ナタリー×WOWOW ミュージックスタイルJAPAN PowerPush - 矢野顕子
新潟コンサートオンエア WOWOW連動インタビュー
「本物の音楽との出会い」をコンセプトに、毎月厳選したアーティストを紹介するWOWOWのライブプログラム「ミュージックスタイルJAPAN」。7月の放送では、矢野顕子が5月に新潟・ビュー福島潟6階展望ホールで行ったコンサートの模様をオンエアする。
この企画を受けて、ナタリーでは「ミュージックスタイルJAPAN」と完全連動の特集コンテンツで矢野顕子のインタビューを掲載する。なおWOWOWの番組オフィシャルページでは、インタビューの別バージョンが読めるので、そちらもあわせてチェックしてもらいたい。
取材・文 / 大山卓也 撮影 / 福岡諒祠
楽しい気持ちを分け合いたい
──今回のコンサートの出来はいかがでしたか?
はい。なかなか良かったと思います。
──あのあたりは温泉が有名な土地だそうですが、「温泉に行こう」を歌われたのはそれを意識してのことでしょうか?
そうです。私が泊まった月岡温泉というところは、あのあたりではとても有名な温泉らしくて、来てくださった方々にも馴染みが深いかなと思ったので。それで「温泉に行こう」を歌おうって決めました。
──お客さんの反応やその土地の空気に応じて、すぐに選曲を変えられるというのは、ピアノ1本でやっている利点ですね。
全ては私の胸先三寸っていうことですよね(笑)。やっぱり一番大事なことは気持ちがどこに向いているかということで。もし私が暗くて消極的な気持ちだけを持ってステージに上がったらそういう曲を選んでしまうかもしれないですけど、やっぱりお客様は楽しみにして来てくださるわけですから、そういうふうにならないようにって、みんなで分け合う気持ちは大切にしていますね。
──楽しい気持ちを分け合うということ?
はい。もちろん暗いものとかダークなものだって、私は好きですけど、それだけでつながっていくのはやはり健全じゃないと思うんです。私に「みんなでおいしいものを食べましょ」という気持ちがあれば、どんな人とでもそれを分け合えると思っています。もちろん私の音楽が性に合わないという人がいても当然ですし、コックリコックリ寝ている人がいることもあるし、でもそれはそれでオッケーなんですね。「私は皆さんとつながるために来たのよ」「楽しみましょうね」という気持ちでやっているので、聴いてくれてる人とはなにがしかの良い関係は結べると思います。
コンサートで歌うのは特別なことではない
──矢野さんが出前コンサートを始めてから早30年が経ちました。いろいろな土地に行ってピアノ1本で歌を聞かせることは、矢野さんにとって今でも楽しいことですか?
もちろん。楽しいからやってるんです。あとは手軽なところもいいですよね。ギタリストの方のように楽器を担いでいったりはできませんけど、私の気持ちをそのまま伝えるものとして、ピアノでなんでもできるというのは大きいです。
──そうしたコンサートが矢野さん自身に与える影響もありますか?
それはもう、音楽で1人ひとりの方とつながっていくわけですから。その場にいるのが35人であろうが3500人であろうが、基本は同じです。で、今回のような小さい空間だとお客さんの反応がはっきり見えるし、それを見てこっちがうれしくなる。非常に生産的なものですね。
──矢野さんが与えるだけではなくて、受け取るものも大きいということですね。
はい、大きいですね。
──矢野さんにとってコンサートの場というのは特別なものですか?ステージを観ていると、すごく自然体でやっているようにも見えるんですが。
行為としては、そりゃあ日常そのものというわけではないですよね。だけど気持ちとして、自分の持っているものを提供して皆さんに楽しんでもらうということは、私は特別なことではないと思ってます。だから普通の気持ちのままでステージに上がれていると思います。もっと若い頃は「私、こういう曲も弾けるの」とか「こんな曲作ったの。いい曲でしょ」みたいな、そういう気持ちもあった気がするんですけど、経験のせいなのか年齢のせいなのか、そういうのがどんどん剥がれ落ちてきて、それがなくなってからは本当に楽ですね。
──では自分が聴かせたい曲よりも、お客さんが喜ぶだろう曲を選んで歌う場合もありますか?
そこはバランスなんですよね。もちろん皆さんのためにやるわけですけど、やっぱり私自身が楽しくないと。楽しさは私の中から出てくるものですから。
収録曲
- People Got to Be Free <Blue Note TOKYO 2010>
- てぃんさぐぬ花 <Blue Note TOKYO 2010>
- The Letter <Blue Note TOKYO 2009>
- Reach Out <Blue Note TOKYO 2009>
- You Really Got Me <Blue Note TOKYO 2010>
- すばらしい日々 <Blue Note TOKYO 2009>
- こんなところにいてはいけない<新録>
- 学べよ <さとがえるコンサート2009(東京NHKホール)>
- ウナ・セラ・ディ東京 <さとがえるコンサート2009(東京NHKホール)>
- 気球にのって <さとがえるコンサート2009(東京NHKホール) >
- 椰子の実 <リサイタル2010(鎌倉芸術館)>
出演:柴咲コウ / 真木よう子 / 寺島しのぶ / 染谷将太 / 井浦新
劇中歌「PRAYER」矢野顕子
2013年春 全国ロードショー
©2012 映画『すーちゃん まいちゃん さわ子さん』製作委員会
矢野顕子(やのあきこ)
1955年東京生まれのシンガーソングライター&ピアニスト。幼少からピアノを弾き始め高校時代からジャズクラブで演奏。1972年頃からセッション奏者として活躍し、1976年にアルバム「JAPANESE GIRL」でソロデビュー。1979年から1980年にかけては初期YMOのライブメンバーも務めた。近年はrei harakamiとのユニット・yanokamiで新たな一面を見せるなど、そのチャーミングで独創的なスタイルは、後に続く世代のアーティストたちにも絶大な影響力を誇っている。