ナタリー PowerPush - モーニング娘。

9~11期メンバー&つんく♂が語る 2013年の「モーニング娘。」

つんく♂が明かす「2013年のモーニング娘。」論

モーニング娘。のインタビューに続いては、彼女たちを15年にわたりプロデュースしてきたつんく♂にインタビューを実施。モーニング娘。のサウンドや歌詞、現在のアイドルシーンにおける彼女たちの立ち位置について話を聞いた。

取材・文 / 西廣智一

EDM導入は鞘師&石田の加入が大きい

つんく♂

──つんく♂さんはモーニング娘。の作品で、2012年4月リリースのシングル「恋愛ハンター」以降、ダブステップをはじめとするエレクトロニックダンスミュージック(EDM)をいち早く取り入れてきました。どうしてこういうサウンドを導入しようと思ったんですか?

それは鞘師(里保 / 9期メンバー)、石田(亜佑美 / 10期メンバー)の加入が大きいのかな。あの子たちがかなり踊れることをどう生かすかを考えた結果というか。初期のモーニング娘。はパフォーマンスにおいてはSPEEDやMAXにはかなわないことがまず大前提としてあって、なんとなくにぎやかし感が出せればいいやという意味で「LOVEマシーン」を作って、それがヒットにつながったんですね。そこからいろんな変遷があって、高橋(愛 / 5期メンバー)や新垣(里沙 / 5期メンバー)、亀井(絵里 / 6期メンバー)あたりがフロントメンバーの頃からより踊れるようになって、パワフルさと表現力の高さが際立つようになって。そこから9期、10期が入って一気に若返ったモーニング娘。にあわせるようにサウンドを変化させていったんです。今の彼女たちだったらこういうサウンドが似合うかなとか、もっと難易度の高いダンスが踊れるだろうなと考えて。

──なるほど。むしろそのときそのときのメンバーのスキルにあわせて変化させていったと。

今は大人メンバーの卒業により子供メンバーが増えたことで、それを逆手に取って声を加工してみようと。それまでもボーカルトラックはピッチやタイミングなどのエディットはしてましたけど、K-POPとの差別化もあってなるべく手を加えても自然な声に聞こえるようにエディットするのが僕のポリシーだったんです。今はメンバーが若返ったことで逆に加工するのもアリだなと。そのへんも以前と変わったように見えるポイントな気がするんですよね。

──以前の主要メンバーが卒業してローティーンのメンバーが増えたことで、また何か新しいことをやってみたいという気持ちもあった?

そうですね。旧メンバーが減ったぶん、ハロー!プロジェクトの中でもBerryz工房、℃-uteのほうが平均年齢が上になってきたので。世間的に見てもモーニング娘。の現メンバーは田中、道重(さゆみ / 6期メンバー)を除けば、新人なわけですから……「まだ若手なんです」っていう顔をしてやっていけるので、いろいろ開き直ることができるんです。で、僕の中にそういう意味でのチャレンジ精神も芽生えてきたんですよ。

新人の顔しながら王道を守っていかなきゃいけない

──9期以降の子たちは新人ではあるけども、15年にわたる歴史があるグループの中に入っていくためにはある程度のレベルを保たなければならないと思うんです。活動に加わった時点ですでに先輩たちと同じレベルのパフォーマンスを披露しているし、逆に新人と思って舐めていると面食らう人も多いんじゃないでしょうか。そういう面も含めて、今のモーニング娘。って非常にユニークな存在だと感じています。

まあそうですね。アイドルファンにとってはいろんなアイドルがいる中で、モーニング娘。の位置付けっていうのがやっぱりあると思うんですね。今までは「自分が子供の頃から知ってる存在」「昭和の人たちみたいなイメージ」だったのが、一気に「あ、私たちと歳が近くて、しかも意外ととがってるんだな」という印象に変わって。そのへんが今アイドルを観てる人たちからすると新鮮だったんじゃないかなって気がしますけどね。

──と同時に、10代半ばから20代前半の、現在アイドルとして活躍してる子たちに話を聞くと「モーニング娘。を聴いて、この世界に憧れた」っていう人も多くて。そんな彼女たちがいまだに現役で活動しているという事実も、また面白いなと思うんです。

今のモーニング娘。はいくらメンバーは新人と言えどもブランド価値という意味ではネームバリューがあるんで、新たなことにチャレンジすると同時に今までの歴史を守っていかなきゃいけない。そういう意味ではほかの新人アイドルたちと比べると大きなハンディキャップがあるんです。中には「なんでもやったらええ、むちゃくちゃやったらええ」みたいな新人たちもいっぱいいますよね。ちょっとギリギリまで脱いでしまいましたみたいなビデオを作ったりとか、こんな面白い企画やりましたとか。モーニング娘。はさすがにそういうことはできないし、新人の顔しながらも王道を守っていかなきゃいけないんです。

歌う顔ぶれが変わると自然に歌詞も変わっていく

──それでは作詞の面で新メンバーを意識して変化させた部分はありますか?

