中島愛|好奇心に導かれるままに

3つの柱で作られた「愛を灯して」

──そしてラストの「愛を灯して」では、再び中島さんが作詞を手がけています。アルバムの最後を締めくくるのにふさわしい内容だなと思いましたが、作詞をする際にそういう意識があったのでしょうか。

中島愛

はい。アルバムの始まりは「サブマリーン」で、終わりはこの曲だと最初に決めてました。「愛を灯して」は私の中で3本くらい柱のある曲で、1つは作詞をするうえでの田村さんから「みんなを引き連れていくようなポジティブな歌詞にしてほしい」というオーダーを受けたこと。私は深く沈んでいく思考の持ち主なので、引き連れていく、上げていくような歌詞を書くのは非常に難しかったんですけど、なんとか明るい歌詞を書こうと決意して挑みました。

──2つ目の柱は?

ごくごくプライベートなことなんですけど……「愛を灯して」はキャンドルのことを歌っているんです。作詞をしている最中に、母の故郷であるフィリピンに行く機会があったんですけど、ちょうど日本で言うお盆にあたる時期だったんです。その時期は家の前に亡くなった方を迎えるためたくさんのキャンドルを灯す習慣があって。その景色を見て、誰かを思って火を灯すという行為が、すごくいいなと思ったんです。人と人、家族のつながりみたいなことを、私はずっときれいごとのように思って斜に構えていたんですけど、ずらりと並んだキャンドルを見て「この気持ちは本物だな」「きっと私の心にもあるな」って感じたんです。そこからポジティブな気持ちに引っ張られるように、帰りの飛行機で一気に歌詞を書き上げました。

──最後の柱はなんでしょう。

活動を再開してから、いろんな作家さんが私の復帰を祝って曲を書いてくださったり、インタビューなどを通して私の復帰はこういうことですよねとまとめてくださったりしたので、最後くらいは自分の言葉で復帰を締めくくらないとなって。けじめは自分で付けないとなという思いで書きました。

──なるほど。その3つの柱の背景を踏まえるとなおのこと、言葉がしっかりと刺さってきますね。さわやかな後味を残す曲調も相まってグッときます。作・編曲の坂東邑真さんはまだ若い作家さんで、ディスコグラフィを確認してもまだそれほど多くはないですよね。

坂東さんは田村さんがプロデュースした大竹しのぶさんのアルバム(参照:大竹しのぶ「ち・ち・ち」インタビュー)に参加されているんです。私よりも若い作家さんにも参加してほしいという田村さんの思いがあって、お願いした方ですね。メロディだけのデモをもらってすぐに聴いたんですけど、渋谷駅で山手線を待ちながら自然と涙が出てきました。そのくらいメロディラインが情熱的だったので、いろんな気持ちを浄化するような曲にできたらと歌詞を書きました。

長い長い道筋の中で1ついいものができた

──再始動からの一連の流れをこうしてまとめて、ご自身のペンで締めくくった今、改めてどういうお気持ちですか?

中島愛

うーん、こんなにいい1枚ができて、次はどうしようという気持ちもあります。来年もここにいられるかなって(笑)。いくらポジティブな考え方ができても、そうそう人は変われないですね。でも、まとめられたことに意義があるなと。不安は消そうとして消えるものじゃないし、その気持ちに対して働きかけができるときもあれば、できないときもある。なので今はただ「1つの流れを締めくくるアルバムができた」という喜びを噛み締めています。前を向いて「この仕事を続けていこう」という気持ちになっているということは、すごく幸せな状態にあると思うので、今はスッキリした、すがすがしい気持ちですね。

──この1年ちょっとの活動を見ていると、やっぱり気持ちが強くなっているんだなと思います。

ちょっとずつちょっとずつ補強して、最終的に揺るがないものになればいいなと思ってます。長い長い道筋の中で1ついいものができたなという実感は確実にあって。この状態が細く長く続くといいなって(笑)、今はそう思ってますね。いい意味で過程の1つだと思いたいです。

──活動休止の際におっしゃっていた「“青春”というタンクに詰められたものだけで歌ってきた」自分からの脱却、という目標はしっかり達成できましたよね。

そうですね。そこはクリアできたと思います。

──次はこんなことをやりたいというアイデアも浮かんでいる?

