音楽ナタリー PowerPush - ナノ
トリプルタイアップ作を通じて明かす 制作へのこだわりと新たな可能性
ナノが通算5枚目のシングル「INFINITY≠ZERO / SABLE」をリリースする。本作は映画主題歌、テレビアニメのエンディングテーマ、ゲームソフトの主題歌を含む、自身初のトリプルタイアップシングル(参照:ナノ新シングルに映画、アニメ、ゲームのタイアップ曲)。どの楽曲もナノの原点を意識しつつも、今後の新たな可能性を大いに感じさせる意欲作に仕上がっている。
今回のインタビューでは、ナノは各曲の制作秘話や歌詞に込められたテーマ、タイアップによって異なる楽曲との向き合い方について説明。さらに9月からスタートする全国ツアー「World of stars.」への意気込みも語っている。
取材・文 / 西廣智一
リアリティを歌詞に反映させた「INFINITY≠ZERO」
──前作「Born to be」リリース以降、ずっと新曲の制作が続いていたようですが、まさかここまでタイアップの話が立て続けに発表されるとは思ってもみませんでした。
自分でもビックリです。こういうことは今までなかったことですし、正直新曲が多すぎてどれがどれだっけという時期が自分の中でもちょっとあって(笑)。それくらいの制作ペースだったんですけど、どれもすごくカッコよく仕上がった自信はあります。
──今回リリースされるシングル「INFINITY≠ZERO / SABLE」にはまさにそういったタイアップ曲がたっぷり収録されているわけで。それぞれタイアップが決まってから歌詞を書いたんですか?
はい。映画「幕末高校生」の主題歌「INFINITY≠ZERO」の場合は最初にストーリーを自分の中で噛み砕いて、そこから作詞をしました。本当に楽しかったですね。すごく壮大な世界観を5分弱の歌に思う存分詰め込むというのも自分にとって1つのチャレンジだし、こんなにワクワクすることってないなって思いながら挑みました。
──今まではアニメやゲームといった、いわゆる二次元の世界をつづっていましたが、今回は初めて三次元の実写映画の主題歌ということで、何か今までとは違ったことを意識しましたか?
リアリティは正直すごく大事にしました。例えばアニメやゲームの場合は想像の世界というか、ファンタジーの要素が強かったりしますよね。今回の「幕末高校生」もタイムスリップというちょっとファンタジーの要素はありながらも、やっぱり現実的なストーリー展開なんですよね。何よりも役者さんがみんな生身の人間だし、会話のやり取りやちょっとした表情からダイレクトに人間の感情が伝わってきたし、そういう部分でのリアリティは歌詞にも反映されていると思います。
どう生きるかによって常に可能性は無限かゼロのどちらか
──歌詞のテーマや伝えたいことはこれまでの楽曲にも通ずるものがあるのですが、その表現方法や言葉の選び方が今までよりもわかりやすくなっている気がしました。
それはやっぱりタイムスリップ……時空とか時間の感覚とかをテーマにした曲なので。時間ってどの人間にもあるもので、ときに苦しめられたり、ときにすごい幸せを招いたりと、そういう感じを歌詞で表現した曲にしたいと思ってたんです。
──作詞する上で苦労したところはありました?
あまり苦労はしなかったですね。映画のテーマや世界観がしっかりしてたので、あとはそこに自分がどう絡んでいくかで。逆にいろいろ想像を働かせて歌詞を書くのが楽しかったですね。
──「INFINITY≠ZERO」というタイトルもすごく印象的ですね。
「INFINITY≠ZERO」というタイトルには、自分がどう生きるかによって常に可能性は無限かゼロのどちらかしかないというメッセージが込められていて。どう生きていくかって、本当に1秒1秒大事に考えていくことだなと思っていて。
──そうですよね。しかもタイトルの「INFINITY」と「ZERO」をつなぐのは「=」ではなく「≠」というのも興味深くて。歌詞の中でも「人生、どちらに転がってもその人次第、自分で自分の運命を切り開くしかない」といったことが歌われてますし。
そうですね。この映画には「決められたと思っていた自分の運命をもしかしたら自由に変えられるのかもしれない。ちょっとした判断で未来さえもすべて失うこともあるし、すべてを得ることもできる」というメッセージが込められていると思うので。そこに対してあまり恐怖を感じる必要はないけど、でもやっぱり時間を大切にして生きるっていうのは大きなテーマとしてあるかなと。
映画館でこの曲を聴いたときのインパクトを重視
──「INFINITY≠ZERO」はストリングスも効果的に多用されています。ナノさんの楽曲で、ここまで大々的にフィーチャーされるのは初めてですよね?
