中田裕二|「生かされていたことに気付いた」今、新たな気持ちで音楽と向き合う

中田裕二がニューアルバム「NOBODY KNOWS」をリリースする。

今や失われつつある、いにしえの歌謡曲やニューミュージックの中にあった“ダンディズム”を受け継ぎ、自身の音楽へと還元させてきたシンガーソングライター、中田裕二。もはやその個性は確固たるものではあるが、それ故に“新しい自分探し”にも貪欲だ。近年、AORやシティポップ、ビンテージなソウルミュージックなど、アルバムごとにテーマを見出しながら器を広げてきた彼だが、前作「thickness」から1年ぶりとなるニューアルバム「NOBODY KNOWS」は、かなり様相の異なる印象の作品となった。この1年、バンドでのツアーと弾き語りツアーの2本立てという例年通り順調な活動を展開していく中で、中田は何を思ってここに至ったのか、そして何を目指しているのか。たっぷりと話を聞いた。

取材・文 / 久保田泰平 撮影 / 吉場正和

すごかったんですよ、創作意欲が

──音楽ナタリーでは2016年4月のシングル「ただひとつの太陽」リリース時以来のインタビューになりますが、振り返ってみると、あのあたりから中田さんが新しい着地点を模索し始めていた感じがします。

中田裕二

そうですね、洋楽感みたいなものがわかりやすく音に出てきた時期でもあったし。

──で、あのあと別の場所でアルバム「thickness」(2017年3月発売)のお話を伺ったときに「今年もう1枚出したいくらいの勢い」とおっしゃっていたので、今回のアルバムはテーマを決めて組み立てていくというより、貯まっていたアイデアを次々と形にしていった?

そう、コンセプトは特になかったですね。「thickness」はレトロビンテージソウルみたいなイメージがハッキリとあったんだけど、今回は生まれて来る曲をどんどんパッケージしていこう、みたいな。すごかったんですよ、創作意欲が。最初は「thickness」の世界観を引きずったものになるかと思ってたんですけど、それがまた違う雰囲気になっていって。ああいうビンテージ感のあるブラックっぽい音を作り切ったのもそうだし、「thickness」はアナログ盤も出せたことで、自分の中で満足しちゃったところがあって。これはもう引きずらなくてもいいかなって、気持ちをリフレッシュさせて作りました。

──なんなら「思いきり目先を変えてみようか」ぐらい?

「thickness」は三十代から上の人たちが聴いて「これいいな、懐かしいな」ってグッとくるツボを狙ったところがあったんですけど、今回は具体的に「この層に向けて」というイメージもなかったですね。若い人にも、自分より歳上の人にも届けたいっていう。

自信を持ってやっている音楽を、もっと広げなきゃ

──それがサウンドの振り幅にも表れていますね。今作はこれまですべて自前でやっていたアレンジメントの部分で共同アレンジャーを迎えられたりしていますし。中田さんは以前「自分の歌の強さに確信を持てた」ということを話してましたけど、であれば思い切っていろいろトライしてみようと。

中田裕二

そうですね。僕の歌声ってビブラートの部分とか特に、どうしてもくどくなっちゃう(笑)。まあ、どうやっても“中田裕二感”が出ちゃうわけですよ。「thickness」ではあえてそれを武器にしたんですけど、アレンジを詰めすぎると重くなりすぎちゃうこともあるので。ほかの人とやることでそのあたりの印象を変えてみようという狙いもありました。

──外から見た中田裕二に対するアイデアを取り込もうと。

はい、実験もしたかったし。今回は打ち込みの曲も多くて「乗りこなせなかったらどうしよう」って思いもあったけど、結果的に面白い形になったのでよかったなと。間違いなくこれまでのアルバムで一番振り幅があると思います。

──そういう意味では「thickness」以降の1年間の動きがよく出ているアルバムなのかもしれないですね。

ですね。けっこう、考え方が変わるような出来事がたくさんあって、それも大きかったです。それが具体的にどういうことだったのかは言いづらいんですけど……。

──言いづらいと言われると余計に気になるところではありますが。

あはは(笑)。音楽の延長線上だけじゃなくて、身の回りでもいろいろなことがあって。まあ、バンドからソロになったときにひと通り「これやりたいな」と思っていたアプローチは「thickness」を作り終えたところでいったん落ち着いたんですよね。いろいろとチャレンジする中で自分のアイデンティティもつかめた気がして。でもつかめただけじゃダメで、今度は自分が自信を持ってやっている音楽をもっと広げなきゃって。「これやりたい、あれやりたい」が「thickness」でまとまって、今はまた新しい気持ちで。2回目のデビューじゃないけど、それぐらいの意気込みでいるんです。

中田裕二「NOBODY KNOWS」
2018年3月21日発売 / Imperial Records
中田裕二「NOBODY KNOWS」初回限定盤

初回限定盤 [CD+DVD]
3780円 / TECI-1584

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中田裕二「NOBODY KNOWS」通常盤

通常盤 [CD]
3240円 / TECI-1585

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CD収録曲
  1. Nobody Knows
  2. 正体
  3. ロータス
  4. BLACK SUGAR
  5. 傘はいらない
  6. 静かな朝
  7. マレダロ
  8. CITY SLIDE
  9. むせかえる夜
  10. オールウェイズ
初回限定盤DVD収録内容

“STUDIO SESSION”:撮り下ろしスタジオライブ映像

  1. 誘惑
  2. FUTEKI
  3. マレダロ
  4. 傘はいらない
  5. UNDO

ライブ情報

中田裕二「TOUR 18 "Nobody Knows"」
  • 2018年5月10日(木)埼玉県 HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3
  • 2018年5月12日(土)福岡県 イムズホール
  • 2018年5月13日(日)熊本県 熊本B.9 V1
  • 2018年5月18日(金)京都府 KYOTO MUSE
  • 2018年5月19日(土)静岡県 SOUND SHOWER ark
  • 2018年5月26日(土)宮城県 Rensa
  • 2018年6月2日(土)東京都 マイナビBLITZ赤坂
  • 2018年6月9日(土)北海道 帯広MEGA STONE
  • 2018年6月10日(日)北海道 札幌PENNY LANE24
  • 2018年6月15日(金)大阪府 BIGCAT
  • 2018年6月16日(土)愛知県 ElectricLadyLand
  • 2018年6月28日(木)広島県 広島CLUB QUATTRO
  • 2018年6月30日(土)鹿児島県 CAPARVO HALL
  • 2018年7月1日(日)福岡県 イムズホール
中田裕二の謡うロマン街道
  • 2018年6月23日(土)沖縄県 TopNote
  • 2018年7月7日(土)愛媛県 宝厳寺 本堂
中田裕二(ナカダユウジ)
中田裕二
1981年生まれ。熊本県出身。2000年に宮城県仙台にて椿屋四重奏を結成する。2003年にインディーズデビューを果たし、2007年にはメジャーシーンへ進出。歌謡曲をベースにした新たなロックサウンドで多くの音楽ファンを獲得したが、2011年1月に突然の解散を発表した。同年3月に新曲「ひかりのまち」を中田裕二名義で配信リリースし、本格的にソロ活動を開始する。以降は精力的に新作リリースとライブを重ね、2018年3月21日、オリジナル作品としては7作目となるニューアルバム「NOBODY KNOWS」を発表。