夢みたいに楽しいレコーディングだった

──今回リリースされるシングルは、Hi-STANDARD「MAKING THE ROAD」を手がけたライアン・グリーンがプロデュース / エンジニアリングを担当していますね。

「MAKING THE ROAD」を作ってからずっと会ってなかったから、会った瞬間にもうグッときたね。15年ぶりの再会がうれしくてさ。忘れてた何かを思い出したっていうか、自分を取り戻せたっていうか。音を出す前からライアンに頼んでよかったなって思った。

──今改めてライアンに依頼したということ自体、難波さんの戦闘態勢が整ったことを示しているというか。

そうかもね。「今ならライアンに会えるな」っていう気持ちになってた。それくらいの曲もできてたし、この作品をライアンならもっといい方向に広げてくれるだろうなって。レコーディングは本当に夢みたいで、こんな幸せなことがあるんだって思うくらい楽しかったね。

──それは「MAKING THE ROAD」を作ってた当時の楽しさが思い起こされたり？

それより面白かった。あのときはいろいろ背負い込んでた時期でプレッシャーもデカかったしね。実際ハイスタのアルバムだと「GROWING UP」を作るときが一番楽しかったんだよ。キャッキャキャッキャ言ってるだけでよかったし。だから今回はけっこう「GROWING UP」の感じに近かったかなあ。ライアン自身「MAKING THE ROAD」を作ってたときよりすごく進化してたんだけど、そのライアンが「これは自分が今までやってきた中で最高の作品」って言ってくれた。まいっちゃったよね（笑）。

メロディックパンクも俺も終わってねえぞ！

──確かにシングルのタイトル「MELODIC PUNKS NOT DEAD!!!」にも自信が伺えます。

タイトルには音楽的な「メロディックパンク終わってねえぞ！」ってところがあって。たとえ日本が暗くなろうと、その感じは終わらせないぞっていう気持ちもあるし、それがメロコアと呼ばれるバンドの役割っていうか。でも言っちゃえば、メロコアなんて言葉がない時代の日本でそれを作ったのは自分だってわかってるから「俺、終わってねえぞ！」っていう気持ちも強いのかもしれない。

──国内メロディックパンクのオリジネーターとしての自負を感じます。

そうだねえ。カラフルな、イケイケな感じは終わらないよっていう。前の「WAKE UP!!!」ってアルバムでは怒りをすごいぶち撒けてて。やってみて思ったけど、そういう部分はもちろん俺の中にあるけど、もっと楽しくハッピーにっていうのを打ち出すのが俺の役割なのかなって思って。自分は誰かにハッピーになってもらったりカラッとした気持ちになってもらったりっていう音を出す人間なんだなって最近改めて気付いたんだよね。

──今作は、明らかにムードが違いますもんね。本当にハッピーな空気に満ちていて。

歌の雰囲気も違うしね。言葉でいろいろ届けようと思った時期もあったんだけど、俺はやっぱり音なんだなと思ったね。もうゴチャゴチャ言うの止めようと思ってさあ（笑）。現時点でもう最高だし、このままいけばもっと「最強！」って感じになれるのかな。俺の中で何が到達地点かっていうのがハッキリあって、そこにいけそうな気がするんだよね。

──シングルを聴かせてもらってても、難波さんの新しい黄金期が見えてくるようでした。

ああなるほど。今は俺っていう人間から何が出てくるのか、それが一番楽しみなんだよね。俺、普段「これが楽しい」ってことが何もなかった人間なのよ。ライブやったり作品を作ってるときは楽しいんだけど、それ以外はなんにも楽しくなくて。音楽以外で何をやっても心から楽しいって思えない。本当に音楽バカっていうか（笑）。そんな俺も家族を持って、家族といるときは最高に楽しくて、やっと音楽以外の楽しみができたんだけど。

──なるほど。

でも震災以降その思いもブッ壊されたっていうか、それだけじゃよくないってことに気付かされて。それで去年くらいまで悩みまくってたんだけど、そこを吹っ切らせてくれたのがNAMBA69のメンバーであり、バンドの活動だったんだよね。あの震災みたいに友達が急にいなくなったりだとか、そういうことがいつ自分の身に降りかかるかわからない。だから、死んじゃったら後悔することもできないし、やっぱりやりたいことは今やっとかないとって思って。

──タイトルの「NOT DEAD」にもつながってますね。

そうだね。タダじゃ死ねない、死なないっていう（笑）。もうちょっとしたらリハビリも完成して、やれることをマックスでやってれば無敵な状態になれるんじゃないかな。自分で今の俺、最高！ってことをやれてれば、ほかに何もいらないって思うし。

──そこに向かって突き進むだけという。

うん。俺みたいな人生を送ってるヤツって、他に誰もいないのよ、ホントに。その人生……生きてるってことは最高に楽しいんだよってことをみんなに伝えたい、それしかないよね。そのために音を出して届けるわけだから。