドロンドゥンドゥンドゥン」みたいなフレーズが流れ始めて、それを聴いたディレクターが「あ、それいいじゃん。入れちゃおうよ。どうやって弾いたの?」って面白がったのがきっかけなんです。

──レコーディング中のアクシデントがそのままフレキシブルに生かされてしまったと。

そうなんです。ディレクターが好奇心旺盛な人で、面白いと思ったことを「あ、それいいじゃん!」って言ってくれるから、それがすべてに関して生かされてる感はありますね。

──その臨機応変さがナノサウンドの秘密の1つなのかもしれないですね。ところでこの曲は非常に個性的なタイトルですが?

この曲は「ガンスリンガー ストラトス2」っていうゲームのテーマソングなんです。ゲームってプレイヤーの判断によって違うエンディングを迎えることがありますよね。この曲の歌詞はハッピーエンドに向かっていろんなことを経験して、ハラハラドキドキしながら生きていく、そういうことをシミュレーションゲームに例えて書いてみました。

──なるほど。仮にエンディングが1つだけだとしても、そこにたどり着くまでの行程をショートカットを使って完結しちゃう人もいれば、すごく大回りしてやっと到着する人もいる。エンディングが同じでも経験したことはまったく異なるわけですもんね。

本当にそれぞれですよね。だからこの曲はハッピーエンドが想像できるような、聴いていて気持ちいい前向きな感じにしたかったんです。

ニューシングル「Born to be」 / 2014年2月19日発売 / FlyingDog
ナノver. [CD] / 1155円 / VTCL-35177
魔法戦争ver. [CD] / 1155円 / VTCL-35178
収録曲
ナノver.
  1. Born to be
  2. Happy Ending Simulator
  3. Born to be Instrumental ver.
  4. Happy Ending Simulator Instrumental ver.
魔法戦争ver.
  1. Born to be
  2. NEW WORLD
  3. Born to be Instrumental ver.
  4. NEW WORLD Instrumental ver.
ナノ

アメリカ・ニューヨーク州出身、7月12日生まれ。卓越した歌唱力と、日本語と英語を使い分けるバイリンガルシンガー。2010年よりYouTubeやニコニコ動画などの動画サイトに、洋楽やVOCALOIDのカバー楽曲の投稿を始め、現在までに国内外問わず多くの音楽、アニメユーザーの支持を集める。 2012年3月にデビューアルバム「nanoir」(ナノワール)をリリース。オリコンデイリーランキングでは発売日に10位を記録し、新人では異例のチャートアクションを起こす。同年5月には1stシングルとなる、テレビアニメ「ファイ・ブレイン ~神のパズル」第2シリーズオープニングテーマ「Now or Never」、10月にはテレビアニメ「BTOOOM!」のオープニングテーマとなる2ndシングル「No pain, No game」を発表。2013年2月には2ndアルバム「N」を発売し、オリコン週間ランキング8位を記録する。同年5月18、19日には、ドイツ・デュッセルドルフで行われたジャパニーズカルチャーコンベンション「DoKomi」に招待され、ライブ会場キャパ満員の1500人を集客。8月には東京&大阪で2ndライブ「Color my world.」を実施した。10月にはMY FIRST STORYとのコラボ曲「SAVIOR OF SONG」をCD化。2014年2月にはアニメ「魔法戦争」のエンディングテーマ「Born to be」が4thシングルとしてリリースされる。