NAMBA69|新ドラマーMOROがもたらしたシナジー、より自由でハイブリッドに

NAMBA69が8月5日に新作ミニアルバム「FRIENDS」をリリースした。

NAMBA69にとって大きな飛躍の年になった2019年。その流れは、2018年6月発売のスプリットCD「Ken Yokoyama VS NAMBA69」が注目を浴びたところから始まっていた。2019年5月にリリースされた2ndアルバム「CHANGES」はバンドの持つハイブリッドな音楽性を開花させた作品となり、同年開催された全国ツアー「CHANGES TOUR 2019」はほぼ全公演のチケットがソールドアウト。さらなる期待が高まる中、2020年2月にドラマーSAMBUの脱退という事態が起こったものの、バンドは新たなドラマーとしてMOROを迎え入れた。

MORO加入後初のリリースとなる「FRIENDS」には、「Ken Yokoyama VS NAMBA69」に収められている「BEST OF THE BEST」と、新曲4曲を合わせた計5曲を収録。また本作には2019年11月に東京・TSUTAYA O-EASTで行われた「CHANGES TOUR 2019」の最終公演の模様を収めたライブDVDが付属する。音楽ナタリーでは「FRIENDS」の発売を記念して、NAMBA69に新体制初のメンバー全員インタビューを実施。MORO加入の経緯や新作ミニアルバムに込めた思いを聞いた。

取材・文 / 大野俊也 撮影 / 後藤倫人

鳥とセッションしていたMORO

──MOROさんがNAMBA69に加入することになった経緯から聞かせてください。

ko-hey(G, Cho) 去年の12月に三ちゃん(SAMBU / Dr)から脱退したいという旨の話を受けて(参照:NAMBA69のSAMBUが涙の別れ、豪華6組熱演の新木場「BODY and SOUL」スペシャル)。でもバンドは止まるつもりもないし、先々もっとやりたいこともあるし、NAMBA69で突き詰めていきたい音楽というのもある。当然、新たにドラムを探さなきゃっていう話になるわけです。

難波章浩(Vo, B) 新しいドラムが見つかるまでバンドはやれないんだけど、PIZZA OF DEATHのコンピ(「The Very Best Of PIZZA OF DEATH III」)に参加することがすでに決まってて、誰かに叩いてもらわなきゃいけないってなって。ko-heyに探してもらったんです。

ko-hey(G, Cho)

ko-hey 諸石(MORO)がやってるINFECTIONというバンドと、僕がやってたARTEMAは仲がよくて、諸石とはもともとの知り合いではあったんですよ。諸石とはSNSではつながってたので、彼がやってたポップスのバンド、Shiggy Jr.の活動が終わってたことは知ってたんです(参照:Shiggy Jr.が9月で解散)。で、あるとき、彼がSNSで動画を上げてるのを観たら、山にドラムセットを持っていって、「鳥とセッション」とか言ってやってたんですよ(笑)。

MORO(Dr) ハイハットを叩くと、鳥たちが呼応してくるのが面白くて。そういうのをSNSに上げたんですね。

ko-hey ヤベえヤツだなと思って(笑)。

MORO ドラムを叩くとマジで鳥が鳴くんですよ。逆に、鳥の声のループ感にハットを合わせてみたら、いろんな種類の鳥の泣き声が増えてきて。そんな動画を上げたときに、ko-heyさんからひさしぶりに連絡があって。

ko-hey 初めは2人で飲みに行って、レコーディングを手伝ってくれという話をしたんですよ。

MORO ko-heyさんからお話をいただいたときは、Shiggy Jr.が解散して、自分的には音楽を続けていくのは間違いないんだけど、どういうふうに生きていくのか、明確な指針はなくて。そんな中、1回音合わせということで、4人でセッションする機会をいただいたときに、こういうラウドロックの音楽で、ここまでグルーヴを生み出せるんだと思えたのは初めてだったんですよ。それが本当に気持ちよくて、最高だったんです。その状態から「BEST OF THE BEST」(「The Very Best Of PIZZA OF DEATH III」収録曲)のレコーディングに行ったら、またよくて。それまでのレコーディングでは同期でメトロノームに合わせることが基本だったので、そのときもカチッと叩こうと思ったんです。それが、何テイクか録ったあとに、難波さんの一言でハッとした部分があって。「もっと自由にやっちゃいなよ」「もっと、MOROちゃん来た!みたいな。ここでフィルとかガッと入れちゃったりとか」って言われたんです。そこで頭の中がパッと明るくなった。このバンドではいろいろ自由な表現ができるだろうし、自分の音楽のいいところをもっと追求していけるなって確信できたんです。

