中島愛|好奇心に導かれるままに

デビューから現在までの歴史をつなぐ作家へのオーダー

──ここまでの3曲がすべて新鮮だったので、4曲目で復帰第1弾シングル「ワタシノセカイ」が出てきたときは少し落ち着きました(笑)。そして5曲目の「Jewel」は先ほど中島さんが自らリクエストしたという初期の作家陣、加藤哉子さんが作詞で参加しています。

加藤さんの歌詞は心にすごく刺さるんですよ。単に1stアルバムの頃の作家さんというより、人生の先輩に書いてほしかったんです。歌も歌われる方ですし、人生の先を行く先輩として、今の私にメッセージをもらえたらいいなと思って。「こういうことを書いてくれたらうれしい」と思っていたまんまのものがドーンと送られてきて……もうプレゼントですよね。単純にうれしかったです。

──細かいオーダーはなく、お任せで?

はい。でも自然と、私のデビューから現在までの時間の経過を表現くださっているような……十代後半から二十代前半の甘酸っぱい青春時代を経た女性の気持ちが描かれていて、加藤さんから「もうその時代は終わったのよ。大人になるときよ」と耳打ちされたような気持ちでした。

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──作・編曲の本間昭光さんはアルバムの情報が発表された際、Twitterで「めっちゃ洋楽テイストに仕上がってます」とおっしゃってました(参照:本間昭光 (@akimitsuhomma) | Twitter)。確かに洋楽テイストですけど、同じく洋楽テイストを取り入れた1990年代の松田聖子さんを彷彿とさせる雰囲気もあって。

うふふ(笑)、うれしいです。最初はもう少し起伏の少ないメロディだったんです。それもすごく気に入ってたんですけど、そのあと本間さんとお会いして歌ってみたら「なんか声聴いたらメロディ変えたくなっちゃったな」って、その場で提案してくださったんです。ちょっと語尾のメロディが変わるくらいだと思っていたら、一部全然違うメロディに変わって。本間さんがピアノを弾きながら「こんな感じでどうかな。ちょっと歌ってみてくれる?」「まだちょっと変えたいな」って何度か繰り返して、少しエモーショナルな雰囲気に変わっていったんです。貴重な体験でした。

──続く「思い出に変わるまで」も、デビュー曲「天使になりたい」をはじめとする初期の楽曲を手がけたキーマン、重永亮介さんが作・編曲で参加していて、そこに中島さん本人が歌詞を書くという。

書いちゃいました(笑)。まず田村さんから「今回のアルバムでは自分で歌詞を数曲書いてほしい。これからは自分で歌詞を書いて思いを発信していく時代だから」と言われたんですけど、私は少し抵抗があったんです。プロの方が書くからこその歌というものがあるし、そもそも私が人に伝えるだけのものを持っているのかなって。でも時代を作ってきたプロデューサーさんが、時代を俯瞰してそう言うのなら挑戦してみるべきなのかなと……とは言え田村さんもそれほどプレッシャーをかけるわけじゃなく「書けると思ったら書いてみて」くらいのアドバイスだったんですけど、アルバム制作の中盤あたりに重永さんのデモをいただいたときに「書けるかもしれない」という直感があったんです。それは重永さんのメロディが私にとって響くものでしたし、なじみがあるメロディラインだったからなのかなと思います。

“ド直球”への挑戦

──7曲目の「ウソツキザクラ」は松本良喜さんの作・編曲によるオリエンタルなバラードです。松本さんも今回が初めてですね。

はい。松本さんの書く曲は十代の頃から大好きで、いつかは書いてほしいと思っていたんですけど、好きな曲が本当に多すぎて、自分でお願いするのは公私混同かなみたいな気持ちもあって。なので自分から提案したことは一度もなかったので、田村さんから「松本良喜さんは……」と名前が出たときは「来たー!」と心の中で叫びました(笑)。J-POPのスタンダードにあえて挑戦するアルバムを作るうえで、いわゆる“桜ソング”をやるというアイデアは、松本さんに曲をお願いする前から田村さんの中にあって。

──確かに、これは中島愛の桜ソングですね。

今までだったら避けがちなテーマだったと思うんです。「もう桜ソングは世の中にいっぱいあるから」って。でもこの曲やアルバム全体を通じて「ド直球を投げてみましょう」という提案は、すごくやりがいがありました。

──「最高の瞬間」は「ワタシノセカイ」のカップリング曲ですが、2枚のシングルのカップリングからこの曲を選んで収録したのはなぜですか?