はい。だいぶポップなほうを攻めることができたので、しばらくはこの方向で行きたいんですけど、これがベースになっていればどこへでも行ける気がするので、またシングルなりアルバムなりで別の方向にも進んでみたいです。

──アルバムを携えてのツアーも控えていますが、どんなライブになりそうですか?

とにかくバラエティ豊かなアルバムになったので……今までも十分バラエティ豊かでしたけど、当時は1つの軸として“青春”があったと思うんですね。若さみたいなもので1本筋を通して押し切っていたようなところがあったけど、今回は“中島愛”を軸にしたアルバムでありライブになると思うので、自分次第だなと(笑)。今は脱皮し始めくらいの感じで、完全に変化するのは今のタイミングじゃないと思うので、変わり始めた過程をみんなにお見せするライブになるんじゃないかなと思います。

中島愛
中島愛「Curiosity」
2018年2月14日発売 / FlyingDog
中島愛「Curiosity」初回限定盤

初回限定盤 [CD+Blu-ray]
4104円 / VTZL-143

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中島愛「Curiosity」通常盤

通常盤 [CD]
3240円 / VTCL-60467

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CD収録曲
  1. サブマリーン[作詞:新藤晴一 / 作・編曲:ラスマス・フェイバー]
  2. Life's The Party Time!![作詞:中島愛、前山田健一 / 作編曲:前山田健一]
  3. 残像のアヴァロン[作詞:岩里祐穂 / 作曲:バグベア / 編曲:バグベア、千葉“naotyu-”直樹]
  4. ワタシノセカイ[作詞:瀬尾公治 / 作曲:秋浦智裕 / 編曲:WEST GROUND]
  5. Jewel[作詞:加藤哉子 / 作・編曲:本間昭光]
  6. 思い出に変わるまで[作詞:中島愛 / 作・編曲:重永亮介]
  7. ウソツキザクラ[作詞:Satomi / 作・編曲:松本良喜]
  8. 最高の瞬間[作詞:山田稔明 / 作・編曲:古川貴浩]
  9. Odyssey[作詞・作曲・編曲:Avec Avec]
  10. サタデー・ナイト・クエスチョン[作詞:加藤慎一 / 作曲:山内総一郎 / 編曲:フジファブリック]
  11. 未来の記憶[作詞:甲斐みのり、Twisty / 作・編曲:CMJK]
  12. 愛を灯して[作詞:中島愛 / 作・編曲:坂東邑真]
初回限定盤Blu-ray収録内容
  • サブマリーン Music Video
  • ワタシノセカイ Music Video
  • サタデー・ナイト・クエスチョン Music Video
Megumi Nakajima Live Tour 2018 "Curiosity of Love"
  • 2018年3月30日(金)愛知県 Zepp Nagoya
  • 2018年4月1日(日)大阪府 Zepp Osaka Bayside
  • 2018年4月8日(日)東京都 Zepp Tokyo
中島愛(ナカジマメグミ)
中島愛
6月5日生まれ、ふたご座のA型。アニメ「マクロスF(フロンティア)」のヒロインのランカ・リー役に抜擢され、2008年6月に「ランカ・リー=中島 愛」名義によるシングル「星間飛行」で歌手デビューを果たす。2014年3月より音楽活動を休止していたが、2016年12月に活動再開を発表。2017年2月には復帰第1弾となるシングル「ワタシノセカイ」、10月には復帰第2弾となるニューシングル「サタデー・ナイト・クエスチョン」をリリースした。2018年2月に通算4枚目となるオリジナルアルバム「Curiosity」を発表。3月末から4月にかけて東名阪3都市を回るライブツアー「Megumi Nakajima Live Tour 2018 "Curiosity of Love"」を行う。