ナタリー PowerPush - ナノ

「自分にリミットをかけない」挑戦が詰まった4thシングルの秘密

期待以上の結果を出したいっていうプライドがある

──ちょっと余談になりますけども、2013年を振り返って、いちリスナーとして面白かった作品って何かありますか?

自分の中で特に面白いと思ったのが、アヴリル・ラヴィーンの最新アルバム「Avril Lavigne」の収録曲「Hello Kitty」ですね。ヘッドフォンでこのアルバムを聴きながら踏切を渡ろうとしたら、踏切の音が聞こえてきて「あ、渡れない」と思ってその場で待ってたんです。でもいつまで経っても踏切の音が止まらない。周りを見渡すとみんなスラスラ歩いてるし……おかしいなと思ったら、この「Hello Kitty」という曲には「カーンカーンカーン」っていう日本の踏切の音が使われてるんですよ。確かにやけに踏切の音が曲のリズムに合ってるなとは思ってたんですけどね(笑)。

──あの曲は日本語のフレーズも入ってるし、そういうこともあって日本の踏切の音をサンプリングして使ったんでしょうね。

そうですよね。日本に住んでいると「なんで踏切の音が入ってるの?」って思うかもしれないけど、アヴリルが日本に来たときにあの踏切の音がすごくリズミカルに聞こえたんでしょうね。自分だったら絶対に思い付かなかったアイデアなので、すっごい衝撃を受けたんです。好奇心を持つことは進化に絶対必要なことなんだなって。

──なるほど。そういう好奇心のアンテナを張れなくなると、守りに入ってしまうかもしれないし。

人間って新しいことが怖いと思っちゃうと、守りに入ってしまうもので。なぜ怖いと思うかというと、その新しいことを批判されるんじゃないか、気に入られないんじゃないかという不安が付きまとうからだと思うんです。でもそこで悩んで現状維持をするよりも前を向いて、どんどん新しいことに挑戦していけば、自然とその不安も解消されるんじゃないかなと思ってます。

「Born to be」PVのワンシーン。

──作り手として守りに入らずどんどん新しいことに挑戦していく人もいれば、作品のセールスを気にして守りに入ってしまう人もいると思います。そのへんはどう考えてますか?

作ってる側があまりに守りに入っちゃうと、本当に手堅くて想像の範囲内のものしかできないんじゃないかな。クリエイターは自由に作品を作って、セールスとかそういう話題はそっちが得意な人たちに任せたらいいんじゃないかな。

──「自由に作品を作る」という部分に関連するかもしれませんが、例えばゲームやアニメのタイアップで楽曲を制作する際、クライアントの意向に沿ったものを作る必要に迫られることもあります。自分らしい作品を作る上で、そのバランス感はどう考えてますか?

これは自分が小さいときから思ってることなんですけど、例えば何かを期待されたりお願いされたりすると、絶対にそれ以上の結果を出したいっていうプライドが自分にはあって。額面通りのものを返しただけなら「ありがとう」で終わるけど、それ以上のものを返したらそこには驚きが伴うと思うんです。そういう意味では、いつもクライアントに「こういうタイプの曲をお願いします」と言われても、相手が望む要素を取り入れつつも、その相手が想像していたものをちょっと超えた作品を作りたい。逆に「これはどういう意味?」って質問されるぐらいのほうが、作り手としてはうれしいですね。

──向こうがイメージしたものを入れるのは大前提として、そこにさらにプラスアルファすると。

そうですね。もちろんお願いにはちゃんと沿わないといけないんですけど、それだけじゃ自分がやる意味がなくなっちゃうと思うんですよ。だったら別に誰でもいいんじゃないかって思っちゃうから、そこはしっかりと自分にしかできない何かを返せたらいいなと。

みんなを驚かせる3rdアルバムを絶対に作る

──さて、初ライブや海外進出、他アーティストとのコラボなど話題にこと欠かなかった2013年を経て、2014年はどういう年にしたいですか?

今年ももっともっと新しいナノを開発しつつ、聴いてくれてるファンの方たちともっとつながりたい。一方的に音楽を発信するんじゃなくて、お互いの思いが往復するような音楽を追究していきたいです。もちろん現時点で決まってることもあるし、予想もしてなかったようなことも決まるかもしれないし、そういう意味では再びサプライズ尽くしの1年にしたいです。まあ2013年を超えるぐらいとなると、かなりハードルが上がるんですけどね。

──リスナーとの交流という意味では、これまでのネットを通じた交流だけでなく、ライブでダイレクトに交流する機会も増えましたしね。

そうですね。やっぱりライブにはネットやCDだけじゃ感じられないことがいっぱいあるので、今後もナノの音楽活動にとっては欠かせない要素になりました。

──そして2ndアルバム「N」に続く、3rdアルバムにも期待したいところなんですが……ここ2作のシングルを聴く限りでは、どういった内容になるのかまったく想像が付かなくて。

自分が一番想像できてないですからね(笑)。でも2ndアルバム「N」を超えた、みんなを驚かせるアルバムを絶対に作ります。

『Born to be』ナノ Music Clip

ニューシングル「Born to be」 / 2014年2月19日発売 / FlyingDog
ナノver. [CD] / 1155円 / VTCL-35177
魔法戦争ver. [CD] / 1155円 / VTCL-35178
収録曲
ナノver.
  1. Born to be
  2. Happy Ending Simulator
  3. Born to be Instrumental ver.
  4. Happy Ending Simulator Instrumental ver.
魔法戦争ver.
  1. Born to be
  2. NEW WORLD
  3. Born to be Instrumental ver.
  4. NEW WORLD Instrumental ver.
ナノ

アメリカ・ニューヨーク州出身、7月12日生まれ。卓越した歌唱力と、日本語と英語を使い分けるバイリンガルシンガー。2010年よりYouTubeやニコニコ動画などの動画サイトに、洋楽やVOCALOIDのカバー楽曲の投稿を始め、現在までに国内外問わず多くの音楽、アニメユーザーの支持を集める。 2012年3月にデビューアルバム「nanoir」(ナノワール)をリリース。オリコンデイリーランキングでは発売日に10位を記録し、新人では異例のチャートアクションを起こす。同年5月には1stシングルとなる、テレビアニメ「ファイ・ブレイン ~神のパズル」第2シリーズオープニングテーマ「Now or Never」、10月にはテレビアニメ「BTOOOM!」のオープニングテーマとなる2ndシングル「No pain, No game」を発表。2013年2月には2ndアルバム「N」を発売し、オリコン週間ランキング8位を記録する。同年5月18、19日には、ドイツ・デュッセルドルフで行われたジャパニーズカルチャーコンベンション「DoKomi」に招待され、ライブ会場キャパ満員の1500人を集客。8月には東京&大阪で2ndライブ「Color my world.」を実施した。10月にはMY FIRST STORYとのコラボ曲「SAVIOR OF SONG」をCD化。2014年2月にはアニメ「魔法戦争」のエンディングテーマ「Born to be」が4thシングルとしてリリースされる。