歌う顔ぶれが変わると、なぜか知らないけど自然に歌詞も変わっていくんです。やっぱりメンバーの顔を思い浮かべながら歌詞を書きますから。そこらへんが、モーニング娘。が歳を取らないひとつの理由なんじゃないかなと。歌詞のテーマにしても、もちろん「私」と「あなた」が軸になる曲もありますけど、それ以上に「私たちが発信するエネルギー」が大きなテーマであって、単に惚れた腫れただけじゃない、今を生きていかなければならないというメッセージを常に歌詞の中に入れているんですね。で、そのメッセージを小学校、中学生の子たちはたぶん意味もわからず歌ってると思うんですけど、大人になって「ああ、私たちはこういうことを歌ってたんだ」とようやく理解できるという。それでいいと思うんです。そこがほかのハロー!プロジェクトのグループとちょっと違うところ。モーニング娘。だけがそういうポジションにいると思います。

──確かにここ数作のシングルは特にそうですね。今回の「ブレインストーミング」「君さえ居れば何も要らない」にしても今の日本の情勢を反映した歌詞が、今の10代の子たちの目線で歌われている。つんく♂さんたち制作陣が彼女たちを通して外に伝えたいことの焦点がより定まってきてるのかなという気がしました。

常にそういうことを伝えたいという気持ちは持ってたんですよ。でもやっぱりこの2年間ぐらいは震災もあって、しかもデフレの中でみんなが苦しかったと思うので、僕自身もそういうメッセージを伝えたいという思いが強かったのかもしれないですね。

──そうなんですね。

まあ彼女たちはそこまでわからずに歌ってると思うんですけど、中には「自分たちに置き換えてこんなふうに考えました」みたいな感想文を書いてくるメンバーもいます。実際に僕らが中学生以下のときに聴いてた音楽でも、高校生ぐらいになってから井上陽水さんや尾崎豊さん、それこそTHE BEATLESの歌詞を読んで「こんな意味やったんか」って思ったわけですし。だからまだこれからだと思うんですよね。あの子たちが親になったとき、「自分たちが歌ってたことは恥ずかしくなかったんだ。こんなメッセージがあったんだよ」って自分の子供に伝えられるようなものであればいいなと、いつも思ってるんですけどね。

ニューシングル「ブレインストーミング / 君さえ居れば何も要らない」 / 201年4月17日発売 / ZETIMA
初回限定盤A [CD+DVD] / 1680円 / EPCE-5948~9
初回限定盤B [CD+DVD] / 1680円 / EPCE-5950~51
初回限定盤C [CD+DVD] / 1680円 / EPCE-5952~3
初回限定盤D [CD] / 1050円 / EPCE-5954
初回限定盤E [CD] / 1050円 / EPCE-5955
通常盤A [CD] / 1050円 / EPCE-5956
通常盤B [CD] / 1050円 / EPCE-5957
初回生産限定盤A~C / 通常盤B CD収録曲
  1. ブレインストーミング
  2. 君さえ居れば何も要らない
  3. A B C D E-cha E-cha したい
  4. ブレインストーミング(Instrumental)
  5. 君さえ居れば何も要らない(Instrumental)
初回生産限定盤D 収録曲
  1. ブレインストーミング
  2. トキメクトキメケ / 道重さゆみ・譜久村聖・生田衣梨奈・飯窪春菜・石田亜佑美
  3. ブレインストーミング(Instrumental)
  4. 君さえ居れば何も要らない(Instrumental)
初回生産限定盤E 収録曲
  1. ブレインストーミング
  2. 君さえ居れば何も要らない
  3. いつもとおんなじ制服で / 鞘師里保・鈴木香音・佐藤優樹・工藤遥・小田さくら
  4. ブレインストーミング(Instrumental)
  5. 君さえ居れば何も要らない(Instrumental)
通常盤A 収録曲
  1. ブレインストーミング
  2. 君さえ居れば何も要らない
  3. Rock の定義/田中れいな
  4. ブレインストーミング(Instrumental)
  5. 君さえ居れば何も要らない(Instrumental)
初回生産限定盤A DVD収録内容
  1. ブレインストーミング(Music Video)
  2. ブレインストーミング(Dance Shot Ver.)
初回生産限定盤B DVD収録内容
  1. 君さえ居れば何も要らない(Music Video)
  2. 君さえ居れば何も要らない(Close-up Ver.)
初回生産限定盤C DVD収録内容
  1. Rock の定義/田中れいな(Music Video)
  2. 「ブレインストーミング/君さえ居れば何も要らない」メイキング映像
モーニング娘。12期オーディション受付中
モーニング娘。(もーにんぐむすめ)
モーニング娘。

テレビ番組「ASAYAN」でのオーディション企画「シャ乱Qロックヴォーカリストオーディション」に落選した女性5人により、1997年秋に結成されたアイドルグループ。1998年1月、シングル「モーニングコーヒー」でメジャーデビューし、2ndシングル「サマーナイトタウン」以降はメンバーの増減を繰り返していく。同年9月発売の3rdシングル「抱いてHOLD ON ME!」は初のオリコン週間ランキング1位を獲得。同年末にはNHK紅白歌合戦に初出場を果たす。1999年9月発売の7thシングル「LOVEマシーン」では初のミリオンヒットを記録。今日まで、女性グループが持つ数々の記録を更新し続けている。2013年4月現在のメンバーはリーダーの道重さゆみ(6期)、田中れいな(6期)、譜久村聖(9期)、生田衣梨奈(9期)、鞘師里保(9期)、鈴木香音(9期)、飯窪春菜(10期)、石田亜佑美(10期)、佐藤優樹(10期)、工藤遥(10期)、小田さくら(11期)の11名。4月17日に通算53枚目のシングル「ブレインストーミング / 君さえ居れば何も要らない」を発表する。5月21日に東京・日本武道館で行われる単独コンサートをもって、田中がグループを卒業予定。