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「自分にリミットをかけない」挑戦が詰まった4thシングルの秘密

ナノのニューシングル「Born to be」が2月19日にリリースされる。2014年第1弾シングルとなる本作は、1月からスタートしたテレビアニメ「魔法戦争」のエンディングテーマ。ライブ感を重視したグルーヴィなリズムと、より洗練されたナノのボーカルが印象的な1曲に仕上がっている。

2013年は2ndアルバム「N」のリリースを筆頭に、3月に初のワンマンライブ、夏には東京と大阪のZepp会場を回るライブツアーを行い、秋にはMY FIRST STORYとのコラボシングル「SAVIOR OF SONG」を発表するなど精力的に活動してきたナノ。今回のインタビューでは昨年の活動を振り返りつつ、新たな魅力が詰め込まれた新作についてじっくり話を聞いた。

取材・文 / 西廣智一

年末の入院はすごく有効な時間になった

──昨年12月2日に急性膵炎で緊急入院したことが発表されたときは、正直ビックリしました(参照:ナノが急性膵炎治療のため当面の活動を休止)。Zepp Tokyoでのイベント「『蒼き鋼のアルペジオ-アルス・ノヴァ-』LIVE "Blue Field"」に出演した翌日だったんですよね。

そうなんですよ。あの……皆さん「ずっと無理してたんじゃないか?」「イベント中も痛かったんじゃないか?」って心配してくださったんですけど、まったくそんなことなくて。イベントでは100%力を出し切っていて、翌日に急にあの症状が出て即入院。自分もビックリしました(笑)。本当にいろいろ迷惑をかけたと思います。

──こうやって活動を止めることは今までなかったですよね?

はい。病院ではやることがないからとりあえず考えることしかできなくて、これまでの活動を振り返ったり、今後についていろいろ考えたりして。すごく時間を有効に使えましたよ。ガーッと活動してる間って、なかなかじっくり考えることもないから。そういう意味では、入院中も変に不安はなかったですね。病気で休んでしまったけど、逆にすごく前向きになれました。

──タイミング的にも年末でしたし、盛りだくさんだった2013年をじっくり振り返るのにはちょうどいい機会だった?

そうですね。新しいことがいっぱいありましたし。なんか変な話ですけど、そうやってがっつり1カ月も何もしない状態って、普通だったらあり得ないことだと思うんです。そういう意味では正直感謝してますね。

──そして今年1月6日に、ニューシングル発売決定の情報とともに復帰宣言しました(参照:ナノ本日から活動再開!新シングル「Born to be」発売)。

実はシングルに関しては、本当であればもうちょっと早くに発表するはずだったんですよ。まあこういうことがあったので、ちょっとギリギリのタイミングでの発表だったんですけどね。でも新しい1年をスタートさせるにはすごくピッタリな曲に仕上がったので、逆に1月でよかったなって自分は思ってます。

心の余裕とともに自由度も増している

──では今回のシングル「Born to be」について話を聞かせてください。表題曲はファンキーでバキバキしたベースラインにナノさんのラップ調ボーカルが乗るスタイルがすごく新鮮で。こういうスタイルをここまで打ち出したのは初めてですよね?

「Born to be」PVのワンシーン。

ですね。やっぱり最初に耳に入ってくるのがベースで、ドラムとは違った独特のリズム感があるんですよ。そのグルーヴィなリズムのおかげで、歌も今までとは違う感じになったかな。

──サウンドに関しても、今までのナノさんのスタイルって、バンドサウンドとデジタルサウンドをバランスよく融合されていたのに、今回は完全にバンドサウンドのみで構成されてますが。

この曲はデジタルの要素を一切入れないで制作したので、バンドサウンドならではの重みが強調されたんじゃないかなと。

──それは去年ライブをいくつか経験した手応えによるものなんでしょうか?

