音楽ナタリー Power Push - 中島愛
3年間の出来事 2度目の青春
8年前と同じ扉の前で
──ひさしぶりにレコーディングをしてみたり、年末の復帰イベント(参照:「……夢じゃないんですよね?」中島愛、2年9カ月ぶりの復帰ライブで「キラッ☆」)で改めてファンを前にフリーライブを行って、実感としてはいかがですか?
発表前日、2016年11月30日までは本当に不安で不安でしょうがなかったんです。日々が不安一色に染められて。流れの早い世界の中にポッと戻っていけるのかなという気持ちはやっぱり払拭できなかったし、どんなに「大丈夫だよ、みんな待ってくれているよ」となぐさめられても、実体が見えないものを追いかけている感じでした。でも、12月1日の発表のタイミングで公式Twitterアカウントを立ち上げたら、ものすごい数の反応をいただいて。それを見たときに、1つ手応えというか実感というか、「復帰を喜んでくれる人がこんなにいるんだ」というのを目の当たりにして、少しホッとしました。
──すごいリアクションでしたね。でも発表する直前までは疑心暗鬼で。
いつまでもウジウジして、そういうところも「自分らしいな」と思いましたけど(笑)、レコーディングやフリーライブを経て、だいぶ気持ちが固まってきました。まだまだ不安がないと言えば嘘になるし、悩む日もありますけど、はっきりとお客さんの言葉をキャッチできているという実感があるので、素直に「楽しいなあ、うれしいなあ」という気持ちで少しずつ満たされています。
──フリーライブはどうでしたか? 始まった瞬間は緊張した様子が手に取るように伝わってきましたけど。
扉が開いた瞬間は本当に緊張しました。会場になったヴィーナスフォートの教会広場は、ランカ・リーとして2008年にデビューイベントを行ったゆかりのある場所で、デビューのときは教会の扉が開いた瞬間に大泣きしてしまったんです。だから8年前と同じ扉の前に立ったときは緊張したんですけど、反面、8年前とは明らかに違う自分がいることにも気が付いて。8年前は、ステージが怖いと思う気持ちや、自分に対する自信のなさで心が埋め尽くされてしまっていたんですけど、「ちゃんと大人になっているよね、私」って自分を信じられる感じがふとしたので、歌い始めてからはひたすら楽しくて、「楽しいー!」と思っていたらいつの間にか終わっていました(笑)。
“中島愛の武器”を捨てて
──その復帰イベントでは、今回シングルでリリースされる3年ぶりの新曲「ワタシノセカイ」もさっそく初披露されました。僕もその日初めて聴きましたが、この曲はアニメ「風夏」のタイアップありきで作られたものながら、中島さんのリスタートに合わせて作った曲のようだなと感じました。カップリングの2曲も含めて、まさに復帰作になりましたね。
そうなんです! こんなに活動再開にぴったりな作品になるとは、私もちょっと予想していなかったです。今のタイミングで「風夏」に出会って、アニメのための曲ではあるけれど、自分の心境をちゃんと乗せられるシングルになったので、やっぱり巡り合わせを感じましたね。アニメに寄り添った曲だからこそ、てらいもなくこれを歌えてよかったなって。
──楽曲制作はどのように?
「風夏」は高校生の主人公たちがバンドを組むお話なので、まずは「バンドサウンドで」というアイデアが大前提で。あとは「エンディングテーマだけど、アップテンポでいきたい」という意見が、ディレクターさんと私の間で一致したんです。なのでスムーズに曲が決まって、制作に向かっていったんですけど、あとで瀬尾(公治。アニメの原作となったマンガ「風夏」の著者)先生から歌詞をいただいたときに「なんて歌詞だ!」と。「風夏」の作者さんなので作品の世界観にぴったりなのはもちろんなんですけど、私の今の気持ちを全部読まれているかのようで(笑)。今、自分が歌いたいことにすごくフィットする歌詞だったので……なんというか、「これは自分を丸ごと出さないと、曲が求めているものに応えられないな」と思いました。
──この歌詞を読む限り、瀬尾先生も作品世界と中島さんの現状をリンクさせたいという意識があったのかなと思いますが。
そうだとしたらとてもうれしいですね。
──ひさびさのレコーディングは楽しめましたか?
