ナタリー PowerPush - モーニング娘。

9~11期メンバー&つんく♂が語る 2013年の「モーニング娘。」

ライナーノーツは作詞するよりもエネルギーを使う

──彼女たちに歌詞を渡すときに、意味を説明するんですか?

歌う前にはあんまり言わないんですけど、歌ったあとに……まあ作品を仕上げるぐらいのタイミングでライナーノーツ(つんく♂のオフィシャルブログに掲載される、各作品のセルフライナーノーツ)を先に読ませたりすることはあります。そこでは楽曲のことだけじゃなくて歌ってる子たちについても書いているので、「なるほど、こういう意味だったんだ」とか「私はつんく♂さんにこういうふうに見られてたんだ」と答え合わせができるようにしてるんです。それを重く受け止めるメンバーもいれば、読みもしない奴もいるとは思うんですけど、まあそこらへんはいちいち「絶対に読みなさい」とは言わないですけど。

──そこは個々の判断に任せて。

そうですね。

──そのライナーノーツなんですけども、つんく♂さんが手がけた作品をリリースする際には必ず書いてますよね。

ある意味、作詞するよりもエネルギーを使うんですけどね(笑)。

──あははは(笑)。そもそもこのライナーノーツは、どこに向けて、どういう理由で書こうと思ったんですか?

歌詞だけでは言い切れなかったこともそこには含まれてるし、よく来る問い合わせに対して先に答えておこうみたいなところもあるし。今だったらメンバーに一言一言、ちょっと通信簿じゃないけど、今学期はこうでした的なことをそっと添えておくとうれしいかな、何か感じてくれるかなということも含まれてるし。それをまたさらにファンが読んで、「俺の思ってた通りだぜ」って思う人もいれば「そういう意味だったんだ」と気付く人もいると思うんです。(スタッフに向かって)メンバーはみんな読んでるの?

スタッフ と思います。インタビューのときにつんく♂さんの評価を受けてのコメントを言ってますから。

──このメンバーへのコメントも、過去のものを読み返してみると面白いですね。そのときのメンバーそれぞれのコンディションや成長した部分、今後の課題がわかるし。プロデューサーとしての視点もあると思いますが、それ以上に1人の人間として伝えたいことを言っているようにも見えます。

メンバーに直接メールするよりも、やっぱり人に見られてること、他人もその文章を読んでることを知っていたほうがピリッとするとは思うんですよ。「そこは突っ込まれたくなかったな」っていう部分も含めて。まあ一方的な公開ダメ出しなんで、かわいそうっちゃかわいそうなんですけど。でも現状を知るという意味では、ないよりはあったほうがうれしいと思うんですよ。なるべく彼女たちのガスを抜いてあげようとは思ってるんですけどね。そんなに固くならなくていいよっていう。

ネットが日常化されて感想文を書く人が減った

──モーニング娘。が結成された90年代末から2000年代前半って、今みたいに携帯やスマホからインターネットができる時代ではなかったんですが、一部のファンの人たちの間では自分たちの曲の解釈や解説をネット上にアップして、ファン同士の交流を深める文化がありました。それはつんく♂さんはじめ、制作サイドから説明がなかったからだと思うんですが、今は逆につんく♂さんのほうからセルフライナーノーツで「この曲はこうです」「こういう意図で作りました」と先手を打ってるわけですよね。

そうなんですよね。だからネット社会が始まって「2ちゃんねる」ができた頃は、ネットに参加してる連中っていうのはすごく能動的で。当時はモーニング娘。に限らず、人気アーティストのアルバムが出たらその感想文を自分のホームページで書く人がすごく多かったんです。「この曲は○○の『××』っていう曲のイントロのオマージュで、これこれこういうふうになってる」とか「この歌詞の意味は、きっと△△さんはこういう思いを込めて書いたんだろう」とか、1曲1曲を自分なりに解説して。「つんく♂が今回の曲で安倍なつみをセンターに持ってきたのは、やっぱりこれこれこういう理由なんだよ。『ASAYAN』を観てもこうだったし」とかね、嘘でもええから書いてるんですよ。まあそれを「ああ、こいつマニアックやな」とか「それは違うな」って思いながら読んで(笑)。

──あはははは(笑)。

まあそれは僕に対してのアンサーを含めて、自分たちでライナーノーツを作ってたわけですよね。でもそこからmixiとかSNSを経て、今はTwitterやLINEに移行した。ネットが日常化されていけばいくほど、そういう感想文を書く人が減っていった気がしていて。例えばAKBのCDをゲットしたとか、「Now Playing ○○」みたいなことを書くんですけど、その先の感想がないんです。ネットが普及したことでいろんなことが短縮化、簡易化されて、物事を書くということがおざなりになってるのかなっていう危機感を感じてるんですね。そんな文章を書くことがおざなりになってる中で間違った情報が上がらないためにも、「ここまで書かなくても普通は気付くでしょ?」みたいなことまで書いておかないといけないなと思っていて。僕が発した言葉に対して「そんなわけないやんけ!」って言ってくる人すら少なくなってますからね。その危機感みたいなものは非常に感じています。

──確かにブログが主流だった頃にはまだそういう感想文ってたくさんありましたよね。

あったんですよ。それは音楽だけじゃなくて食べものに関しても一緒で、ラーメンを食べてどんな味で、店がどんなふうになっていてと、自分なりに解説があったんですけど、今はもうない。(「Foursqure」などのスマホアプリで)チェックインで終わりですよ。