それはあります。ライブで生のバンドサウンドのすごさっていうのをじっくり体感したからこそ、このアレンジが生まれたんだと思います。むしろ自分も早くこの曲をライブで歌いたいし、Keiくん(ナノバンドのベーシスト)のあのスラップを早く生で聴きたいですね。

──実はこの曲を最初に聴いたときに、いい意味で一歩引いて周りを見てるような余裕が出てきたなって感じたんです。

それは自分もちょっと感じていたことで。なんて言うんですかね、ただガツガツ攻めて「聴いて!」と強く訴えかけるだけじゃなくて、今度は観てる側、聴いてる側に「ちょっとおいでよ」って軽く声をかける感じというか。

──そこはライブを経験したことで、いろんな見せ方や表現の仕方を自分の中で考えられるようになってきたってことなんでしょうね。

うん、そうだといいですね。やっぱり心の余裕は少しずつ作品ごとに出てきていて、そのおかげで自由度も増してるし。こうしたい、ああしたいっていうイメージもどんどん湧いてきて、いろんな可能性が生まれてきてますね。

向き合ってる暇はねえから、やるしかないよ!

──曲名や歌詞についてはどうですか? 「Born to be」ってすごく象徴的なタイトルですが。

今回はアニメのテーマ曲になってますけど、まずはメッセージ性が強いものにしたくて、ちょっと具体的な表現を多用した歌詞にしています。例えばカーレースで車がビューンと飛ばしてる感じを連想して、そういう躍動感やスピード感を人生に照らし合わせた歌詞になってるかな。

──歌詞のテーマとしては今までの楽曲にも通ずるものがありますけど、確かに表現はより具体的なものになっています。

そうですね。今まではどちらかと言ったら自分とじっくり向き合うみたいなテーマが多かったんですけど、今回は「そんな時間なんてねえよ!」ぐらいの勢いで、「向き合ってる暇はねえから、やるしかないよ!」みたいな感じかな。

──サウンド的にはちょっと余裕を感じさせるのに、歌詞は前のめりで攻めてる、そのバランス感も面白いですね。

前作の「SAVIOR OF SONG」のほうがテンポは速いと思うんですけど、作品としての突き進んでる感は今回のほうがより増してますよね。ただ歌詞の詳細な内容については聴いてる人の解釈に任せたい派なので、そこは聴いた人が自由に受け止めてほしいなって思います。人生は十人十色なので、その人に合ったつながり方をしてほしいなって。

ニューシングル「Born to be」 / 2014年2月19日発売 / FlyingDog
ナノver. [CD] / 1155円 / VTCL-35177
魔法戦争ver. [CD] / 1155円 / VTCL-35178
収録曲
ナノver.
  1. Born to be
  2. Happy Ending Simulator
  3. Born to be Instrumental ver.
  4. Happy Ending Simulator Instrumental ver.
魔法戦争ver.
  1. Born to be
  2. NEW WORLD
  3. Born to be Instrumental ver.
  4. NEW WORLD Instrumental ver.
ナノ

アメリカ・ニューヨーク州出身、7月12日生まれ。卓越した歌唱力と、日本語と英語を使い分けるバイリンガルシンガー。2010年よりYouTubeやニコニコ動画などの動画サイトに、洋楽やVOCALOIDのカバー楽曲の投稿を始め、現在までに国内外問わず多くの音楽、アニメユーザーの支持を集める。 2012年3月にデビューアルバム「nanoir」(ナノワール)をリリース。オリコンデイリーランキングでは発売日に10位を記録し、新人では異例のチャートアクションを起こす。同年5月には1stシングルとなる、テレビアニメ「ファイ・ブレイン ~神のパズル」第2シリーズオープニングテーマ「Now or Never」、10月にはテレビアニメ「BTOOOM!」のオープニングテーマとなる2ndシングル「No pain, No game」を発表。2013年2月には2ndアルバム「N」を発売し、オリコン週間ランキング8位を記録する。同年5月18、19日には、ドイツ・デュッセルドルフで行われたジャパニーズカルチャーコンベンション「DoKomi」に招待され、ライブ会場キャパ満員の1500人を集客。8月には東京&大阪で2ndライブ「Color my world.」を実施した。10月にはMY FIRST STORYとのコラボ曲「SAVIOR OF SONG」をCD化。2014年2月にはアニメ「魔法戦争」のエンディングテーマ「Born to be」が4thシングルとしてリリースされる。