ナタリー PowerPush - MO'SOME TONEBENDER
初ベストで振り返る波乱のモーサム史
キャリア14年目に突入したMO'SOME TONEBENDERの動きが活発だ。モーサムらしさ全開の最新オリジナルアルバム「STRUGGLE」に続いて初のアメリカツアー、音楽見本市「SXSW」への出演、そして初のベスト盤「BEST OF WORST」のリリースと、ここにきて一段も二段もギアを上げ加速しているような印象もある。
決してメンバー同士が仲良しこよしで馴れ合いながらやってきたバンドではなく、軋轢と葛藤の中、ヒリヒリとした緊張感を常に漂わせながら食うか食われるかの闘争をしてきた彼らが、何度も危機に陥りながらもここまでやってこられたのは、良い意味で過去も未来もなく、今現在こそがすべてなのだという彼らの姿勢ゆえだろう。もっと速く、もっと強く、もっとエネルギッシュに。彼らの疾走は、まだまだ止まらない。
取材・文/小野島大
久しぶりに「何クソ」と思いながらライブした
──3月のアメリカツアーはいかがでしたか?
武井靖典(B) 波乱万丈でしたね。俺たち着けんのかなって。
百々和宏(Vo, G) ステージ以外のことですけどね。
──「SXSW」のライブはどうだったんですか?
百々 「JAPAN NIGHT」っていうくくりで出てたんですけど、そのままツアーも回って。向こうにちゃんと「JAPAN NIGHT」ファンっていうのがいて。日本人が多いかなって勝手に想像してたら、どこも盛況で現地の客が入ってたんですよ。
──モーサムって向こうでCD出してるの?
百々 出してない。
──じゃあ、とりあえず輸入盤で知ったり、WEBで聴いたりとか?
百々 うん。でも知っとったね。
武井 モーサムのファンもいたっすよ。何か一緒に歌ってる黒人の子とか。「あれ? 歌ってる」って(笑)。
──お客さんの反応って日本と違うの?
百々 俺はそんな変わらんなと思いましたね。半分くらいポカーンとしてて。
──半分は熱狂してて。日本でもそんなもんだよね(笑)。
百々 前からお前らアメリカ行ったほうがいいよって言われ続けてたから、その分期待が俺はデカくなりすぎて。あ、こんなもんかって思っちゃいましたね。
──言われ続けてたっていうのは、アメリカでは受けるよってこと?
百々 うん。「日本より海外でしょ」みたいなことはよく言われて。
──でも興味がなかった?
百々 興味ないことはないけど、なんか面倒くさいなって。でもね、日本でやる以上に何クソ感が出てよかったですけどね。この客をなんとかしてやろうみたいな。
──アウェイ感を感じた?
百々 結構俺は感じたね。
──ファンがいたにもかかわらず?
百々 うん。俺ら以外の日本のバンドってギャルバンが多くて、女のほうが受けるなって。ほかのバンドのときは写メを撮ってるヤツが多くて。ヒューヒューとか言ってさ。でもモーサム始まったら携帯下ろすの。でピリっと(笑)。
──写メひとつでやる気になるのか(笑)。
百々 でもやればやっただけ、だんだん客がうねりだして。
──日本の客より反応がストレート?
百々 ストレートですね。
──良かったら乗ってくるし。
百々 うん。
サンフランシスコで野次が飛んできて「やった!」と思った
──メニューはどんな感じだったの?
藤田勇(G) GANG OF FOURのカバーをやりましたね。
──あ、珍しいね。受けたの?
藤田 わからない……。
──向こうの客を意識したの?
百々 別にそういうわけではないかな。盛り上がる感じではなかったですね。
──イギリスのバンドの曲だしね。
百々 1曲目にそれをやって、そのまま普通のバンドセットじゃないやつから始めて。武井がベース持ってなくて、シーケンス流してやるんで、しょっぱなは客も「なんじゃこりゃ?」みたいな感じでしたね。
──いろんなところを回ったと思うんだけど、地域によって反応の違いはありましたか?
百々 うーん。何かあった?
藤田 そりゃいろいろありましたけど。
武井 シカゴとか超大盛り上がりだったんですけど、誰が何をやっても超大盛り上がりで(笑)。もうなんでもいいんじゃないかと。楽しかったですけどね。
──何か理由があったの?
武井 音楽が好きな街なのかなと思いましたけどね。
──逆に反応が良くなかったのは?
藤田 自分らの出来も結構波があったんで。反応っていうか、そっちのほうかなって。
──得たものとか気付いたものとかありました?
百々 うーんとね……なんか、もう1回ツアー行きたくなりましたね。やっぱり日本でやるとお客さんもなんとなくモーサム知ってるし、イベントとか知り合いのバンドのサポートとかで出ても、モーサムってこんなんでしょ?ってなんとなく知られてるし。それがまったくない中でやるライブって久しぶりだったんで。だからライブも自分らの出来として前半はあんまりだったけど、だんだん尻上がりに良くなってきた感じがあって。最後にサンフランシスコでやったとき、客から野次が飛んできて、「おっ、やった!」と思ったんですよ。それまでなんとなくノリでイェイイェイ言っとった感じだったのがね、やっと最後で野次飛んできたなって。
──どういう野次だったの?
百々 「なんて言ってっかわかんないぞ」っていう野次だった(笑)。
──それで英語で返したの?
百々 うん。「FUCK」って返した(笑)。で、いい感じでピリっとして、こういうライブならまたやりたいなって。
──ハハハ、いいですね。もっと早く行けばよかった?
百々 いやぁ、早いか遅いかはわからないですけど、また行く楽しみは増えましたね。
CD収録曲
- 未来は今 ver.2011
- GREEN & GOLD
- ロッキンルーラ
- HigH
- TIGER
- ペチカ (long flight ver.)
- 冷たいコード
- DAWN ROCK
- 凡人のロックンロール
- DUM DUM PARTY
- hang song
- Lost in The City
- Bad Summer Day Blues
- We are Lucky Friends
- echo
- ストロベリータイム (bonus track)
DVD収録曲
- youth~七月二十日~未来は今~HigH~ Emperor Sun & Sister Moon ~Drum Song<TOUR STRUGGLE@EBISU LIQUID ROOM-Digest>
- 壊れてるよ~STOP THE MUSIC~新型セドリック~Hammmmer~未来は今~BIG-S~Drum Song~GREEN & GOLD<QUATTRO MIRAGE-Digest>
- GREEN & GOLD
- 未来は今
- GREEN & GOLD
- ロッキンルーラ
- HigH
- TIGER
- ペチカ
- 冷たいコード
- DAWN ROCK
- 凡人のロックンロール
- DUM DUM PARTY
- hang song
- We are Lucky Friends
- echo
MO'SOME TONEBENDER(もーさむとーんべんだー)
1997年に福岡で結成されたロックバンド。メンバーは百々和宏(Vo, G)、武井靖典(B)、藤田勇(Dr/現在はG)の3名。年間100本に達するほどのライブ活動を行い、2001年にはアルバム「HELLO」でメジャーデビュー。迫力あるロックサウンドで高い評価を獲得している。ダイナミズムあふれるライブパフォーマンスには定評があり、各地のフェスにも精力的に出演。2007年4月には初の日比谷野外大音楽堂でのワンマンライブも成功させた。その後2年間にわたって何度も試行錯誤を重ね、2010年に精力的な活動の再開を宣言。ドラマーだった藤田がギタリストにパートチェンジし、現在はサポートドラマーを迎えた4人編成でライブやレコーディングを行っている。