難波 MOROちゃんにとって、僕は小鳥だったんですね(笑)。でもこれ、誰にも言ってなかったんですけど、「BEST OF THE BEST」は誰に向けた歌なのかなっていうと、三ちゃんに向けて歌ってる部分も入ってるんですよ。「おまえは最高だったっていうのを忘れるなよ」って。その曲をMOROくんが叩いてるっていう感じがヤバいんですよ。

──ちゃんとバトンを渡しているんですね。

MORO 最初に歌入りのミックスと歌詞が来たときに、普通に泣きましたからね。仕上がりがすごすぎて。

難波 そのレコーディングで、MOROくんとやりたい!ってなっちゃったんだよね。そこからちゃんとオファーして、そこから正式加入です。

音楽の幅が広い

──MOROさんはどういう音楽が好きだったんですか?

MORO とにかくバンド人間だったので。フリージャズのバンドをやったり、プログレッシブメタルをやったり、ポップスもやるし、ハードコアもやるし、けっこういろんな経歴で来てるんです。ジャズファンクも好きで、大学のときは友達とネオソウルとかファンクのグルーヴをずっと追求してました。

ko-hey その裏でConvergeとかも大好きですからね。

──今一度NAMBA69の音楽性についても聞きたいのですが、バンド結成以来追求してきた音楽は、言葉にするとどういうものになるのでしょうか? 「ハイブリッド・メロディック・ハードコア」とも呼ばれていますが。

K5(G) 常にハイブリッドだとは思いますね。俺も最初からやってるので、常に進化してるとは感じます。コアにはパンクという強いものがあるんですけど、ハードコアもメタルもレゲエも、いろんな要素がどんどん入ってきて、それはko-heyが入ってきてからもそうで、MOROくんが来てからはさらにそうですね。カッコよかったらなんでもOKだっていう音楽だとは思います。

NAMBA69

ko-hey ほかのインタビューで、「『FRIENDS』には今のNAMBA69のやりたいことが詰まってるんですね」って言われたんですけど、「これがNAMBA69らしさ」みたいなことは、そんなに気にしてはないんですよね。曲のネタは難波さんか俺がきっかけで作り始めるんですけど、それを料理して曲に作っていくうえで、そのときそのときのベストをチョイスして、NAMBA69になっている感じなんですよ。だから「これ、うちらしくないな」って言って排除するようなことはほとんどないんです。

難波 もちろん世界的に先端と言われるトレンドはあるだろうし、そういうのはもちろん聴いてますよ。でも最近のコロナ禍では、逆に昔の音楽に影響を受けてたりもする。自分のルーツも、ルーツじゃないものも、みんながそれぞれあったうえで、NAMBA69というバンドになったときに、1曲そういう表現として形になったというだけなんですよ。MOROくんも含めて、みんな音楽の幅が広いわけじゃないですか。ダンスミュージックの要素もあるし、アイドルが好きだったり、J-POPもあるだろうし。

ko-hey いろんなバックグラウンドがアレンジとしてNAMBA69の世界を構築する要素にはなってるんですけど、それでも破綻しないのは、圧倒的なボーカリストとしての難波さんの歌声とメロディラインのセンスのおかげだと俺は思うんですよね。それがNAMBA69の根幹に太い幹としてあるので、どんな枝が生えてきても、その大木はブレないっていうイメージはあります。

NAMBA69とHi-STANDARD

──難波さんにはHi-STANDARDというバンドもありますよね。だけど、NAMBA69はHi-STANDARDに似ることもなく、まったく別の強力なアイデンティティを持ったバンドとして成立しています。それはなぜなんでしょうか。