──それこそ140文字ですべてを伝えようとする文化になってきてますし。

しかも140字使いきる人はほとんどいないですから。ラーメンの写真がポーンって上がって終わり。感想もないから。

僕のライナーノーツでは自ら作品解説してる

──たぶんつんく♂さんもそういう世代だと思いますが、アナログレコードの時代は特に洋楽の場合、中に入っているライナーノーツを読むことでそのアーティストや作品の情報を得ることが多かったですよね。

そうですね。まあライターさんの主観がいっぱい入ってたけど、そこから音楽雑誌を買ってさらに細かい情報を調べたりして。要するに僕のライナーノーツでは、アーティスト自ら今回の作品はこうだよって解説してるわけです。意外と楽しみにしてくれている人が多いんですよね。

──作品を聴く前に読むといろいろイマジネーションを掻き立てられますし、聴いたあとに読むと自分の感想との答え合わせもできるし、そういった意味でも面白いと思います。

ほんまに歌詞1曲分書くぐらいの体力を使うので、けっこう時間かかるんですよ。「早く書いてくれ!」ってTwitterにファンから催促の書き込みもくるんですけど……(笑)。

──でもそんな中、今回の「ブレインストーミング / 君さえ居れば何も要らない」のライナーノーツは文字量が膨大なことになってますね(笑)。

そうですよね(笑)。言いたいこと、伝えたいことがたくさんあったんでしょう。例えばひとつ前のシングル「Help me!!」(2013年1月発売)だったかな。ビデオの中で最後にメンバーが不死鳥になって羽を広げてるのをイメージしたんだって書いとくと、Twitterとかで「最後のフェニックスのシーンで感動した」ってコメントを目にして「あ、僕の文章から引用してるな」って思うわけですよ。それがフェニックスであることが前提でコメントしてるわけですから、「ああ、ちゃんと書いておいてよかったな」って。そういうこともあったから、今回は今まで以上にしっかり伝えたいと思ったのかもしれないですね。

ニューシングル「ブレインストーミング / 君さえ居れば何も要らない」 / 201年4月17日発売 / ZETIMA
初回限定盤A [CD+DVD] / 1680円 / EPCE-5948~9
初回限定盤B [CD+DVD] / 1680円 / EPCE-5950~51
初回限定盤C [CD+DVD] / 1680円 / EPCE-5952~3
初回限定盤D [CD] / 1050円 / EPCE-5954
初回限定盤E [CD] / 1050円 / EPCE-5955
通常盤A [CD] / 1050円 / EPCE-5956
通常盤B [CD] / 1050円 / EPCE-5957
初回生産限定盤A~C / 通常盤B CD収録曲
  1. ブレインストーミング
  2. 君さえ居れば何も要らない
  3. A B C D E-cha E-cha したい
  4. ブレインストーミング(Instrumental)
  5. 君さえ居れば何も要らない(Instrumental)
初回生産限定盤D 収録曲
  1. ブレインストーミング
  2. トキメクトキメケ / 道重さゆみ・譜久村聖・生田衣梨奈・飯窪春菜・石田亜佑美
  3. ブレインストーミング(Instrumental)
  4. 君さえ居れば何も要らない(Instrumental)
初回生産限定盤E 収録曲
  1. ブレインストーミング
  2. 君さえ居れば何も要らない
  3. いつもとおんなじ制服で / 鞘師里保・鈴木香音・佐藤優樹・工藤遥・小田さくら
  4. ブレインストーミング(Instrumental)
  5. 君さえ居れば何も要らない(Instrumental)
通常盤A 収録曲
  1. ブレインストーミング
  2. 君さえ居れば何も要らない
  3. Rock の定義/田中れいな
  4. ブレインストーミング(Instrumental)
  5. 君さえ居れば何も要らない(Instrumental)
初回生産限定盤A DVD収録内容
  1. ブレインストーミング(Music Video)
  2. ブレインストーミング(Dance Shot Ver.)
初回生産限定盤B DVD収録内容
  1. 君さえ居れば何も要らない(Music Video)
  2. 君さえ居れば何も要らない(Close-up Ver.)
初回生産限定盤C DVD収録内容
  1. Rock の定義/田中れいな(Music Video)
  2. 「ブレインストーミング/君さえ居れば何も要らない」メイキング映像
モーニング娘。12期オーディション受付中
モーニング娘。(もーにんぐむすめ)
モーニング娘。

テレビ番組「ASAYAN」でのオーディション企画「シャ乱Qロックヴォーカリストオーディション」に落選した女性5人により、1997年秋に結成されたアイドルグループ。1998年1月、シングル「モーニングコーヒー」でメジャーデビューし、2ndシングル「サマーナイトタウン」以降はメンバーの増減を繰り返していく。同年9月発売の3rdシングル「抱いてHOLD ON ME!」は初のオリコン週間ランキング1位を獲得。同年末にはNHK紅白歌合戦に初出場を果たす。1999年9月発売の7thシングル「LOVEマシーン」では初のミリオンヒットを記録。今日まで、女性グループが持つ数々の記録を更新し続けている。2013年4月現在のメンバーはリーダーの道重さゆみ(6期)、田中れいな(6期)、譜久村聖(9期)、生田衣梨奈(9期)、鞘師里保(9期)、鈴木香音(9期)、飯窪春菜(10期)、石田亜佑美(10期)、佐藤優樹(10期)、工藤遥(10期)、小田さくら(11期)の11名。4月17日に通算53枚目のシングル「ブレインストーミング / 君さえ居れば何も要らない」を発表する。5月21日に東京・日本武道館で行われる単独コンサートをもって、田中がグループを卒業予定。