もともとあまり歌ってこなかったロックテイストの曲でもあるし、その中で「今までと違う自分を出したい」という思いがありつつ「じゃあどう出すのか」と考えてしまったので、けっこう苦労しました。でもそこでスタッフさんから、語尾をふわっと抜いて強弱を付けたりするのをなくして、1音1音をはっきりと歌うことを意識して歌うよう指示をもらって、そこで何か吹っ切れましたね。私は頑固なので、以前だったら「それは違います」って言っちゃっていたと思うんです。「それは私っぽくないです」って。でも、この3年間でいい意味でこだわりが削ぎ落とされて、一度“中島愛の武器”を捨ててみようというか、「あ、いいかも。それやってみます」みたいな気持ちになれたので、そこからわりとスムーズにいきました。
──「歌手として、この3年間で何が一番変わりましたか?」という質問をしようと思っていたのですが、今のがその答えになるでしょうか。
はい。まさにそこですね。
「これからのライブの定番になるようなアッパーな曲を」
──タイアップから離れたカップリングにどんな楽曲がチョイスされるのかも注目点でしたが、どの曲もビート感のある、さわやかなテイストで統一されていますね。
そうなんです。
──表題曲が明るい疾走感のあるロックなので、バランスとして短調の曲やバラードも入っているのかなと予想していたのですが。
シングルを出すことが決まったとき、「カップリングに2曲入れられるけどどうしたい?」とまず言われて、1案としてバラードやミディアムを入れるという考え方もあったんですけど、私としては全曲アップテンポなものにしたかったんです。活動を再開するにあたって、自分の中のちょっと湿っぽい部分を、曲調でまで出すことはないかなという気持ちがあって。以前の活動と地続きではありながらも、前を向いている自分を見てもらう必要があるかなと思ったので、「これからのライブの定番になるようなアッパーな曲をお願いします」と。
──以前からのファンならなおさら「どう変わっているのか」は気になると思うんですよね。「もう自分が好きな“まめぐ”ではないかもしれない」と。今おっしゃった「地続きではありながらも、前を向いている自分」というのがまさにぴったりなアップデート具合になっていると思いますし、きっとファンの方もそう感じるんじゃないかと思います。
そう言ってもらえて安心しました。
──3年前のアルバム「Thank You」が不思議な余韻を残す「とうめいにんげん」で締めくくられていたことを思うと、3年でずいぶんさわやかになったなという印象もありますけど。
あははは(笑)。そうかもしれません。
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- ニューシングル「ワタシノセカイ」 / 2017年2月15日発売 / FlyingDog
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 1944円 / VTZL-118
- 通常盤 [CD] / 1404円 / VTCL-35249
CD収録曲
- ワタシノセカイ
[作詞:瀬尾公治 / 作曲:秋浦智裕 / 編曲:WEST GROUND] - 最高の瞬間
[作詞:山田稔明 / 作・編曲:古川貴浩] - 愛はめぐる
[作詞:坂井竜二 / 作・編曲:末光篤] - ワタシノセカイ(Instrumental ver.)
- 最高の瞬間(Instrumental ver.)
- 愛はめぐる(Instrumental ver.)
初回限定盤DVD収録内容
- ワタシノセカイ(Music Video)
中島愛「ワタシノセカイ」リリース記念
ミニライブ&ハイタッチ会
2017年2月18日(土)東京都 ゲートシティ大崎 B1アトリウム
START 15:00
内容:ミニライブ / ハイタッチ会(整理番号入り優先エリア入場券が必要)
観覧無料(※整理番号入り優先エリア入場券は当日8:00より会場特設販売スペースでシングル「ワタシノセカイ」初回限定盤もしくは通常盤購入者に先着で配布)
中島愛 ワンマンライブ
2017年6月4日(日)東京都 ステラボール
中島愛(ナカジマメグミ)
6月5日生まれ、ふたご座のA型。アニメ「マクロスF(フロンティア)」のヒロインのランカ・リー役に抜擢され、2008年6月に「ランカ・リー=中島 愛」名義によるシングル「星間飛行」で歌手デビューを果たす。2014年3月より音楽活動を休止していたが、2016年12月に活動再開を発表。2017年2月には復帰第1弾となるニューシングル「ワタシノセカイ」をリリースする。