難波 僕の中で意識していないって言ったら嘘になりますよ。でも、それはさっきも出た「ハイブリッド」がキーワードなのかもしれない。NAMBA69の4人は許容範囲がすごく広いんですよ。それはハイスタが狭いという意味ではなくて、ハイスタには確立されてるものがあるからで。ハイスタはぶつかるところから生まれるんです。僕が何かをやろうって言うと、「それはないっしょ」となって、それはそれで気持ちがいいんです。そこは、この前「THE GIFT」(2017年リリースの4thアルバム)を作ったときに「これがハイスタだよな」って思ったところなんです。もしそこで振り幅が広すぎたらとっ散らかってしまうかもしれない。一方で、NAMBA69は本当に自由なんですよ。あと、ハイスタには横山健という強烈なコンポーザーがいるんですけど、NAMBA69にko-heyが現れたことによって、僕って誰かと一緒に作るのがすごくうまいんだなってことがわかったんです。僕に対するハイスタでの健くんのような存在が、NAMBA69でもko-heyという存在が現れて、それで加速したのは間違いないんですよ。ko-heyのコンポーザーとしての能力はハンパないし、そこで僕がプロデューサーになれて、ko-heyが僕のアイデアに対してさらにプロデュースしてくれる。その関係性がいいんですよね。

K5(G)

──難波さんはボーカリストとして面白いから、ko-heyさんとしても、難波さんがどこまでいけるのか、いろいろぶつけられるんじゃないですか?

ko-hey まさに言われた通りで。俺も曲を作ってメロディを付けることもあるんですけど、難波さんからは、考えられないようなメロディの流れが来るんです。それがギリギリのところまでいくんですけど、流れで聴くと超エモいし、気持ちいい。そうなると、俺は逆にメロディを付けない状態でネタを送るようになるわけです。今となっては何をやっても大丈夫だと思えるので、どんなネタでも出せるようになりましたね。

──すごい境地に達しましたね。

難波 どんなネタが来ても俺は握るよってことですね(笑)。

──この寿司職人は、まあまあのものを作っていくと「もっとイケるでしょ」っていう感じで許さないですよね(笑)。

ko-hey そうなんですよ!(笑)ここ最近の曲のネタでもそうですし、スタジオでも諸石がちょっと疲れてる感じだと許さないんですよ。

MORO NAMBA69は「なんかいいね」じゃダメなんですよ。その日の最高が出るまでは終わらないんです。

ko-hey 諸石と2人で個人練習に入ったときに、諸石が「この前、休憩したあとにダレてたのがバレてるんですよね」って言ってきましたからね。「全力でいかないとダメですよね」って。

MORO スタジオでみんなでMouse On Marsを聴いて、チルった気持ちで行っちゃったんですよ。それでたぶんハマらなかったんですよね(笑)。

難波 でもそこも無意味じゃないですよ。チルったあとにどこまでいけるのか、ぶっちゃけですけど、試しました(笑)。

──すごいプロデューサーですね。

ko-hey そのセンサーが異常なまでに発達してるんです。本能的に100%じゃないのが伝わると嫌なんですよ。

──Ken YokoyamaとNAMBA69のスプリットCD「Ken Yokoyama VS NAMBA69」(2018年6月リリース)の収録曲「PROMISES」あたりから「CHANGES」(2019年5月リリースの2ndアルバム)にかけて、NAMBA69のファンや周りの反応が変わったような気がしていて。このあたり、自分たちではどう捉えていますか?

難波 スプリットで僕らにチャンスをくれた横山健くん本人は絶対にそんなことは言わないですけど、彼なりに「NAMBA69、カッケエんだからもっと行きなよ」って伝えてくれたことを僕らが感じたんです。「絶対にこのチャンスはつかまなくちゃいけない」っていう僕たちの意気込みが、あの曲を生んだんだと思うんです。あのタイミングから何かが変わって、健くんとのツアーでZepp DiverCity TOKYOでやったときに、みんながあれほど踊ってくれた光景を見て「俺たちいけるんだな」と思った。それまではやっぱり届かなかったんです。だけど、届いた瞬間、本当に信じてよかったんだなって思いましたね。