中田裕二|「生かされていたことに気付いた」今、新たな気持ちで音楽と向き合う

共同作業でマジックを起こす

──キャッチーという点では、「Nobody Knows」もイントロから「おやおや?」と思わせる面白い音が入ってたりしますよね。一方「ロータス」はアンビエントチックなテクノポップみたいな雰囲気で、タイトルからしても極楽浄土感があります。

面白いでしょ。イメージしたのは日本の風景ですけど、そういう桃源郷的なイメージはありました。日本の春に咲く植物って淡くて優しい色なんだけど、いろんな表情があると言うか。そこを日本人の心象風景と重ねてみたりして。

──そういうイメージはどういう瞬間に浮かぶものなんですか?

中田裕二

自分の中にずっとあるんですよね。よく聴いていた井上陽水さんの歌とかにもそういう風景があったりして。「少年時代」なんかは有名なところですけど、誰もが共有できる自然の景色の中に自分の思い出を映していくような、そんな曲を作りたいなって。サウンドはプリファブ・スプラウトとかを意識しました。ちょっとチープなシンセなんだけど、その上にファンタジックな歌が乗ると、そのチープさが懐かしさを持って届くんですよね。TOMI YOさんと一緒にアレンジした曲ですけど、「今ふうではなく1980年代のロマンチックさを出したい」って話しをしながら。

──そのTOMI YOさんは、今回4曲ばかり共同アレンジャーとしてクレジットされています。どういう接点があったんですか?

今回が初めましてだったんですけど、自分と近い世代の人と相談しながら一緒にやってみたかったんです。TOMIさんは僕の1つ上で、玉置浩二さんのアレンジもされてる方なんですけど、なかなか素敵なアレンジをするなと思っていて。同世代でセンスのいい人を探し出すのって、意外と難しいんですよ。ジャンルごとに特化した人はいるけど、歌モノもできて、洋楽もちゃんと知ってる人はそれほどたくさんいなくて。

──で、実際に好感触だったと。

そう、作業も楽しかったですよ。発見もあったし、こういう手法はこれからもやりたいなと思いましたね。まあアルバムも7枚目だし、自分でアレンジしてミックスまでやって、ひと通りすべて自分でやり尽くしてしまったところはあるんです。だから次は「共同作業でマジックを起こしてみたい」って気持ちが強くて。これまでにも外にお願いしたことはあるんですけど、僕のほうがデモの段階で組み立てすぎちゃってたので、「これ以上手の施しようがない」みたいなパターンがけっこうあったので(笑)。

アコースティックは侍の世界

──中田さんのブルージーなギターソロが秀逸な「BLACK SUGAR」やスパニッシュふうの「むせかえる夜」、ガレージテイストのロックンロール「マレダロ」など、秀逸なアレンジが光る曲ばかりですが、今回最も斬新だなと思ったのは8曲目の「CITY SLIDE」でした。これはもうテクノですよね。ツアーメンバーのバンマスでもある奥野真哉さんとの共同アレンジ作です。

奥野さんはテクノが大好きで、めちゃくちゃ詳しいんですよ。だからある程度は自分で組み立てつつ、「トラックもどんどん差し替えちゃっていいので、好きな感じでやってください」と。

──1990年代のDepeche ModeにNew Orderが顔を出してる感じですね。

そうそう、ズバリで。New Orderみたいな感じは僕もいいなと思って、奥野さんに伝えてました。結果、アルバムの中では一番元気な曲になりましたね。

──いろいろと実験性に富んだ部分が多いアルバムですが、フォークロックテイストの「オールウェイズ」でピースフルに締めくくられるのがとてもいいなと思いました。この曲にはKIRINJIのリズム隊が参加していますね。

1970年代のアコースティックなサウンド……Crosby, Stills, Nash & Youngとかニール・ヤングとか、前はあんまりよさがわからなかったけど、最近はよく聴くようになって。レコードで聴くようになって、こういうフォーキーなもののよさがわかってきたところもあるかな。自分も毎年弾き語りツアーをやってますけど、ギターの手触りそのままを音にしていきたくて、こういう楽曲が少しずつ増えているんです。アコースティックでライブをやるって言うとひよってるイメージがあったりしますけど、逆に勝負の世界だと思うんですよ。音圧ではバンドに負けるけど、曲の持ってる生々しさとかヒリヒリした部分、繊細な部分が剥き出しになるし、お客さんとの駆け引きも含めて侍の世界だと思っていて。ミュージシャンたるもの、長く続けていくためにはその緊張感を踏まえて活動することがめちゃくちゃ大事だなと思ってるんです。

中田裕二
中田裕二「NOBODY KNOWS」
2018年3月21日発売 / Imperial Records
中田裕二「NOBODY KNOWS」初回限定盤

初回限定盤 [CD+DVD]
3780円 / TECI-1584

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中田裕二「NOBODY KNOWS」通常盤

通常盤 [CD]
3240円 / TECI-1585

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CD収録曲
  1. Nobody Knows
  2. 正体
  3. ロータス
  4. BLACK SUGAR
  5. 傘はいらない
  6. 静かな朝
  7. マレダロ
  8. CITY SLIDE
  9. むせかえる夜
  10. オールウェイズ
初回限定盤DVD収録内容

“STUDIO SESSION”:撮り下ろしスタジオライブ映像

  1. 誘惑
  2. FUTEKI
  3. マレダロ
  4. 傘はいらない
  5. UNDO

ライブ情報

中田裕二「TOUR 18 "Nobody Knows"」
  • 2018年5月10日(木)埼玉県 HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3
  • 2018年5月12日(土)福岡県 イムズホール
  • 2018年5月13日(日)熊本県 熊本B.9 V1
  • 2018年5月18日(金)京都府 KYOTO MUSE
  • 2018年5月19日(土)静岡県 SOUND SHOWER ark
  • 2018年5月26日(土)宮城県 Rensa
  • 2018年6月2日(土)東京都 マイナビBLITZ赤坂
  • 2018年6月9日(土)北海道 帯広MEGA STONE
  • 2018年6月10日(日)北海道 札幌PENNY LANE24
  • 2018年6月15日(金)大阪府 BIGCAT
  • 2018年6月16日(土)愛知県 ElectricLadyLand
  • 2018年6月28日(木)広島県 広島CLUB QUATTRO
  • 2018年6月30日(土)鹿児島県 CAPARVO HALL
  • 2018年7月1日(日)福岡県 イムズホール
中田裕二の謡うロマン街道
  • 2018年6月23日(土)沖縄県 TopNote
  • 2018年7月7日(土)愛媛県 宝厳寺 本堂
中田裕二(ナカダユウジ)
中田裕二
1981年生まれ。熊本県出身。2000年に宮城県仙台にて椿屋四重奏を結成する。2003年にインディーズデビューを果たし、2007年にはメジャーシーンへ進出。歌謡曲をベースにした新たなロックサウンドで多くの音楽ファンを獲得したが、2011年1月に突然の解散を発表した。同年3月に新曲「ひかりのまち」を中田裕二名義で配信リリースし、本格的にソロ活動を開始する。以降は精力的に新作リリースとライブを重ね、2018年3月21日、オリジナル作品としては7作目となるニューアルバム「NOBODY KNOWS」を発表。