「MUCC 25th Anniversary TOUR」開催記念特集 逹瑯インタビュー|愚直に音楽と向き合ったMUCC変革期 (2/2)

最近はバンド自体が明るい

──2006年の初武道館公演を経てリリースされたのが「極彩」で、音楽的な振り幅がさらに広がった1枚でした。

「鵬翼」ができた当時、インタビューで「いいアルバムができました」ってずっと言ってたんですよ。それが「極彩」のときは「すごいカッコいいアルバムができました」という言い方してたのを覚えてる。音楽としてのカッコよさが追加されたアルバムというか、そういう違いはあるんじゃないかな。でも、「鵬翼」がなかったら「極彩」みたいなアルバムは生まれなかったと思う。

「極彩」ジャケット

「極彩」ジャケット

──「謡声(ウタゴエ)」や「優しい歌」はまさにそうですね。特にレゲエ調の「優しい歌」は、今でもライブにおける定番の曲で。

「優しい歌」の音源は今の自分からすると「ひでえな」って感じの歌のレベルだけど(笑)、あれから十数年キャリアを積んできたおかげで、ちゃんと自分の味みたいなものが出せるようになったというか。たぶん当時は自分が好きなフォーク以外のジャンル、それこそレゲエとかほかのジャンルに無理やり自分を当てはめようとしてたんですよ。でも今は違ってて。

──むしろ自分に引き寄せて歌うようになったと。

ジャンルにハマりきらないイビツなところがMUCCの味っていうか、キャリアを重ねることでバンドの強みになっていったのかなと思います。でも、ホント当時はこれを歌うのは大変だったな。

2000年代中期のライブより逹瑯(Vo)。

2000年代中期のライブより逹瑯(Vo)。

──ゆえに今回のツアーは、ボーカリストしての成長や変化を大いに感じ取れるものになるのではないかと期待してるんですが。

ああ、そういう意味では当時できてなかったことができるようなツアーになったらいいなと思います。あの頃思うように歌い切れてなかった曲だったり、自分の中で満足できなかったパフォーマンスがちゃんとできるようになったり。

──あと、前回のツアーとは対照的なステージになると想像しています。

空気感は全然違うんじゃないかな。特に最近はバンド自体が明るいというか、現場でも笑顔が増えてるんで、次は自然とそういう空気感のライブになるんじゃないかと。

──それだけ今のMUCCは前向きだと?

前向きっていうか、3人になったことで「このままじゃダメなんだ」っていう意識をみんなで持ち始めてるからじゃないですかね。ドラムがサポートになったことで、今までバンドにあった“なあなあな空気”がなくなったし、そもそも1人減ることで、それぞれ責任感みたいなものは増すじゃないですか。自分がしっかりしなきゃ、みたいな意識がみんな強くなった。

──それこそ「鵬翼」の頃からですよね、フロントマンとしての責任感がゼロだった逹瑯さんの意識が変わり始めたのは。

そうね。あの頃と比べたら……一般の成人男性の半分ぐらいは責任感を持てるようにはなったかな(笑)。

2000年代中期のMUCC。

2000年代中期のMUCC。

──(笑)。

でもこの「Timeless」ツアーって、MUCCが3人体制になったタイミングで回るツアーとしては、すごく意味があるものだと思っていて。もちろん25周年という節目のツアーではあるんだけど、だからって大きな会場でバーン!とやるよりも、バンドとしてもう1回地盤を固める活動が大事なんじゃないかと俺は思うんです。で、細かいツアーをいっぱいやったほうがいいんじゃないかという話をしたんですよ。しかも過去のアルバムをおさらいするツアーってことは、サポートドラマーのAllenにこのツアーのシリーズの中で時間をかけて曲を覚えてもらうこともできるわけで。

──まさに地固めですね。

うん。今ここで足元を固めないと、30周年のときに高く跳べないじゃん!みたいな。そういう意識はあるかな。

2000年代中期のMUCC。

2000年代中期のMUCC。

MUCCは遠回りしかしてない

──冒頭の発言にもありましたけど、時間の経過を感じたり、今まで経験してきたすべてのことに意味があったと思えるツアーを1年かけてやる。それ自体がバンドに大きな自信を与えることになるのでは?

