ナタリー PowerPush - 中塚武 meets 須永辰緒
音楽とラーメンの師弟対談
ジョン・レノンだったらこれぐらいやったほうが喜ぶ
──「Lyrics」のときの取材で、「作曲家の中塚武がシンガーの中塚武をようやく許せるようになった」とおっしゃってましたよね。
中塚 そうなんです。そこを許せるのに5、6年かかっちゃったんですけど。
須永 でも、その葛藤はすごくよくわかる。自分を客観視できないもんね。作曲家でせっかくいいアレンジができたのに、自分の歌で台無しにはできない。こわいよね。
──「代打、俺!」ってパターンですよね(笑)。でも、その「俺!」が堂々とできるようになったってことですもんね。ちなみに、どの曲が一番やってみて楽しかったですか?
中塚 全部の曲が、オリジナルに対する敬意が僕にある曲ばかりだったので、その状態でのぶっ壊しはやりやすかったですね。楽曲の手のひらでちゃんと踊れたというか。オリジナルの曲が全部偉大なので、安心して遊べたんです。「アクロス・ザ・ユニヴァース」にしても、ジョン・レノンだったらこれぐらいやったほうが喜ぶと思うんです。ぶっ壊さないと逆に彼には怒られちゃうんじゃないですか。
──日本のポップスとしてKUWATA BANDとNOVOという2つが選ばれているのもすごく興味深かったんですが。
中塚 自分のルーツという意味でも桑田さんは絶対やりたかったんですよ。NOVOは昔、大学を卒業するころに知り合いのエルナ・フェラガーモに教えてもらって、あまりに良い楽曲なのでいつかカバーしたいと思っていました。
アナログとデジタル
──今回のアルバムは全曲を7インチシングルにして、アナログ4枚組とかで出してほしいですね。それこそ「Lyrics」からは「恋とマシンガン」が7インチでリリースされましたし。
中塚 「Lyrics」を出したときに辰緒さんがメールをくれてたんです。「すごくいいから、7インチ出して」って。
須永 単純に希望を書いて出しただけなんです。
中塚 でも「出してくれそうなところがあるから」って提案も書いてあって。そしたら、もう翌日には発売が決まりました(笑)。
須永 おかげさまでアナログでかけられます(笑)。
中塚 実は今回のアルバムは、ミックスするときに「アナログを作りたいのでそれに対応した音のレンジにしてほしい」という僕の希望をエンジニアにも伝えてあって。あとはすごい大音量でかけても大丈夫なようにしてくれとお願いしました。
須永 今はCDでもすごくいい音のするクラブも多くなりましたけどね。でも僕のようなアナログDJにとっては、単純に操作性の問題もあってアナログがいいというのもあるし、DJするときに重いレコードバッグをごろごろ転がしていかないと仕事した気がしないんですよ(笑)。かと言って、PCデータでDJしてる人に理解がないわけじゃないんです。ただ自分はそうじゃない、ってだけかな。だから、これからも中塚くんの仕事で「これはアナログあったほうがいい」って思ったものは、すぐリクエストします(笑)。
──このお2人の関係からまた新しいものが生まれてきてほしいし、今またアナログとデジタルの関係がメディアの面でも演奏の面でもハイブリッドな感じになってきているし。中塚さんがこれからやろうとしてることはすごく可能性のあることだと思います。
中塚 生で勝負してる人たちってみんなすごいですよ。もちろんPCでDJしてカッコいいという世界があるのもよくわかってるんですけど、何年も、何十年も、ずっと孤独に耐えて練習を続けてきた演奏家たちの怨念みたいなものが演奏に出たときの凄みには、やっぱり震えるなって思うんです。そこは音楽家として大いに追求したいです。
須永 このビッグバンドとのコラボは続けるの?
中塚 山下達郎さんの「ON THE STREET CORNER」みたいな感じで、ゆっくりシリーズ化できたらいいなと思ってます。
収録曲
- Just A Pretty Song(THE PEDDLERS)
- Play That Funky Music(WILD CHERRY)
- スキップ・ビート(KUWATA BAND)
- Across The Universe(THE BEATLES)
- It's Your World(ギル・スコット・ヘロン)
- Be Nice To Me(トッド・ラングレン)
- Carnaby Street(アンリ・サルヴァドール)
- 白い森(NOVO)
※カッコ内はオリジナルアーティスト
中塚武 with イガバンBB
『Big Band Back Beat』発売記念
インストアイベント
2013年8月23日(金)東京都 タワーレコード新宿店7Fイベントスペース
START 21:00~
※観覧無料
中塚武 meets SOFFet with イガバンBB
10周年&新譜発売記念ライブ
2013年9月18日(水)大阪府 Billboard Live OSAKA
[1st]OPEN 17:30 / START 18:30
[2nd]OPEN 20:30 / START 21:30
<出演者>
中塚武 / SOFFet / イガバンBB
<料金>
サービスエリア 6300円
カジュアルエリア 4800円
中塚武(なかつかたけし)
1998年、自身が主宰するバンドQYPTHONE(キップソーン)でドイツのコンピレーションアルバム「SUSHI4004」に参加。国内外での活動を経て2004年にアルバム「JOY」でソロデビューを果たした。その後はCM音楽やテレビ&映画音楽、アーティストへの楽曲提供など活動の幅を広げ、2010年には自身のレーベル「Delicatessen Recordings」を設立。2011年にはレーベルオフィシャルサイト内にて新曲を定期的に無料配信する「TAKESHI LAB」をスタートさせた。2013年2月6日には約3年ぶりのオリジナルアルバム「Lyrics」をリリース。
須永辰緒(すながたつお)
1980年代よりDJとして活動し、1988年からはリミキサー / プロデューサーとしても活躍。1995年には東京・渋谷にクラブ「Organ Bar」にオープンさせ、2001年からはソロユニット「Sunaga t Experience」としての活動も始める。「World Standard」「須永辰緒の夜ジャズ」シリーズなどミックスCDも多数手がけており、コンピレーション監修やプロデュースワーク、海外作品のリミックスなど関連作品はのべ200作を超えた。2013年には「音楽史に残る名レーベルを現在のシーンに再訪(Re visit)させる」レーベルコンピレーション「REVISIT」シリーズが始動。6月にはその第1弾作品「REVISIT -Brunswick- selected by Tatsuo Sunaga」がiTunes Store限定でリリースされた。