歌うたいの先輩から予想以上のエールが

──2曲目「最高の瞬間」には歌詞の中に「わたしの声で“愛”を伝えたい 今」とあって、3曲目「愛はめぐる」にはタイトルにそのものずばり“愛”という文字が入っています。この2曲はやはりどう聴いても、中島“愛”さん自身のことを歌った曲ですよね。

私もそう思います。でも実は、こちらのリクエストとして「復帰色を強くしてください」と伝えたわけではないんです。歌詞を書いてくださった山田（稔明 / GOMES THE HITMAN）さんと坂井（竜二 / the ARROWS）さんは、お二人共ボーカリストとして歌を歌われる方です。私からのリクエストで、カップリング曲はボーカリストの方に歌詞を書いてほしかったんです。ステージで、フロントで歌う気持ちを心得ている先輩に、自分を引き上げていただきたいという思いがあって。あと私からは「歌っていて口が楽しかったり、思わず一緒に歌っちゃうような曲を」というお願いもしました。私がリクエストしたのはその2つだけだったのですが、先輩たちから予想以上のエールが送られてきたみたいな。

──なるほど。

山田さんが書いてくださった「最高の瞬間」は歌詞にも「フレー！」と入っていて、まるで私を応援してくださっているみたいで。坂井さんの「愛はめぐる」は、「つらいときも暗くなるときもあるだろうけど、大丈夫だよ」って背中を押してくれるような……お二人から自然とそんな歌詞をいただいて、「私もびっくりだし、うれしい！」みたいな。自分で言葉にはできなかったけど、内心「生まれ変わりたい」とか「自分から会いに行きたい」という気持ちがあふれていたので、それを言語化して、美しい歌詞として組み立ててくださったお三方に感謝していますし、「まさにそれです！」という気持ちです。

──もしその気持ちを自分で歌詞にしようとしたら、もう少し遠慮した、遠回しな内容になっていたかもしれない。

そうですね。そもそも私は根が暗いタイプだから（笑）、この前向きさは今の自分からは出せないものだったので、本当に引っ張り上げてもらった感じがすごいです。

対バン大歓迎

──今作で新たなスタートを切ったうえで、ここから先、どんな音楽がやりたいですか？

これまで私は幅広い音楽ジャンルの作品を作っていただいてきましたけど、「幅広い」って、ときに実体がなくなってしまうというか……カメレオンが透明になっちゃうようなところもあるなと気にし続けていたんですね。でも、活動を休止していた3年間でこだわりもいい感じに削ぎ落とされたし、フットワークの軽さは以前と変わらずにいたいです。いろんな方とタッグを組んでみたいし、いろんな音楽が好きな人に「この曲いいじゃん」と思ってもらえるボーカリストでありたいです。これから先はさらに、自分が思いも付かないような突拍子もないことがやりたいですね。

──ジャンルの縛りがない自由な音楽という意味では、アニメソングを多数手がけるフライングドッグで活動するというのは正しい選択肢かもしれないですね。「アニメに寄り添った音楽」というルール以外は極めて自由なのがアニソンの世界なので。

そうですね。アニメソングの懐の深さがあったから、これだけ自由にいろんな音楽で歌わせてもらっていたんだと思います。

──いろんな音楽をやってきた中で「ここは未開拓だったな」というジャンルはありますか？

ジャンルの話ではないですけど、今までライブをやるときは、衣装やステージセットを作り込んだ、1つの世界観をパッケージしてお見せするタイプのライブが好みでしたけど、今はどちらかというと、ライブハウスでお客さんに喰らい付いていくようなライブがやりたいです。

──ああ、なるほど。以前はアニソン系のイベントで多数のアーティストと共演するようなことはあったけど、いわゆる対バン的なステージは経験してないですよね。

はい。アーティストとしては経験してこなかったですけど、私は家族も音楽が好きで、ライブハウスにもよく通っていたし、なじみがあるので。純粋にガツガツ歌っている音楽を聴いてもらう、それにふさわしいジャンルの音楽には挑戦してみたいです。完全にそっちに振り切りたいわけではなく、通る道の1つとして。もし一緒にやってみたいと言ってくれる方がいたら、対バンにも挑戦してみたいです。大歓迎ですね。

──それをやるなら、今がチャンスとも言えますよね。リスタートによって、今なんとなく“新人”みたいな気持ちがあるんじゃないかと思うので。

そうそう、そうなんです！ 今とてもフレッシュなので（笑）。フレッシュかつフレキシブルだと思うんですよ。これが数カ月経っちゃうと、性分的にだんだん蝋が固まっていくように足元が鈍くなる可能性があるので（笑）、フットワークが軽いうちにやってみたいです。

──対バンを申し込むなら今ですね。

それは本当にもう、ぜひぜひ！

時間を巻き戻して2度目の青春

──1つ確定している未来の話としては、6月4日に東京・ステラボールでのワンマンライブが決定しました。

決まりました！ 歌いたい曲がありすぎて、どれを選んだらいいのか……。でも今回はどちらかと言うと、私が歌いたい歌というよりも、みんなが聴きたい歌が歌いたいです。リクエストに応えようというのではなく、デビューの頃から応援してくださっている方はもちろん、復帰後にちらっと気になっている人にも楽しんでもらえるような、ある意味復帰後の名刺代わりのようなライブにしたいなと思っていて。

──ちなみに演奏は……。

生バンドです！ 熱いライブにしたいという気持ちはもちろんありますけど、誰よりも私が一番汗をかいているライブにしたいです。

──このワンマンが、リスタートの流れとしては大きなひと区切りになりそうですね。

そうですね。翌日は誕生日でもありますし、6月5日からはまた新しいスタートだと思うので、このお祭りみたいな感じの集大成が6月4日のワンマンライブになると思います。

──そこから先の目標などは活動をするにつれどんどん出てくると思うんですけど、昨年末に音楽ナタリーのレコード座談会（参照：「いい音で音楽を」特集 中島愛×ayaka（lyrical school）×Megu（Negicco）レコードを愛する女性たち）で見せた編曲家マニアとしての一面も自身の作品に反映してほしいなという希望が個人的にはあります。

お願いしたい方はもちろんたくさんいます！ あとは本当に今のうち、“新人”としてできることをたくさんやっておきたいです。心持ちとしては今「新人キャンペーン中」なので（笑）。

──よくよく考えたら貴重な体験ですよね。誰しも一度は「あの頃に戻ってやり直したい！」という思いを持ったことがあると思うんですけど、「デビュー前に時間を巻き戻す」という行為をある意味実現できているわけで。生まれ変わりみたいなものですよ。

本当にそうなんです！ 無理なくフレッシュな気持ちに戻れているんですよね。いやー、面白いです。ありがたいですし、本当に貴重な経験をさせてもらっているなって。時間を巻き戻して、2度目の青春が今来ています（笑）。