そうなのかな。でも、ほかに替えが効かないバンドというか、MUCC以外にはできないことをやってるバンドにはなれたのかなって思います。だから、今まで止まらずに続けてきたよかったなって。

──特に最近は若手のバンドマンからも「逹瑯さんが憧れでした」とか言われるようになったみたいですし(笑)。

なんで?って思うけどね。でもまあ……ナメられるよりはいいかなって(笑)。自分らがいつの間にかそういう立場になってることを知るたびに、今まで自分たちのやってきたことが間違いじゃなかったんだという実感みたいなもの? それを長い時間かけてゆっくりと感じていくバンドなんだなって。

YUKKE(B)

YUKKE(B)

──この再現ツアーもそうですよね。また「あの頃の自分は間違いじゃなかったんだな」と実感することになるのでは?

そうだったらいいな。あと、MUCCって答えがすぐ出ないことをずっとやってきたバンドなんだなと思うんですよ。答えに向かって近道が全然できないというか、遠回りしかしてない(笑)。でも、それが自分たちには一番合ってる歩みだったんだろうなって。もちろん近道を見つけるのが得意な人をうらやましいなと思ったこともたくさんあるけど、今は自分たちのやってきたことも誇りに思えるし、自信もある。

──さらに憧れられる存在にまでなり。

だからうれしいですよ。続けてきたよかったなと思います。

──最後に、会場限定でリリースされる「想-so- / 耀-yo-」というシングルについてですが。

再現ツアーで出すシングル用にいくつか書いた曲の中の1つが「想-so-」だったんですよ。で、シンプルな歌モノなんで「鵬翼」「極彩」のツアーで出すのがいいんじゃないかって決まったあとに、リーダーからもう1曲いい感じの曲が上がってきて。

ミヤ(G)

ミヤ(G)

──それが「耀-yo-」。

うん。で、こっちは「極彩」寄りの曲だったんで、じゃあ両A面っていうシングルにしようっていう。

──どちらも当時のMUCCと今のMUCCの架け橋みたいな曲になっていて。

でもあの頃の自分だったらこんな歌詞は書けないと思う。もっと内容がクドいというか。

──クドい、というのは?

さっきも言ったけど、目の前で起こる出来事に一喜一憂しちゃうんですよ、若い頃って。で、それをそのまま歌にしちゃう。でも、今の自分はそうじゃなくて。もっと俯瞰で見たり、いろんな視点とか切り取り方で書くことができる。つまり、年齢を重ねてきた今の自分だから書ける歌詞。そういう曲に「想-so-」はなってるんじゃないかな。

──ツアーもそういう実感をさらに持つことになりそうですね。今の自分だから歌えるんだ、みたいな。

そうだったらいいなと思います。遠回りしてきたことも、今まで続けてきたことも、すべてはいい経験だったんだと思えるツアーにしたいですね。

MUCC

MUCC

ツアー情報

「MUCC 25th Anniversary TOUR『Timeless』~鵬翼・極彩~」

  • 2023年3月4日(土)北海道 札幌PENNY LANE24
  • 2023年3月5日(日)北海道 札幌PENNY LANE24
  • 2023年3月8日(水)広島県 広島CLUB QUATTRO
  • 2023年3月11日(土)福岡県 BEAT STATION
  • 2023年3月12日(日)福岡県 BEAT STATION
  • 2023年3月18日(土)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
  • 2023年3月19日(日)新潟県 NIIGATA LOTS
  • 2023年3月25日(土)宮城県 SENDAI GIGS
  • 2023年3月26日(日)岩手県 Club Change WAVE
  • 2023年4月1日(土)愛知県 DIAMOND HALL
  • 2023年4月2日(日)愛知県 DIAMOND HALL
  • 2023年4月8日(土)大阪府 大阪城音楽堂
  • 2023年4月15日(土)茨城県 mito LIGHT HOUSE
  • 2023年4月16日(日)茨城県 mito LIGHT HOUSE
  • 2023年5月6日(土)東京都 日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)

プロフィール

MUCC(ムック)

1997年に茨城で結成された、逹瑯(Vo)、ミヤ(G)、YUKKE(B)からなるロックバンド。日本語にこだわった文学性の強い歌詞と、ヘヴィロックやラウドロックの影響をミックスさせた音楽性が国内外で評価されている。2002年にデンジャークルー・レコード内に自主レーベル・朱を設立。結成15周年を迎えた2012年には千葉・幕張メッセにてワンマンライブを開催した。2019年2月には期間限定メンバーとして吉田トオルを迎えたアルバム「壊れたピアノとリビングデッド」を発表。2020年6月に15枚目となるオリジナルアルバム「惡」をリリースした。6月9日を「ムックの日」とし、毎年さまざまなイベントや企画を行っている。2021年10月をもってSATOち(Dr)が脱退し現体制に。2022年6月に現体制初のフルアルバム「新世界」を発表。同年10月から過去のアルバムを中心とした再現ライブツアーシリーズ「Timeless」を開催している。