そうですね。ストリングスは今までもわりと好んで使ってきましたけど、今回は映画館でこの曲を聴いたときのインパクトを重視して大々的に取り入れました。「幕末高校生」という映画を通じてナノの楽曲に初めて触れる人も多いと思うので、やっぱりインパクトは大事かなと。聴いた人たちがゾワゾワっと鳥肌を立ててくれたらいいな(笑)。
──確かにストリングスの効果は今までの楽曲で一番強いと思います。パワフルなバンドサウンドにも負けてませんし、ブレイクが入ったタイミングに耳に飛び込んでくるのも印象的ですし。
バンドサウンドとの融合という点は、今回一番難しかったところで。スリリングさを重視しつつ、バンドサウンド、ストリングスの双方が負けない、ナノらしい音を追求した結果が今回の作品だと思ってます。
──いわゆるナノサウンド、ナノの楽曲スタイルの1つの終着点が「INFINITY≠ZERO」なのかな、という気がしました。
シングルの表題曲としては究極の1曲かもしれませんね。
──そしてもう1つの表題曲「SABLE」は「INFINITY≠ZERO」とは違って全編英語詞で、非常に攻撃的なナンバーに仕上がりました。これはアニメ「M3~ソノ黒キ鋼~」の世界観を反映させた結果ですか?
そうですね、すごくダークなアニメだったので。タイトルの「SABLE」も黒を意味する言葉で、全体的にダークな印象を与える曲にしたかったというのはあります。
──「INFINITY≠ZERO」がストリングスの音色が気持ちよく響く鮮やかな楽曲なのに対し、「SABLE」はもっとモノトーンというか。そういう対照的な印象もあります。
ああ、今回はそこを強く意識しました。2曲とも6月に野音でやったライブでも初披露したんですけど、特に「SABLE」は歌っていてめちゃくちゃ気持ちよかったなあ。お客さんの盛り上がりもすごかったし、これからのライブに不可欠な1曲になりそうですね。
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- ニューシングル「INFINITY≠ZERO / SABLE」/ 2014年7月23日発売 / FlyingDog
- ナノver. [CD] 1512円 / VTCL-35189
- M3~ソノ黑キ鋼~ver. [CD] 1512円 / VTCL-35188
ナノver. 収録曲
- INFINITY≠ZERO
- SABLE
- Dusty Mirror
- INFINITY≠ZERO Instrumental ver.
- SABLE Instrumental ver.
- Dusty Mirror Instrumental ver.
M3~ソノ黒キ鋼~ver. 収録曲
- SABLE
- INFINITY≠ZERO
- PARALYZE:D
- SABLE Instrumental ver.
- INFINITY≠ZERO Instrumental ver.
- PARALYZE:D Instrumental ver.
ナノ「World of stars.」
- 2014年9月18日(木)愛知県 Zepp Nagoya
- 2014年9月19日(金)大阪府 Zepp Namba
- 2014年9月26日(金)東京都 Zepp Tokyo
ナノ
アメリカ・ニューヨーク州出身、7月12日生まれ。卓越した歌唱力と、日本語と英語を使い分けるバイリンガルシンガー。2010年よりYouTubeやニコニコ動画などの動画サイトに、洋楽やVOCALOIDのカバー楽曲の投稿を始め、現在までに国内外問わず多くの音楽、アニメユーザーの支持を集める。 2012年3月にデビューアルバム「nanoir」(ナノワール)をリリース。オリコンデイリーランキングでは発売日に10位を記録し、新人では異例のチャートアクションを起こす。2013年2月には2ndアルバム「N」を発売し、オリコン週間ランキング8位にランクイン。同年5月18、19日には、ドイツ・デュッセルドルフで行われたジャパニーズカルチャーコンベンション「DoKomi」に招待され、ライブ会場キャパ満員の1500人を集客した。2014年7月に映画「幕末高校生」の主題歌「INFINITY≠ZERO」、テレビアニメ「M3~ソノ黒キ鋼」の新エンディングテーマ「SABLE」、PlayStation Vitaのゲームソフト「RE:VICE[D]」の主題歌「PARALYZE:D」を含む両A面シングル「INFINITY≠ZERO / SABLE」をリリース。さらに9月には自身2度目のライブツアー「World of stars.」を東京、大阪、名古屋の各Zepp会場で行う。