復帰一発目のファンファーレみたいな曲ですし、これからライブの定番にしていきたいという思いがあったので、改めて入れさせてもらいました。

中島愛

──次の「Odyssey」はSugar's CampaignのAvec Avecによる書き下ろしで、これも今までになかった洋楽的アプローチのエレクトロですね。

Avec Avecさんは以前、livetuneさんとコラボした「Transfer」(2012年9月発売のシングル。参照:livetune、中島愛とYun*chi迎えたニューシングル発表)でリミックスをしてくださったんです。あのリミックスがすごく印象に残っていて、いつか曲をお願いしたいと思っていたのが、今回ついに実現しました。

──中島さんの声が、音数の少ないエレクトロサウンドの中に溶け込んでいるような印象です。

このアルバムでは全曲、田村さんから「言葉がよく聞こえるようにしてほしい」というディレクションを受けました。私の解釈では、街中で聞こえてきたときでも何を歌っているかわかるくらい、一粒一粒言葉をハッキリみたいな。でもこの曲だけはそこからちょっと離れているので、アルバムの中のバランス的に面白い曲になっていると思います。私の声も楽器の1つみたいな感じですね。

──復帰第2弾シングル「サタデー・ナイト・クエスチョン」を挟み、11曲目の「未来の記憶」では先日共著を発表した文筆家の甲斐みのりさん(参照:中島愛、甲斐みのりと“乙女歌謡”の魅力語る「音楽が教えてくれたこと」)が作詞で参加しています。

そうなんですよ! 本の対談をさせてもらったあと、作詞をしていただけないかと思ってお願いしたら、快く引き受けてくださいました。この曲でもやっぱり私から細かいオーダーはしなかったんですけど、対談のテーマだった“乙女歌謡”をモチーフに、甲斐さんから自然と出てくる少女らしさ、大人になった今俯瞰して見る少女時代を描いてくださるだろうという期待感があって。まさにドンピシャでしたね。私は高校生の頃から甲斐さんの本の愛読者だったので、「未来の記憶」はまさに甲斐さんワールドで、純粋に読者としてうれしいです(笑)。

──作・編曲はCMJKさんで、曲調としてはこれも「残像のアヴァロン」と同じくアニソンの王道的なムードもありますが、根底には1990年代のアシッドハウスが流れている不思議な曲ですね。

CMJKさんは「90年代テクノ風味のダークファンタジー」とおっしゃってました。コーラスのレコーディングではCMJKさんがディレクションをしてくださったんですけど、縦のリズムに厳しかったです。歌詞を前に出そうとすると、リズムがややおろそかになってしまうときがあって。でも声も楽器の1つであるというところに、CMJKさんがグッと引き戻してくださって。実はこの曲がアルバム一発目のレコーディングだったんですよ。すごく苦戦しましたけど、この曲や「残像のアヴァロン」みたいなファンタジー要素の強い世界観をタイアップなしで消化できるようになったのは、自信にもつながりました。

中島愛「Curiosity」
2018年2月14日発売 / FlyingDog
中島愛「Curiosity」初回限定盤

初回限定盤 [CD+Blu-ray]
4104円 / VTZL-143

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中島愛「Curiosity」通常盤

通常盤 [CD]
3240円 / VTCL-60467

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CD収録曲
  1. サブマリーン[作詞:新藤晴一 / 作・編曲:ラスマス・フェイバー]
  2. Life's The Party Time!![作詞:中島愛、前山田健一 / 作編曲:前山田健一]
  3. 残像のアヴァロン[作詞:岩里祐穂 / 作曲:バグベア / 編曲:バグベア、千葉“naotyu-”直樹]
  4. ワタシノセカイ[作詞:瀬尾公治 / 作曲:秋浦智裕 / 編曲:WEST GROUND]
  5. Jewel[作詞:加藤哉子 / 作・編曲:本間昭光]
  6. 思い出に変わるまで[作詞:中島愛 / 作・編曲:重永亮介]
  7. ウソツキザクラ[作詞:Satomi / 作・編曲:松本良喜]
  8. 最高の瞬間[作詞:山田稔明 / 作・編曲:古川貴浩]
  9. Odyssey[作詞・作曲・編曲:Avec Avec]
  10. サタデー・ナイト・クエスチョン[作詞:加藤慎一 / 作曲:山内総一郎 / 編曲:フジファブリック]
  11. 未来の記憶[作詞:甲斐みのり、Twisty / 作・編曲:CMJK]
  12. 愛を灯して[作詞:中島愛 / 作・編曲:坂東邑真]
初回限定盤Blu-ray収録内容
  • サブマリーン Music Video
  • ワタシノセカイ Music Video
  • サタデー・ナイト・クエスチョン Music Video
Megumi Nakajima Live Tour 2018 "Curiosity of Love"
  • 2018年3月30日(金)愛知県 Zepp Nagoya
  • 2018年4月1日(日)大阪府 Zepp Osaka Bayside
  • 2018年4月8日(日)東京都 Zepp Tokyo
中島愛(ナカジマメグミ)
中島愛
6月5日生まれ、ふたご座のA型。アニメ「マクロスF(フロンティア)」のヒロインのランカ・リー役に抜擢され、2008年6月に「ランカ・リー=中島 愛」名義によるシングル「星間飛行」で歌手デビューを果たす。2014年3月より音楽活動を休止していたが、2016年12月に活動再開を発表。2017年2月には復帰第1弾となるシングル「ワタシノセカイ」、10月には復帰第2弾となるニューシングル「サタデー・ナイト・クエスチョン」をリリースした。2018年2月に通算4枚目となるオリジナルアルバム「Curiosity」を発表。3月末から4月にかけて東名阪3都市を回るライブツアー「Megumi Nakajima Live Tour 2018 "Curiosity of Love"」を行う。